コンテンツにスキップ

ロリータ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。ChuispastonBot (会話 | 投稿記録) による 2012年3月7日 (水) 05:55個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (r2.7.1) (ロボットによる 追加: oc:Lolita)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ロリータ』(Lolita) はロシア生まれのアメリカ作家ウラジーミル・ナボコフ小説の題名。登場人物の美少女「ロリータ」を題材にしている。初版は1955年パリで出版された。

1940年に渡米したナボコフは教職のかたわら、この作品を1948年から書き始め、1953年には完成した。しかし、性的に倒錯した主題を扱っているため、アメリカでは5つの出版社から刊行を断られた。ナボコフの代理人はさまざまな出版社に足を運び本を読んでもらったのだが、各出版社の編集者は作品のテーマを見抜いてはいたようだが、そのあまりに難解な内容からか、これは読者には「ポルノ」にしかみえないという理由で出版を拒んだ。(ナボコフ自身はこの作品を喜劇だと言っている)。なお、ロリータはこれまでに何度か発禁処分を受けており、ニコラス・キャロライズなどが編集した「百禁書―聖書からロリータ、ライ麦畑でつかまえてまで」ではロリータに対する批判や発禁処分になった経緯などが書かれている。また、ナボコフ自身による評論「『ロリータ』 について」があり、この作品の本質を見てもらいたいというナボコフの考えや、作品の性的な部分についての自身の考えが書かれている。初版はポルノグラフィの出版社として有名なパリのオランピア・プレスから1955年に出版されたが、グレアム・グリーンらの紹介により読書界の注目の的となる。アメリカでは1958年に出版されベストセラーになった。

日本語版は、1959年大久保康雄訳(河出書房新社新潮文庫)が、2005年若島正による新訳(新潮社→新潮文庫)が出された。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


あらすじ

ヨーロッパからアメリカに亡命した中年大学教授である文学者ハンバート・ハンバートは、少年時代の死別した恋人アナベル・リーがいつまでも忘れられない。そのアナベルの面影を見出したあどけない12歳の少女のドロレス・ヘイズ(Dolores; 愛称ロリータLolita)に一目惚れをし、彼女に近づくために下心からその母親である未亡人結婚する。母親が不慮の事故で死ぬと、ハンバートはロリータを騙し、アメリカ中を逃亡する。しかし、ロリータはハンバートの理想の恋人となることを断固拒否し、時間と共に成長し始めるロリータに対し、ハンバートは衰え魅力を失いつつあった。ある日突然、ハンバードの目の前から姿を消したロリータ。その消息を追って、ハンバートは再び国中を探しまわる。3年後、ついに探し出すが、大人の女性となった彼女は若い男と結婚し、彼の子供を身ごもっていた。哀しみにくれるハンバートは彼女の失踪を手伝い、連れ出した男の素性を知り殺害する。後に逮捕され、獄中で病死。そして、ロリータも出産時に命を落とす。作品はハンバートが獄中書き残した「手記」という形式をとっている。

前思春期の少女にあらわれる性的な魅力を「ニンフェット」の倒錯した魅力と巧みに規定して、社会に衝撃と影響を残したこの作品は、全体の構成より細部(文体)へと関心が傾けられ、さまざまな引用や巧妙な言葉遊びに満ちている。冒頭の「Lolita, light of my life, fire in my loins.」から始まるLとFの音を重ねた文章は特に有名。作者の分身ともいえるハンバートによるメタファーを多用した独白調の文章は晦渋なことでも知られる。知的ではあるが屈折した自意識に満ちたハンバートにヨーロッパ旧世界の象徴を、成熟しつつも素朴なロリータにアメリカの象徴を読み取ることもできる。

関連する作品

  • The Enchanter:本書の着想ともいえる同作者の小品。 ISBN 0399132112
  • Lolita A Screenplay:キューブリック監督の映画化時に、作者が書き起こした脚本。 ISBN 0679772553
  • The Annotated Lolita:研究者Alfred Appel の注釈付き本 ISBN 0679727299ほか

類作の存在

『ロリータ』には原作があると言われ、ドイツの作家で後にナチスジャーナリストに転じたハインツ・フォン・リヒベルク1891年~1951年)の1916年の作品『Die verfluchte Gioconda.』の中に、Lolitaという少女の出てくる類似のテーマの作品がある。 このことはドイツの文芸批評家が発見し、2004年3月に各新聞や文芸誌で報じられた (FAZ.27.03.2004参照)。 ナボコフとリヒベルクは15年間を同じベルリンで過ごした同時代人。もっとも、文学的本質から言えば、両者は別の文学であるとされる。

映像化

これまで2度映画化されている。

その他の二次作品

オペラ

転用と派生

  • この作品に由来して「ロリータ・コンプレックス」と命名された「10代前半の女性に特別な感情を抱く」心理学用語が生まれた。本来は「ハンバート・コンプレックス」とするべきかもしれない[要出典]。日本においては、「ロリコン」(「ロリ」など共に略されることがある)と短縮されて使われる場合もあるが、心理学用語本来の意味である年上の男性に惹かれる少女という意味を離れて、幼女少女を性愛の対象とする男性を表す言葉として一般的に用いられる。また、ロリコンという言葉は、否定的なニュアンスで使われる場合もある。類義語に少女愛児童性愛ペドフィリア)があり、対義語に少年愛がある。しかし、ロリコンは必ずしも男性のみの持つ志向であるとは限らない(女性少女愛)。
  • 誘惑的な美少女や、実年齢より見た目が幼い女性を「ロリータ」と呼ぶことがある。しかしこの用例は前述のロリータ・コンプレックスの影響もあり日本においては一般的ではない。女性ジュニアタレントに対し「ロリータアイドル」や、ほしのあきの「ロリエロ隊長」など。ただし、「ロリータ(ロリィタ)少女」「ロリータさん」となると、ロリータ・ファッションを身に着けた少女という意味である可能性が高い。さらに少女性あるいは、幼女性を連想させるという面から、「ロリータボイス」、「ロリータ声優」などの使い方もされる。
  • ロリータが海外(特にフランス)においては社会全体の抱く少女のイメージ(少女らしさ)を指す言葉でもあることから、少女っぽい無邪気な言動で男性に対してコケティッシュに振舞うファム・ファタール的な女優モデルを小説「ロリータ」のロリータになぞらえて「フレンチ・ロリータ」と呼ぶ。日本語で言うところのアイドルに近く、露骨さのない知的なセックス・アピールを売りとする。前述のロリータアイドルとの違いは、実際の年齢が少女である必要はないという点である。
  • ロリータ・ファッション」、「ゴシック・アンド・ロリータ(ゴスロリ)」という独自のカテゴリーとなったファッション用語も生まれている。男性の性的嗜好としてのロリータと区別するために、ファッション用語としては「ロリィタ」表記を使うこともある。

出版

  • ウラジーミル・ナボコフ 著、大久保康雄 訳『ロリータ』〈新潮文庫〉。ISBN 4102105018  (旧版)
  • ウラジーミル・ナボコフ 著、若島正 訳『ロリータ』〈新潮文庫〉。ISBN 4102105026 
  • Vladimir Nabokov  ISBN 0679723161 (原著)

外部リンク

関連項目

ロリータ、およびロリータ的主題の芸術

ロリータから派生したさまざまな概念

類似の概念として

その他の関連項目

Template:Link FA Template:Link FA