九九

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算数における九九(くく)とは自然数の乗法などの計算を表にまとめて語呂よく暗記する方法のことである。足し算九九引き算九九掛け算九九割り算九九があるが、単に九九という場合は、普通1桁同士の掛け算九九を指す。また除数が1桁の割り算九九を八算(はっさん)、二桁を見一などという。

目次

[編集] 足し算と引き算の九九

江戸時代には寺子屋などで教えられていた。現在は百ます計算などと呼ばれることもある。

[編集] 掛け算九九

掛け算九九は、1から9までの自然数同士の掛け算を語呂良く暗記する方法である。1桁と2桁、2桁同士の掛け算を暗記する方法も含めて九九と呼ぶこともあり、この場合は2桁の九九という。ヨーロッパなどでは十二進法の名残で12×12までの掛け算の表を学んでいた。また、ドイツ語圏では大九九 (großes Einmaleins) と呼ばれる20×20までの掛け算をまとめたものもある。インドでは二桁の九九が学ばれているが、地域や学校によって差があり、最低でも1×1~20×20、最高では1×1~99×99まで学ぶ。インドの影響を受け、中国や韓国でも二桁の九九(1×1~20×20)はブームとなった。

日本の学習指導要領では小学校二年生の算数の授業で1位数同士の乗法を学習する[1]ことから、1位数同士の乗法を確実に習得する方法として活用されることが多い。

日本には大和時代百済から伝えられ、平安時代には貴族の教養の一つとされていた[2]。もともとは九九から唱える(うしろからはじめる)もので、このなごりから九九と呼ばれるようになり、のちに一一からはじまるようになった。現在では、一の段(一一から一九まで)、二の段(二一から二九まで)、…、九の段(九一から九九まで)のように各段に分けて唱えることもしばしば行われる。かつては半九九と呼ばれる半分だけの九九が用いられていた。これは割り算九九と混同しないためにであったと考えられる。割り算九九が廃れるにつれ全九九が主流となった。積が一桁のときは「」を付ける。即ち「が」はゼロを意味し[3]、十の位の空位を意識させるためにも役立つ。特に珠算において、「が」があるおかげで桁取りを間違えることがなくなる[3]

掛け算九九の表
× 1の段 2の段 3の段 4の段 5の段 6の段 7の段 8の段 9の段
1 いんいちがいち にいちがに さんいちがさん しいちがし ごいちがご ろくいちがろく しちいちがしち はちいちがはち くいちがく
2 いんにがに ににんがし さんにがろく しにがはち ごにじゅう ろくにじゅうに しちにじゅうし はちにじゅうろく くにじゅうはち
3 いんさんがさん にさんがろく さざんがく しさんじゅうに ごさんじゅうご ろくさんじゅうはち しちさんにじゅういち はちさんにじゅうし くさんにじゅうしち
4 いんしがし にしがはち さんしじゅうに ししじゅうろく ごしにじゅう ろくしにじゅうし しちしにじゅうはち はちしさんじゅうに くしさんじゅうろく
5 いんごがご にごじゅう さんごじゅうご しごにじゅう ごごにじゅうご ろくごさんじゅう しちごさんじゅうご はちごしじゅう くごしじゅうご
6 いんろくがろく にろくじゅうに さぶろくじゅうはち しろくにじゅうし ごろくさんじゅう ろくろくさんじゅうろく しちろくしじゅうに はちろくしじゅうはち くろくごじゅうし
7 いんしちがしち にしちじゅうし さんしちにじゅういち ししちにじゅうはち ごしちさんじゅうご ろくしちしじゅうに しちしちしじゅうく はちしちごじゅうろく くしちろくじゅうさん
8 いんはちがはち にはちじゅうろく さんぱにじゅうし しはさんじゅうに ごはしじゅう ろくはしじゅうはち しちはごじゅうろく はっぱろくじゅうし くはしちじゅうに
9 いんくがく にくじゅうはち さんくにじゅうしち しくさんじゅうろく ごっくしじゅうご ろっくごじゅうし しちくろくじゅうさん はっくしちじゅうに くくはちじゅういち

[編集] 割り算九九

割り算九九には八算、見一、唐目十六割、四十三割、四十四割、糸割などがある。割り声(わりごえ)、割れ声(われせい)とも呼ばれる。

[編集] 八算

掛け算九九が珠算と無関係に有用であるのに対し、割り算九九はそろばんの珠の動きとの関連が大きい。の頃、中国で発明され、その後日本にもたらされたものである。日本では毛利重能の割算書などによって広まった。そろばんの普及と割り算九九の普及は大きく関連している。江戸時代には帰除法のほうが一般的であった(亀井算という商除法も行われていた)。

珠算による割り算の方法は、掛け算九九を使う商除法と、割り算九九を使う帰除法がある。そろばん教室で教えるのは、昭和の頃からであろうか商除法が主となり、帰除法(すなわち割り算九九)はほとんど使わなくなってしまった。電卓の出現前、学校教育で珠算をある程度重視した時期であっても、割り算九九は教えていない。その結果、今ほとんどの人は割り算九九の存在さえも知らない。帰除法の利点としては機械的に素早く計算できることが挙げられる。欠点としては新たに割り算九九を覚えなければならないことが挙げられる。

八算という呼び名は1で割る場合を除いて、8通りの割り算としたことに由来する。九九と同様に二一天作五で八算全体を表すこともある。一進をいっちん、一十をいんじゅと読む場合もある。逢の字が書かれることもあるが読まれない。倍作(ばいさく、ばいそう)を倍とする場合もある。

下の表で上段は表記、中段は読み、下段は表している計算式である。

八算の表
÷ 二の段 三の段 四の段 五の段 六の段 七の段 八の段 九の段
1 二一天作五 三一三十一 四一二十二 五一倍作二 六一下加四 七一下加三 八一下加二 九一下加一
にいちてんさくのご さんいちさんじゅうのいち しいちにじゅうのに ごいちばいさくのに ろくいちかかし しちいちかかさん はちいちかかに くいちかかいち
10/2 10/3 10/4 10/5 10/6 10/7 10/8 10/9
2 二進一十 三二六十二 四二天作五 五二倍作四 六二三十二 七二下加六 八二下加四 九二下加二
にっしんのいちじゅう さんにろくじゅうのに しにてんさくのご ごにばいさくのし ろくにさんじゅうのに しちにかかろく はちにかかし くにかかに
2/2 20/3 20/4 20/5 20/6 20/7 20/8 20/9
3 三進一十 四三七十二 五三倍作六 六三天作五 七三四十二 八三下加六 九三下加三
さんしんのいちじゅう しさんしちじゅうのに ごさんばいさくのろく ろくさんてんさくのご しちさんしじゅうのに はちさんかかろく くさんかかさん
3/3 30/4 30/5 30/6 30/7 30/8 30/9
4 四進二十 四進一十 五四倍作八 六四六十四 七四五十五 八四天作五 九四下加四
ししんのにじゅう ししんのいちじゅう ごしばいさくのはち ろくしろくじゅうのし しちしごじゅうのご はちしてんさくのご くしかかし
4/2 4/4 40/5 40/6 40/7 40/8 40/9
5 五進一十 六五八十二 七五七十一 八五六十二 九五下加五
ごしんのいちじゅう ろくごはちじゅうのに しちごしちじゅうのいち はちごろくじゅうのに くごかかご
5/5 50/6 50/7 50/8 50/9
6 六進三十 六進二十 六進一十 七六八十四 八六七十四 九六下加六
ろくしんのさんじゅう ろくしんのにじゅう ろくしんのいちじゅう しちろくはちじゅうのし はちろくしちじゅうのし くろくかかろく
6/2 6/3 6/6 60/7 60/8 60/9
7 七進一十 八七八十六 九七下加七
しちしんのいちじゅう はちしちはちじゅうのろく くしちかかしち
7/7 70/8 70/9
8 八進四十 八進二十 八進一十 九八下加八
はっしんのしじゅう はっしんのにじゅう はっしんのいちじゅう くはちかかはち
8/2 8/4 8/8 80/9
9 九進三十 九進一十
くしんのさんじゅう くしんのいちじゅう
9/3 9/9

[編集] 見一

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二桁以上の割り算の声である。珠算における二桁以上の割り算では特殊な操作が必要となるため、操作中に割られる数の頭と割る数が同じになった場合にこの割声にならい計算する。これを撞除法と言い、また歌の頭の文字から通称で見一と呼ばれる。

暗唱 意味
見一無頭作九一(けんいちむとうさっきゅうのいち) 一を見合わせて、九をつくり、その下桁に一を足す。
見二無頭作九二(けんにむとうさっきゅうのに) 二を見合わせて、九をつくり、その下桁に二を足す。
見三無頭作九三(けんさんむとうさっきゅうのさん) 三を見合わせて、九をつくり、その下桁に三を足す。
見四無頭作九四(けんしむとうさっきゅうのし) 四を見合わせて、九をつくり、その下桁に四を足す。
見五無頭作九五(けんごむとうさっきゅうのご) 五を見合わせて、九をつくり、その下桁に五を足す。
見六無頭作九六(けんろくむとうさっきゅうのろく) 六を見合わせて、九をつくり、その下桁に六を足す。
見七無頭作九七(けんしちむとうさっきゅうのしち) 七を見合わせて、九をつくり、その下桁に七を足す。
見八無頭作九八(けんはちむとうさっきゅうのはち) 八を見合わせて、九をつくり、その下桁に八を足す。
見九無頭作九九(けんくむとうさっきゅうのく) 九を見合わせて、九をつくり、その下桁に九を足す。


これは上の撞除をした後に操作につまった時(珠算の除法では引き算を行うので、下桁が引けなくなる)に用いる声である。

暗唱 意味
帰一倍一(きいちばいいち) 見一無頭作九一をした時、一を払って、下に一を足す。
帰一倍二(きいちばいに) 見二無頭作九二をした時、一を払って、下に二を足す。
帰一倍三(きいちばいさん) 見三無頭作九三をした時、一を払って、下に三を足す。
帰一倍四(きいちばいし) 見四無頭作九四をした時、一を払って、下に四を足す。
帰一倍五(きいちばいご) 見五無頭作九五をした時、一を払って、下に五を足す。
帰一倍六(きいちばいろく) 見六無頭作九六をした時、一を払って、下に六を足す。
帰一倍七(きいちばいしち) 見七無頭作九七をした時、一を払って、下に七を足す。
帰一倍八(きいちばいはち) 見八無頭作九八をした時、一を払って、下に八を足す。
帰一倍九(きいちばいく) 見九無頭作九九をした時、一を払って、下に九を足す。

[編集] 唐目十六割

16で割る場合の割り算九九である。小一斤とも呼ばれる。

暗唱
一引六二五(いちひくろくにご)
二一二五(にいちにご)
三一八七五(さんいちはちしちご)
四二五(しにご)
五三一二五(ごさんいちにご)
六三七五(ろくさんしちご)
七四三七五(しちしさんしちご)
八作五(はっさくのご)
九五六二五(くごろくにご)

[編集] 四十三割

43で割る場合の割り算九九である。銀は四十三匁が一単位であったことによる。

暗唱
一二加下十四(いちにかかのじゅうし)
二四加下二十八(にしかかのにじゅうはち)
三六加下四十二(さんろくかかのしじゅうに)
四九加下十三(しくかかのじゅうさん)
逢四十三進一十(しじゅうさんしんいちじゅう)

[編集] 四十四割

44で割る場合の割り算九九である。金は四十四匁が一単位であったことによる。

暗唱
一二加下十二(いちにかかのじゅうに)
二四加下二十四(にしかかのにじゅうし)
三六加下三十六(さんろくかかのさんじゅうろく)
四九加下四(しくかかのし)
逢四十四進一十(しじゅうししんいちじゅう)

[編集] 糸割

64で割る場合の割り算九九である。

[編集] 関連項目

[編集] 脚注

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  1. ^ 小学校学習指導要領第2章第3節「算数」「第2各学年の目標及び内容」の〔第2学年〕「2内容」「A数と計算」(3)より
  2. ^ 神奈川県和算研究会事務局 日本の数学文化 in 神奈川<和算かながわ> 日本の数学
  3. ^ a b 『週刊朝日百科 日本の歴史103』近代-1-(4)「学校と試験」、朝日新聞社、1988年4月10日発行/通巻631号、p10-117、板倉聖宣「教育の工夫 ――仮名と九九」

[編集] 参考文献

  • 菅原 邦雄 (2008). “そろばん--割り算の九九から広がった日本の数学”. 数学文化 (10): 100-103. 日本評論社.