シリアルATA
シリアルATA(SATA、Serial Advanced Technology Attachment、シリアルエーティーエー、サタ、エスアタ)とは、コンピュータにハードディスク、SSDや光学ドライブを接続する為のインタフェース規格である。2010年時点において、SCSIやパラレルATAに代わって主流となっている記録ドライブの接続インタフェース規格である。
なお、後述する "Serial ATA Revision x" などは規格の版番号であり、規格名称そのものではない。それらから転じた、「シリアルATA II(ないしは「シリアルATA 2」)」や「シリアルATA III」 という表記および呼称は公式の用語ではない[1]。正規の規格名称は、本項目名称の Serial Advanced Technology Attachment である。
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概要 [編集]
経緯 [編集]
旧規格であるATA(パラレルATA)は複数の信号線によってデータを転送するという原理上、伝送経路間でわずかに信号のずれ(クロックスキュー)が発生するため、これを許容して全ての経路でデータが到着するのを待つ時間が必要である。転送速度を向上させる場合は待ち時間を短くしなくてはならないが、限界が見えてきた為、更なる転送速度向上が可能な規格として誕生した。なお、最初はUltra SATA/150の名で規格が発表された。 シリアルATA ワーキンググループが2000年2月に発足。2000年11月にシリアルATA 1.0が発表された。この時に、2007年頃(シリアルATA 3)までの大まかな開発予定も示された。
シリアルATA 2 ワーキンググループの発足は2002年2月。後にSATA-IO (Serial ATA International Organization) へと改名。
シリアルATA 2という表記は当初、商品性能表記での混乱などもあり、特定の機能であるNCQや転送速度300MBytes/secを表す名前だという誤解があった。正しくはシリアルATA 2 ワーキンググループが策定した(策定を目指す)規格全体の総称と考えるべきものである。2005年にはこのような誤解を避けるため、SATA1とSATA2を単一規格にまとめたSerial ATA2.5が発表された。 発売当初は形状の規格が混乱した状態にあった。その為当初市場に出回った非常に「抜け易い形状」のシリアルATAケーブルやコネクタが混在する点には注意が必要である。
パラレルATA (ATAPI, IDE) との違い [編集]
従来の主流であるパラレルATAとの比較では、以下のような違いがある。
- 信号経路のシリアル化。
- ホットスワップ[2]への対応。
- 通信速度向上。UDMA6の133.3MBytes/secから150MBytes/secに。
- ケーブル長が最大45.7cmから1mに(外付け用の規格eSATAでは2m)。
- 信号の伝送に使用する電圧がパラレルATAの5Vから0.5Vに低減すると共に、USBなどに使われているLVDS技術を使用している。これにより消費電力と信号の干渉の低減、ケーブル長の延長を実現している。
- 従来は80芯40pinコネクターのフラットケーブルであったものを7pinのケーブルとした。これによりケーブルの取り回しを容易にするとともに、コンピュータ内部のエアフローを改善し、配線の混雑を減らす。コネクタ部も新しくなったため、パラレルATA規格とシリアルATA規格の物理的な接続に互換性はない。例えばパラレルATAインターフェースのマザーボードにシリアルATAのドライブは使用できず、その逆も不可である。
- マスタースレーブ接続の概念の廃止。1本のケーブルに1台のデバイスを接続するようになった。2003年以前に設計された、従来のパラレルATAのマスタースレーブ接続を想定しているOSでは誤動作を起こす可能性があるが、インタフェースの違いをチップセットが吸収できる場合が多い(パラレルATAのエミュレートモードやデバイスドライバでカバーしている)。
- USBと同様に、シリアルATA規格ではホストコントローラのレジスタインタフェースは規格の範囲外である。ホストコントローラのAHCI規格はシリアルATAの規格範囲外である。パラレルATAでも明示的にレジスタインタフェースが規定されていたわけではないが、規格内の「タスクファイル」がそのまま実際のレジスタと見做すことができる実装がほとんどであるため問題にならなかった。
- リンクレイヤでは、パラレルATAの機能をほぼ同等に備える。そのためパラレルATAのレジスタインタフェースをエミュレートするホストコントローラを比較的容易に実装できる。インテルのICH(I/O コントローラー・ハブ)などは実際にそのように実装されている。
Advanced Host Controller Interface [編集]
Advanced Host Controller Interface (AHCI) は、シリアルATA 2 と密接な関連を持つものの、ホストコントローラーの規格であり、シリアルATA/シリアルATA 2規格に含まれるものではない。
シリアルATA対応のホストコントローラーのなかには、動作モードにこの"AHCI"の他、IDEエミュレーションモード("IDE"あるいは"PATA"などと表記)を持つものがあり、これら動作モード設定においてサポートするオペレーティングシステムやデバイスドライバとの整合性を図る必要がある物が多い[4]。
プロトコル [編集]
- トポロジ
- エンコード
- 物理層では8b/10bエンコードを行う。よってデータリンク帯域は物理レートの80%となる。(例:SATA 3.0Gbpsでの実効データレートは2.4Gbps、300MByte/s)
規格 [編集]
シリアルATA 1.0 (S-ATA) [編集]
- 150MBytes/secの転送速度を持つ。
- First Generation: 1.5Gbit/sec 現行コネクタで対応
- Second Generation: 3.0Gbit/sec 現行コネクタで対応
- Third Generation: 6.0Gbit/sec 新しいコネクタで対応
シリアルATA 1.0a [編集]
シリアルATA 2.0 (S-ATA 2) [編集]
Serial ATA 1.0aを基に拡張したもの。Serial ATA 1.0a策定後から2004年頃までにとりまとめられた技術的な拡張全体を指す(エラー訂正などの都合のため、1バイトの情報の転送に実際は10ビットが必要)。
- Serial ATA300とも書かれるように300MBytes/secの転送速度を持っている
- NCQ (Native Command Queuing) やマルチポート等の概念を入れる
- 15ピン電源端子にアクティブLEDやスピンアップ制御機能をオプション扱いで盛り込む
- インタフェース仕様の統一の為、AHCIが規格化された。ATAエミュレートが不要な為性能も向上する。
シリアルATA 2.5 (Serial ATA Revision 2.5) [編集]
2005年8月23日付 SATA-IO、シリアルATAのRevision 2.5仕様を策定
- SATA 1.0aとSATA 2.0の拡張仕様を統合
シリアルATA 2.6 (Serial ATA Revision 2.6) [編集]
2007年3月5日付 SATA-IO、シリアルATAのRevision 2.6仕様を策定
- 小型フォームファクタ用スリムドライブ向けのスリムケーブルとコネクタ
- 1.8インチHDD向けのMicro SATAコネクタ
- Mini SATAの内蔵/外付けマルチレーンケーブルとコネクタ
- 複雑なワークロード環境のデータに対するネイティブコマンドキューイング (NCQ) の優先度の強化
- NCQのアンロードの強化
シリアルATA 3.0 (Serial ATA Revision 3.0) [編集]
2008年8月18日付 SATA-IO 発表、2009年5月27日策定完了[5]。米Marvell社からSerial ATA Revision 3.0コントローラチップが出荷されており、マザーボードやインタフェースカードに搭載、販売されている。パソコン向けチップセットにおけるサポート(機能の内蔵)は、AMDが890GXのサウスブリッジのSB850へSerial ATA Revision 3.0コントローラを実装させ、インテルはSandy Bridgeに対応するチップセット6x世代から実装した。
- 転送速度 6Gbps(実効速度600MB/s)サポート
- 既存のコネクタ形状を維持
- 電力管理能力の向上
- アイソクロナス転送(帯域保障)によるNCQ (Native Command Queuing) ストリーミングコマンドの追加(オーディオや動画等の広帯域データ転送向け)
- NCQコマンドのホストコントローラ処理や管理強化によるパフォーマンスの最適化
- 1.8インチドライブ向け小型LIF (Low Insertion Force) コネクタのサポート
- ノートPC用7mmスリム光学ドライブ向けコネクタのサポート
- INCITS ATA8-ACS 規格適合(HDDとSSDの識別が可能となる)
- 低コスト・低消費電力の方向性を継続
eSATA [編集]
External Serial ATAの略称。Serial ATA 1.0aの拡張規格で、字の綴りから「イーサタ」等とも呼ばれる。外付けドライブ向けに定義されたもの。
- 誤接続を防ぐ為、eSATAのコネクター形状はシリアルATAのコネクター形状とは違うものになっている
- 接続ケーブルの長さは最大2m
- ホスト(コンピュータ)の電源を入れたまま、接続ケーブルを抜き差し出来るホットスワップ[2]に対応
- eSATA外部用コネクターとケーブルは規格上、5000回以上の抜き差しに耐えること、となっている(SATA内部用コネクターは、規格上は50回以上となっている)
- eSATA(3Gbps)はUSB 2.0接続の5倍以上の速度で通信可能、eSATA (6Gbps) はUSB 3.0と同程度
- コネクタ中央の台座部分がUSBコネクタと同じサイズであり、またeSATAもUSBも端子がコネクタの片面にしかついていない事を利用して、片面にUSB用の端子を、もう片面にeSATA用の端子を実装することで、USBケーブルとeSATAケーブルの両方を排他利用して接続できる、コンボコネクタと呼ばれるものも存在し、一部のマザーボードやUSBとeSATAの両方に対応する外付けハードディスクなどで採用されている
- なお、コネクタの厚みはUSBケーブルの方が厚くなっており、横幅はeSATAケーブルの方が長くなっている為、逆差しをすることはできなくなっている
シリアルATA Express [編集]
2011年8月10日付 SATA-IO 発表。内部インターフェースとしてPCIeを、ソフトウェア基盤としてSATAを用いることでコストを抑え、従来のアプリケーション資産と互換性を保ちつつ、規格上の最大転送速度 8Gbps(X1接続)および16Gbps(X2接続)を実現。新たなデバイス側およびマザーボード側コネクタ規格も制定することで、高速なSATA Express 製品と従来のSATA製品への両対応を可能。
SFF-8639 [編集]
ケーブル、コネクター、ポート [編集]
データ用 [編集]
| ピン | 機能 |
|---|---|
| 1 | GND |
| 2 | A+(転送) |
| 3 | A−(転送) |
| 4 | GND |
| 5 | B−(受信) |
| 6 | B+(受信) |
| 7 | GND |
| - | N/C(カギ部) |
| 7ピン データ用ケーブル | |
電源 [編集]
標準コネクター [編集]
| ピン | 対応規格 | 機能 | |
|---|---|---|---|
| — | N/C(カギ部) | ||
| 1 | 3 | 3.3 V | |
| 2 | 3 | ||
| 3 | 2 | ||
| 4 | 1 | GND | |
| 5 | 2 | ||
| 6 | 2 | ||
| 7 | 2 | 5 V | |
| 8 | 3 | ||
| 9 | 3 | ||
| 10 | 2 | GND | |
| 11 | 3rd | アクティブLED/スピンアップ制御 (サポートドライブのみ) |
|
| 12 | 1st | GND | |
| 13 | 2 | 12 V | |
| 14 | 3 | ||
| 15 | 3 | ||
| 15ピン 電源用メスコネクター このコネクターはホットプラグに必要な 4ピン、12ピンを備えていない[6]。 |
|||
スリムコネクター [編集]
ノートPCの光学ドライブなど向けに、シリアルATA 2.6 で規格化。
| ピン | 機能 | |
|---|---|---|
| — | N/C(カギ部) | |
| 1 | デバイス存在 | |
| 2 | 5 V | |
| 3 | ||
| 4 | 診断用 | |
| 5 | GND | |
| 6 | ||
マイクロコネクター [編集]
1.8インチHDDなど向けに、シリアルATA 2.6 で規格化。なお、データ用のマイクロコネクターもあり、データ用の標準コネクターに似ているが、少しだけ薄い。
| ピン | 機能 | |
|---|---|---|
| 1 | 3.3 V | |
| 2 | ||
| 3 | GND | |
| 4 | ||
| 5 | 5 V | |
| 6 | ||
| 7 | 予約 | |
| 8 | ベンダー依存 | |
| 9 | ||
他の接続規格との比較 [編集]
「デバイス帯域幅の一覧」も参照
| 通称ないしは略記 | 保証されている帯域幅 (Mbit/s) | 最大転送速度 (MByte/s)[7] | 最大ケーブル長 (m) | 電源供給 | チャンネル毎の最大デバイス数 |
|---|---|---|---|---|---|
| SATA 3.0 | 6,000 | 600[8] | 1 | No | 1[9] |
| SATA 2.0 | 3,000 | 300[8] | |||
| SATA 1.0 | 1,500 | 150[8] | 1 | ||
| eSATA | 6,000 | 600[8] | 2 with eSATA HBA[10] | 1[9] | |
| eSATAp | 5 V/12 V[11] | ||||
| PATA 133 | 1,064 | 133.5 | 0.46 (18 in) | No | 2 |
| SAS 3.0 | 12,000 | 1200[8] | 10 | No | 128[12] |
| SAS 2.0 | 6,000 | 600[8] | |||
| SAS-1.0 | 3,000 | 300[8] | |||
| FireWire 3200 | 3,144 | 393 | 100 [13] | 15 W, 12–25 V | 63 [14] |
| FireWire 800 | 786 | 98.25 | 100[15] | ||
| FireWire 400 | 393 | 49.13 | 4.5[15][16] | ||
| USB 3.0 | 4,000 | 400[8] | 3[17] | 4.5 W, 5 V | 127 [14][17] |
| USB 2.0 | 480 | 60 | 5[18] | 2.5 W, 5 V | |
| USB 1.0 | 12 | 1.5 | 3 | Yes | |
| SCSI Ultra-640 | 5,120 | 640 | 12 | No | 15[19] |
| SCSI Ultra-320 | 2,560 | 320 | |||
| Fibre Channel over optic fiber |
10,520 | 2,000 | 2–50,000 | No | 126[20] |
| Fibre Channel over copper cable |
4,000 | 400 | 12 | ||
| InfiniBand Quad Rate |
10,000 | 1,000 | 5 (copper)[21][22]
<10,000 (fiber) |
No | 1[23] Many[24] |
| Thunderbolt (Light Peak) | 10,000 | 1,250 | 100 | Yes[25] | Many |
脚注 [編集]
- ^ serialata.org
- ^ a b 実際にホットスワップを使用するには、ストレージ、ケーブル、コネクター、ホストバスアダプタ(SATAコントローラー、チップセット)、BIOS、デバイスドライバー、OSの全てが対応している事が必須である。
- ^ 伊勢雅英のIT見聞録 SATA-PATA変換アダプタを介してATAPIデバイスが動かないワケ (PC Watch)
- ^ コントローラーがマザーボードに内蔵の場合、BIOS画面で設定する。
- ^ http://www.sata-io.org/technology/6Gbdetails.asp
- ^ https://raid.wiki.kernel.org/index.php/Hardware_issues#Hotplug_support_by_SATA.2FSAS_cables
- ^ 8b/10bエンコード前の生のビットレート
- ^ a b c d e f g h “Technologies That Use 8b/10b Encoding”. 2011年8月21日閲覧。
- ^ a b ポートマルチプライヤ(英)を使用した場合は1チャンネル(ポート)に15台の機器を接続することができる(ただし2006年11月現在で6台以上をサポートした製品は存在していない)。
- ^ パッシブアダプターでは1 m
- ^ “eSATAp Application”. Delock.de. 2010年1月26日閲覧。
- ^ SAS Expanderを用いる事により1チャンネル(ポート)に65000台超の機器を接続することができる。
- ^ 特別なケーブルを用いた場合。通常のケーブルで数珠つなぎ(ディジーチェーン)する場合は72mまで。
- ^ a b HUBを用いた場合
- ^ a b “FireWire Developer Note: FireWire Concepts”. Apple Developer Connection. 2009年7月13日閲覧。
- ^ 16 cables can be daisy chained up to 72 m
- ^ a b Frenzel, Louis E. (2008年9月25日). “USB 3.0 Protocol Analyzer Jumpstarts 4.8-Gbit/s I/O Projects”. Electronic Design. 2009年7月3日閲覧。
- ^ USB hubs can be daisy chained up to 25 m
- ^ ホストバスアダプタによって増やされる
- ^ スイッチングにより16,777,216個
- ^ Minich, Makia (2007年6月25日). “Infiniband Based Cable Comparison (PDF)”. 2008年2月11日閲覧。[リンク切れ]
- ^ Feldman, Michael (2007年7月17日). “Optical Cables Light Up InfiniBand”. HPCwire (Tabor Publications & Events): p. 1 2008年2月11日閲覧。
- ^ point to pointの場合
- ^ switched fabricの場合
- ^ 2012年製品化の銅線では最大10W
関連項目 [編集]
- ハードディスクドライブ
- ニアラインストレージ
- 光学ドライブ
- SASI
- SCSI (Small Computer System Interface)
- ST-506
- ESDI
- ATA
- IDE
- ATAPI
- Serial Attached SCSI
- 平衡接続
- 転送速度
外部リンク [編集]
- Serial ATA Working Group
- Serial ATA (SATA) pinout
- シリアルATAのコネクタ規格まとめ(画像付) | BLOGRAM
- 大原雄介の最新インターフェイス動向 Serial ATA 3.0編その1
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