ウェスタン・デジタル

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ウェスタン・デジタル
Western Digital Corporation
種類 公開会社
市場情報 NYSE: WDC
本社所在地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国カリフォルニア州アーバイン
設立 1970年4月23日
事業内容 ハードディスクドライブ製造
代表者 Thomas E. Pardun (会長)
売上高 98億5000万USドル (2010年)
従業員数 24,750 (2007年)
外部リンク www.wdc.com
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ウェスタン・デジタル製HDD
WD Caviar WD400

ウェスタン・デジタル(Western Digital Corporation、WDやWDCと略記される)は世界的なハードディスクドライブ製造企業であり、集積回路ストレージ製品も長年製造したコンピュータ周辺機器企業である。

歴史[編集]

1970年代 - 創業[編集]

1970年4月23日ゼネラル・デジタルGeneral Digital)として設立された。当初は主にMOS半導体の試験装置の製造企業だったが、何人かの個人投資家と大企業のエマーソン・エレクトリックから資金提供を受けると、特殊な半導体を製造する企業となった。1971年7月、現在の名称に改称するとともにカリフォルニア州ニューポートビーチに移転し、直後に最初の製品WD1402A UART」をリリースした。

1970年代の初期、ウェスタン・デジタルは電卓用チップで売り上げを稼いでいた。1975年には、世界最大の独立系電卓チップメーカーとなった。しかし、1970年代中頃の石油危機と最大の顧客だった電卓メーカーボーマー(Bowmar)の倒産によって、業績は激変する。1976年にはウェスタン・デジタル自身も連邦倒産法第11章の適用を申請した。その後、エマーソンはサポートをやめ、ウェスタン・デジタルは自主再建を目指すこととなる。

ウェスタン・デジタルはこの時期に特筆すべき製品をいくつか発表している。MPC-1600はマルチチップ型のマイクロプログラム方式CPUであり、DECLSI-11システムに使われるとともに、UCSD p-SystemバージョンIIIとUCSD Pascalを実行できる独自のPascal MicroEngineとしても発売された。WD1771などの一連のフロッピーディスクドライブコントローラーチップもある。

1980年代前半 - ストレージ事業に参入[編集]

WD1771と関連製品によってウェスタン・デジタルはストレージ関連産業へ参入した。1980年代初期には、ハードディスクのコントローラーを作っており、1983年にはIBMPC/ATに供給する契約を勝ち取った。そのコントローラーWD1003ATAインターフェイスのベースとなった。ATAは、ウェスタン・デジタルがコンパックおよびCDCのMPI部門(現在のシーゲイト・テクノロジーの一部)と共に1986年に共同開発したものである。

1980年代後半 - 事業の多角化[編集]

1980年代中盤以降、ウェスタン・デジタルはグラフィックカード(1986年に子会社化したパラダイス(Paradise)による)、チップセット(1987年に買収したファラデーによる)、ネットワーキングなどに拡大していった。それらは事業としてうまくいったが(特にパラダイスはVGAカードで成功)、ストレージ関連のチップとディスクコントローラーが最も大きな収入源であった。1986年、シングルチップのSCSIコントローラーWD33C93をリリース。これは最初の16ビットバス・マスタリングSCSIカードWD7000 FASSTで使われた。1987年、PC/ATのフロッピーディスク・コントローラー回路をワンチップ化したWD37C65をリリース。これは後のスーパーI/Oと呼ばれるチップの先祖にあたる。1988年、WD42C22 Vanilla(バニラ)をリリース。世界初のシングルチップATAハードディスク・コントローラーである。

1988年にはウェスタン・デジタルの歴史上最も大きな変化があった。その年にPCハードウェアメーカータンドンTandon Corporation)のハードディスク生産工場を買い取ったのである。ウェスタン・デジタルがそこで最初に生産したのは「Centaur」(センタウル)シリーズと名づけたディスクドライブである。

1990年代 - ハードディスク事業に専念[編集]

1991年には、PC業界がST-506ESDIドライブからATAとSCSIに移行するにつれてハードディスク・コントローラーの必要とされる個数が減り(デイジー・チェーン接続により、一台のコントローラーに複数のディスクを接続できるようになったため)、徐々に成長が減速してきた。 同年、ウェスタン・デジタルはCaviar(キャビア)ドライブをリリースした。これには組み込み型サーボという最新技術を使い、診断システムもコンピュータ化した。

Caviarドライブは大成功を収め、ウェスタン・デジタルはハードディスクに専念することを決め、他の部門を売却した。Paradiseはフィリップス社に売られ、ネットワーキングとフロッピードライブ・コントローラー部門は SMC Networks に行き、SCSIチップ部門はアダプテックに行った。1995年頃になるとCaviarの技術的優位性に翳りが見え始めた。特にクアンタム(Quantum)の追い上げが激しく、ウェスタン・デジタルは低迷期を迎えた。

今回の製品やアイデアはうまくいかなかった。3インチのPortfolio(ポートフォリオ)ドライブは失敗し、CD-ROMインターフェイスのSDXハードドライブも失敗した。また、製品品質が悪化しつつあり、他社に追い抜かれるようになったのである。それまでウェスタン・デジタルを採用してきたシステム構築業者やPC愛好家は、ライバル(特に1990年代後半に頭角を現してきたマックストア(Maxtor))に流れていった。

1998年、この流れを断ち切るため、ウェスタン・デジタルはIBMに援助を求めた。この協定によりウェスタン・デジタルはGMRヘッドなどIBMの技術を使用する権利を得て、IBMの生産設備にもアクセスすることができた。この成果は1999年初期のExpert(エキスパート)シリーズに生かされた。結果として(2000年にモーター制御チップの不良によるリコールがあったものの)ウェスタン・デジタルは市場での地位を取り戻した。ウェスタン・デジタルはその後IBMとの協定を終了させた。

2000年以降[編集]

ウェスタン・デジタルは2001年、8MBのキャッシュを主要なATAハードドライブに内蔵した。当時、そのクラスのHDDでは2MBのキャッシュが普通だった。ウェスタン・デジタルは、この8MBキャッシュのモデルをSpecial Editionと呼び、型番上も2MBのものと区別している(8MBはJB、2MBはBB)。最初の8MBキャッシュドライブは100GBの WD1000JB であり、すぐに40GBから250GBまでの製品がリリースされた。ウェスタン・デジタルではJBモデルをファイルサーバ向きの製品と位置づけている。

2003年、ウェスタン・デジタルは最初の10,000rpmシリアルATAHDDをリリースした。容量は36GB、平均アクセス時間は6ミリ秒以下である。さらに静粛性の高い74GBのWD740GDをリリース。2004年現在、Raptor(ラプター)ドライブは5年間の動作保証付きとなっている。

最近では、ウェスタン・デジタルは1年保証という短い保証期間のドライブを低価格で売っているが、これに追加の保証オプションを購入して保証期間を延ばすサービスを行っている。これにより、1種類の製品を2つの市場に提供することが可能となっている。

日立グローバルストレージテクノロジーズ買収[編集]

2011年3月7日日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST・当時、現・HGST)の親会社であるヴィヴィティテクノロジーズ(Viviti Technologies Ltd.)の全株式を、その親会社である日立製作所より現金35億ドルおよびウェスタン・デジタル株2,500万株(7億5,000万ドル相当)で取得し、ウェスタン・デジタルの完全子会社とすることで合意、正式契約を締結したと発表した[1]。なお、2009年10月14日にウェスタン・デジタルはマレーシアサラワク州のHDD用円板基材(サブストレート)製造拠点を日立GSTに譲渡しており、近隣の日立GSTの製造拠点とともにウェスタン・デジタルに回帰することとなった。また、日立GSTの前身はIBMのHDDハードディスク事業に日立の同事業を統合させたものであり、奇しくもかつて援助を求めたIBMの事業を手に入れることとなった。なお、日立GST統合後は日立製作所から2名が取締役として就任し、また日立GSTの現社長最高経営責任者(President & CEO)のスティーブ・ミリガンは社長(President)としてウェスタン・デジタルの経営陣に加わり(ウェスタン・デジタルの現社長兼最高経営責任者のジョン・F・コインは引き続き最高経営責任者として就任し続ける[2])、さらに日立製作所がウェスタン・デジタルの発行済株式総数の10%ほどを保有することにより筆頭株主となる予定[3]

2011年5月30日欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)が、日立製作所からの買収について徹底的な調査を開始すると発表した。調査は2件の買収案件について行なわれる。一つは本案件、もう一つはシーゲイト・テクノロジーサムスン電子が所有するHDD事業を買収する案件について調査が行なわれる。この一連の調査により、日立製作所からの買収時期は、当初予定されていた2011年9月から10月〜12月にずれ込むとされていたが[4][5]、さらに2012年3月までに完了する見込みとさらにずれ込む見通し[6]。また、各国の独禁当局によるウェスタン・デジタルによる3.5インチハードディスクの寡占化の懸念からウェスタン・デジタルに設備の一部売却が求められていたが、本案件の完了を前提にウェスタン・デジタルが東芝より東芝ストレージデバイス・タイ社(2009年に東芝が富士通より取得し、2011年のタイにおける洪水で被災し休止している生産子会社)を取得し東芝にウェスタン・デジタルのコンシューマ向け製品の一部の製造設備及び知的財産とニアライン向け製品の一部の製造設備を譲渡し、それまでハードディスクにおいては2.5インチ以下専業だった東芝が3.5インチに進出しハードディスクの全ての分野に進出することとなった[7][8]。最終的に日立GSTの買収は同年3月8日に完了した[9][10]

買収後は日立GSTはウェスタン・デジタルの子会社となった。また、東芝にHGSTの1TBプラッタの3.5インチドライブの製造設備及びウェスタン・デジタルの試験設備や知的財産の一部を譲渡した[11]。またHGSTは設備譲渡まではそれを用いて生産し、譲渡後も引き続き残存設備(例として3.5インチ製品は500GBプラッタ及び667GBプラッタの3.5インチドライブの製造設備)で生産していた。東芝から取得する東芝ストレージデバイス・タイ社の処遇は未定だが、人員はウェスタン・デジタルのタイにおける生産拠点に統合する予定[2]

なお、シーゲイトのサムスン電子のHDD事業買収は2011年12月19日に完了している[12]

技術革新[編集]

ウェスタン・デジタルは以下のような技術革新を成し遂げてきた。

  • 1971年 - WD1402A、世界初のシングルチップUART(非同期通信器、一般にRS-232Cとほぼ同義)
  • 1976年 - WD1771、世界初のシングルチップのフロッピーディスク・コントローラー
  • 1981年 - WD1010、世界初のシングルチップST-506コントローラー
  • 1983年 - WD1003ハードディスク・コントローラー、ATAの前身
  • 1986年 - コンパック、CDCと共同開発したATA
  • 1986年 - WD33C93、初期のSCSIインターフェイスチップ
  • 1987年 - WD7000、世界初のバスマスタリングISA SCSIコントローラー
  • 1987年 - WD37C65、世界初のシングルチップPC/AT互換フロッピーディスク・コントローラー
  • 1988年 - WD42C22、世界初のシングルチップATAハードディスク・コントローラー
  • 1990年 - Caviar(キャビア)ハードドライブ
  • 2001年 - 世界初の一般市場向け8MBバッファ付ドライブ
  • 2003年 - 世界初のSATAドライブ (10,000 rpm)
  • 2004年 - Media Center(メディアセンター)、世界初のフラッシュメモリリーダー内蔵ハードドライブ
  • 2006年 - 世界で初めて透明な窓をつけたハードディスクドライブ[13][14]
  • 2007年 - 世界初のノートPC向け250GBドライブと[15]、デスクトップ向け750GBドライブ[16]

製品[編集]

  • WD Raptor(ラプター) - 3.5インチ 10000rpm
    • WD VelociRaptor
  • WD Caviar(キャビア) - 3.5インチ
    • WD Blue
    • WD Green
    • WD Black
    • WD Red
  • WD Scorpio(スコーピオ) - 2.5インチ
  • WD SiliconEdge Blue - SSD
  • WD SiliconDrive III - SSD

競合企業[編集]

参考文献[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 日立、HDD事業をWestern Digitalに譲渡PC Watch(2011年3月8日)
  2. ^ a b Supplemental Information about WD's Acquisition of HGST (PDF)
  3. ^ 日立からウエスタンデジタルへのハードディスクドライブ事業の譲渡について (PDF)
  4. ^ 欧州委が2件のHDD事業買収を徹底調査へ、Seagate/SamsungとWD/日立IT Pro (2011年5月31日)
  5. ^ 日立からウエスタンデジタルへのハードディスクドライブ事業の譲渡時期について (PDF)
  6. ^ 日立からウエスタンデジタルへのハードディスクドライブ事業の譲渡時期について(第2報) (PDF)
  7. ^ ウェスタンデジタル社のHDD製造設備等の取得と当社タイ製造拠点の売却東芝 (2012年2月29日)
  8. ^ 東芝、HDD設備を米社から取得と発表 タイ製造拠点は売却日経ニュース (2012年2月29日)
  9. ^ 日立からウエスタンデジタルへのハードディスクドライブ事業の譲渡を3月8日に完了予定 (PDF) 日立製作所 (2012年3月7日)
  10. ^ 2012年3月8日発表
    WD Acquires Hitachi GST Western Digital
    WD® Completes Acquisition of Hitachi Global Storage Technologies Western Digital
    ウエスタンデジタルへのハードディスクドライブ事業の譲渡を完了 (PDF, 日立製作所)
  11. ^ 米国・ウェスタンデジタル社とのHDD関連資産取引完了について - 東芝 2012年5月15日
  12. ^ シーゲイト、サムスンのハードディスク事業の買収を完了
  13. ^ WD Raptor® X Hard Drive Inherits Enterprise-class WD Raptor Performance and Reveals the Technology Behind its Speed”. Western Digital (2006年1月5日). 2006年12月6日閲覧。
  14. ^ WD Raptor® X Hard Drive”. Western Digital. 2007年1月22日閲覧。
  15. ^ WD Brings 250 GB HDDs to Notebooks”. Tom's Hardware (2007年6月4日). 2007年7月1日閲覧。
  16. ^ Western Digital Reveals 750GB Hard Disk Drive”. X-bit labs (2007年6月4日). 2007年7月1日閲覧。
  17. ^ 東芝による富士通のHDD事業取得完了について - 富士通 2009年10月1日

外部リンク[編集]