ラプラス変換
関数解析学において、ラプラス変換(ラプラスへんかん、Laplace transform)とは、積分で定義される関数空間の間の写像(線型作用素)の一種。関数変換。
ラプラス変換の名はピエール=シモン・ラプラスにちなむ。
ラプラス変換によりある種の微分・積分は積などの代数的な演算に置き換わるため、制御工学などにおいて時間の(とくに超越的な)関数を別の(おもに代数的な)関数に変換することにより、計算の見通しをたてるための便法として用いられる。
目次 |
定義 [編集]
実数 t ≧ 0 について定義された関数
のラプラス変換とは

で定義される s の関数
のことである。ここで s は複素数で s = σ + iω , i は虚数単位。右辺の積分はラプラス積分と呼ばれる。
また、
として、関数
から 元の関数
を計算することを逆ラプラス変換といい、

のように定義されている。右辺の積分はブロムウィッチ積分と呼ばれる。 これは複素積分となっており、留数を計算することにより逆ラプラス変換を求めることができる。 ここで、
を原関数、
を像関数という。
ラプラス変換の他の記述の仕方として、次のようなものもある。
![F(s) = \mathcal{L}[f(t)]](http://upload.wikimedia.org/math/2/d/a/2daa3cb7a4d1f7526444379a40c9fed7.png)
同様に逆ラプラス変換は、次のようにも記述される。
![f(t) = \mathcal{L}^{-1}[F(s)]](http://upload.wikimedia.org/math/6/e/9/6e903c8feec0f284166ea5fa018f5f9c.png)
また、これらの記号を用いた写像
,

のことも、それぞれラプラス変換、逆ラプラス変換と呼ばれることがある。
普通、ラプラス変換および逆ラプラス変換を行う際には変換表を参照して計算する場合が多いので前述した定義式にしたがって計算することは少ない。だが場合によっては定義式から計算したほうが簡単なときもある。たとえば逆ラプラス変換をする際に部分分数分解をしなければならない場合、むしろブロムウィッチ積分を計算したほうが早いことも多い。
注:ラプラス変換は、関数
にいったん
を乗じてからフーリエ変換する操作であると考えることができる(ここで
はステップ関数である)。
両側ラプラス変換 [編集]
詳細は「両側ラプラス変換」を参照
両側ラプラス変換は積分区間を全実数域へと拡張したもので、以下のように定義される。
母関数との関係 [編集]
数列
の(通常型)母関数
において
とすると、
となる。 ここでシグマを積分に変えれば
となり、関数
のラプラス変換と一致する。 この意味においてラプラス変換は母関数の「連続版」とみなす事ができる。 こうした理由により、母関数とラプラス変換は同種の性質を満たす事がある。 たとえば母関数の性質
はラプラス変換の性質
に対応する。ここで「
」は畳み込み積。
性質 [編集]
ラプラス変換と逆ラプラス変換は互いに他の逆変換である。

線型性 [編集]
ラプラス変換は線型性を持ち、したがって特に重ね合わせの原理 を用いて計算することが可能である。ラプラス変換が線型性を持つとは、任意の関数 f(t), g(t) に対して
![\mathcal{L}[af(t) + bg(t)] =
aF(s) + bG(s)](http://upload.wikimedia.org/math/5/3/3/5330e5728fc4235ee4d03aee767c48c0.png)
が成り立つということである。ただし、a, b は t に関係しない定数。 逆ラプラス変換も同様で、
![\mathcal{L}^{-1}[aF(s) + bG(s)] =
af(t) + bg(t)](http://upload.wikimedia.org/math/b/4/8/b48df80493b591271fd6d2c0bdddac1e.png)
が成り立つ。したがって、与えられた関数を部分分数分解できるとき、各因子がラプラス変換の表にあるものに合致すれば、その変換が求められる。
相似性 [編集]
a>0のとき、
![\mathcal{L}\left[f(at)\right]=\frac{1}{a}F\left(\frac{s}{a}\right)](http://upload.wikimedia.org/math/e/0/c/e0cfbc8711f0e939e4e8f0f61fef88a1.png)
が成立する。
微分式 [編集]
時間 t に関する導関数のラプラス変換は多項式の差となって現れる。実際に、一階の導関数をラプラス変換すると以下のように f(0)(元の式に0を代入した値)が現れる。
![\mathcal{L}\left[ \frac{df(t)}{dt} \right]
= sF(s) - f(0)](http://upload.wikimedia.org/math/0/c/e/0ce77f57e6f18bacc040e11ceed064ad.png)
また、二階導関数の場合は f(0) に加え、t = 0 における微分係数 f '(0) が現れる。
![\mathcal{L}\left[ \frac{d^2f(t)}{dt^2} \right]
= s^2F(s) - sf(0) - f'(0)](http://upload.wikimedia.org/math/5/5/4/554159ef54308d1257e3f2143ba3e72e.png)
これを繰り返すと、一般の n 階の導関数のラプラス変換は以下のようになる。
![\mathcal{L}\left[ \frac{d^nf(t)}{dt^n} \right] =
s^nF(s) - \sum_{k=0}^{n-1} s^{n-k-1}f^{(k)}(0)](http://upload.wikimedia.org/math/e/c/2/ec2497d7eefb534ef3ca19c50c8757ef.png)

積分式 [編集]
![\mathcal{L}\left[\int_0^t f(u)du \right] = \frac{1}{s} F(s).](http://upload.wikimedia.org/math/8/a/7/8a77c4ff5818412c1140a98cfb3a45cb.png)
畳み込み [編集]
関数の畳み込みはラプラス変換で積(値ごとの積)にうつされる。
![\mathcal{L}[f(t)*g(t)] =
F(s)\,G(s).](http://upload.wikimedia.org/math/5/3/c/53c0c8c8d6e396e18709a3320ab08f67.png)
これは、H(s) = F(s)G(s) かつ
![F(s) = \mathcal{L}[f(t)],\ G(s) = \mathcal{L}[g(t)]](http://upload.wikimedia.org/math/a/c/8/ac894c9c3bb6d60036c9261436a6d1af.png)
ならば
![\mathcal{L}^{-1}[H(s)] = f(t)*g(t)](http://upload.wikimedia.org/math/7/4/6/7460a0af6e7a2604660804b0a21e5470.png)
と書くこともできる。
初期値の定理・最終値の定理 [編集]
ラプラス変換の原関数の初期値(t = 0での値)や最終値(t → ∞ における極限値)を表す初期値の定理および最終値の定理と呼ばれる公式が以下のような式によって与えられる。
- 初期値の定理 (initial value theorem)
の関数
がt=0で連続ならば
- が成り立つ。特に、
が微分可能なときは部分積分により容易に証明できる。 - 最終値の定理 (final value theorem)
の関数
がt→∞で収束すれば
- が成り立つ。ただし、
は
を含む角領域である。
性質一覧表 [編集]
- 表中の凡例
- u(t) : ヘビサイド関数
- (f * g)(t) : f と g の畳み込み
- f'(t) : f(t) の1階微分
- f(n)(t) : f(t) の n 階微分
| 性質 | 原関数![]() (時間領域) |
像関数![]() ('s'領域/周波数領域) |
備考 |
|---|---|---|---|
| 線形性 | ![]() |
![]() |
|
| 相似性 | ![]() |
![]() |
ただし、a > 0 |
| 移動 | ![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
移動第2則 ただし、λ > 0 |
|
| 1階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、ƒ は微分可能とする。 |
| 2階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、ƒ は2階微分可能とする。 |
| n階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、ƒ は n 階微分可能とする。 |
| 積分 | ![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
ただし、n ≧ 1 | |
![]() |
![]() |
||
| 畳み込み | ![]() |
![]() |
|
| 周期関数 | ![]() |
![]() |
f(t) は周期 T の周期関数。 |
| 性質 | 像関数![]() ('s'領域/周波数領域) |
原関数![]() (時間領域) |
備考 |
|---|---|---|---|
| 移動 | ![]() |
![]() |
|
| 1階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、F は微分可能とする。 |
| 2階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、F は2階微分可能とする。 |
| n階微分 | ![]() |
![]() |
ただし、F は n 階微分可能とする。 |
| 積分 | ![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
||
| 畳み込み | ![]() |
![]() |
変換表 [編集]
| 変換表 | 原関数![]() 時間領域 |
像関数![]() 's'-領域/周波数領域 |
収束域 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 単位インパルス | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 単位ステップ関数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| ランプ関数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| n 乗 ( n は整数 ) |
![]() |
![]() |
![]() ![]() |
|||
| q 乗 ( q は複素数 ) |
![]() |
![]() |
![]() ![]() |
|||
| n 乗根 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 指数減衰 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| n 乗の指数減衰 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 理想遅延 | ![]() |
![]() |
||||
| 遅延付き単位ステップ関数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 遅延付き n 乗の指数減衰 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 指数関数的接近 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 正弦 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 余弦 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 双曲線正弦関数 (ハイパボリックサイン) |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 双曲線余弦関数 (ハイパボリックコサイン) |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 正弦波の指数減衰 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 余弦波の指数減衰 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 自然対数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 第1種ベッセル関数 | ![]() |
![]() |
![]() ![]() |
|||
| 第1種変形ベッセル関数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 第2種ベッセル関数 (次数が 0 の場合) |
![]() |
![]() |
![]() |
|||
| 第2種変形ベッセル関数 (次数が 0 の場合) |
![]() |
|||||
| 誤差関数 | ![]() |
![]() |
![]() |
|||
凡例
|
||||||
関連項目 [編集]
- 関数
- ディラックのデルタ関数(インパルス関数)
- ヘヴィサイドの階段関数(ステップ関数)
- 微分方程式





\mathcal{L}[g](s)=\mathcal{L}[f*g](s)\,](http://upload.wikimedia.org/math/2/8/b/28bdca14f00f5d21b29688f064ccff80.png)
の関数 
が微分可能なときは部分積分により容易に証明できる。
は
を含む角領域である。




















































![\sqrt[n]{t} \cdot u(t) = t^{1/n} \cdot u(t)](http://upload.wikimedia.org/math/1/d/0/1d059c6e0035da9da9e3a9f2abbb40c7.png)






























![- { t_0 \over s} \ [ \ \ln(t_0 s)+\gamma \ ]](http://upload.wikimedia.org/math/6/e/8/6e8a76493bbae4b1d845742deeebdb01.png)










は
は
は
は
は実数で 時間 を表すことが多い。
は
はその実部。