グラスウール

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グラスウール (fiberglass) とは、短いガラス繊維でできた、綿状の素材である。建築物における断熱材として広く用いられるほか、吸音材(遮音ではない)としてもスピーカー等や防音室の素材として用いられている。防火性にも優れており、石綿の代替材としても広く使われるようになった。

グラスウール

特徴[編集]

  • 価格が安い。隙間なく施工した場合、断熱性能に優れる。
  • 切断・曲げなど、自由に加工することができる。
  • 厚さ・サイズが豊富である。住宅用の厚さは、壁用で 50 mm・75 mm・100 mm などがあり、床用で 42 mm・80 mm などがある。サイズは、壁用で 395 mm×2740 mm・430 mm×2740 mm などがあり、床用で 263 mm×1820 mm・415×1820 mm・820×1820 mm などがある。その他に、天井用等で、ロール状に巻かれている長物もある。
  • 密度も豊富である。住宅用の密度は 10 kg/m3・16 kg/m3・24 kg/m3・32 kg/m3 などがある。10 kg/m3 のものは柔らかい。一方、16〜24 kg/m3 のものは立てかけることができる。32 kg/m3 以上となると自立することができる。この他に、例えば16 kg/m3 であるが、繊維が細かく、より高密度の24 kg/m3 程度の性能をもつ高性能グラスウールシリーズの製品も存在する。
  • 建築時の雨漏れ等の場合、水を含むと一時的に変形するが、その後乾燥すれば形状と体積はほぼ回復し、断熱性能・吸音性能は概ね低下することはないとされるが、一旦水を含むと乾燥には時間を要し、乾燥するまでの間にクロカビが発生するケースが多いため、実際の現場では濡れたグラスウールは再利用しないことが望ましい。雨濡れ対策として、床用等には撥水性のボード状のものが使われている。最近では、床用断熱材として発泡系断熱材を使用すると建築中に床合板が雨濡れした場合、合板と断熱材の間で水分が長期間保持され蒸れることにより、合板のカビ・腐朽等の発生につながることが嫌われ、透湿性・乾燥性の良い撥水性グラスウールが好まれる方向にある。
  • 住宅用のパッケージとしては、袋入りのものと裸のものがあり、袋入りのものは日本だけで使われている。海外では裸のものしか使われていない。日本でも最初は裸のものが使われていたが、袋入りにすることで現場施工者が施工時にグラスウールの粉末で皮膚が痒くなることを防げるため、袋入りのものが多く流通するようになった。裸のものは、室内の湿気が壁の中に入り込むのを防ぐために、防湿気密シートを貼る必要がある。袋入りのものは、袋の室内側が防湿層になっているので、袋の耳を柱・間柱や枠組みの見付け面にステープルで正しく留めることにより、室内の湿気が壁の中に入り込むのを防ぐことができるとされるが、隙間なく施工されているかの確認が困難であるため、寒さの厳しい北海道では隙間ができることによる壁内結露を避けるために、袋入りのグラスウールは使われず、流通もしていない。
  • 施工段階で柱・梁とグラスウールの間に隙間があると、温度差によって壁の中で結露し、カビが発生し、ダニやシロアリ、腐敗菌を呼び寄せ、柱を腐らせるなどして住宅寿命を著しく短縮することがある。そのためすべての断熱材共通で、隙間の出来ない正しい施工方法を遵守することが大事であるが、グラスウールをはじめロール状の断熱材を隙間なく施工するには熟練の丁寧な施工が必要であり、正しく施工できる職人は極めて少ないのが現状である。
  • 吸音効果がある。このため、断熱以外の目的で、住宅の階床充填等に使われたり、病室ホテルの個室・放送室スタジオの壁に使われる。また新幹線や高速道路の防音壁に使われている。遮音を望む場合はALCやコンクリートなどの遮音材の併用が必要である。

防火性能[編集]

  • 国土交通省告示「平12建告第1400号」で不燃材料として示され、避難上有害な煙・ガスを発生させないことが特徴である。外装材の内側に使われ防火・耐火に貢献している。耐火性能は融点の違いからロックウールに劣るために650度以上の断熱には、ロックウールやセラミックファイバーを混合した製品が使用される。
  • 不燃材料として、国土交通大臣から認可されているものの、ガスバーナーによるセルローズファイバーとの防火性能比較[1]では、不燃材料ではないセルローズファイバーに劣る。

製法[編集]

建築物や自動車に使われていた廃ガラス、ビンガラス、ブラウン管、蛍光灯などの廃ガラスが主な原料で、溶かしたガラスを遠心法で綿状とする。このときの状態は白色であるが、その後バインダーとしてフェノール樹脂等を添加して、板状・ロール状などに成形したものが製品となっている。高温処理をするとバインダーが分解して白色となる。

遠心法[編集]

スピンナー(スピナー)と呼ばれる、側壁に小さな穴があいた容器を高速回転させ、上から溶かした原料を入れ、遠心力で側壁の穴から吹き出させた繊維を集めて作る製法(綿菓子の製法とほぼ同じ)。スピンナー法とも呼ばれる。繊維径はおおむね 3〜9 μm。現在、すべての断熱材・保温保冷材・吸音材がこの方法で製造される。

安全性[編集]

  • グラスウールは、人造鉱物繊維であるので、労働安全衛生法第57条の2(文書等の発行いわゆるMSDS(製品安全データシート)の発行)の対象物質である。製造時・吹き付け施工時・解体時には、作業環境中の吸入性粉じん濃度が3.0mg/m3を超える恐れがあるので、国家検定の防じんマスクの着用が必要となる。 また、粘膜や皮膚への刺激症状が出やすいのでゴーグルなどを装着して取り扱うことが勧められる。
  • ガラス繊維を集めて製品として成形する際に、バインダーや撥水剤が使用される。このため炎にかざすと若干の煙や臭いがでる。しかし断熱材としてグラスウールを使用した家が火災になった場合、不燃材のため避難上有害な煙・ガスを発生させない、また避難の時間を延長し助けとなる。工場などの高熱部分に施工する際、180度以上に過熱される部位については、初期に煙が発生する場合があるので、初期の熱入れのときにはこのことを理解しておくことが望ましい。工業用の高熱用のグラスウールにはノンバインダー製品が使用される。
  • 常温状態においてはグラスウールからホルムアルデヒドの放出は、F☆☆☆☆等級レベルである。
  • WHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)は1987年と2002年の2回にわたって、石綿代替繊維のヒト発がん性に関する国際評定会議を開催した。1987年の結果を見直した2002年の同会議では、グラスウールとロックウールとスラグウールが安全側に変更され、第3群「ヒトに対してがん原性として分類できない」となった。ただし、グラスウールの一種で特に細かい形状のマイクログラスウール[2]は、「ヒトに対してがん原性となる可能性がある」とされ、依然「第2B群」に分類されている[3]

廃棄方法[編集]

廃棄物として発生したグラスウールは、グラスウール単体に分別された場合は、環境省の「広域認定制度」によりリサイクルできる。分別されていない場合は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく「ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず」に該当し、安定型産業廃棄物として適切に処理することが必要で、埋め立て等によって処分される。

グラスウールを製造している国内企業[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ セルロースファイバーと不燃材グラスウールの防火性能比較
  2. ^ マイクログラスウールは,主にフィルタに用いられる細かいガラス繊維を指す
  3. ^ 森本,「人造鉱物繊維の発がん性について─国際がん研究機関(IARC)の報告─」,『産業医学ジャーナル』,Vol.3,No.3,2002年

関連項目[編集]