コブハクチョウ

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コブハクチョウ
コブハクチョウ Cygnus olor
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
: ハクチョウ属 Cygnus
: コブハクチョウ C. olor
学名
Cygnus olor
Gmelin, 1789
和名
コブハクチョウ
英名
Mute Swan
くちばし付け根にコブ状の黒い裸出部がある
コブハクチョウの巣
ポーリッシュ個体(右)

コブハクチョウ(瘤白鳥、学名:Cygnus olor)は、カモ目カモ科ハクチョウ属に分類される鳥類で、白鳥の一種。日本には本来分布していない外来種

分布

ヨーロッパ中央アジアを中心に生息する。繁殖のため渡りをする。中国東部や朝鮮半島で越冬するものもあり、1933年には八丈島迷鳥としての記録がある。福岡市中央区の大濠公園にもいる。

日本では北海道から九州まで各地で記録があり、定着している地域もある。他にも北アメリカ東部、南アフリカオーストラリアニュージーランドなど世界各地に移入されている[1]

形態

全長約150cm。雌雄同色であり、全身白色の大型の水鳥である。扁平なくちばしはオレンジ色。くちばし上部の付け根に黒いコブのような裸出部があり、名前の由来になっている。ヒナの羽毛(幼綿羽とその後に生える幼羽)は灰色のことが多いが、白色の個体もいる。この羽色の変異は、一部に信じられているように性別による羽色の差異ではなく、遺伝的多型で、雌雄にかかわらず、同じ親から白色型も灰色型も生まれる可能性がある。原産地のヨーロッパでは、東に行くほど白色型の頻度が高くなることが知られ、このため白色型をポーリッシュ(Polish varietyポーランドの色変わり)と呼ぶ[2]

生態

マコモなどの植物を食べる。餌付けされている個体もいる。

水辺にヨシや水草を積み重ねて大きな巣を作る。産卵数は5~7個程度で、メスが抱卵する。

外来種問題

日本では1952年に飼い鳥として、ヨーロッパから移入したものが公園動物園などで飼育された。しかし、飼育個体の一部が野生化し、各地に定着している。1975年に北海道の大沼国定公園につがいが観賞用に導入され、生まれたひなのうち7羽が1977年からウトナイ湖に定着し、1978年から繁殖を始めた[3]。ウトナイ湖の個体は茨城県霞ヶ浦に渡り越冬していることが確認されている[1]鹿児島県藺牟田池では約50羽、山梨県山中湖では約20羽が周年生息している[1]

オーストラリアでは、1886年から1920年代までの間に移入された。現在でも、多数の繁殖コロニーが存在している[4]

現在のところ、重大な悪影響は報告されていない。しかし、他の鳥類や植物に影響を与える可能性が指摘されており、例えばオオヒシクイとの生息地をめぐる競争が挙げられる[5]。営巣期には強い縄張り行動をみせ、ウトナイ湖では1988年からアカエリカイツブリが繁殖期に見られなくなった原因に、コブハクチョウの増加による影響が懸念されている[3]。霞ヶ浦ではレンコンや在来植生を食害することが問題になりつつある[3]愛知県は「自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例」によって本種の放逐を禁止している[6]

Status

LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))

[7]

人間との関係

デンマーク国鳥

ハクチョウの中でも優雅な姿が好まれ、古代ローマの頃から飼育が始まっていた。中世では「王の鳥」と讃えられた。西洋では古来より「ハクチョウが鳴き声を上げるのは死期が迫った時だけ」と言う俗信があり、本種はそれに因んでMute(無音)と名付けられた。最も実際には全く啼かないと言う事は無く、必要に応じて様々な鳴き声を上げる事が知られている。

ある程度の距離まで人間が近づくと鳥に「攻撃」されることがあるが、このような鳥の行動は、育雛中の親鳥によることが間間ある。コブハクチョウも例外ではなく、親鳥はを守るために人間に「攻撃」することがあるが、このような行動は親鳥の立場から見れば雛を守るための「防衛」である。ハクチョウは巨体を飛行させるために翼の力が大変に強い上に水辺をテリトリーとするため、翼で殴って昏倒させた人間の頭を上から水中に抑え付けて殺害してしまった例すら記録されている[8]。コブハクチョウの大きさでこのような行動を受けた人間は驚くため、二次的な被害が発生することもある。北海道ウトナイ湖では地元のバードウォッチャーがコブハクチョウから「攻撃」されて骨折する事故が発生したことがある[9]

参考文献

  • 松田道生『カラスはなぜ東京が好きなのか』平凡社、2006年10月18日 初版第1刷発行。ISBN 978-4582527315 

注釈

  1. ^ a b c 山岸哲(監修)(財)山階鳥類研究所(編著)『保全鳥類学』京都大学学術出版会、2007年3月25日。ISBN 978-4-87698-703-0 
  2. ^ Munro, R. E., Smith, L. T., and Kupa, J. J. 1968. The genetic basis of color differences observed in the Mute Swan (Cygnus olor). Auk, 85: 504-505.
  3. ^ a b c 北海道ブルーリスト A3 コブハクチョウ
  4. ^ Michael Morcombe,Field Guide to Australian Birds, Steve Panish Publishing, 2004, ISBN 9781740215596
  5. ^ 国立環境研究所 侵入生物DB コブハクチョウ
  6. ^ 報道発表資料 「生態系に著しく悪影響を及ぼすおそれのある移入種を決定しました」2011年3月30日発表
  7. ^ BirdLife International (2004). "Cygnus olor". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2006. International Union for Conservation of Nature. 09 May 2006閲覧 {{cite web}}: |access-date=の日付が不正です。 (説明) Database entry includes justification for why this species is of least concern
  8. ^ 1938年の英国で幼児が、1972年の米国で成人男性が殺されている
  9. ^ カラスはなぜ東京が好きなのか』(p172)より。