白鳥大橋

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白鳥大橋
Hakuchō Bridge
白鳥大橋
所在地 日本の旗 日本
北海道胆振総合振興局室蘭市
室蘭港
長さ 1,380m[1][2]
最大支間長 720m[3]
14.25m[1]
高さ 140m
建築家
技術者
IHI、IHI・川田・松尾JV、新日鉄・神鋼JV、JFE・宮地・東骨JV、JFE・横河JV、三菱・川重・楢崎JV、宮地・横河・住重・函館JV[3]
形式 3径間2ヒンジ補剛吊橋[1]
素材 剛床版箱桁[3]
建設 1985年 - 1998年
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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国道37号標識
白鳥大橋から眺めた室蘭港(2013年5月)

白鳥大橋(はくちょうおおはし)は、北海道室蘭市陣屋町3丁目から祝津町2丁目へ至る国道37号白鳥新道自動車専用道路であるが、通行無料となっている。

橋の名前は、室蘭港の別名「白鳥湾」から名づけられた[4][2]

平成10年度「土木学会田中賞」・平成10年度「照明普及賞・優秀施設賞」を受賞[5][6]。夜間は風力発電によってライトアップされており、平成20年には「日本夜景遺産・ライトアップ遺産」に選定されている[7]

概要[編集]

室蘭港(白鳥湾)の絵鞆半島にある祝津町と陣屋町を結び、関東以北では最大の吊り橋となっている[2]

北海道開発局室蘭開発建設部初代部長の猪瀬寧夫が、馬蹄形である室蘭の地形に発展の支障を覚え、1955年(昭和30年)に室蘭民報新年号の「初夢特集」で「室蘭港湾口架橋構想」を提唱したのが建設の発端となった[1]

昭和30年代の計画段階ではトンネル案もあったが[8]、橋梁として基本計画が作成された。昭和56年度に事業化後、昭和58年度の「白鳥大橋技術調査委員会」では橋梁方式を斜張橋から吊り橋へと変更した[8]

事業計画では有料道路事業が望ましいとされ、有料の場合でも昭和75年(2000年)交通量を16,300台/日と見込んでいたが[9]、室蘭市の産業衰退や人口減少などにより採算性が問題視されていた。白鳥大橋の完成が近づいてくる中、運営を委託する予定であった日本道路公団が運営受託に難色を示し、北海道も地方道路公社を設立しての運営は困難と判断した。そこで、地元選出の国会議員(当時)鳩山由紀夫が通行料に関する問題を提起し、議論の末1996年(平成8年)に北海道開発局長から暫定無料の方針が表明された[10]。総事業費1,000億円規模の道路事業が通行料無料で開通するのは全国でも異例のことであった。

2010年度(平成22年度)の24時間平均通行量は11,552台[11]

総事業費・維持管理費[編集]

  • 総事業費1,153億円[12]
  • 維持管理費 51億円(平成15年度)[12]

構造[編集]

主要諸元[編集]

橋長 1,380m
径間割 330+720+330=1,380m
幅員 2.5+3.5+(2.25)+3.5+2.5=14.25m
形式 3径間2ヒンジ補剛吊橋(側塔付)
補剛桁 鋼床版箱桁
ケーブル PPWS-127×52st(⌀5.20mm)
ザク比 1/10
設計荷重 TL-20、TT-43(B活荷重)
路線名 一般国道37号
道路規格 第1種第3級(自動車専用道路
車線数 2車線
航路限界 TP+54.45m
航路幅 300m

工法[編集]

白鳥大橋の主塔およびケーブル(2013年5月)

日本国内初の積雪寒冷地に建設された長大橋であり、作業は冬期間に工事が中断されるなどの条件下で進められた。また、白鳥大橋建設工事では気候や地形の特性から以下の工法が世界または日本国内で初めて行われた。

地中連続壁併用逆巻剛体基礎工法(世界初)

ボーリング調査(ボーリング)で主塔を十分に支えるための支持層が非常に深いことが判明したので、橋梁工事としては世界で初めて採用した[13][14]。主塔基礎は祝津側で57m、陣屋側で73mとなり、地中連続壁は祝津側で海面下67m、陣屋側で海面下103mと、世界的に前例のない規模となった。

S字ワイヤラッピング工法(世界初)

積雪寒冷地でのケーブル架設では、水分の浸入を防ぐために高い気密性が求められた。そこで、世界で初めてS字形のワイヤーを使用してケーブル・ラッピングを行った[13]。メイン・ケーブルの直径は47cmであり、直径5.2mmのピアノ線を6角形に127本束ねたもの(ストランド)をさらに52本束ねて作成された[2]

スイング架設工法・全ヒンジ工法(日本国内初)

補剛桁の架設は冬期間になると強風が吹く可能性が高くなることから、工期短縮を図る必要があった[15]。「全ヒンジ工法」とは、架設した桁ブロックを仮連結(ヒンジ状態)したまま吊り上げ作業を先行させたあと、連結作業と重複させて行う工法[15]。補剛桁は全61ブロックあり、4ヶ月半で補剛桁の架設が完了した[15]

特徴[編集]

  • 主塔を支える人工島の中詰材には発電所から出た石炭灰スラリーを使用し[1]、コスト削減にも努めた。この「白鳥大橋人工島」は石炭灰の有効利用と経済性が評価され、平成2年度「土木学会北海道支部・技術賞」を受賞した[16]
  • 側塔基礎工事は「地中連続壁剛体基礎工法」を採用[17]。側塔がある吊り橋は珍しく、日本国内では大鳴門橋に1つあるのみである[1]。側塔がケーブルを受けることで主塔やアンカレイジ(アンカーブロック)の規模を抑えることができた[18]
  • 主塔は4ヶ所の水平材だけとなる外観がスマートなラーメン方式を採用[1]
  • 補剛桁は側面に鋭角なフェアリングと呼ばれる飛行機の翼のような部材が取り付けられており、強風や着雪時でも安定した橋になるように対策を施している[1]
  • 日本国内初の積雪寒冷地での吊り橋として建設されたことから、着雪を除去する技術やコンピュータ数値制御により振動を除去するハイブリッド・チューンドマスダンパー(動吸振器)技術を備えている[1]
  • 白鳥大橋のライトアップやメイン・ケーブルのイルミネーション、白鳥大橋記念館の電力は風力発電施設の電源を使用しており、平成10年度「財団法人新エネルギー財団会長賞」を受賞している[19]。なお、余剰電力は北海道電力へ売電している。

道路施設[編集]

  • 陣屋西高架橋(248m)[12]
  • 陣屋東高架橋(215.7m)[12]
  • 白鳥北高架橋(422m)[12]
  • 白鳥南高架橋(330.5m)[12]
  • 祝津ランプ橋(663.7m)[12]

歴史[編集]

「室蘭市/白鳥大橋」を参照[1]

  • 1955年(昭和30年)1月、室蘭開発建設部の初代部長であった猪瀬寧雄が室蘭民報新年号の「初夢特集」で「室蘭港湾口架橋構想」を提唱。
  • 1967年(昭和42年)、「室蘭圏幹線道路建設促進期成会」を設立。当時の胆振9市町村、各経済団体、企業等が国への陳情運動を開始。
  • 1970年(昭和45年)、室蘭工業大学、室蘭開発建設部、室蘭土木現業所、室蘭市による「室蘭環状道路調査研究会」が発足。
  • 1972年(昭和47年)、室蘭市の予算に調査費700万円計上。
  • 1973年(昭和48年)、室蘭市の予算に調査費1,000万円計上し、「白鳥大橋基本計画」策定。
  • 1974年(昭和49年)、国の予算に調査費2,000万円計上。
  • 1976年(昭和51年)、日本道路公団が有料道路としての採算性調査に着手。
  • 1977年(昭和52年)、日本道路公団によるボーリング調査開始。
  • 1980年(昭和55年)12月、国の昭和56年度予算で白鳥新道(陣屋 - 祝津)の着工が認可[20][21]
  • 1982年(昭和57年)1月、白鳥新道として陣屋 - 中央町間が都市計画道路に決定[22]
  • 1985年(昭和60年)9月27日、修祓式と着工記念式典、祝賀会が開かれる。
  • 1987年(昭和62年)4月、主塔基礎築島工事着工。
  • 1989年(平成2年)10月、シュクトツ山に白鳥大橋展望台が完成。駐車場付近に白鳥大橋資料館を開設。
  • 1992年(平成4年)9月、主塔ブロックの積み上げ工事が完了。
  • 1993年(平成5年)7月、パイロット・ロープの渡海完了。
  • 1995年(平成7年)9月、補剛桁最終61ブロックの架設が完了し、連結。
  • 1996年(平成8年)8月、北海道開発局長から白鳥新道(白鳥大橋)通行料の暫定無料が表明される。
  • 1998年(平成10年)4月17日、白鳥大橋記念館が開館。室蘭市祝津風力発電システムが稼働。
  • 1998年(平成10年)5月31日、「白鳥大橋ウォーク」開催。
  • 1998年(平成10年)6月6日、「白鳥大橋サイクリング」開催。
  • 1998年(平成10年)6月7日、「白鳥大橋完成記念ハーフマラソン」開催。
  • 1998年(平成10年)6月13日白鳥大橋(白鳥新道第1期区間)が開通[23][24]。白鳥大橋記念館が「道の駅みたら室蘭」として道の駅に登録[25]
  • 1999年(平成11年)7月25日、「白鳥大橋ウォーク」開催。
  • 2000年(平成12年)12月31日、年越し行事「白鳥大橋カウントダウン」が始まる[26]
  • 2001年(平成13年)9月16日、「ツール・ド・北海道」開催[27]
  • 2002年(平成14年)9月8日、「白鳥大橋ハーフマラソン」開催。
  • 2007年(平成19年)6月、北海道開発局長から白鳥新道(白鳥大橋)の暫定無料継続の方針が表明される[28]
  • 2008年(平成20年)8月3日、開通10周年記念「白鳥大橋ウォーク・室蘭トライアスロン」開催。
  • 2012年(平成24年)10月8日、「室蘭市開港140年・市制施行90年記念白鳥大橋ハーフマラソン・ウォーク」開催[29]
  • 2014年(平成26年)12月31日、年越し行事「白鳥大橋カウントダウン」が最後の開催となる[26](「白鳥大橋カウントダウンFINAL」)。

白鳥大橋ビューポイント[編集]

祝津公園展望台から眺めた白鳥新道(白鳥大橋)の夜景(2013年8月)

室蘭市内の各地点から様々な白鳥大橋の姿を眺めることができるが、以下の場所を「ビューポイント」として紹介している[30]

  • 白鳥大橋展望台
  • 祝津公園展望台(平成25年「日本夜景遺産・自然夜景遺産」選定[31]
  • 測量山展望台
  • 潮見公園展望台
  • 八丁平展望台
  • 白鳥湾展望台

白鳥大橋が登場する作品[編集]

楽曲[編集]

  • 白鳥大橋賛歌「未来(あした)へキラキラ」(1998年)。
  • 室蘭市出身の安倍なつみ(元モーニング娘。)の1stアルバム『一人ぼっち』(2004年発売)の5曲目「…ひとりぼっち…」の歌詞に登場する。

アニメ[編集]

  • 映画『名探偵コナン 銀翼の奇術師』(2004年公開)で登場し、飛行機の着陸場所(崎守埠頭)の近くにあり、飛行機が白鳥大橋の真上を飛行していた。

参考画像[編集]

脚注・出典[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h i j 室蘭市/白鳥大橋”. 室蘭市. 2014年10月16日閲覧。
  2. ^ a b c d 『日本の名橋 完全名鑑』 廣済堂出版、2013年3月、19頁。ISBN 978-4-331-80222-9
  3. ^ a b c 橋梁年鑑 白鳥大橋 詳細データ”. 社団法人 日本橋梁建設協会. 2014年10月17日閲覧。
  4. ^ 工業港となる以前の室蘭港は白鳥の飛来地で、「白鳥の澗」とも呼ばれていた。
  5. ^ 受賞一覧 | 平成10年度”. 公益社団法人 土木学会田中賞. 2014年10月16日閲覧。
  6. ^ 松島哲郎、北田公三、沼田秀明. “白鳥大橋照明柱の長寿命化に資する耐風対策 —実物大振動実験および風洞実験による性能評価— (PDF)”. 室蘭開発建設部. 2014年10月16日閲覧。
  7. ^ 白鳥大橋”. 日本夜景遺産事務局. 2014年10月16日閲覧。
  8. ^ a b 『特版 白鳥大橋④』 室蘭民報社、1998年、84頁。
  9. ^ 高橋洋二、熊谷勝弘、千葉昭幸. “一般国道37号 白鳥新道の調査計画概要について (PDF)”. 室蘭開発建設部. 2014年10月16日閲覧。
  10. ^ 『特版 白鳥大橋④』 室蘭民報社、1998年、14頁。
  11. ^ 北海道 箇所別基本表及び時間帯別交通量表 Page white excel.png (XLS)
  12. ^ a b c d e f g 一般国道37号 白鳥新道 平成15年度 (PDF)”. 北海道開発局. p. 15. 2014年10月16日閲覧。
  13. ^ a b 白鳥新道”. 室蘭開発建設部. 2014年10月16日閲覧。
  14. ^ 室蘭市/白鳥大橋の建設工事”. 室蘭市. 2014年10月17日閲覧。
  15. ^ a b c 『特版 白鳥大橋④』 室蘭民報社、1998年、75頁。
  16. ^ 『特版 白鳥大橋④』 室蘭民報社、1998年、95頁。
  17. ^ 虹橋 47号”. 社団法人 日本橋梁建設協会. p. 48 (1992年8月). 2014年10月16日閲覧。
  18. ^ 『特版 白鳥大橋④』 室蘭民報社、1998年、104頁。
  19. ^ 北海道室蘭市祝津風力発電システム”. 財団法人 新エネルギー財団. 2014年10月17日閲覧。
  20. ^ むろらん 市政だより (PDF)”. 室蘭市 (1981年1月15日). 2014年10月16日閲覧。
  21. ^ むろらん 市政だより (PDF)”. 室蘭市 (1985年6月1日). 2014年10月16日閲覧。
  22. ^ 都市計画道路”. 室蘭市. 2014年10月15日閲覧。
  23. ^ 広報 むろらん (PDF)”. 室蘭市 (1998年6月). 2014年10月16日閲覧。
  24. ^ 白鳥大橋 (PDF)”. 北の交差点 Vol.3 SPRING-SUMMER 1998. 北海道道路管理技術センター. 2014年10月19日閲覧。
  25. ^ 室蘭市白鳥大橋記念館 -道の駅「みたら室蘭」 (PDF)”. 北の交差点 Vol.4 AUTUMN-WINTER 1998. 北海道道路管理技術センター. 2014年10月19日閲覧。
  26. ^ a b “室蘭「白鳥大橋カウントダウン」今年限り ボランティア不足で幕引き”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年12月3日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki/577970.html 
  27. ^ Tour de Hokkaido 2001”. 公益財団法人 ツール・ド・北海道協会. 2014年10月16日閲覧。
  28. ^ “10年目の室蘭・白鳥大橋、暫定無料継続と本多開発局長”. 室蘭民報 (室蘭民報社). (2007年6月10日). http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2007/06/10/20070610m_01.html 2014年10月16日閲覧。 
  29. ^ 室蘭市/白鳥大橋ハーフマラソン・ウオーク”. 室蘭市. 2014年10月16日閲覧。
  30. ^ 室蘭市/白鳥大橋ビューポイント”. 室蘭市. 2014年10月17日閲覧。
  31. ^ 祝津公園展望台”. 日本夜景遺産事務局. 2014年10月16日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]