ベッセル関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ベッセル関数(ベッセルかんすう、Bessel function)とは、最初にスイスの数学者ダニエル・ベルヌーイによって定義され、フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルにちなんで名づけられた関数。円筒関数と呼ばれることもある。以下に示す、ベッセルの微分方程式におけるy(x)特殊解の1つである。

x^2 \frac{d^2y}{dx^2}+x \frac{dy}{dx}+(x^2-\alpha^2)y=0

上の式において、\alphaは、任意の実数である(次数と呼ばれる)。\alphaが整数nに等しい場合がとくに重要である。

\alpha及び-\alphaはともに同一の微分方程式を与えるが、慣例としてこれら2つの異なる次数に対して異なるベッセル関数が定義される(例えば、\alphaの関数としてなるべく滑らかになるようにベッセル関数を定義する、など)。

そもそもベッセル関数は、惑星軌道の時間変化に関するケプラー方程式を、ベッセルが解析的に解いた際に導入された。

応用[編集]

ベッセル解は、ラプラス方程式または、ヘルムホルツ方程式の、円柱座標系または極座標系における分離解として見出される。したがって、ベッセル関数は、電波伝播静電位差などの解を求めるときに重要なものとなっている。(円柱座標系においては、整数次数\alpha=nのベッセル関数が解として得られる。極座標系においては、半整数次数\alpha=n+1/2のベッセル関数が解として得られる。)
例えば、

  • 円筒導波管における電磁波
  • 円柱物体の熱伝導
  • 薄い円(か環状の) 膜の振動のモード

ベッセル関数には、また信号処理のような他の問題のための有用な特性がある(例えば、FM合成Kaiser窓ベッセルフィルタなど)。

定義式[編集]

ベッセルの微分方程式は2階の線形微分方程式であるので、線形独立な2つの解が存在するはずである。しかしながら、解を議論する状況に応じて解の様々な表現が便利に使われている。代表的ないくつかの解の表現について以下で説明する。

第1種及び第2種ベッセル関数[編集]

これらの関数が、ベッセル関数群としては、最も一般的な形式である。

第1種ベッセル関数 
第1種ベッセル関数は \displaystyle  J_\alpha(x) と表記される。\displaystyle  J_\alpha(x) はベッセルの微分方程式の解であり、\displaystyle \alpha が整数もしくは非負であるとき、\displaystyle  x=0 で有限の値をとる。\displaystyle  J_\alpha における、特定解の選択及び正規化は定義された後に、後述する。第1種ベッセル関数はまた、\displaystyle  x=0 のまわりでのテイラー展開(非整数の\displaystyle  \alpha に対しては、より一般にべき級数展開)によって定義することもできる。
\displaystyle  J_\alpha(x)=\sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!\Gamma(m+\alpha+1)} \left ( \frac{x}{2} \right)^{2m+\alpha}
非整数の \displaystyle  \alpha に対しては、\displaystyle  J_\alpha(x)\displaystyle  J_{-\alpha}(x) とが、ベッセルの微分方程式に対する線形独立な2つの解を与える。整数の\displaystyle  \alpha に対してはこれらは線形独立な解を与えない。なぜなら、整数\displaystyle  n に対して、\displaystyle  J_n(x)\displaystyle  J_{-n}(x) とのあいだには関係
\displaystyle  J_{-n}(x)=(-1)^nJ_n(x)
が成り立ち、両者は明らかに線形従属となるからである。整数次数に対して \displaystyle  J_n(x) と線形独立な第二の解は、以下の第2種ベッセル関数によって与えられる。
第2種ベッセル関数 
第2種ベッセル関数は \displaystyle  Y_\alpha(x) と表記される。\displaystyle  Y_\alpha(x) はやはりベッセルの微分方程式の解であり、\displaystyle  x=0 において特異性をもつ。また、\displaystyle  Y_\alpha(x) は、しばしばノイマン関数とも呼ばれ、\displaystyle  N_\alpha(x) とも表記される。第1種ベッセル関数\displaystyle  J_\alpha(x) との関係は、
\displaystyle  Y_\alpha(x)=\frac{J_\alpha(x)\cos(\alpha \pi)-J_{-\alpha}(x)}{\sin(\alpha \pi)}
で与えられる。ただし、\displaystyle  \alpha が整数のときは右辺は極限によって定義されるものとする。
非整数の \displaystyle  \alpha に対しては、\displaystyle  J_\alpha(x)\displaystyle  J_{-\alpha}(x) とが線形独立な2つの解をすでに与えているので、\displaystyle  Y_\alpha(x) は解の表現としては冗長である。整数 \displaystyle  n に対しては、\displaystyle  Y_n(x)\displaystyle  J_n(x) と線形独立な第二の解を与えている。
整数 \displaystyle  n に対して、\displaystyle  Y_n(x)\displaystyle  Y_{-n}(x) とのあいだには関係
\displaystyle  Y_{-n}=(-1)^nY_n(x)
が成り立ち、したがって両者はやはり線形従属である。
\displaystyle  J_\alpha(x) 及び \displaystyle  Y_\alpha(x) はどちらも、負の実軸を除く複素平面上で \displaystyle  x の解析的な関数(正則な関数)である。\displaystyle  \alpha が正の整数のとき、これらの関数は負の実軸上に分岐点を持たず、したがって \displaystyle  x整関数となる。また、固定した \displaystyle  x に対して、ベッセル関数は \displaystyle  \alpha の整関数となる。

超幾何級数との関係[編集]

  • ベッセル関数は超幾何級数(超幾何関数ともいう)によって、以下のように表現することができる。
J_\nu(z)=\frac{(z/2)^\nu}{\Gamma(\nu+1)}  \;_0F_1 (\nu+1; -z^2/4).

ハンケル関数[編集]

  • ベッセルの微分方程式に対する線形独立な2つの解を与える表式には、ハンケル関数Hα(1)(x) と Hα(2)(x)があり、定義式は以下の通り。
H_\alpha^{(1)}(x) = J_\alpha(x) + i Y_\alpha(x)
H_\alpha^{(2)}(x) = J_\alpha(x) - i Y_\alpha(x)

ここで、iは虚数単位である。J_\alpha(x)Y_\alpha(x)との線形結合によって与えられるこれらの解の表現は、第三種ベッセル関数として知られている(ハンケル関数は円筒波の方程式における、内側もしくは外側への円筒波の伝播の解を表現する)。

変形ベッセル関数[編集]

ベッセル関数は\displaystyle xの複素数値に対しても適切に定義されており、応用上は \displaystyle xが純虚数の場合が特に重要である。この場合、ベッセルの微分方程式への解は第1種及び第2種の変形ベッセル関数と呼ばれ、以下のように定義される。

\displaystyle  I_\alpha(x) = i^{-\alpha} J_\alpha(ix) = \sum_{m=0}^{\infty} \frac{1}{m! \Gamma(m+\alpha+1)}\left(\frac{x}{2}\right)^{2m+\alpha}
K_\alpha(x) = \frac{\pi}{2} \frac{I_{-\alpha} (x) - I_\alpha (x)}{\sin (\alpha \pi)}  = \frac{\pi}{2} i^{\alpha+1} H_\alpha^{(1)}(ix).

これらの関数は、\displaystyle xが実数のときに関数値が実数となるように定義されている。またこれらの関数は、変形されたベッセルの微分方程式

x^2 \frac{d^2 y}{dx^2} + x \frac{dy}{dx} - (x^2 + \alpha^2)y = 0.

に対する2つの線形独立な解を与えている。

変形ベッセル関数には以下の性質がある。 ここで、n は正の整数またはゼロ。

\begin{align}
 &I_{-n}(x) = I_{n}(x) \\
 &K_{-\alpha}(x) = K_{\alpha}(x) \\
\end{align}
\begin{align}
 &K_{n+1/2}(x) = \left(\frac{\pi}{2x}\right)^{1/2}\exp(-x)\sum^n_{r=0}{\frac{(n+r)!}{r!(n-r)!}(2x)^{-r}} 
\end{align}

球ベッセル関数・球ノイマン関数[編集]

第1種及び第2種のベッセル関数から、球ベッセル関数(spherical Bessel functions)と球ノイマン関数(spherical Neumann functions)がそれぞれ以下のように定義される。

j_\alpha(x) = \left( \frac{\pi}{2x} \right)^{1/2} J_{\alpha+1/2}(x)
n_\alpha(x) = \left( \frac{\pi}{2x} \right)^{1/2} N_{\alpha+1/2}(x)

これらの関数は、球ベッセル微分方程式

\frac{d^2y}{dx^2} + \frac{2}{x}\frac{dy}{dx}
 + \left(1 - \frac{\alpha(\alpha+1)}{x^2}\right)y = 0

に対する2つの線形独立な解を与えている。

量子力学における3次元自由粒子シュレーディンガー方程式の動径方向の解のうち、正則なものは球ベッセル関数で表され、正則でないものは球ノイマン関数で表される。

また3次元井戸型ポテンシャルシュレディンガー方程式における、ポテンシャル内部の動径方向の解のうち、原点で発散しないものは球ベッセル関数で表され、原点で発散するものは球ノイマン関数で表される。

球ハンケル関数[編集]

  • 球ベッセル微分方程式に対する線形独立な2つの解を与える表式には、球ハンケル関数hα(1)(x) と hα(2)(x)があり、定義式は以下の通り。
h_\alpha^{(1)}(x) = j_\alpha(x) + i y_\alpha(x) = \sqrt{\frac{\pi}{2x}}H^{(1)}_{n+1/2}(x)
h_\alpha^{(2)}(x) = j_\alpha(x) - i y_\alpha(x) = \sqrt{\frac{\pi}{2x}}H^{(2)}_{n+1/2}(x)

ここで、i は虚数単位である。

また、非負の整数 n について:

h_n^{(1)}(x) = (-i)^{n+1} \frac{e^{ix}}{x} \sum_{m=0}^n \frac{i^m}{m!(2x)^m} \frac{(n+m)!}{(n-m)!}

h_n^{(2)} は、実数xに関してh_n^{(1)}(x)の複素共役となる。

量子力学では、3次元井戸型ポテンシャルシュレディンガー方程式における、ポテンシャル外部の動径方向の解は、球ハンケル関数で表される。第一種球ハンケル関数は外向き、第二種球ハンケル関数は内向きを表す。

変形球ベッセル関数[編集]

第1種及び第2種の変形ベッセル関数から、変形球ベッセル関数(英:modified spherical Bessel functions)が以下のように定義される。

i_{\alpha}(x) = \left( \frac{\pi}{2x} \right)^{1/2} I_{\alpha+1/2}(x)
k_{\alpha}(x) = \left( \frac{2}{\pi x} \right)^{1/2} K_{\alpha+1/2}(x)

これらの関数は、変形球ベッセル微分方程式

x^2\frac{d^2y}{dx^2} + 2x\frac{dy}{dx} - \left(x^2 + \alpha(\alpha+1) \right)y = 0

に対する2つの線形独立な解を与えている。

変形球ベッセル関数には以下の性質がある。

\begin{align}
 k_{-n-1/2}(x) = k_{n+1/2}(x)
\end{align}

ここで、n は正の整数またはゼロ。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]