やすいゆたか

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やすい ゆたか
別名 保井 温
生誕 (1945-09-26) 1945年9月26日(73歳)
日本の旗 日本徳島県美馬郡つるぎ町半田
出身地は大阪府大阪市大正区三軒家
時代 20世紀の哲学
21世紀の哲学
地域 日本哲学
研究分野 京都学派
梅原日本学
主な概念 包括的ヒューマニズムの提唱
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やすいゆたか(本名:保井 温1945年9月26日-)は、日本哲学者著述家

経歴[編集]

出身は大阪府大阪市大正区三軒家だが、現在の徳島県美馬郡つるぎ町半田の疎開地で生まれた。蚕室を借りてお産したという。

立命館大学文学部日本史学専攻を卒業したが、経済哲学の権威であった梯明秀の影響を受け、大学院では哲学専攻に転ずる。立命館大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了[1]

大学院卒業後は塾講師の傍ら研究を続け、学友であった梅川邦夫、服部健二藤田友治らとともにマルクス文献の原書購読と研究交流を行う経済哲学研究会(後の現代思想研究会)を結成する[2]。1980年に経済哲学研究会より自費出版した広松渉の物象化論を批判した処女作『広松渉「資本論の哲学」批判』を上梓し、その著書を鷲田小彌太の紹介により大阪唯物論研究会で発表したことをきっかけに、三重短期大学の非常勤講師に推薦される[2]

その後、予備校講師や立命館大学講師、大阪経済大学講師、大阪府立岸和田高等学校講師などを歴任し、2019年現在まで立命館大学講師を務めている。2016年から毎日文化センターで日本古代史と思想関係の講師、2018年からあすと市民大学学長に就任している[2]

趣味は、mixiであり、哲学・倫理学に関するコミュニティを主催している。

研究[編集]

1985年に『人間観の転換―マルクス物神性論批判』で経済哲学の面で、人間を身体やそこに宿る人格だけに限定せず社会的諸事物や環境的自然まで包括し、人間を存在のあり方を示す言葉として捉える新しい人間観に到達し、2006年にはそれを『ネオヒューマニズム宣言』で普遍的な人間観、世界観として広めようとした。しかしサルカール派の人間愛を動植物や無機物似まで及ぼすネオヒューマニズムという用語がアメリカでは定着しているので、2018年から「包括的ヒューマニズム」という言葉に置き換えた。

1999年刊『キリスト教とカニバリズム』三一書房、2000年刊『イエスは食べられて復活した』社会評論社によると、キリスト教の福音書を精神分析することによって、「イエスの復活」を最後の晩餐での指示に従って、贖罪の十字架の後に弟子たちがイエスの肉と血を聖餐したことによって、全能幻想が肥大化して、イエス復活の共同幻想を見たことに由来することを突き止め、「聖餐による復活」仮説を唱えている。

21世紀に入り、梅原猛研究をきっかけにして日本古代史研究にのめり込み、上古の歴史は現存する同時代の文字史料がほとんどないので、「歴史知」という「歴史を見るメガネ」を使って解明すべきだとした。つまり記紀などの矛盾点を精査し、他の文献や考古学的史料と突き合わせながら、できるだけ皆が納得できる歴史像を作り上げるという方法である。それは科学知とまでは言えないけれど、皇国史観などの歪んだ歴史理解を訂正し、建国史の概観を得ることができる。

2015年刊『千四百年の封印 聖徳太子の謎に迫る』社会評論社および2019年『天照の建てた国☆日本建国12の謎を解くー万世一系の真相』によると、その方法で、七世紀初めに、主神を天之御中主神から天照大神に、大王家の祖先神を月讀命から天照大神に差し替え、はじめからそうだったように説話を改変したことを突き止めたのである。その際に神を差し替えるという瀆神の罪を厩戸王は摂政として一身に引き受け、しかもその改革したことを封印したとした。

この封印を解くことで、三貴神による三倭国建国という建国史の端緒が解明される。つまり天照大神が河内・大和倭国(原「日本国」)を、月讀命が筑紫倭国を、須佐之男命が出雲倭国を建国し、その興亡が上古史を彩ることになる。原「日本国」は饒速日一世の時に大国主命の出雲帝国に滅ぼされるも、宇摩志麻遅命(饒速日二世)によって再建されたが、その一世紀後に筑紫倭国の一豪族磐余彦大王によって滅ぼされ、大和政権が成立した。この政権は主神天之御中主神、祖先神月讀命だったので日本国ではない。七世紀初頭聖徳太子の摂政期に太陽神の国になったことで日本国が再建されたのである。

これまで三貴神を人間である現人神として捉えることがなかったので、建国史の端緒は語れなかったのだという。これは神話史観ではないかという懸念もあるが、大八洲の初期国家は神政政治として成立せざるを得なかったとしたら、一つの仮説として成立する可能性を指摘している。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『人間観の転換―マルクス物神性論批判―』(保井温)青弓社 1986
  • 『歴史の危機―歴史終焉論を超えて』三一書房 1995
  • 『キリスト教とカニバリズム―キリスト教成立の謎を精神分析する―』三一書房 1999
  • 『イエスは食べられて復活した―バイブルの精神分析新約篇』社会評論社 2000
  • 『評伝梅原猛―哀しみのパトス』ミネルヴァ書房 2005
  • 『梅原猛聖徳太子の夢 スーパー歌舞伎・狂言の世界』ミネルヴァ書房 2009
  • 『千四百年の封印 聖徳太子の謎に迫る』SQ選書 社会評論社 2015
  • 『天照の建てた国☆日本建国12の謎を解くー万世一系の真相』社会評論社2019 『ビジネスマンのための西田哲学入門』三L出版 アマゾンKindle版 2019
  • 『包括的ヒューマニズムとはなにかー21世紀は包括的ヒューマニズム』三L出版 アマゾンKindle版 2019
  • 『中国思想の長征 第一巻 諸子百家の思想』三L出版 アマゾンKindle版 2019
  • 『中国思想の長征 第二巻 中国仏教思想史の旅』三L出版 アマゾンKindle版 2019
  • 『古代史漫才☆漫才で迫る日本建国の謎』三L出版 アマゾンKindle版 2019

共著[編集]

  • 『人間論の可能性』北樹出版 1983
  • 『フェティシズム論のブティック』(石塚正英論創社 1998
  • 『知識人の宗教観』三一書房 1998

寄稿[編集]

『月刊 状況と主体』(谷沢書房)連載論文(『月刊 状況と主体』は2000年1月号で休刊)
  • 「新しい人間観の構想」1991年12月号から1993年9月号まで
  • 「西田哲学入門講座」1998年10月号から2000年1月号まで
『社会思想史の窓』連載論文
  • 「バイブルの精神分析」119号から123号まで
『季報唯物論研究』やすいゆたかの責任編集
  • 第62号『フェティシズム論のブティック』1997年刊
  • 第91号『21世紀「人間論」の出発点』2005年刊
ネット雑誌『プロメテウスー人間論および人間学論集』掲載論稿
  • 2006年春 創刊号 対談 『ネオ・ヒューマニズム宣言』 をめぐって

その他[編集]

  • CD-ROM監修『ソフィーの世界~哲学ファンタジーゲーム』 トランスアート

脚注[編集]

出典[編集]

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  1. ^ 著者紹介‐『梅原猛聖徳太子の夢 スーパー歌舞伎・狂言の世界』ミネルヴァ書房
  2. ^ a b c やすいゆたか事典2019年1月18日 閲覧

外部リンク[編集]