Athlon X4

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Athlon X4
AMD Athlon X4-860K
生産時期 2013から
販売者 AMD
設計者 AMD
CPU周波数 3.10 GHz から 4.20 GHz
プロセスルール 32nm から 28nm
マイクロアーキテクチャ Piledriver, Steamroller, Excavator
命令セット AMD64/x86-64
拡張命令 MMX(+), SSE1, 2, 3, 3s, 4.1, 4.2, 4a, AES, CLMUL, AVX, AVX2, XOP, FMA3, FMA4, F16C, BMI1, ABM, TBM
コア数 4コア/4スレッド
ソケット Socket FM2
Socket FM2+
Socket AM4
コードネーム Richland, Kaveri, Godavari, Carrizo, Bristol Ridge
前世代プロセッサ Athlon X2
次世代プロセッサ Athlon Pro
トランジスタ 13億トランジスタ~
L1キャッシュ 64~128KB ※データ用/128~192KB ※命令用
L2キャッシュ 1~4MB
L3キャッシュ なし
L4キャッシュ なし
GPU 無効化
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Athlon X4(アスロン エックスフォー)とは、AMDが2013年頃から2017年頃にかけて発売したx86-64アーキテクチャのローエンドPC向けマイクロプロセッサである。

概要[編集]

Athlon X4とはAMDが2013年頃に発売したクアッドコアCPU及びそのシリーズのこと。

Athlon X2の後継製品となるもので、4つの物理コアを併せ持ち、Athlon X2に比べプロセスルールも大きく縮小した。また、プロセスルールの縮小に伴う回路面積の縮小により搭載できるトランジスタの数が増加しており、Athlon X4 750ではダイ内に組み込まれたトランジスタ数が13億個であったのに対し、同モデル860Kではトランジスタ数が約24億個と2倍近く増加している[1]マイクロアーキテクチャPiledriverは、前世代のアーキテクチャであるBulldozerに比べ、1クロック当たりの効率改善の他、消費電力の改善、演算のスケジューリングの改善などの改良がなされている。

Athlon X4は当時、Intel製ローエンド向けシリーズであるCeleronPentiumへの対抗製品として発表されたもので、Intel製Core iシリーズへの対抗製品であるFXシリーズとは非対称に、低消費電力そしてそれに伴う低発熱さが特徴的である。また、安価ではあるが製品によってはオーバークロックが可能なものもあり、汎用性の高いCPUであるといえる。特にKaveriシリーズからはPCIe 3.0、メモリのデュアルチャネルに対応し、のちには対応メモリ周波数範囲が1866MHzから2400MHzにまで拡大している[2][3]

また、同社製A-Seriesプロセッサ(1)と比較して、内蔵グラフィックの有無がみられる。Athlon X4のみならず、Athlonシリーズの全般(2)は内蔵グラフィックを含まないため、使用する場合は別途グラフィックボードを取り付ける必要がある。

※(1) APU , (2) Athlon X4の後継製品となるZenアーキテクチャを搭載したAthlon Proは内蔵グラフィックを含む場合がある。

世代ごとのAthlon X4の製品一覧[編集]

<Code Name / Release Year>

Richland (2013)[編集]

  • リビジョン: RL-A1 , TN-A1
  • マイクロアーキテクチャ: Piledriver
  • 製造プロセスルール: 32nm
  • コア数/スレッド数: 4/4
  • L1キャッシュサイズ: 192KB
  • L2キャッシュサイズ: 2MB×2
  • 対応ソケット: FM2
  • 内蔵GPUの有無: なし
  • 対応メモリ周波数: 1866MHz
  • TDP: 65W-100W

  [モデル名]  /  最低動作周波数及びターボ速度[低電力モードは無視した値である]

  1. Athlon X4 750 / 3.10GHz~3.90GHz
  2. Athlon X4 750K / 3.40GHz~4.0GHz
  3. Athlon X4 760K / 3.80GHz~4.10GHz ※TDP100W

Kaveri (2014)[編集]

PCIe 3.0正式サポート、DDR3デュアルチャネル対応、対応メモリ周波数範囲の拡大(1866MHz→2133MHz)、プロセスルール縮小(32nm→28nm)、FM2+ソケット対応

  • リビジョン: KV-A1
  • マイクロアーキテクチャ: Steamroller
  • 製造プロセスルール: 28nm
  • コア数/スレッド数: 4/4
  • L1キャッシュサイズ: 256KB
  • L2キャッシュサイズ: 2MB×2
  • 対応ソケット: FM2+
  • 内蔵GPUの有無: なし
  • 対応メモリ周波数: 2133MHz
  • TDP: 65W-95W

  [モデル名]  /  最低動作周波数及びターボ速度

  1. Athlon X4 830 / 3.0GHz~3.40GHz
  2. Athlon X4 840 / 3.10GHz~3.80GHz
  3. Athlon X4 860K / 3.70GHz~4.0GHz ※TDP95W

Godavari(2015)[編集]

Kaveri世代よりセキュリティ面での機能強化

  • リビジョン: A1
  • マイクロアーキテクチャ: Steamroller
  • 製造プロセスルール: 28nm
  • コア数/スレッド数: 4/4
  • L1キャッシュサイズ: 256KB
  • L2キャッシュサイズ: 2MB×2
  • 対応ソケット: FM2+
  • 内蔵GPUの有無: なし
  • 対応メモリ周波数: 2133MHz
  • TDP: 95W

  [モデル名]  /  最低動作周波数及びターボ速度

  1. Athlon X4 870K / 3.90GHz~4.10GHz
  2. Athlon X4 880K / 4.0GHz~4.20GHz

Carrizo (2016)[編集]

  • リビジョン: 不明
  • マイクロアーキテクチャ: Excavator
  • 製造プロセスルール: 28nm
  • コア数/スレッド数: 4/4
  • L1キャッシュサイズ: 320KB
  • L2キャッシュサイズ: 2MB
  • 対応ソケット: FM2+
  • 内蔵GPUの有無: なし
  • 対応メモリ周波数: 2133MHz
  • TDP: 65W

  [モデル名]  /  最低動作周波数及びターボ速度

  1. Athlon X4 835 / 3.10GHz [ターボブーストなし]
  2. Athlon X4 845 / 3.50GHz~3.80GHz

Bristol Ridge (2017)[編集]

PCIe 3.0正式サポート、DDR4対応及びDDR4デュアルチャネル対応、対応メモリ周波数範囲の拡大(2133MHz→2400MHz)、AM4ソケット対応

  • リビジョン: A1
  • マイクロアーキテクチャ: Excavator
  • 製造プロセスルール: 28nm
  • コア数/スレッド数: 4/4
  • L1キャッシュサイズ: 256KB
  • L2キャッシュサイズ: 2MB
  • 対応ソケット: AM4
  • 内蔵GPUの有無: なし
  • 対応メモリ周波数: 2400MHz
  • TDP: 65W

  [モデル名]  /  最低動作周波数及びターボ速度

  1. Athlon X4 940 / 3.20GHz~3.60GHz
  2. Athlon X4 950 / 3.50GHz~3.80GHz
  3. Athlon X4 970 / 3.80GHz~4.0GHz

互換性について[編集]

使用しているマザーボードFM2+ソケットである場合、FM2ソケットのCPU及びFM2+ソケットのCPUを取り付けることができるが、マザーボード側がFM2の場合、FM2ソケットのCPUを取り付けることはできるが、FM2+ソケットのCPUを取り付けることはできない。これは、CPUピンの数が異なるからである。例えばFM2ソケットのピン数は904であるが[4]、FM2+ソケットのピン数は906である[5]。つまり、FM2+ソケットのマザーボードに、同規格のピン数が等しいCPUを取り付けたり、逆にピン数が少ないFM2のCPUを取り付けることは可能だが、FM2ソケットのマザーボードに、ピン数が多いFM2+ソケットのCPUは取り付けられないのである。従って互換性の図は以下のようになる。

マザボとCPU互換性の図
M/B - CPU 互換性
FM2 - FM2  ○
FM2 - FM2+  ×
FM2+ - FM2  ○
FM2+ - FM2+  ○

なお、AM4ソケットはAM3, FM2, FM2+何れのソケットとの互換性を持たないため、別途AM4ソケット対応のマザーボードを交換する必要がある。また、ソケット同士で互換性があるとしてもBIOSが該当するCPUを認識できない場合があるため、使用しているマザーボードメーカーにて、CPU対応表を確認する必要があり、必要に応じてBIOSアップデートをする必要がある。

2コアプロセッサと表示される理由[編集]

Windowsのタスクマネージャに於いて、4コアプロセッサであるはずなのにコア数が2と表示されることがある。これはCPUの設計上の問題であり、AMDのCPUでは1コアが整数演算装置、1コアが浮動小数点演算装置と別の演算装置が組み込まれた設計になっていて、2コアをまとめて1モジュールと呼称するがためにOSがモジュール=コアと誤認してしまうからである。従って、AMDが公表しているプロセッサのコア数に間違いはないという結論に至る。

関連項目[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ AMD Athlon X4 860K - AD860KXBI44JA / AD860KXBJABOX / AD860KXBJASBX”. www.cpu-world.com. 2020年4月6日閲覧。
  2. ^ AMD Athlon X4 970 - AD970XAUM44AB / AD970XAUABBOX”. www.cpu-world.com. 2020年4月6日閲覧。
  3. ^ AMD Athlon X4 830 - AD830XYBI44JA”. www.cpu-world.com. 2020年4月6日閲覧。
  4. ^ Socket FM2”. www.cpu-world.com. 2020年4月6日閲覧。
  5. ^ Socket FM2+”. www.cpu-world.com. 2020年4月6日閲覧。

外部リンク[編集]