Sempron

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Sempron
Sempron 2800+ (Socket A, Thoroughbred) 第一世代。この画像はGeode NXを不正改造したリマーク品で、ダイ自体の設計は正規品と同一だが外側のブリッジ部分の配線が異なり、「Sempron」表記のフォントが正規品と比べてやや不格好である。
生産時期 2004年7月から
生産者 AMD
CPU周波数 1.4 GHz から 2.7 GHz
FSB周波数 166 MHz から 200 MHz
HyperTransport帯域 1600 MT/s から 3200 MT/s
プロセスルール 130 nm から 45 nm
マイクロアーキテクチャ K7、K8、K10
命令セット x86, AMD64
コア数 1または2
ソケット Socket A
Socket 754
Socket 939
Socket AM2
Socket AM3
Socket S1
前世代プロセッサ Duron(K7)
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Sempron(センプロン)は、AMDから発売された、低価格(エントリー、ローエンド、廉価)パーソナルコンピューター向けのマイクロプロセッサシリーズの名称である。

マーケティングポジション的にはDuronシリーズの後継に当たり、Athlon XPベースのものとAthlon 64ベースのものとAthlon II X2ベースのものが、モバイル用には更にTurion 64ベースのものがそれぞれ存在する。Athlon XPベースはSocket Aに、Athlon 64ベースはSocket 754Socket 939Socket AM2に、Athlon II X2ベースはSocket AM3に、Turion 64ベースはSocket S1にそれぞれ対応する。

概要[編集]

AMDは、かつてローエンド向けCPUであるDuronシリーズを送り出していたが、その後はコンシューマ向け最上位製品のAthlon XPハイエンドからローエンドまでをカバーさせていた。一方、ライバル企業インテルは、ローエンド市場において確立させた専用のブランドCeleronシリーズを依然として維持しており、ハイエンドからメインストリーム向けブランドであるPentium 4シリーズのCPU性能を引き下げた製品をCeleronシリーズとして発売させていた。インテルのローエンドブランドにはローエンドブランドを競合させることが得策であると判断したAMDは、新たな低価格(エントリー、ローエンド、廉価)パーソナルコンピューター向けCPUブランドを再び市場に投入した。それがSempronシリーズである。

21世紀に入る頃までは、主にCPUの動作クロック数値を上げることが即ちCPUさらにはパソコンの性能の向上に直接つながったため、AMD・インテルの両社はクロック向上に激しくしのぎを削っており、またその認識は一般消費者にも浸透していた。インテルが2000年に投入したPentium 4シリーズは、容易に高クロックで動作する製品を開発できるNetBurstマイクロアーキテクチャを採用していた。一方のAMDは、動作クロックを低く保ちながら高い性能を実現したが、動作クロックについての世間一般の認識が従来のままの状況のもとではインテルに対し不利な戦いを強いられていたため、比較的低い動作クロックのCPUでもPentium 4と同等の性能を持つことをアピールすることが可能なモデルナンバーを考案し、Athlon XPという新たなブランド創設と併せて導入を行った。

Athlon XPのモデルナンバーは性能的に相当するPentium 4の動作クロック数に調整されていた。しかし、インテルにはそれとは別にローエンド向けのCPUであるCeleronがあった。CeleronはPentium 4に細工を加えることで性能を抑えた低価格製品であり、Pentium 4以上に性能の割りに動作クロックが高く、一般消費者の目には価格訴求力も高く映った。AMDがAthlon XPのモデルナンバー一本でこれに対抗するのは難しくなっていた。

そこで、Athlon XPのモデルナンバーとは別に対Celeron用に調整したモデルナンバーを導入することにし、それまでの製品シリーズとは不連続である新たなブランド「Sempron」を新設、発表した。CeleronやSempronのローエンド市場向けPCでは、ビジネスソフトなどが中心でマルチメディア処理を重視しない。マルチメディア処理は当時のAMDのCPUでは不得意としていた分野であったが、モデルナンバーを決定する評価から足を引っ張っているマルチメディア処理を外せば、その分高いモデルナンバーになる。性能の割りに動作クロックの高いCeleronに対応するようにして、Sempronのモデルナンバーも性能の割りに高くなるように調整されている。Athlon XPのモデルナンバーはPentium 4の動作クロックをターゲットしているが、初期のSempronは、Celeron Dの動作クロックをターゲットとして設定されていることなどが代表例である。

従って、モデルナンバーの表記方法はAthlon XPのそれと全く同じであることから比較できそうでありながら、実は比較できない2系統のモデルナンバーが登場することとなった。モデルナンバーは対抗するインテルのCPUとの異種間性能比較を目的として創設したものでありながら、Sempronブランドの創設により同じAMDのAthlon XPという異種との比較では参考にならないという新たな混乱を生んだ。

法人向けパソコンに搭載する場合、パーソナルコンピューター企業によっては、筐体に貼り付けるステッカーには、Sempronのステッカーを貼り付けず、Business Classと明記されたステッカーを貼り付けていた。なお、コンシューマー向けパーソナルコンピューターの場合はDuron同様パーソナルコンピューター企業の判断や商品価格を下げるためなどの理由であえて筐体に貼り付けずそのまま出荷することもあった。

歴史[編集]

製品[編集]

デスクトップ用[編集]

Socket A 版[編集]

3000+ (SocketA, Barton)

Socket A用のSempronは、Athlon XPをベースとした廉価製品。大半の製品が非公式にSMPをサポートする。

モデルナンバー クロック FSB L2キャッシュ
2200+ 1.500 GHz 333 MHz 256 KB
2300+ 1.583 GHz
2400+ 1.667 GHz
2500+ 1.750 GHz
2600+ 1.833 GHz
2800+ 2.000 GHz
3000+ 512 KB
3200+ 2.200 GHz 400 MHz

Socket 754 版[編集]

2800+ (Socket754)
Paris (130 nm SOI)
  • ステッピング: CG
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 256 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, NX bit
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • 電圧: 1.4 V
  • TDP: 62 W
モデルナンバー クロック L2キャッシュ リリース日
3000+ 1.8 GHz 256 KB 2005年2月
3100+
Palermo (90 nm SOI)
  • ステッピング: D0, E3, E6
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 128 KiB または 256 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, NX bit, SSE3 (E3 と E6 ステッピング), AMD64 (E6 ステッピング), Cool'n'Quiet (3000+ 以上)
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • 電圧: 1.4 V
  • TDP: 62 W
  • リリース日: 2005年2月
モデルナンバー クロック L2キャッシュ AMD64
2500+ 1.4 GHz 256 KB 全製品が対応
2600+ 1.6 GHz 128 KB E6 ステッピング
2800+ 256 KB
3000+ 1.8 GHz 128 KB
3100+ 256 KB
3300+ 2.0 GHz 128 KB
3400+ 256 KB 全製品が対応

Socket 939 版[編集]

OEM向けに出荷された。2006年3月より、一部でバルク品の販売もされた。

Palermo (90 nm SOI)
  • ステッピング: E3, E6
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 128 KiB または 256 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, NX bit, SSE3, AMD64 (E6 ステッピング), Cool'n'Quiet
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • 電圧: 1.35 V, 1.4 V
  • TDP: 62W
  • リリース日: 2005年10月
モデルナンバー クロック L2キャッシュ AMD64
3000+ 1.8 GHz 128 KB E6 ステッピング
3200+ 256 KB
3400+ 2.0 GHz 128 KB
3500+ 256 KB 全製品が対応

Socket AM2 版[編集]

3400+ (Socket AM2)
Manila (90 nm SOI)
  • ステッピング: F2
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 128 KiB または 256 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, NX bit, SSE3, AMD64, Cool'n'Quiet (3000+ 以上)
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • 電圧: 1.20 V, 1.25 V
  • リリース日: 2006年5月
TDP 62W版
モデルナンバー クロック L2キャッシュ
3800+ 2.2 GHz 256 KB
3600+ 2.0 GHz
3500+ 128 KB
3400+ 1.8 GHz 256 KB
3200+ 128 KB
3000+ 1.6 GHz 256 KB
2800+ 128 KB
TDP 35W版
モデルナンバー クロック L2キャッシュ
3500+ 2.0 GHz 128 KB
3400+ 1.8 GHz 256 KB
3200+ 128 KB
3000+ 1.6 GHz 256 KB
Sparta (65 nm SOI)
  • ステッピング: G1, G2
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 256 KiB または 512 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, NX bit, SSE3, AMD64, Cool'n'Quiet
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • TDP: 45 W
  • リリース日: 2007年8月
モデルナンバー クロック L2キャッシュ
LE-1300 2.3 GHz 512 KB
LE-1250 2.2 GHz
LE-1200 2.1 GHz
LE-1150 2.0 GHz 256 KB
LE-1100 1.9 GHz
Brisbane-256K (65 nm SOI)

BrisbaneコアのAthlon X2ベース。

  • デュアルコア
  • ステッピング: G1, G2
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 256 KiB または 512 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, SSE3, NX bit, AMD64, Cool'n'Quiet
  • HyperTransport: 800 MHz (1600 MT/s)
  • TDP: 65 W
  • リリース日: 2008年3月, 2008年4月 (2300)
モデルナンバー クロック L2キャッシュ
X2 2300 2.2 GHz 256 KB * 2
X2 2200 2.0 GHz
X2 2100 1.8 GHz

Socket AM3 版[編集]

Sargas (45 nm SOI)

RegorコアのAthlon IIがベース。

  • シングルコア
  • ステッピング: BL-C2
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 1024 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, SSE3, SSE4A, NX bit, AMD64, Cool'n'Quiet, AMD-V
  • HyperTransport: 1600 MHz (3200 MT/s)
  • 電圧: 0.85 V - 1.35 V
  • 消費電力: 45 W
  • リリース日: 2009年7月
モデルナンバー クロック L2キャッシュ TDP リリース日
140 2.7 GHz 1MB 45W 2009年7月
145 2.8 GHz
150 2.9 GHz
Regor (45 nm SOI)

RegorコアのAthlon IIがベース。

  • デュアルコア
  • ステッピング:
  • L1 キャッシュ: 64 +64 KiB (データ + 命令)
  • L2 キャッシュ: 1024 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, SSE3, SSE4A, NX bit, AMD64, Cool'n'Quiet, AMD-V
  • HyperTransport: 1600 MHz (3200 MT/s)
  • 電圧:
  • 消費電力: 45 W
  • リリース日:
モデルナンバー クロック L2キャッシュ TDP リリース日
190 2.5 GHz 512 KiB *2 45W

モバイルSempron[編集]

低電圧版モバイルSempron 2600+

モバイルSempronは、AMD社のノートパソコン向けローエンドCPU製品シリーズである。

発売初日からK7K8 という二世代のアーキテクチャにまたがって展開されていたデスクトップパソコン向けSempronとは異なり、モバイルSempronにはK7ベースの製品は存在せず、したがってモバイルAthlon 64/Turion 64をベースとしたものである。 Socket 754に対応するデスクトップ向け製品と異なりヒートスプレッダを搭載せず、省電力機能としてPowerNow!を搭載する。 より熱設計電力(TDP)を抑えた低電力モバイルSempronも存在する。

Socket S1に対応したモバイルSempronはTurion 64 X2/Athlon 64 X2 Dual-Core for Notebooksをベースにシングルコア仕様に再設計し、L2キャッシュが512KBへ変更となり、拡張命令セットSSE3へも対応している他に標準でPowerNow!やAMD64へも対応している。また、2009年以降よりOEM向け専用としてLionコアのTurion X2をベースとしたSempron X2 Dual-Core for Notebooksが出荷された。このデュアルコア版はLionコアのTurion X2やAthlon X2 Dual-Core for Notebooksに対しL2キャッシュが半減されており、LionコアのAthlon X2 Dual-Core for Notebooks同様、AMD-Vが省略されている(Sempron X2 Dual-Core for Notebooksの具体的な詳細はTurion 64 X2の項を参照)。

Socket S1 版

Keene (90 nm SOI)
  • L1キャッシュ: 64 + 64 KiB (データ + 命令)
  • L2キャッシュ: 256 or 512 KiB
  • MMX, 3DNow!, SSE, SSE2, SSE3, AMD64, Cool'n'Quiet, NX bit
  • DDR2 メモリコントローラ
  • HyperTransport:800 MHz
    • 256 KiB L2キャッシュ (Sempron 2100+, 3400+)
    • 512 KiB L2キャッシュ (Sempron 3200+, 3500+, 3600+)
  • リリース日:2006年5月
Lion(ライオン)

65nm SOIで製造されるLionコアベースのシングルコアSempron。 MMX, Extended 3DNow!, SSE, SSE2, SSE3, AMD64, PowerNow!, NX bitに対応する。

モデルナンバー クロック L2キャッシュ HT Socket TDP
SI-42 2.1 GHz 512 KB 1800 MHz S1 25 W
SI-40 2.0 GHz

Ultrathin Notebooks 向け Sempron[編集]

Yukonプラットフォームと共に発表された、シングルコアの組み込み/ノートブック向け製品。Athlon Neoの廉価版と見られている。AMD M690Eチップセットと組み合わせて利用する。詳細はAthlon Neoの項にある。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]