アルコールストーブ

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アルコールストーブ(見やすくするため五徳は省略)

アルコールストーブは携帯用焜炉である。メーカー製品の他、自作品の販売も見られる。

構造は、自作の場合はアルミ缶(通常は清涼飲料水ビール)から作られるシンプルなものであり、無数のバリエーションが存在する。燃料のアルコールとして一般的には変性アルコールが用いられる。

風防と五徳を含め総質量を30g未満にすることもできる。他の方式の市販の焜炉より軽く、これを携帯することでトレッキングの荷物を軽くすることができるため軽装備を好むバックパッカーに人気がある。しかしこの利点は長距離のハイキング旅行で物資補給の間隔が長い場合に、ストーブの効率が低く多くの燃料が必要となる。

名称については、米国では、底の形が内筒をしっかり支える形をしているという理由でペプシコーラのアルミ缶がよく使われるので Pepsi-can stove と呼ばれることがある[訳注 1]

歴史と構造[編集]

3つのパーツで構成されるアルコールストーブ、断面図

構造は大きく分け、二重壁を用いた非加圧式のものと単室の加圧式タイプに分かれる。

どちらも予熱で発生したガスを効率よく燃焼させ利用するよう工夫されている。

非加圧式で上部が開放された構造のものでは内筒はストーブを安定燃焼させるための予熱室ともなる。二重壁で隔たれた室でガスが発生しバーナー穴からでて炎となる。気化したアルコールはストーブの中央からも発生し燃焼するが、風の影響を受けやすく燃料消費上では非効率とされる。

加圧式のストーブは二重壁がなく、燃焼効率向上の目的でアルコールを注入した後に燃料容器の穴を閉じ、予熱は内部の燃料を燃やすのでなく、バーナー外部の燃料を燃やす。 また単室で上部が開いたタイプもある。こちらはコッフェルなどを直接バーナー上部に乗せるとストーブ上部をふさぎ、炎はサイドに空けられた穴から出るので、単室の加圧式タイプと同じ原理。

いずれにしても予熱完了後、本燃焼に移ったあとはその炎でバーナー本体が熱せられ継続燃焼される。 (そのような燃焼をしなければストーブとして役には立たず、生アルコールが燃えずに残ったりするので自作品は要注意)


二重壁のガス発生器・穴を開けたバーナーリング・予熱用の内筒から成る基本的な構造は100年以上前に遡る[1]。同様の設計は1904年にニューヨークの銅細工人 J.ハインリッヒスが特許を取得している[2]トランギアは1925年以来、この構造の商品を販売しており、Safesportはステンレス製のストーブを1990年代に販売していた。興味深いことにトランギアの製品はバーナー部が真鍮製であるにもかかわらず、それとともに用いる他のすべての関連部品はアルミ製である。2つの異なる金属が接触して腐食しないように、持ち運びの際に距離を空けるためのビニール袋が用意されている。

燃料を注入し点火すると中心部で燃焼が始まる
炎が燃料とストーブの内部を加熱し燃料を気化させる
十分に加熱されると蒸気圧により燃料が噴出し炎の輪となる

アルミ缶による構成[編集]

2本のアルミ缶の底で作られる。内側の壁はアルミ缶を切り取って丸めて作る。ノズルはピンで上部に穴を開けてリング状にする。部品は耐熱性エポキシ樹脂や耐熱アルミテープで接着してもいいし、ホッチキスでとめても不足はない。高さの合計は5cm以下であるが、より多くの燃料を注入可能にするために寸法を増加することも、より短くして小型にすることもできる。

アルミ缶は他種の金属缶に較べ、軽量で低コストであること、熱伝導率が高く燃料が気化しやすいことである。他にはスチール製のキャットフード缶、ツナ缶、ジュースの缶を用いて作られることもあり、原理は同じ[3]。風防や五徳は空気穴を開けたスチール缶からも作製することができる。

動作と効率[編集]

0.5リットル以上と分量の多い調理をする時は、アルコールストーブはより強力に鍋を加熱できる他方式のストーブより効率が悪い。つまり、発生するが比較的少ないうえに周囲に逃げてしまう熱の割合が多いため調理に時間がかかる。より強力な加圧型は後述。

アルコールストーブを使用するには少量の燃料を注ぎ点火する。鍋はアルコールストーブの上部の、風防か五徳の上に置かれる。最初の炎は小さく、内側の筒内のみで燃焼する。ひとたび燃料が加熱され、アルコールの蒸気が穴を通過し、炎の輪を形成するのに数分を要す。炎から十分な熱が燃料に伝えられ、燃料がなくなるまで完全燃焼を維持する。

諸元[編集]

[要出典]

  • 熱出力:4800 BTU (英熱量) /時(1400 ワット)以下
  • 2カップ(500 ml)の水を沸騰させるまでの時間:5分以内(大さじ2杯(30ml)以内の燃料で)
  • 4カップ(1000 ml)の水を沸騰させるまでの時間:12分以内(大さじ3杯(45ml)以内の燃料で)
  • 燃焼時間:9分以内(大さじ2杯(30ml)の燃料で)
  • 最大燃焼時間:30分(大さじ5-6杯(75-90ml)の燃料で)

他のストーブとの比較[編集]

寒冷地や高地などの環境では、幾つかのプロパンブタンのガスカートリッジ式の製品は動作せず、それらをしのぐ性能をアルコールストーブが発揮する場合がある。Ronald Mueserはアパラチアン・トレイルのハイカーを調査し、このストーブが唯一動作不良率ゼロであったと著書 Long-Distance Hiking に記している[4][訳注 2]

一番軽い物でも3オンス(約85グラム)のガスストーブに比べ、アルミ缶で製作したストーブは1オンス(約28グラム)未満の質量である。ほとんどの市販製品のストーブは燃料を特別な缶に入れることが必要でそれがストーブの総質量に加わるが、変性アルコールは炭酸飲料ペットボトルなど実質的に任意の軽い容器で持ち運ぶことができる[訳注 3]。トランギアは引火防止のための安全機能を有する注ぎ口付きの燃料容器を販売している。

軽量であるという利点は、消費する燃料の液量が大きいために相殺される(特に長いハイキングの場合)ものの、その信頼性とシンプルさで埋め合わせられることもある。アルコールストーブの他の特徴は、ほぼ無音で動作すること、ハンドリングが容易で非常時のバックアップ用として適していることである。

密封されていないアルコールストーブは、液漏れが起こり得るのと燃料の炎がほとんど見えないため危険も伴う。多人数分の料理を作るために同じ鍋の下に複数のアルコールストーブを並べて使用することは十分な中の下で可能だが、ストーブ同士が出す熱の相乗効果で温度がより上昇するので思わぬ燃焼をすることがあり危険。白ガスと同じであるが、自作品で室内やテント内で燃料が漏れたりこぼして引火した場合は、大きな事故となる可能性がある。

燃料[編集]

使用する燃料は重量比で約50%、ブタン/プロパンストーブより大きい値になる[5]

種類[編集]

  • 変性アルコールは飲めば有毒であるが、すすを発生しないので比較的環境にやさしい。
  • 純粋なエタノールは通常、酒税の対象となり高額なのでストーブの燃料としてはほとんど使用されない。
  • イソプロパノールでもアルコールストーブは動作するが、すすだらけになるので極力使用は避ける。
  • ジエチレングリコールはエネルギー量は多いが、点火しづらいうえに経口摂取による中毒事例があるためキャンプに持ち運んで使用することは避ける。チェーフィング(Chafing-dish、料理の保温やフォンデュの熱源)用燃料に使われ、液体で、芯で火力を調節するものがジエチレングリコールである。

入手[編集]

  • 日本では燃料用のアルコールとして薬局ドラッグストアホームセンター、キャンプ用品店、コーヒー器具販売店(コーヒーサイフォンアルコールランプで使用される)で入手可能。
  • 日本国外で変性アルコールを購入した場合、試しに皿に少量を注いで点火し、燃え尽きたときに残渣が出る物は使用を避ける。
  • 米国で販売されている不凍液メタノールが主成分のものとイソプロパノールが主成分のものがある。ラベルを見てMethyl Alcohol(あるいはMethanol)が主成分の物を選ぶ。北米でHEETの名前で販売されている製品の場合、黄色の容器の物がメタノール、赤の容器の物がイソプロパノールである。
  • 消毒用アルコール(消毒用エタノールや消毒用イソプロパノール)は水分の含有が多く、着火しにくく燃料としての実用にとぼしい。。
アルコールストーブのバリエーション。黄色の線は断面図を表す。左から右へオーソドックス型、逆ツーピース型、サイドバーナー型、加圧型
1本の空き缶で作成したサイドバーナー型。五徳なしで使用可能。米国のボーイスカウト野外活動の一環で作成されたもの。

バリエーション[編集]

オーソドックス型[編集]

2本のアルミ缶の底で作られ、内壁があり二重構造のもの。 非加圧式で上部が開放された典型的な超軽量ストーブ。 右の写真は内壁の合わせ目がみれるのでバーナー穴をサイドにあけたこのオーソドックス型であろう。

サイドバーナー型[編集]

単室で上部が開いたタイプ。こちらはコッフェルなどを直接バーナー上部に乗せるとストーブ上部をふさぎ、炎はサイドに空けられた穴から出るので、単室の加圧式タイプと同じ原理。

なお、オーソドックス型非加圧式で上部が開放構造のもので、サイドにバーナー穴があけられたものもサイドバーナー型と呼ぶ。

加圧型[編集]

より強い火力が得られるが、重量と製作難易度が増す。ストーブに燃料を充填した後、つまみねじで密封される。このタイプのストーブはバーナー部分にリング状のパーツを被せる事で火力を減じることができる。プリヒート用の燃料を貯めるためにストーブの下に皿を敷いて使用することもある。

ペニーストーブ[編集]

前述の加圧型と原理は同じで構造も似ている。penny(=1セント貨)を使うのでその呼び名がある。 なぜpennyを使うかは不明だが、恐らく一番安い硬貨で簡単に調達できることや、その語感も(ダイムやクウォーターより)よいので広がったといえる。 アルコール注入後の注入穴にpenny硬貨をふさぐために置き、予熱のためくぼみにアルコールを溜めここに点火する。 pennyは適度に重いので穴がふさがれバーナー内部にアルコールは落ちてゆかないし、本燃焼でここからガスが逆流して出ている現象はみれない。

ペニーストーブはいったん本燃焼に移ればバーナー部の炎は一定で安定しているが、他に比べ予熱に気をつかう。 予熱は缶上部に溜めたアルコールだけでは不十分な場合もあり、米国ではペニーストーブの周りにアルコールをかけたり適当に地面にまき点火して予熱して使う人もいて、火気取り扱いの点で十分注意を要する。

逆ツーピース型[編集]

2個のパーツで構成される。オーソドックス型に比べて軽くて小型だが、燃料を注ぎにくい。

断熱材充填型[編集]

内壁はなくグラスウールの断熱材を詰め燃焼スピードを調整する。

キャットストーブ[編集]

大きさの異なるふたつのキャットフードのアルミ缶で製作したことから命名された[6]。開放燃焼型。

スーパーキャットストーブ[編集]

キャットストーブから発展したものだが缶はひとつで良いので製作が容易。五徳は不要で上に鍋を置けば開口部が塞がれ、熱せられ気化したアルコールが側面の穴から吹き出すのでキャットストーブと異なり燃料に圧力がかかる[7]。単室の加圧式タイプと同じ原理。

サイクロン[編集]

下から火でバーナーを炙り、アルコールを強制的に気化させる方式。炎の形状が渦巻状であるのが特徴。火力は非常に強いが、バーナーの火の他に、予熱用の火が必要。

出典[編集]

  1. ^ アメリカ合衆国特許第560,319号: W.J.D. Mast (1895)
  2. ^ アメリカ合衆国特許第766,618号: J Heinrichs (1904)
  3. ^ Kiss Alcohol Stoves”. Six Moon Designs (Fri, 27 Nov 2009). 2009年12月26日閲覧。
  4. ^ Long-Distance Hiking: Lessons from the Appalachian Trail, Roland Mueser, International Marine/Ragged Mountain Press, 1997, ISBN-13: 978-0070444584
  5. ^ "Weight comparison of beverage-can stoves vs. some commercial stoves"
  6. ^ Robinson, Roy. "The Cat Food Can Alcohol Stove". Retrieved on March 17, 2007.
  7. ^ The Super Cat Alcohol Stove by Jim Wood

訳注[編集]

  1. ^ 米国のペプシの缶は Don Johnston's High Performance Alcohol Stove の写真を見ると日本の缶と寸法が異なり上部がすぼまっている。なお、輸入物の他の炭酸飲料も形状は同様である。
  2. ^ この出典は英語版にあったもので、恐らく p. 57 からの Which brand of camp stove is most efficient and easiest to pack? に書かれていると思われるが、翻訳に際し正確なページは不明。
  3. ^ ペットボトル#耐薬品性によると「耐有機溶剤性は低い」とある。また耐圧性は炭酸飲料用ボトルか否かで異なる。

参考文献[編集]

関連[編集]

外部リンク[編集]

日本語

英語

日本国内における製品の扱い