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オパール

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オパール(蛋白石)
オパール
オパール(オーストラリア産)
分類 酸化鉱物(ケイ酸鉱物)
シュツルンツ分類 4.DA.10
Dana Classification 75.2.1.1
化学式 SiO2・nH2O
結晶系 非晶質
へき開 なし
モース硬度 6.5
光沢 ガラス光沢
白色琥珀色虹色の光を放つものもある)
条痕 白色
比重 2.1
文献 [1][2][3]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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オパール[4] (opal) は、鉱物酸化鉱物)の一種。和名は蛋白石(たんぱくせき)。

西洋語のオパールを指す語は、ギリシア語 opallios、または、そのラテン語opalus に起源を持つ。これらの語は、サンスクリット語で(宝)石を意味する upālā[s] という語との関係が指摘されている。

産出地

主な産地はオーストラリアメキシコなど。

性質・特徴

化学組成は SiO2nH2Oで、成分中に10%ぐらいまでの水分を含む。モース硬度 5 - 6。比重 1.9 - 2.2。劈開性なし。

潜晶質(隠微晶質)であり、肉眼では非晶質のようにみえる。ブドウ状または鍾乳状の集合体や小球状のものとして産出される。

透明なものから、半透明・不透明なものまである。ガラス光沢樹脂光沢をもつものは宝石として扱われ、無色のものから乳白色褐色黄色緑色青色と様々なのものが存在する。まれに遊色効果を持つものも存在する。

成因

主に火成岩または堆積岩のすき間に、ケイ酸分を含んだ熱水が充填することで含水ケイ酸鉱物としてできる。そのほかにも、埋没した貝殻樹木などがケイ酸分と交代することで生成されたり、温泉沈殿物として生成されるなど、各種の産状がある。特に、樹木の化石を交代したものは珪化木と呼ばれる。オーストラリアでは、恐竜哺乳類などの化石アパタイトからケイ酸分に入れ替わり、オパール化して発掘されたこともある。

なお、微化石の一種にプラントオパールと呼ばれるものがあるが、これは植物が生きているうちに組織内に形成した非晶質のケイ酸分であり、風化しにくいため、年代当時の地層中にある植物を同定することにも用いられる。

成分・種類

遊色効果をもつオパールをプレシャス・オパール (precious opal) といい、特に珍重される。また、地色によってブラック・オパール黒蛋白石black opal)、ファイアー・オパール火蛋白石fire opal)と区別される。ファイアー・オパールのファイアーとはを意味し、play of color または playing fire ともいい、遊色効果を意味する。また、遊色効果が不十分なものは普通蛋白石 (common opal)、水分が蒸発したものを透蛋白石 (hydrophane) という。

堆積岩中に埋没した樹木の動物遺骸と交代したものがあり、樹と交代したものを木蛋白石 (wood opal) という。研磨するときれいな木目がでることから珍重されている。

玉滴石

岩石の表面に球状に付着して産出するものを、玉滴石(ぎょくてきせき、hyalite)という。紫外線を照射すると蛍光を発するものがある。

用途・加工法

色の美しいものは宝石として扱われ、10月誕生石とされている。特に日本で好まれている宝石で、乳白色の地に虹色の輝き(遊色効果)をもつものは中でも人気が高く、「虹色石」とも呼ばれる。

カボション・カットでカットされ、ブローチや各種の装飾品に加工されている。

オパールは宝石の中で唯一水分を含むため、宝石店などでは保湿のため、水を入れた瓶やグラスを置くところもある。水分がなくなると濁ってヒビが入ることがあるためである。オパールの原石はカットされる前に充分天日で乾燥させなければならない。乾燥に耐えられたオパールだけをカットし指輪などの宝飾品に加工される。このようなオパールは普通に取り扱っている限りは特に問題がない。

サイド・ストーリー

大プリニウスは、『博物誌』第37巻で、オパールについて言及している。宮沢賢治は、彼の作品『貝の火』、『楢ノ木大学士の野宿』でオパールを取り上げて、その輝きについて描写している。

石言葉は希望、無邪気、潔白。

ウォーターオパール

ウォーターオパールとして市場に出回っているメキシコ産オパールがある。これは地色が無色透明に近いと確認されたメキシコオパールである。ウォーターオパールは地色が無色であるため、斑の弱いものは宝飾品に加工すると石そのものの存在感が薄くなる場合が多い。裸石(ルース)の状態ではそのようなことは気にならないため、裸石(ルース)収集家向きのオパールと言える。極上のウォーターオパールは文字通り水滴のように透明感のあるオパール石である。白い紙の上に置くとオパール石自体が極めて透明であたかも水滴を垂らしたようにみえるがこれを抜けの良いオパールまたは白メキと呼んでいる。ウォーターオパールの高品質とされる石はやはりファイアーすなわち斑の豊かな遊色効果のすぐれたものが珍重され特に赤、橙、黄、青、緑のピンファイアーまたはジュビア (lluvia) が出る石は極めて高価である。日本国内ではファイアーオパールよりも人気のあるオパール石である。

ファイアーオパール

ファイアーオパールのファイアー (fire) とは、遊色 (play of color)、いわゆる斑を意味する言葉で、playing fire(チラチラと揺れる炎)とも呼ぶ。したがって無遊色オパールはたとえ地色が赤橙系の色であれファイアーオパールとは定義できない。しかしながら市場では赤橙系の無遊色オパールがファイアーオパールと称され販売されている。この背景について解説する。80年代にこの無遊色の赤橙系のオパールがファセットカットされてドイツの市場に出現した。その時のドイツ語商品名は Feueropal すなわちファイアーオパールである。この無遊色の赤橙系のオパールは現地メキシコではvidrio rojo = red glass、単に赤ガラスと呼んでいる。ドイツ人バイヤーも現地では赤ガラスと呼びファイアーオパールとは呼ばない。赤ガラスはほとんどすべてのオパール鉱山で産出し以前は大変安価なオパールであったがヨーロッパ市場での需要拡大により最近ではインドのバイヤーも参入している。日本市場でも赤い無遊色オパールがファイアーオパールとして販売されているがこのネーミングには宝石業界の恣意性がかなり反映されているとみてよい。現地メキシコでは本来の遊色のあるファイアーオパールを opalo de fuego、すなわち炎 (fuego) のオパールと呼んでいる。オパール自体の客観的な属性を的確に反映したネーミングといえる。

メキシコオパール

メキシコでは1200年ごろアステカ族により宗教儀式における装飾に使用されて ハミングバードの宝石 と呼ばれていた。この小鳥の羽毛がオパールの虹色の遊色を連想させるからである。メキシコオパールの鉱山の周辺ではハミングバードの飛翔がよく観察される。特に地色が赤、橙またはオレンジ色のメキシコオパールで遊色効果の優れたものをファイアーオパールと呼んでいる。16世紀にアステカ族の神殿で発見されたオパールのひとつはアステカ太陽神の名で世界的にも知られるところとなり1881年にシカゴの自然博物館に売却され保存されている。メキシコのハリスコ州は主要なオパールの産出地のひとつである。鉱脈はケレタロ州のTequisquiapan, Colon, ハリスコ州の Magdalena、El Cobano, Hostotipaquillo, Tequila, Antonio escobedo, San Cristobal de la Barranca にあり60年代の初期にオパールの採掘がはじめられた。ハリスコ州で行われた調査によると La Quemada, San Andres, San Simon, El Cobano,Magdalenaの5地区が形成する3000km²の長方形の地域にオパールの鉱脈がある。マグダレナ地区が他の地域に比較して著名なのは産出されるオパールの色の階調が変化に富んでいるということである。赤、青、オレンジ、緑の色調がすべてそろっているのである。ここで最も希少な石はopalo negro(black)であるが,オーストラリアのブラックオパールと決定的に違うのはopalo negro (現地でazabacheと呼称)はまったく透明であるということである。オパールは純粋性、透明性、色調、遊色、形状という多様な品質に分けられる。より優れた遊色と透明性と色調をもつオパールが高品質であることは言うを待たない。98種にランクづけられるとまで言われているほど多様である。オパールは光の入射角により色調と色の階調の幅が大きく変わる宝石のひとつである。オパールの重要な性質のひとつは熱による乾燥またはカットをされるときの激しい振動によりひきおこされる内部のミクロな断層またはcraquelacionである。水分をあたえるともとにもどるが1日から8日の間に再び同じ変質をこうむるのである。オパールはあたかも指紋のような石である:世界に同じ石は存在しないからである。

脚注

  1. ^ 国立天文台編『理科年表 平成20年』丸善、2007年、646頁。ISBN 978-4-621-07902-7 
  2. ^ Opal (英語), MinDat.org, 2011年12月13日閲覧 (英語)
  3. ^ Opal (英語), WebMineral.com, 2011年12月13日閲覧 (英語)
  4. ^ 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年、312頁。ISBN 4-8181-8401-2http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 

参考文献

関連項目

外部リンク