複信

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
半二重から転送)

複信(ふくしん;Duplex)とは、電気通信における通信方式の一種を指す用語であり、通信に参加している者(機器)同士が同時に送信できる方式をいう[1]

概要[編集]

一般的な複信方式の例としては、電話における通話が挙げられる。電話における通話は、相手の声を聞きながら話すことができるため、複信である。一方で、一般的な業務用無線における通話は、誰か1人が送信していると他の通信参加者は送話ができないため、完全な複信ではない。このような方式は、半複信と呼ばれる。また、ラジオ放送などは、視聴者は受信をすることしかできず、送信は行わないため複信ではない。このような方式は、単信という。

複信を実現する手段として、最も簡単な方法は、伝送方向(送信・受信)別に2つの通信線路を使用することであるが、1つの伝送路で送受信を行う技術もある。例えば、一般的な固定電話回線は2線式であり、送信と受信は同じ通信線路を共有しているが、エコーキャンセラによって無理のない複信を実現している。

通信方式の種別[編集]

電気通信における、通信方式には次のようなものがある。

日本語 英語 特徴 用途
全二重通信(複信) Full Duplex 双方が同時に送信できるもの 電話・高速データ通信
半二重通信(半複信) Half Duplex 一方が送信している間は受信を行うもので、伝送方向を切り替えられるもの プッシュ・ツー・トークトランシーバーマスタースレーブ方式のセンサネットワーク
単方向通信(単信) Simplex 単方向の伝送のみ可能なもの。 放送

単一伝送路での全二重通信方式[編集]

日本語 英語 略称 原理 帯域利用効率 同期 フェージング耐性 回路規模 特徴 用途
時分割複信 Time Division Duplex TDD 情報を時間軸で圧縮し、送受信方向を切り替え 時間配分を変えることで、送受信のデータ量の割合の動的変化が可能 TCM-ISDNPHSTD-CDMA、デジタル業務無線防災無線
周波数分割複信 Frequency Division Duplex FDD 周波数帯域を分割する 不要 送受信の分離に帯域フィルタ回路が必要 マルチチャネルアクセス無線携帯電話通信衛星
エコーキャンセラ Echo Canceler 自分の発信した電気信号を受信した信号から差し引いて、相手からの電気信号を検出 不要 伝送路の特性の変化への対応が必要 2線式ツイストペアケーブルによるEuro-ISDN電信電話回線

脚注[編集]

  1. ^ 複信方式 - dskwiki”. www.dsk.or.jp. 2020年9月12日閲覧。

関連項目[編集]