市場の失敗

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市場の失敗 (しじょうのしっぱい、: Market failure)は、市場メカニズムが働いた結果において、パレート最適ではない状態、つまり経済的な「効率性」が達成されていない現象を指す。

概要

ある前提の下では、需要と供給の均衡によりパレート最適な配分を実現し、安定した経済を形成すると考えられている市場メカニズムは、多くの経済学者から支持を得ている方法である。しかし前提が満たされないとき、市場メカニズムは経済的な非効率をもたらす場合がある。失敗の例は以下のとおり。

原因

市場の失敗が起こる原因の代表的なものとして、次のようなものが挙げられる。

  • 不完全競争による独占寡占の存在
  • 外部性の存在(正の外部性による過少供給、負の外部性による過大供給)
  • 公共財の存在(フリーライダーによる過少供給)
  • 情報の非対称性の存在
  • 不完備市場
  • 不確実性(リスク回避的な供給者による過少供給)
  • 費用逓減産業の存在。巨大な固定費のかかる産業(電力産業が典型)では供給曲線が右下がりとなる。このような場合、自然独占状態を認め、かつ価格規制を行うことが最適となる。日本では電力産業に事実上の地域独占が認められており、そのかわり、電力価格は国会で決められる公共料金となっている。(生産規模の拡大でコストが低下する場合の独占や寡占)

市場の失敗が起こる場合には、政府が何らかの方法で市場に介入するか、あるいは政府が直接的に財の供給者となる必要があると考えられている。事実、多くの国では市場の失敗を是正するための政策がさまざまな形で行われている。

市場の失敗と公平性・社会問題

失業貧困犯罪率増加、自殺などの社会問題格差社会の発生は,従来の定義では経済的な「公平性」が達成されていない現象に属し、定義の上からは市場の失敗とは別の分類であるとされた。しかしアマルティア・センらの研究などにより社会的費用の拡張が試みられ失業や貧困などの社会問題が経済成長などに大きく寄与することとなると貧困などの社会問題が市場の失敗と見なされるようになっている。

関連項目