ヒミズ (漫画)

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ヒミズ』は、古谷実による日本の漫画2001年から2003年にかけて『ヤングマガジン』(講談社)にて連載された。単行本は全4巻(講談社ヤンマガKC)、新装版は全2巻。キャッチコピーは、「笑いの時代は終わりました…。これより、不道徳の時間を始めます」。

概要[編集]

古谷実の商業誌連載第4作である。それまでのギャグ路線から一線を画した作品で、人間のより暗い部分を見せるサスペンスホラー漫画に仕上がっている。なお、最終回のラストが単行本化の際に変更されている。

山崎燕三による小説版が2007年7月に刊行されている(2012年に再刊している)。茶沢景子の視点でストーリーが進行し、原作漫画とは異なる展開となっており、漫画では描かれなかった後日談が追加されている。

2004年にOi-SCALEプロデュース(脚本・演出:林灰二、出演:村田充つぐみほか)で舞台化された。

2012年には園子温監督により映画化され、日本国外の映画祭で高く評価された(後述)。

あらすじ[編集]

中学生にして貸しボート屋を営む住田祐一は、不遇な現実に諦観しつつも、平凡な生活を送ることを夢見ていた。ところがある日、かつて蒸発するも突如戻って来た父親と暴力団からの虐待を受ける。しかも、母親が中年男と駆け落ちして失踪したことを機に孤立無援となった挙句、それに耐え兼ね父親を衝動的に殺害するという取り返しのつかない事態に陥り、天涯孤独の身となる。住田は普通の人生を送ることを諦め、「悪い奴」を殺すべく、夜の街を徘徊するようになる。

茶沢景子は住田が天涯孤独になる以前から気にかけており、彼が殺人行動を起こしたことを知ってもなお救い出そうとする。しかし、茶沢の想いとは裏腹に、住田の人生は深い絶望に落ちていった。

登場人物[編集]

住田祐一(すみだ ゆういち)
本作の主人公。中学3年生。15歳。幼少時に両親は離婚し、母親と川沿いに住み、貸しボート屋を営んでいる。冷徹な性格で、常に現実的で平凡な生活を望む。周りの人には見えない化け物が見えることが悩みであり、本人を夢見ることから遠ざける一因になっている。母親が駆け落ちし、自身を虐待する父親を衝動的に殺害したことで、中学生にして天涯孤独の身となり、自分が「特別な存在」に墜ちてしまったことに絶望する。それ以来学校へは行かず、「悪い奴」を殺すためにひたすら街を徘徊するようになる。
漫画では下の名前の設定は無かったが、小説版にて下の名前が判明した。
夜野正造(よるの しょうぞう)
中学3年生。昔、いじめられていたところを住田に助けられる。住田と最も親しい友人だが、住田の事件をきっかけに一方的に絶交されてしまうことになる。金に対してとてもがめつい。スリの常習犯。
赤田健一(あかだ けんいち)
中学3年生。いじめられっこ。ある日の夜、トランプのババに漫画家になることを予言されてから、漫画家になることが夢になる。ちなみに漫画は下手。
小野田きいち(おのだ きいち)
赤田の従兄弟。漫画家になるのが夢。赤田とは反対に、実力もあり、応募した作品が賞を受ける程。温厚で誠実な性格から、誰からも慕われている。
小説版では有名私立進学校に通っている。
茶沢景子(ちゃざわ けいこ)
住田のクラスメイト。15歳。目立たず地味な雰囲気だったが、住田と接するうちにいつしか彼に惹かれ、互いに愛し合うようになる。住田の家に頻繁に現れ、学校へ来なくなった彼をいつも気にかけている。常軌を逸した行動に走る彼を止めようとする唯一の存在。
小説版では主人公に設定されている。
飯島テル彦(いいじま テルひこ)
スリの常習犯の若者。夜野はスリの犯行現場を飯島に目撃されてから、彼とつるむようになる。夜野に強盗を働かないかと持ちかけてくる。
野上ヨシヒサ(のがみ ヨシヒサ)
高校生。隣に住んでいる幼馴染のタエに恋心を抱いているが、それが覗きや住居侵入など間違った方向に向かっている。住田と面識はないが、デパートのトイレにあった落書きを元に、住田から「悪い奴」だとして目を付けられる。
内田(うちだ)
住田がアルバイトをするパチンコ店の同僚の女の子。「女彫り師」を目指している。住田は彼女に刺青を入れてくれるように頼む。
塚本とし夫(つかもと としお)
49歳。ホームレス。住田家(コンテナ住居)で雨宿りさせてもらったことをきっかけに、住田の貸しボート屋を手伝うようになる。普段は愛想が良く謙虚。
金子(かねこ)
住田の父が借金をしているサラ金を経営する暴力団の組員。借金返済を迫り住田を攻撃するが、後に彼の度胸が気に入ったのか、「悪い奴」を必死に探す住田に拳銃を渡す。
お巡りさん
身寄りがなくなってしまった住田を心配している。

書籍情報[編集]

漫画本編[編集]

小説版[編集]

『小説 ヒミズ ver.Keiko Chazawa』は、KCノベルズとして講談社から2007年に出版された。著者は山﨑燕三。表紙は古谷実が新たに描きおろした。内容は漫画版の原作にかなり忠実であるが、ギャグ要員の赤田が登場しないなど、ところどころ小説という形式にあわせて設定の変更が見られる。ver.Keiko Chazawaとあるように、茶沢の一人称で住田を外側から描写してあること、茶沢の内面描写が多いことが特徴である。「新たなる結末」と惹句にあるのは、漫画版の結末にエピローグが追加されたものである。映画化に伴い、2012年に『小説ヒミズ 茶沢景子の悠想』として再版された。なお、映画版も茶沢にかなりスポットをあてているが、茶沢の性格も家族も結末も小説版とは異なっている。

舞台版[編集]

映画版[編集]

ヒミズ
監督 園子温
脚本 園子温
原作 古谷実
製作 梅川治男
山崎雅史
音楽 原田智英
撮影 谷川創平
編集 伊藤潤一
配給 ギャガ
公開 イタリアの旗 2011年9月6日VIFF
日本の旗 2012年1月14日
上映時間 130分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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園子温監督による実写映画として、2012年1月14日に日本公開された。PG-12作品。

出演した染谷将太二階堂ふみ第68回ヴェネツィア国際映画祭にて新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した[1]

震災の影響もあり、夜野をはじめとした多くの登場人物の年齢や設定が変わっている(詳細は後述)。

ストーリー[編集]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

原作漫画との相違点[編集]

  • 映画版での世界は「震災後の日本」として描かれている。
  • 夜野は住田の同級生ではなく、震災被災者の中高年男性となり、性格なども変わっている。
  • 赤田および赤田の従兄弟の小野田が登場せず、彼らについてのプロットがカットされている。
  • 野上が登場せず、彼についてのプロットがカットされている。
  • 塚本が登場せず、彼についてのプロットがカットされている。
  • 住田が新聞配達やパチンコ店で働く描写がなく、関連するプロットがカットされている。
  • 住田にしか見えない怪物が登場しない。
  • 茶沢は住田同様、機能不全家庭(母からの虐待)に苦しめられている設定が追加されている。
  • 住田も茶沢もマンガほどクールではない。
  • 住田を気にかける警官が登場しない。
  • ラストの展開が変更されている。

備考[編集]

  • 園は撮影直前に発生した東日本大震災を受けて、台本を大幅に変更した。また、被災地の宮城県石巻市での撮影をも行っている。[2][3]
  • 映画版の公開後、架空の大地震と原発事故に見舞われた家族を題材にした姉妹映画『希望の国』を公開している。

関連商品[編集]

本作のソフトは2012年7月3日に発売された。発売元はGAGA、販売元はポニーキャニオン。

  • ヒミズ コレクターズ・エディション(ブルーレイ版1枚組、DVD版2枚組 収録時間本編130分、特典映像127分)
    • 封入特典:古谷実描き下ろしイラストポストカード
    • 音声特典:監督によるオーディオコメンタリー
    • 映像特典:キャスト・プロフィール(静止画)、メイキング、ヴェネチア国際映画祭の模様、ヴェネチア国際映画祭受賞後の主役2人の記者会見、初日舞台挨拶、サプライズ舞台挨拶、未公開映像、劇場およびTV予告編集

脚注[編集]

外部リンク[編集]