仄暗い水の底から
『仄暗い水の底から』(ほのぐらいみずのそこから)は、鈴木光司のホラー短編集、およびその映画化作品。水と閉鎖空間をテーマとした7編の物語で構成され、そのうちの一編「浮遊する水」が映画化された。
2007年に同作品の一編『夢の島クルーズ』を原作とした『ドリーム・クルーズ』が鶴田法男監督で制作された。また同作品の一編「孤島」もジョージ・A・ロメロ監督により映画化される予定である。
収録作
プロローグ・エピローグ
三浦半島東端「観音崎」を散歩する老婆佳代と孫娘悠子の物語。「海に沈む森」につながるアイテムが登場し東京湾にまつわる物語のまとめ役となる。佳代はそのアイテムをその一家の元へ届けようとする。
浮遊する水
離婚調停中の母娘・淑美と郁子の物語。娘の郁子の親権を夫と争っている淑美は生活を立て直そうと、郁子と一緒に新しいマンションに引っ越す。大筋は映画版も同じであるが、河合美津子のバッグがハローキティのものとなり事件は母親の恐怖の妄想で終わり、マンションを後にしホテルに泊まる所で話が終了する。
孤島
教師の末広謙介は、恩師の佐々木と共に第六台場を目指す。彼は小中学校の同級生、阿相敏弘がそこに捨てた新興宗教に嵌った恋人の中沢ゆかりを追っていた。そこで彼が見たものは……。
漂流船
遠洋マグロ漁船第七若潮丸の乗組員、白石和男は、海で無人の小型クルーザーを発見する。高木船長の提案でクルーザーに乗り込んだ彼はかつての持ち主善国孝之の航海日誌を発見し彼の家族の娘の洋子が持ち込んだ目のような不気味な貝殻が原因だと悟る。
穴ぐら
粗暴なアナゴ猟師稲垣裕之は妻の奈々子を探していた。彼はおとなしい息子の克巳と痴呆の父の勝三、失語症の娘、春菜の家族を持つ。やがて、アナゴ漁の生簀で激情の口論の末自分が殺した妻の死体を発見。それを隠蔽しようとして自分も生簀に落ちてしまい閉じ込められる。
夢の島クルーズ
高校の同窓会で知り合った悪徳商法の牛島・美奈子夫妻のヨット「MINAKO」号に乗せられた青年榎吉正幸が彼らと体験する怪奇現象。やがて、ヨットは何かに絡め取られ、様子を見に行った牛島はキールにしがみつく男の子を見たと恐怖に怯えていた。
ウォーター・カラー
芝浦運河のビルにある劇団『海臨丸』の音効係、神谷隆一の物語。看板女優、菊地紀子とビル5階のメフィストで知り合った彼は、そのことで険悪な関係の劇団主催者兼演出家の清原健三の命令で水滴が落ちるメフィストの女子トイレへと調査に赴く。そこで彼を待つものとは……。
海に沈む森
1975年初冬、冒険を趣味とし家族を持つ杉山文彦が友人の榊原と後に「白岩洞」と名付けられる鍾乳洞で遭難し閉じ込められる物語。榊原の死体が狭い道を塞ぎ、閉じ込められた彼は水の出口を求めて脱出を試みる。20年後の長男武彦に父親の遺志が伝わる構造となる。
仄暗い水の底から(映画)
仄暗い水の底から | |
---|---|
監督 | 中田秀夫 |
脚本 |
中村義洋 鈴木謙一 |
原作 |
鈴木光司 『浮遊する水』 |
製作 | 一瀬隆重 |
出演者 |
黒木瞳 小日向文世 菅野莉央 水川あさみ |
音楽 | 川井憲次 |
主題歌 | スガシカオ「青空」 |
撮影 | 林淳一郎 |
編集 | 高橋信之 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2002年1月19日 |
上映時間 | 101分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
2002年に中田秀夫監督で映画化され、2003年のジェラルメ国際ファンタスティカ映画祭でグランプリを受賞した。原作は、同作品の一編『浮遊する水』。また、2005年にはハリウッド版のリメイク『ダーク・ウォーター』も制作された。
あらすじ
離婚調停中であり、娘の郁子の親権を夫邦夫と争っている淑美は生活を立て直そうと、郁子と一緒に新しいマンションに引っ越す。しかし、そこは雨漏りが酷く、また彼女は何か不穏なものを感じていた。
ある日、淑美は屋上で子供用の赤いバッグ(mimikoバッグ)を見つけ、それがきっかけで郁子と同じ幼稚園に通っていた少女・河合美津子が2年前から行方不明になっているのを知る。
スタッフ
- 監督:中田秀夫
- プロデューサー:一瀬隆重
- 脚本:中村義洋・鈴木謙一
- 音楽:川井憲次
- 主題歌:青空(歌:スガシカオ)
- 製作:「仄暗い水の底から」製作委員会(角川書店、日本テレビ放送網、バップ、オフィスオーガスタ、オズ)
- 制作プロダクション:オズ
- 配給:東宝
キャスト
- 松原淑美:黒木瞳・碇由貴子(幼児期)
- 浜田邦夫:小日向文世
- 松原(浜田)郁子:菅野莉央(幼児期)・水川あさみ
- 河合美津子:小口美澪
- 弁護士・岸田:小木茂光
- 不動産屋・太田:徳井優
- 管理人・神谷:谷津勲
- 淑美の保母:浅野麻衣子
- 弁護士:吾羽七朗
- 男の調停委員:野村信次
- 女の調停委員:志水季里子
- 河野:諏訪太朗
- 佳代:原知佐子
- 喜代美:黒石えりか
- 玲子:大塚ちひろ
- 犬を連れた老姉妹:花原照子・安田洋子
- 幼稚園園長:品川徹
- 保母:畑中映里佳
キャッチコピー
- ずっとずっといっしょだよママ
- 原作:鈴木光司×監督:中田秀夫 リングのコンビが贈る魂を揺さぶるグランド・ホラー
映画版の変更点
原作が短編のため、大幅に変更される。
- 原作は母親の妄想に過ぎない河合美津子の亡霊が登場する。また、美津子の行方不明のビラが出ている。
- 美津子のバックがハローキティからmimikoバッグになる。拾って持ち帰る、何度捨てても戻ってくる描写が追加。
- 原作では僅かしか登場しない管理人が名前付きで登場し、夫や弁護士、不動産屋が登場。
- 10年後の世界が描写され、親権が父親になって成長した郁子が登場。
- マンションの河合家が登場し、水浸しの部屋で登場。1階から2階に変更される。
夢の島クルーズ(ドラマ)
1997年、人気作家の短編を映像化したドラマシリーズ『幻想ミッドナイト』の第一話としてテレビ朝日系で放送。
関連書籍
- 漫画 仄暗い水の底から(漫画:MEIMU)
- 映画原作の「浮遊する水」の他、「漂流船」「夢の島クルーズ」「海に沈む森」を収録。
- 都市伝説研究読本 仄暗い水の底から
角川書店刊行。