ブーベ島

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ブーベ島
Orthographic projection centered over Bouvet Island.png
座標 南緯54度26分
東経3度24分
面積 58.5 km²
海岸線長 29.6 km
最高標高 780 m
所在海域 大西洋
所属国・地域 ノルウェー
テンプレートを表示

ブーベ島ノルウェー語: Bouvetøya英語: Bouvet Island)は、南大西洋亜南極に浮かぶノルウェー領の火山島無人島ケープタウン南アフリカ)の南南西約 2,500 km に位置する。最も近い陸地(南極大陸)との距離は 1,600 km であり、地理的に世界で最も隔絶した孤島である。

ノルウェーの属領という位置づけにあり、国際標準化機構の定めるISO 3166では単独の国名コード BV / BVT が与えられている。孤絶した無人島であるにもかかわらず、アマチュア無線インターネットなどの分野では、国に準ずる地域として扱われている。

地理[編集]

位置[編集]

海氷が取り巻くブーベ島(右下が北)

南アフリカの南南西約 2,500 km に浮かぶ。周辺に島の姿のない絶海の孤島であり、最も近い陸地は1,600 km離れた南極大陸ドローニング・モード・ランド(クイーン・モード・ランド)である。島には無人の気象観測所があり、普段はノルウェーの自然科学遠征隊の拠点となっている。

島に定住者はいない。人が定住する集落がある最も近い場所は、2,260km 離れたトリスタン・ダ・クーニャである(ドローニング・モード・ランドには日本の昭和基地なども含めいくつかの国の恒久基地があるが、これらの基地の滞在者は「定住者」としては数えない)。なお、トリスタン・ダ・クーニャも「世界で最も孤立した有人島」として知られる孤島である。

地形[編集]

島の地図

島の93%は氷河であり、島の東海岸と南海岸を覆っている。波の浸食作用によって海岸は急な崖となっており、海岸沿いにはラース島 (Lars Islandなどの小さな岩や属島が散在している。島には港湾設備がなく、沖合に投錨地があるだけで、アクセスは困難である。船からヘリコプターでアクセスするのが最も容易な上陸方法である。

海岸線はしばしば海氷 (Polar ice packsに覆われる。島の最高地点はオラフ峰 (Olavtoppen) と呼ばれる 780 m の山である。島の中央には氷に覆われた死火山の火口があり、Wilhelm II Plateau と呼ばれている。島の西海岸にある溶岩棚は1955年から1958年にかけて形成されたもので、鳥たちのよい営巣地となっている。

この島は、大西洋中央海嶺の最南端部に位置する[1]。島の西約275kmには、アフリカプレート南アメリカプレート南極プレートの境界となるブーベ三重点英語版があり、大西洋中央海嶺と南西インド洋海嶺が接続する。

ブーベ島西海岸(2011年12月)

歴史[編集]

発見[編集]

ブーベ島南東海岸(1898年、Chun隊による)

この島はおそらく、1739年1月1日フランス東インド会社ジャン=バティスト・シャルル・ブーヴェ・ド・ロジエ (Jean-Baptiste Charles Bouvet de Lozier) によって発見された。ブーヴェは艦船 AigleMarie を率いる将校であり、「ブーベ島」の名は彼に由来する。しかし、島の位置についての計測が不正確であり、南緯54度・東経11度と東へ8度もずれて記録されてしまった。ブーヴェは周航を行わなかったので、発見された陸地が島であるのか大陸の一部であるのかさえはっきりしなかった。1772年にはジェームズ・クックがブーヴェの島を発見するために南アフリカから航海を行ったが、ブーヴェが報告した地点で島影を確認することはできなかった。クックは、ブーヴェが氷山を島と誤認したと結論づけ、引き上げている。

1808年、イギリス・ロンドンの捕鯨会社サミュエル・エンダービー社 (Samuel Enderby & Sonsの捕鯨船 Snow Swan の船長ジェームズ・リンゼイ (James Lindsay) によって島が発見された。リンゼイは島への上陸は行わなかったが、正確な位置の報告を行った。リンゼイが発見した島は、甚だしく誤った位置で報告されたブーヴェの島と別の島と考えられ、当初はリンゼイ島とも呼ばれていた。「リンゼイ島」と「ブーベ島」が同一の島であったとされるのはのちのことであり、しばらくは島の同定が困難な時期が続く。

アメリカの探検家ベンジャミン・モレル (Benjamin Morrellは、1822年に島に上陸してアザラシを狩ったと主張しているが、疑わしい。この島に「ブーベ島」の名を与えたのはモレルとされる[2]1825年12月10日、サミュエル・エンダービー社の捕鯨船 SprightlyLively を率いたジョージ・ノリス (George Norrisが島に上陸し、この島をリバプール島 (Liverpool Island) と命名、イギリスの国王に属するものと宣言した。しかしながら、ノリスは「リバプール島」がすでに発見された島であることを知らなかった。また、ノリスはこの島の付近に「トンプソン島」 (Thompson Island (South Atlantic)を「発見」しているが、今日では実在しない島と結論付けられている。1898年にはドイツの Valdivia 探検隊を率いたCarl Chunが島を訪れたが、上陸はしていない。

ノルウェーによる領有以後[編集]

1927年、ノルウェー隊の上陸

1927年、ノルウェーの船 Norvegia の乗組員が上陸して小屋を建設し、数か月間生活した。このことが「先占」の実績であるとして、ノルウェー隊の隊長であるラース・クリステンセン (Lars Christensen (explorer)は1927年12月1日にこの島がノルウェー領であると主張。1928年1月23日、ノルウェー王の裁可を経てブーベ島(ノルウェー語: Bouvetøya)はノルウェーの領域に編入された。イギリスはノルウェーの主張を認めて請求権を放棄。1930年にノルウェーの法律が成立し、ノルウェー王国の主権下の「属領」となった(王国の一部ではない)。

1950年代から60年代にかけて、南アフリカ政府から気象観測拠点としての関心が寄せられたが、あまりにも厳しい気象条件のために断念されている。1971年、ブーベ島とその領海は自然保護区に指定された。1977年にはノルウェーによって無人の気象観測拠点が設置された。

1979年9月22日、アメリカの人工衛星ヴェラが、ブーベ島とプリンスエドワード諸島の間で大規模な核爆発のような閃光を観測した(ヴェラ事件英語版)。南アフリカ共和国の核実験ではないかという説があるが、原因はよくわかっていない[3]

1994年、ノルウェーは38立方メートルのコンテナによるフィールド・ステーションを建設した。2007年10月19日、ノルウェー極地研究所 (Norwegian Polar Instituteは、フィールド・ステーションが衛星写真で確認できなくなったと報告した。のちの調査によって、氷の地すべりか雪崩によって建物が押し流されたと判明した。2009年現在、フィールド・ステーションの再建が計画されている。なお、無人気象観測拠点はダメージを受けていない。

行政[編集]

ブーベ島
Bouvetøya
Flag of Norway.svg
Bouvet-pos.png
国王 ハーラル5世
面積 58.5 km2
人口 0人
時間帯 UTC+1
ISO 3166-1 BV / BVT
ccTLD .bv

ブーベ島はノルウェーの属領ノルウェー語: biland)であり、法務・警察省 (Ministry of Justice and the Police (Norway)の極地局が管轄している。

南極とその周辺において、ノルウェーが属領として領有権の主張を行っている地域としては、ほかに南極大陸のドローニング・モード・ランド(クイーン・モード・ランド)とピョートル1世島がある。これらの地域は南極条約によって領土主権・請求権が凍結されている。ブーベ島は南緯60度以北にあるために南極条約の対象とはなっていない。

ノルウェーの持つ同種の「本土以外の領土」としては、北極海にスヴァールバル諸島ヤンマイエン島があるが、これらは属領ではなく、本国の一部とされている。

ISO 3166では、国に準ずる地域として国名コードが設定されており、2文字コードで BV 、3文字コードで BVT が割り当てられている。下位行政区分コードの規格として ISO 3166-2:BV があるが、これに対応する割り当ては行われていない。

通信[編集]

ブーベ島への電話衛星回線に限られ、国際電話コードの割り当てはない。また、郵便番号もない。

インターネット国別コードトップレベルドメインは、原則として国名コード (ISO 3166) によって設定されているため、ブーベ島には .bv が割り当てられている。ただし、現在は使用されていない。

アマチュア無線のコールサインとして、ノルウェーの通信当局はブーベ島に 3Y のプリフィックスを割り当てており、米国アマチュア無線連盟英語版が作成したDXCC英語版のリストでは、ブーベ島は独立した地域(エンティティ)として扱われている。ごく希に学術調査員などが免許を得て運用したことがある程度で、交信が困難なエンティティであるが、1990年の3Y5Xは夕方のTVニュースでも報じられたぺデイションで日本からも多くの局が交信に成功した。

自然・環境[編集]

気候[編集]

ブーベ島の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °C (°F) 3
(37)
4
(39)
3
(37)
2
(36)
1
(34)
0
(32)
−1
(30)
−1
(30)
−1
(30)
0
(32)
1
(34)
3
(37)
1.2
(34)
平均最低気温 °C (°F) 0
(32)
0
(32)
0
(32)
0
(32)
−2
(28)
−4
(25)
−5
(23)
−5
(23)
−5
(23)
−3
(27)
−2
(28)
−1
(30)
−2.2
(27.9)
雨量 mm (inch) 0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
降雪量 cm (inch) 0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
出典: www.climate-zone.com [4]

生態系[編集]

ブーベ島北端の Cape Valdivia(2009年)

サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島や、サウス・オークニー諸島サウス・シェトランド諸島とともに、スコシア海諸島のツンドラエコリージョン(生態域)に分類されている。その厳しい気候や氷に覆われた地形、猛烈な風のために、植生はコケ植物蘚類地衣類)に限られ、樹木は育たない。

島にはアザラシ・アシカ類(鰭脚類)、ペンギン類、海鳥が生息している。より詳細に見れば、鰭脚類ではミナミゾウアザラシナンキョクオットセイなど。ペンギンではヒゲペンギンマカロニペンギンアデリーペンギンなど。海鳥ではギンフルマカモメハイイロオオトウゾクカモメアシナガウミツバメクロハラウミツバメナンキョククジラドリなどである。

1971年に発令された王国令によって島全体が自然保護区に指定されている。

フィクションにおけるブーベ島[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Space Pictures This Week: Cigar Galaxy, Speedy Star”. National Geographic Daily News. National Geographic (2014年2月28日). 2014年4月5日閲覧。
  2. ^ Bouvet Island - MISR Images, NASA
  3. ^ 吉田一郎 『世界飛び地大全』 社会評論社、280p。
  4. ^ BOUVET ISLAND”. 2011年11月2日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]