光年
光年 | |
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外側の球面は太陽から1光年の位置を表し、内側の小さい球が1光月の位置を表す。左の黄色の線は1月の大彗星(1910年)の軌道 | |
記号 | ly |
量 | 長さ |
SI | 9 460 730 472 580 800 m(正確に) |
定義 | 光が自由空間を1年間に通過する長さ |
光年(こうねん、英語: light-year)は、主として天文学で用いられる距離(長さ)の単位。「年」とついているが時間の単位ではない。1981年まではSI併用単位であった。
概要
1光年は光(電磁波)が1年間に進む距離と定義され、その長さは約9.46×1015メートル(約9.46ペタメートル)である。より正確には、光子が自由空間かつ重力場および磁場の影響を受けない空間を1ユリウス年(365.25日 = 31 557 600秒)[1]の間に通過する長さである[2]。真空中の光速度は正確に 299 792 458 m/s であるので、1光年は正確に 9 460 730 472 580 800 m である。1光年の値は天文定数として1984年に定められた[3]。
光年は、銀河や恒星などの天体までの距離を表するのによく用いられる。キロメートル単位で表すと文字通り「天文学的数字」になるからである。
現在天文学では、恒星までの距離を示すときにはパーセクが用いられる。パーセクは、1天文単位動いたときの視差が1秒となる距離のことで、1パーセクは約3.26光年となる[2]。パーセクは観測データから簡単に求めることができ、相互参照できることからよく用いられている。しかし、科学者以外の一般大衆の間では、直感的に理解しやすい「光年」の方が広く使われている。
1光年は約63 241天文単位に等しい。光年で示されることの多い距離のものについては記事「1 E15 m」を参照のこと。
光年に関連して、光が1日間・1時間・1分間・1秒間に進む距離として光日・光時・光分・光秒という単位も定義できる。1光日は25 902 068 371 200m、1光時は 1 079 252 848 800 m、1光分は 17 987 547 480 m、1光秒は 299 792 458 m となる。大まかな距離を表すのに1光年の12分の1の光月という単位も時折使われている[4][5]。ただし、光月は厳密な定義が存在しない。[6]
なお、地球からの距離が1光年の星を見る場合、見ている光はその星から1年前に発せられたものであるため、1年前のその星を見ていることになる。仮に、たった今その星が何らかの原因で消滅したとしても、地球からはその星の1年前の光しか見ることができないため、今後1年間は星がまだそこに存在しているように見える。
歴史的な値および不正確な値
1984年以前、国際天文学連合 (IAU) は1964年に定めた太陽年(ユリウス年とは異なる)と光速の実測値(定義値ではない)を天文定数体系に含めており、それを1968年から1983年まで使用していた[7]。サイモン・ニューカムは、J1900.0の平均太陽年 31 556 925.9747 暦表秒と光速度 299 792.5 km/s から1光年を 9.460 530×1015 m と計算した(光速度の有効数字7桁で丸めている)。この値がいくつかの最近の文献にも記載されているが[8][9][10]、おそらく1973年の有名な本[11]を参照したものと思われ、この文献は2000年まで改版されていなかった[12]。
他の高精度の値は一貫したIAU体系のみからでは導出できない。9.460 536 207×1015 m という不正確な値がいくつかの現代の文献に見られるが[13][14]、平均グレゴリオ年365.2425日(31 556 952秒)と光速度の定義(299 792 458 m/s)を使って計算したものであろう。9.460 528 405×1015 m という不正確な値もあるが[15][16]、これはJ1900.0の平均太陽年と光速度の定義を使って求めたものであろう。
事例
1光年以下の単位(光月など)は、星系内の天体に関してよく使われる。光年は比較的近い恒星間の距離、同じ渦巻銀河内や球状星団内の恒星間の距離を表すのに使われる。
キロ光年は "kly" と略記され、1000光年すなわち約306.6パーセクを表す。キロ光年単位の距離としては銀河の構造の寸法などがある。
メガ光年は "Mly" と略記され、100万光年すなわち約30万6600パーセクを表す。メガ光年単位の距離としては銀河と銀河の距離や銀河団の距離などがある。
ギガ光年は "Gly" と略記され、10億光年を表し、通常使われる最も大きな距離の単位の一つである。1ギガ光年は約3億660万パーセクになる。ギガ光年単位の距離としてはクエーサーやグレートウォールなどがある。
尺度 (ly) | 値 | 具体例 |
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10-9 | 40.4×10−9 ly | 太陽光が月の表面で反射して地球の地表に届くまでに1.2秒から1.3秒かかる。月表面と地球表面の距離は平均すると約376,300kmである。376,300 km ÷ 299,792.458 km/s(光速) ≈ 1.255 光秒となる。 |
10-6 | 15.8×10−6 ly | 1天文単位(太陽と地球の距離)。光が太陽から地球まで進むには、8.3分かかる。つまり、太陽から地球までの距離(1天文単位)は8.3光分である[17]。 |
10-3 | 3.2×10−3 ly | 地球から最も遠くにある宇宙探査機であるボイジャー1号は、2009年7月12日現在、地球から15.22光時の距離にあり[18]、次に遠いパイオニア10号は13.79光時の距離にある[19]。ボイジャー1号が現在の速度を維持するなら、1光年の距離まで行くには18,000年かかる計算になる。 |
100 | 1.6×100 ly | オールトの雲の直径は約2光年である。内側の境界は 50,000 AU、外側の境界は 100,000 AU と推定されている。 |
2.0×100 ly | 太陽が重力的に支配している領域(ヒル球)の最外縁までの距離。125,000 AU。これより先が真の恒星間空間である。 | |
4.22×100 ly | 太陽系から最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリは、太陽から4.22光年の距離にある[20][21]。 | |
20×100 ly | 海や平均気温など、生命が存在しうる環境がある可能性を持つグリーゼ581cは、地球から20光年の距離にある。 | |
103 | 26×103 ly | 銀河系の銀河核までの距離は約26キロ光年(26,000光年)である[22]。 |
100×103 ly | 銀河系の直径は約10万光年である。 | |
106 | 2.5×106 ly | アンドロメダ銀河までの距離は約2.5メガ光年(250万光年)である。 |
3.14×106 ly | さんかく座銀河 (M33) までの距離は約3.14メガ光年(314万光年)で、裸眼で確認できる最も遠い天体である。 | |
59×106 ly | 最も近い大銀河団であるおとめ座銀河団までの距離は約59メガ光年(5900万光年)である。 | |
150×106 – 250×106 ly | グレートウォールは150メガ光年(1億5千万光年)から250メガ光年(2億5千万光年)の距離にある(遠い方が最近の推定値)。 | |
109 | 1.2×109 ly | スローン・グレートウォール(グレートウォールとは別物)は約1ギガ光年(10億光年)の距離にあると推定されている。 |
46.5×109 ly | 地球から観測可能な宇宙の果てまでの共動距離は約46.5ギガ光年(465億光年)である。これは宇宙マイクロ波背景放射から得られる宇宙の年齢より大きい。詳しくは観測可能な宇宙#誤解を参照。 |
備考
日本の漫画やゲーム作品では、時間の単位と勘違いした誤用を用いたネタがみられる[23]。
脚注・出典
- ^ IAU Recommendations concerning Units
- ^ a b The IAU and astronomical units, International Astronomical Union 2008年7月5日閲覧。
- ^ Astronomical Constants (PDF) page K6 of the Astronomical Almanac.
- ^ Fujisawa, K.; Inoue, M.; Kobayashi, H.; Murata, Y.; Wajima, K.; Kameno, S.; Edwards, P. G.; Hirabayashi, H.; Morimoto, M. (2000), “Large Angle Bending of the Light-Month Jet in Centaurus A”, Publ. Astron. Soc. Jpn. 52 (6): 1021–26
- ^ Junor, W.; Biretta, J. A. (1994), “The Inner Light-Month of the M87 Jet”, in Zensus, J. Anton; Kellermann; Kenneth I., Compact Extragalactic Radio Sources, Proceedings of the NRAO workshop held at Socorro, New Mexico, February 11–12, 1994, Green Bank, WV: National Radio Astronomy Observatory (NRAO), p. 97
- ^ ユリウス暦では1か月は平均30.4375日であり、ユリウス年(365.25日)を12で割った値に等しい。ただグレゴリオ暦では30.436875日となるので、どちらの暦由来の値を使うかを指定しないかぎり「光月」は定義できない
- ^ P. Kenneth Seidelmann, ed., Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac (Mill Valey, California: University Science Books, 1992) 656. ISBN 0-935702-68-7
- ^ Sierra College, Basic Constants
- ^ Marc Sauvage, Table of astronomical constants
- ^ Robert A. Braeunig, Basic Constants
- ^ C. W. Allen, Astrophysical Quantities (third edition, London: Athlone, 1973) 16. ISBN 0-485-11150-0
- ^ Arthur N. Cox, ed., Allen's Astrophysical Quantities (fourth edition, New York: Springer-Valeg, 2000) 12. ISBN 0-387-98746-0
- ^ Nick Strobel, Astronomical Constants
- ^ KEKB Astronomical Constants
- ^ Thomas Szirtes, Applied dimensional analysis and modeling (New York: McGraw-Hill, 1997) 60.
- ^ Sun, Moon, and Earth: Light-year
- ^ IERS Conventions (2003), Chapter 1, Table 1-1.
- ^ NASA pressrelease (05-131) 24 May 2005: Voyager Mission Operations Status Report Week Ending March 9, 2007
- ^ Spacecraft escaping the Solar System
- ^ NASA: Cosmic Distance Scales - The Nearest Star
- ^ Proxima Centauri (Gliese 551), Encyclopedia of Astrobiology, Astronomy, and Spaceflight
- ^ F. Eisenhauer, et al., "A Geometric Determination of the Distance to the Galactic Center", Astrophysical Journal 597 (2003) L121-L124
- ^ 漫画では新声社刊『ゲーメストワールドVol5』66頁から70頁に掲載された漫画のキャラクターにこれを用いて頭の悪さを表現したり、ゲームボーイソフト『ポケットモンスター 赤・緑』のポケモントレーナーにこのネタをセリフに用いたキャラクターがいる事が確認できる。
関連項目
メートル(SI単位) | 天文単位 | 光年 | パーセク | |
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1 m | = 1 | ≈ 6.68459×10−12 | ≈ 1.05700×10−16 | ≈ 3.24078×10−17 |
1 au | ≈ 1.49598×1011 | = 1 | ≈ 1.58125×10−5 | ≈ 4.84814×10−6 |
1 ly | ≈ 9.46073×1015 | ≈ 6.32411×104 | = 1 | ≈ 3.06601×10−1 |
1 pc | ≈ 3.08568×1016 | ≈ 2.06265×105 | ≈ 3.26156 | = 1 |