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'''アヤワスカ'''([[ケチュア語]]: {{Lang|qu|Ayahuasca}}、Ayawaska)は、[[南アメリカ]]の[[アマゾン川]]流域に自生する[[キントラノオ科]]の[[つる植物]]バニステリオプシス・カーピ(''{{Sname||Banisteriopsis caapi}}''、以下カーピ)のこと。または、カーピに、[[ジメチルトリプタミン]] (DMT) を含む植物プシコトリア・ィリディス(''{{Sname||Psychotria viridis}}''、チャクルーナ)やディプロプテリス・カブレラナ(''{{Sname||Diplopterys cabrerana}}''、チャリポンガ)を加え、煮出して作られた[[幻覚剤|幻覚性]]の飲料。服飲すると、嘔吐を伴う強力な[[幻覚]]作用をもたらす。主にアマゾン西部の[[先住民族]]が[[シャーマニズム]]の儀式や[[民間療法]]、宗教儀式などに用いる。
'''アヤワスカ'''([[ケチュア語]]: {{Lang|qu|Ayahuasca}}、Ayawaska)は、[[南アメリカ]]の[[アマゾン川]]流域に自生する[[キントラノオ科]]の[[つる植物]]の{{仮リンク|バニステリオプシス・カーピ|en|Banisteriopsis caapi}}以下カーピ)のこと。または、カーピに、[[ジメチルトリプタミン]] (DMT) を含む植物{{仮リンク|サイコトリア・ィリディス|en|Psychotria viridis}}チャクルーナ)や{{仮リンク|ディプロプテリス・カブレラナ|en|Diplopterys cabrerana}}チャリポンガ、チャクロパンガ)を加え、煮出して作られた[[幻覚剤|幻覚性]]の飲料。服飲すると、嘔吐を伴う強力な[[幻覚]]作用をもたらす。主にアマゾン西部の[[先住民族]]が[[シャーマニズム]]の儀式や[[民間療法]]、宗教儀式などに用いる。


== 名称 ==
== 名称 ==
 アヤワスカという呼び方は主にペルーとエクアドルで使われている。 アヤワスカは、ペルー、ボリビアなどの先住民族の言語である[[ケチュア語]]で、「魂のつる」、「死者のロープ」という意味をもつ。「アヤ」は、魂、精霊、先祖、死者などを指し、「ワスカ」は、つる植物全般やロープを意味する。
アヤワスカという呼び方は主にペルーとエクアドルで使われている。 アヤワスカは、ペルー、ボリビアなどの先住民族の言語である[[ケチュア語]]で、「魂のつる」、「死者のロープ」という意味をもつ。「アヤ」は、魂、精霊、先祖、死者などを指し、「ワスカ」は、つる植物全般やロープを意味する。


ブラジルでは、カーピ、シポ、オアスカ、ダイミなどと呼ばれ、コロンビアではヤヘイ(Yagé)と呼ばれる。ヤヘイの名称は、[[ビート・ジェネレーション]]作家の[[ウィリアム・バロウズ]]と詩人[[アレン・ギンズバーグ]]による『[[麻薬書簡]]』(''The Yage Letters'') により一般に普及した。
ブラジルでは、カーピ、シポ、オアスカ、ダイミなどと呼ばれ、コロンビアではヤヘイ(Yagé)と呼ばれる。ヤヘイの名称は、[[ビート・ジェネレーション]]作家の[[ウィリアム・バロウズ]]と詩人[[アレン・ギンズバーグ]]による『[[麻薬書簡]]』(''The Yage Letters'') により一般に普及した。
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アヤワスカはアマゾンにおける伝統的医学として、あるいは、宗教的実践のために用いられてきた、精神医作用する植物のお茶である<ref name="pmid12660312"/>。[[先コロンブス期]]のアメリカ大陸において、 アヤワスカによる幻覚を描写したと思われる岩絵が発見されている<ref name="schultes">Schultes, Richard Evans, and Albert Hofmann. ''Plants of the Gods: Their Sacred, Healing and Hallucinogenic Properties''. Healing Arts Press, 1992.</ref>。 アヤワスカにふれた、西洋における最古の記録は、1851年にブラジルのアマゾン地域を探検したイギリス人の[[リチャード・スプルース]]によるものである。
アヤワスカはアマゾンにおける伝統的医学として、あるいは、宗教的実践のために用いられてきた、精神医作用する植物のお茶である<ref name="pmid12660312"/>。[[先コロンブス期]]のアメリカ大陸において、 アヤワスカによる幻覚を描写したと思われる岩絵が発見されている<ref name="schultes">Schultes, Richard Evans, and Albert Hofmann. ''Plants of the Gods: Their Sacred, Healing and Hallucinogenic Properties''. Healing Arts Press, 1992.</ref>。 アヤワスカにふれた、西洋における最古の記録は、1851年にブラジルのアマゾン地域を探検したイギリス人の[[リチャード・スプルース]]によるものである。


アヤワスカの向精神性成分である[[ハルマリン]]は、1841年、砂漠地帯に生える低木の[[ムクロジ目]][[ニトラリア科]]の[[シリアン・ルー]](学名:ペガヌム・ハルマラ、''{{Sname||Peganum harmala}}'')から分離に成功し、1927年にはじめて化学合成される。1923年には、カーピからハルマリンが分離され、テレパシンと名付けられる([[テレパシー]]に由来)。
アヤワスカの向精神性成分である[[ハルマリン]]は、1841年、砂漠地帯に生える低木の[[ムクロジ目]][[ニトラリア科]]の{{仮リンク|シリアン・ルー|en|Peganum harmala}}(学名:ペガヌム・ハルマラ、''{{Sname||Peganum harmala}}'')から分離に成功し、1927年にはじめて化学合成される。1923年には、カーピからハルマリンが分離され、テレパシンと名付けられる([[テレパシー]]に由来)。


1923年、南米における アヤワスカ儀式の映像が米国薬剤師会 (American Pharmaceutical Association) の会議で紹介される<ref name="erowid">Erowid. [http://www.erowid.org/chemicals/ayahuasca/ayahuasca_timeline.php ''Erowid Ayahuasca Vault : Timeline''], Erowid.org, 1996.</ref>。
1923年、南米における アヤワスカ儀式の映像が米国薬剤師会 (American Pharmaceutical Association) の会議で紹介される<ref name="erowid">Erowid. [http://www.erowid.org/chemicals/ayahuasca/ayahuasca_timeline.php ''Erowid Ayahuasca Vault : Timeline''], Erowid.org, 1996.</ref>。
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=== 調合方法 ===
=== 調合方法 ===
バニステリオプシス・カーピは、熱帯雨林の樹木に螺旋状に巻き付きながら成長し、小さなピンク色の花をつける。[[モノアミン酸化酵素阻害薬]] (MAOI) である[[β-カルボリン]]の一種、ハルマラ[[アルカロイド]]([[ハルミン]]や[[ハルマリン]]<ref name="Benjamin2017"/>)を含有する<ref name="pmid12660312">{{cite journal|last1=Riba|first1=J.|title=Human Pharmacology of Ayahuasca: Subjective and Cardiovascular Effects, Monoamine Metabolite Excretion, and Pharmacokinetics|journal=Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics|volume=306|issue=1|pages=73–83|year=2003|pmid=12660312|doi=10.1124/jpet.103.049882|url=https://doi.org/10.1124/jpet.103.049882}}</ref>。
{{仮リンク|バニステリオプシス・カーピ|en|Banisteriopsis caapi}}(''{{Sname||Banisteriopsis caapi}}''、以下カーピ)は、熱帯雨林の樹木に螺旋状に巻き付きながら成長し、小さなピンク色の花をつける。[[モノアミン酸化酵素阻害薬]] (MAOI) である[[β-カルボリン]]の一種、ハルマラ[[アルカロイド]]([[ハルミン]]や[[ハルマリン]]<ref name="Benjamin2017"/>)を含有する<ref name="pmid12660312">{{cite journal|last1=Riba|first1=J.|title=Human Pharmacology of Ayahuasca: Subjective and Cardiovascular Effects, Monoamine Metabolite Excretion, and Pharmacokinetics|journal=Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics|volume=306|issue=1|pages=73–83|year=2003|pmid=12660312|doi=10.1124/jpet.103.049882|url=https://doi.org/10.1124/jpet.103.049882}}</ref>。カーピは南米におけるアヤワスカ茶のすべての調合において組み合わされる<ref name="pmid28706205"/>。


南米アマゾンの伝統的な アヤワスカは、カーピの幹から樹皮を削り取り、これに[[アカネ科]]のサイコトリア・リディス(''{{Sname||Psychotria viridis}}''、チャクルーナ)や、[[キントラノオ科]]のディプロプテリス・カブレラナ(''{{Sname||Diplopterys cabrerana}}''、チャクロパンガ、チャリポンガ)などの葉を加え、十数時間から一日煮詰めるか水に浸して得られる褐色の液体である。これらの植物の葉は[[トリプタミン]]アルカロイドである[[ジメチルトリプタミン|N,N-DMT]] (DMT) や、5-メトキシ-N,N-DMT ([[5-MeO-DMT]]) を含んでいる。
南米アマゾンの伝統的な アヤワスカは、カーピの幹から樹皮を削り取り、これに[[アカネ科]]の{{仮リンク|サイコトリア・ヴィリディス|en|Psychotria viridis}}(''{{Sname||Psychotria viridis}}''、チャクルーナ)や、[[キントラノオ科]]の{{仮リンク|ディプロプテリス・カブレラナ|en|Diplopterys cabrerana}}(''{{Sname||Diplopterys cabrerana}}''、チャリポンガ、チャクロパンガ)などの葉を加え、十数時間から一日煮詰めるか水に浸して得られる褐色の液体である。これらの植物の葉は[[トリプタミン]]アルカロイドである[[ジメチルトリプタミン|N,N-DMT]] (DMT) や、5-メトキシ-N,N-DMT ([[5-MeO-DMT]]) を含んでいる。


DMTは、体内でも生産される、構造的にセロトニンに類似した非選択的セロトニン作動薬であり<ref name="pmid12660312"/>、本来、DMTは[[モノアミン酸化酵素]]により体内で急速に分解されるため、経口摂取しても効果を及ばさないが、ハルマラアルカロイドに代表される[[MAOI]]と組み合わせることにより向精神性作用を発現する<ref name="pmid12660312"/>。その他にも、[[タバコ]]、[[ダチュラ]]などの植物が混入される場合もある。
DMTは、体内でも生産される、構造的にセロトニンに類似した非選択的セロトニン作動薬であり<ref name="pmid12660312"/>、本来、DMTは[[モノアミン酸化酵素]]により体内で急速に分解されるため、経口摂取しても効果を及ばさないが、ハルマラアルカロイドに代表される[[MAOI]]と組み合わせることにより向精神性作用を発現する<ref name="pmid12660312"/>。その他にも、[[タバコ]]、[[ダチュラ]]などの植物が混入される場合もある。

ウニオン・ド・ヴェジタルで用いられるサイコトリア・ヴィリディスにはDMTを全く含まない場合もある<ref name="pmid28706205">{{cite journal|last1=Morales-García|first1=Jose A.|last2=de la Fuente Revenga|first2=Mario|last3=Alonso-Gil|first3=Sandra|coauthors=et al.|title=The alkaloids of Banisteriopsis caapi, the plant source of the Amazonian hallucinogen Ayahuasca, stimulate adult neurogenesis in vitro|journal=Scientific Reports|volume=7|issue=1|pages=5309|year=2017|pmid=28706205|pmc=5509699|doi=10.1038/s41598-017-05407-9|url=https://doi.org/10.1038/s41598-017-05407-9}}</ref>。


また西洋では、カーピの代替品としてシリアン・ルーの種子や、DMTの供給源として{{仮リンク|ミモザ・テヌイフローラ|en|Mimosa tenuiflora}}(''{{Sname||Mimosa tenuiflora}}''、異名はミモザ・ホスティリス)の根の皮などが使用される。[[#アヤワスカ・アナログ]]参照。
また西洋では、カーピの代替品としてシリアン・ルーの種子や、DMTの供給源として{{仮リンク|ミモザ・テヌイフローラ|en|Mimosa tenuiflora}}(''{{Sname||Mimosa tenuiflora}}''、異名はミモザ・ホスティリス)の根の皮などが使用される。[[#アヤワスカ・アナログ]]参照。
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カナダでは医師の{{仮リンク|ガボール・マテ|en|Gabor Maté}}が、薬物依存症とその根底にある[[心的外傷]]を癒すために アヤワスカを用いており、彼の活動は報道されている。
カナダでは医師の{{仮リンク|ガボール・マテ|en|Gabor Maté}}が、薬物依存症とその根底にある[[心的外傷]]を癒すために アヤワスカを用いており、彼の活動は報道されている。


=== 精神的作用 ===
== 精神的作用 ==
視覚に及ぼす作用が特徴的で、目を閉じると、鮮やかなイメージが夢を見ているかのように連続して現れる場合が多い。訓練を積んだシャーマンが体験する「ヴィジョン」と呼ばれるイメージにはおおむね段階があり、まず幾何学模様が現れ、植物、動物、幻想的な建築物や都市という順序で展開するという<ref name="stafford">Stafford, Peter. ''Psychedelics Encyclopedia, Third Expanded Edition''. Ronin Publishing, Inc., 1992.</ref>。ヘビ、ジャガーなどのネコ科動物、裸の黒人女性などのイメージが多く報告されている。シャーマンは アヤワスカの幻覚効果を通じて、はるか彼方の惑星を見たり、遠方に住む親戚の健康状態を知ったり、紛失した物の在処や、配偶者の浮気相手、患者を病気にした呪術師の身元をつきとめたりする。
視覚に及ぼす作用が特徴的で、目を閉じると、鮮やかなイメージが夢を見ているかのように連続して現れる場合が多い。訓練を積んだシャーマンが体験する「ヴィジョン」と呼ばれるイメージにはおおむね段階があり、まず幾何学模様が現れ、植物、動物、幻想的な建築物や都市という順序で展開するという<ref name="stafford">Stafford, Peter. ''Psychedelics Encyclopedia, Third Expanded Edition''. Ronin Publishing, Inc., 1992.</ref>。ヘビ、ジャガーなどのネコ科動物、裸の黒人女性などのイメージが多く報告されている。シャーマンは アヤワスカの幻覚効果を通じて、はるか彼方の惑星を見たり、遠方に住む親戚の健康状態を知ったり、紛失した物の在処や、配偶者の浮気相手、患者を病気にした呪術師の身元をつきとめたりする。


伝統的な組み合わせのアヤワスカは1.5時間から2時間でピークとなり、主観的効果を生じ、知覚の変化、肯定的な気分の増加を示す<ref name="pmid25806551"/>。20分ほどで効果を生じ、1-2時間でピークとなり、4-6時間続く<ref name="pmid12660312"/>。
伝統的な組み合わせのアヤワスカは1.5時間から2時間でピークとなり、主観的効果を生じ、知覚の変化、肯定的な気分の増加を示す<ref name="pmid25806551"/>。20分ほどで効果を生じ、1-2時間でピークとなり、4-6時間続く<ref name="pmid12660312"/>。


=== 身体的作用 ===
== 身体的作用 ==
アヤワスカは苦みが強く、ひどい味がするため飲み込むことが困難なほどである。服飲すると、激しい吐気、嘔吐、下痢をもよおす場合が一般的で、そのため先住民族の[[シャーマニズム|シャーマン]]は、 アヤワスカの儀式を、嘔吐により身体から寄生虫や毒などを取り除く「浄化」と呼ぶ<ref name="andritzky">Andritzky, W. “Sociopsychotherapeutic functions of ayahuasca healing in Amazonia”, ''Journal of Psychoactive Drugs''. 21(1), 1989, pp.77-89.</ref>。 アヤワスカを頻繁に飲んでいるシャーマンが吐気や嘔吐の症状を示すことは稀である。吐気や嘔吐は、ハルマリンの作用によるものである。いくつかの部族は、儀式の前に食事制限を行う。肉や塩分、アルコールなどを控えることで吐気を和らげることができる。その他の身体的作用は、血圧と心拍数の上昇、耳鳴り、めまい、悪寒、発汗、倦怠感、眠気、下痢などがあげられる。服飲後30分ほどで効果が現れ、作用時間は2〜6時間程度。
アヤワスカは苦みが強く、ひどい味がするため飲み込むことが困難なほどである。服飲すると、激しい吐気、嘔吐、下痢をもよおす場合が一般的で、そのため先住民族の[[シャーマニズム|シャーマン]]は、 アヤワスカの儀式を、嘔吐により身体から寄生虫や毒などを取り除く「浄化」と呼ぶ<ref name="andritzky">Andritzky, W. “Sociopsychotherapeutic functions of ayahuasca healing in Amazonia”, ''Journal of Psychoactive Drugs''. 21(1), 1989, pp.77-89.</ref>。 アヤワスカを頻繁に飲んでいるシャーマンが吐気や嘔吐の症状を示すことは稀である。吐気や嘔吐は、ハルマリンの作用によるものである。いくつかの部族は、儀式の前に食事制限を行う。肉や塩分、アルコールなどを控えることで吐気を和らげることができる。その他の身体的作用は、血圧と心拍数の上昇、耳鳴り、めまい、悪寒、発汗、倦怠感、眠気、下痢などがあげられる。服飲後30分ほどで効果が現れ、作用時間は2〜6時間程度。


伝統的な組み合わせを用いたアヤワスカにおいて、拡張期血圧は高用量の摂取では増加が確認されたが、収縮期血圧や心拍数は有意な変化は観察されなかった<ref name="pmid25806551"/>。摂取から、1.5時間で血中濃度は最大となり、精神的な作用のピークと異一致する<ref name="pmid25806551"/>。散瞳を生じさせる<ref name="pmid25806551"/>。[[離脱]]症状は観察されていない<ref name="pmid12660312"/>。
伝統的な組み合わせを用いたアヤワスカにおいて、拡張期血圧は高用量の摂取では増加が確認されたが、収縮期血圧や心拍数は有意な変化は観察されなかった<ref name="pmid25806551"/>。摂取から、1.5時間で血中濃度は最大となり、精神的な作用のピークと異一致する<ref name="pmid25806551"/>。散瞳を生じさせる<ref name="pmid25806551"/>。[[離脱]]症状は観察されていない<ref name="pmid12660312"/>。


=== 相互作用 ===
== 相互作用 ==
{{See also|可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬#縮作用}}
{{See also|可逆性モノアミン酸化酵素A阻害薬#縮作用}}
アヤワスカは、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]] (MAOI) を含み、他の幻覚剤よりも[[薬物相互作用]]を起こしやすい<ref name="Benjamin2017"/>。ハルマラ・アルカロイドと、セロトニン作動薬の[[抗うつ薬]](SSRI、三環系)や他のセロトニン作用のある医薬品、薬物(幻覚剤、覚醒剤)の併用は避けるべきであり、死亡例が報告されている(そもそもDMTでないなら併用せずとも作用する)<ref name="Benjamin2017"/>。伝統的な組み合わせでない、代替の組み合わせではより大きなリスクがあるかもしれない<ref name="Benjamin2017"/>。これは[[セロトニン症候群]]を引き起こし、血圧の上昇、昏睡、死亡にいたる場合がある。
アヤワスカは、[[モノアミン酸化酵素阻害薬]] (MAOI) を含み、他の幻覚剤よりも[[薬物相互作用]]を起こしやすい<ref name="Benjamin2017"/>。ハルマラ・アルカロイドと、セロトニン作動薬の[[抗うつ薬]](SSRI、三環系)や他のセロトニン作用のある医薬品、薬物(幻覚剤、覚醒剤)の併用は避けるべきであり、死亡例が報告されている(そもそもDMTでないなら併用せずとも作用する)<ref name="Benjamin2017"/>。伝統的な組み合わせでない、代替の組み合わせではより大きなリスクがあるかもしれない<ref name="Benjamin2017"/>。これは[[セロトニン症候群]]を引き起こし、血圧の上昇、昏睡、死亡にいたる場合がある。
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非熱帯植物
非熱帯植物
*シリアン・ルー<ref name="pmid15163594"/>、{{仮リンク|ペガヌム・ハルマラ|en|Peganum harmala}}は、中東産の雑草で、ハルミンとハルマリンは、この種と根から初めて分離されており、ハルマラ・アルカロイドの名前の由来ともなっている<ref name="デコーン193"/>。含有量はカーピを凌ぐとも言われる<ref name="デコーン193"/>。アメリカ国では蔓延した雑草であり、3本の草から250ミリリットルの種子が採取できる<ref name="デコーン193"/>。栽培には手間がかかる<ref name="デコーン193"/>。
*シリアン・ルー<ref name="pmid15163594"/>、{{仮リンク|ペガヌム・ハルマラ|en|Peganum harmala}}は、中東産の雑草で、ハルミンとハルマリンは、この種と根から初めて分離されており、ハルマラ・アルカロイドの名前の由来ともなっている<ref name="デコーン193"/>。含有量はカーピを凌ぐとも言われる<ref name="デコーン193"/>。アメリカ国では蔓延した雑草であり、3本の草から250ミリリットルの種子が採取できる<ref name="デコーン193"/>。栽培には手間がかかる<ref name="デコーン193"/>。
*[[チャボトケイソウ]](''{{Sname||Passiflora incarnata}}'':パッションフラワーの一種)は、アメリカ国の南東部や中西部の至る所に生えており、ハルマラ・アルカロイドを含んでいる<ref name="pmid15163594">{{cite journal|last1=Halpern|first1=John H|title=Hallucinogens and dissociative agents naturally growing in the United States|journal=Pharmacology & Therapeutics|volume=102|issue=2|pages=131–138|year=2004|pmid=15163594|doi=10.1016/j.pharmthera.2004.03.003|url=http://www.ouramazingworld.org/uploads/4/3/8/6/43860587/2004-halpern-hallucinogens_and_dissociative_agents_naturally_growing_in_the_united_states.pdf|format=pdf}}</ref>。
*{{仮リンク|チャボトケイソウ|en|Passiflora incarnata}}(''{{Sname||Passiflora incarnata}}'':パッションフラワーの一種)は、アメリカ国の南東部や中西部の至る所に生えており、ハルマラ・アルカロイドを含んでいる<ref name="pmid15163594">{{cite journal|last1=Halpern|first1=John H|title=Hallucinogens and dissociative agents naturally growing in the United States|journal=Pharmacology & Therapeutics|volume=102|issue=2|pages=131–138|year=2004|pmid=15163594|doi=10.1016/j.pharmthera.2004.03.003|url=http://www.ouramazingworld.org/uploads/4/3/8/6/43860587/2004-halpern-hallucinogens_and_dissociative_agents_naturally_growing_in_the_united_states.pdf|format=pdf}}</ref>。
*[[クサヨシ]] (''Phalaris arundinacea'') は、どこでも見られる草で、DMT を含み、栽培と抽出が容易で、採取にあたって植物を犠牲にせずとも葉と茎を刈るだけである<ref name="デコーン193"/>。
*[[クサヨシ]] (''Phalaris arundinacea'') は、どこでも見られる草で、DMT を含み、栽培と抽出が容易で、採取にあたって植物を犠牲にせずとも葉と茎を刈るだけである<ref name="デコーン193"/>。
*{{仮リンク|ミモザ・テヌイフローラ|en|Mimosa tenuiflora}} - DMTや[[ユレマミン]]を含有する。
*{{仮リンク|ミモザ・テヌイフローラ|en|Mimosa tenuiflora}} (''Mimosa tenuiflora'') - DMTや[[ユレマミン]]を含有する。
*{{仮リンク|ビオラ・カリフィラ|en|Virola calophylla}} (''Virola calophylla'') - DMT
*[[アカシア]]の一部の種 - DMT
*[[ハイクサネム]] (''Desmanthus illinoensis'') - DMT


''[[TiHKAL]]'' には「DMTはどこにでもある」および「ホアスカ対アヤワスカ」といった章があり、他の植物の情報が提供されている<ref name="rm">{{Cite book|和書|author=ジョン・ホーガン||title=科学を捨て、神秘へと向かう理性|translator=竹内薫 |publisher=徳間書店|date=2004|isbn=4-19-861950-6|pages=291}} ''Rational mysticism'', 2003.</ref>。『ドラッグ・シャーマニズム』の第10章は アヤワスカの類似物の説明と体験記にあてられている<ref name="デコーン193"/>。
''[[TiHKAL]]'' には「DMTはどこにでもある」および「ホアスカ対アヤワスカ」といった章があり、他の植物の情報が提供されている<ref name="rm">{{Cite book|和書|author=ジョン・ホーガン||title=科学を捨て、神秘へと向かう理性|translator=竹内薫 |publisher=徳間書店|date=2004|isbn=4-19-861950-6|pages=291}} ''Rational mysticism'', 2003.</ref>。『ドラッグ・シャーマニズム』の第10章は アヤワスカの類似物の説明と体験記にあてられている<ref name="デコーン193"/>。

2018年2月1日 (木) 16:52時点における版

 アヤワスカのつる

アヤワスカケチュア語: Ayahuasca、Ayawaska)は、南アメリカアマゾン川流域に自生するキントラノオ科つる植物バニステリオプシス・カーピ(以下カーピ)のこと。または、カーピに、ジメチルトリプタミン (DMT) を含む植物サイコトリア・ヴィリディス(チャクルーナ)やディプロプテリス・カブレラナ(チャリポンガ、チャクロパンガ)を加え、煮出して作られた幻覚性の飲料。服飲すると、嘔吐を伴う強力な幻覚作用をもたらす。主にアマゾン西部の先住民族シャーマニズムの儀式や民間療法、宗教儀式などに用いる。

名称

アヤワスカという呼び方は主にペルーとエクアドルで使われている。 アヤワスカは、ペルー、ボリビアなどの先住民族の言語であるケチュア語で、「魂のつる」、「死者のロープ」という意味をもつ。「アヤ」は、魂、精霊、先祖、死者などを指し、「ワスカ」は、つる植物全般やロープを意味する。

ブラジルでは、カーピ、シポ、オアスカ、ダイミなどと呼ばれ、コロンビアではヤヘイ(Yagé)と呼ばれる。ヤヘイの名称は、ビート・ジェネレーション作家のウィリアム・バロウズと詩人アレン・ギンズバーグによる『麻薬書簡』(The Yage Letters) により一般に普及した。

歴史

アヤワスカはアマゾンにおける伝統的医学として、あるいは、宗教的実践のために用いられてきた、精神医作用する植物のお茶である[1]先コロンブス期のアメリカ大陸において、 アヤワスカによる幻覚を描写したと思われる岩絵が発見されている[2]。 アヤワスカにふれた、西洋における最古の記録は、1851年にブラジルのアマゾン地域を探検したイギリス人のリチャード・スプルースによるものである。

アヤワスカの向精神性成分であるハルマリンは、1841年、砂漠地帯に生える低木のムクロジ目ニトラリア科シリアン・ルー英語版(学名:ペガヌム・ハルマラ、Peganum harmala)から分離に成功し、1927年にはじめて化学合成される。1923年には、カーピからハルマリンが分離され、テレパシンと名付けられる(テレパシーに由来)。

1923年、南米における アヤワスカ儀式の映像が米国薬剤師会 (American Pharmaceutical Association) の会議で紹介される[3]

1953年、作家ウィリアム・バロウズが、 アヤワスカ(ヤヘイ)を探しにコロンビアとペルーを訪れる。バロウズはコロンビアで、植物学者のリチャード・エヴァンズ・シュルテス英語版と出会っている。この時の体験を元に1963年には、バロウズと詩人アレン・ギンズバーグによる書簡のやり取り『麻薬書簡』が出版される。

薬草伝統医学の研究で知られるアンドルー・ワイルは、1967年にはじめて アヤワスカを体験し、後にコロンビアを訪れる。

1975年、植物学者のテレンス・マッケナとデニス・マッケナ兄弟による実地調査の記録が、著書 The Invisible Landscape にまとめられる。

ブラジルでは、サント・ダイミウニオン・ド・ヴェジタル英語版 (União do Vegetal) などが アヤワスカを儀式に使用している[1]。これらはキリスト教と統合したアニミズム的な教義をもつ宗教団体である。21世紀初頭にも、これらの信者の集団はアメリカ、イギリス、フランス、オランダ、スペインなどでも見られる[1]。こうして多くの人々とアヤワスカとの接触があり、学者からも注目を集めてきた[1]。日本でも、1994年に放送されたNHKスペシャル『驚異の小宇宙 人体II 脳と心』(第6集:果てしなき脳宇宙―無意識と創造性)にて、アヤワスカを飲んだ時の世界をキャンバスに描くパブロ・アマリンゴを取材し、彼はアヤワスカが、植物のささやさ、宇宙、体内、超生命体、霊的なものを見せる全世界の目であると語った。

また近年アマゾン西部には、主に欧米人向けに改良された アヤワスカ体験を提供する宿泊施設が建てられ、数週間の代替医療プログラムへの参加や変性意識体験を求めて多くの人が訪れる。 アヤワスカ・ツーリズムと言われ、賛否両論を呼んでいる[4]

先住民族による使用

エクアドル・ナポ州での アヤワスカ調理風景

アマゾン川上流域で アヤワスカを使用する先住民族のシャーマンの能力は、善良なことにも邪悪なことにも使われる。 アヤワスカの精霊から歌を授けられ、その歌を使いわけることにより、 アヤワスカは病気を治す薬となったり、敵を攻撃する毒となったりする。敵や呪術師による攻撃を受けたために病気にかかると信じられており、治療師は息を吹きかけたり、口で吸い上げたりして病気を治す。シャーマンが歌う歌や口笛は、病気の治療と呪いをかけることのいずれにも使われる。シャーマンは アヤワスカを飲むことにより体内に粘液を生成し、これを呪術的な攻撃からの防御や武器として使うと言われている。

儀式は夜間に行われ、夕方にアヤワスカが提供され、数晩かけて行われる[5]

調合方法

バニステリオプシス・カーピBanisteriopsis caapi、以下カーピ)は、熱帯雨林の樹木に螺旋状に巻き付きながら成長し、小さなピンク色の花をつける。モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) であるβ-カルボリンの一種、ハルマラアルカロイドハルミンハルマリン[5])を含有する[1]。カーピは南米におけるアヤワスカ茶のすべての調合において組み合わされる[6]

南米アマゾンの伝統的な アヤワスカは、カーピの幹から樹皮を削り取り、これにアカネ科サイコトリア・ヴィリディスPsychotria viridis、チャクルーナ)や、キントラノオ科ディプロプテリス・カブレラナDiplopterys cabrerana、チャリポンガ、チャクロパンガ)などの葉を加え、十数時間から一日煮詰めるか水に浸して得られる褐色の液体である。これらの植物の葉はトリプタミンアルカロイドであるN,N-DMT (DMT) や、5-メトキシ-N,N-DMT (5-MeO-DMT) を含んでいる。

DMTは、体内でも生産される、構造的にセロトニンに類似した非選択的セロトニン作動薬であり[1]、本来、DMTはモノアミン酸化酵素により体内で急速に分解されるため、経口摂取しても効果を及ばさないが、ハルマラアルカロイドに代表されるMAOIと組み合わせることにより向精神性作用を発現する[1]。その他にも、タバコダチュラなどの植物が混入される場合もある。

ウニオン・ド・ヴェジタルで用いられるサイコトリア・ヴィリディスにはDMTを全く含まない場合もある[6]

また西洋では、カーピの代替品としてシリアン・ルーの種子や、DMTの供給源としてミモザ・テヌイフローラ英語版Mimosa tenuiflora、異名はミモザ・ホスティリス)の根の皮などが使用される。#アヤワスカ・アナログ参照。

医療における可能性

アヤワスカにより喚起される変性意識状態は、一時的な自我の喪失英語版を起こし無意識と向き合うことで大きなセラピー効果をもたらすとされる。

1993年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のチャールズ・グロブ医学博士、薬理学者のJ.C.キャラウェイ、デニス・マッケナらが、ブラジルのウニオン・ド・ヴェジタル信者15名を対象に精神鑑定を行った。被験者は10年以上団体に所属し、定期的に アヤワスカを飲用していた。鑑定の結果、彼らは極めて健康であり、過去に患っていたアルコールなどの依存症うつ病不安障害からの改善を示した。神経症や精神病の傾向は皆無だった。また、血液検査では、気分を調整する神経伝達物質であるセロトニンの再取り込み部位の増加を確認し、抗うつ薬と同様の効果が得られることを示唆している[7][8]

ペルーのタキワシ治療施設では、 アヤワスカを使用し、アルコールや薬物(主にコカイン、ヘロイン)依存症の治療に取り組んでいる。国境なき医師団の仕事のためにペルーを訪れたフランス人医師が開設した。

対照実験ではないが、6名での アヤワスカのうつ病に対する効果に関する研究では、ハミルトンうつ病評価尺度にて、摂取の翌日でスコアは平均62%減少し、21目では82%減少していた[9]

カナダでは医師のガボール・マテ英語版が、薬物依存症とその根底にある心的外傷を癒すために アヤワスカを用いており、彼の活動は報道されている。

精神的作用

視覚に及ぼす作用が特徴的で、目を閉じると、鮮やかなイメージが夢を見ているかのように連続して現れる場合が多い。訓練を積んだシャーマンが体験する「ヴィジョン」と呼ばれるイメージにはおおむね段階があり、まず幾何学模様が現れ、植物、動物、幻想的な建築物や都市という順序で展開するという[10]。ヘビ、ジャガーなどのネコ科動物、裸の黒人女性などのイメージが多く報告されている。シャーマンは アヤワスカの幻覚効果を通じて、はるか彼方の惑星を見たり、遠方に住む親戚の健康状態を知ったり、紛失した物の在処や、配偶者の浮気相手、患者を病気にした呪術師の身元をつきとめたりする。

伝統的な組み合わせのアヤワスカは1.5時間から2時間でピークとなり、主観的効果を生じ、知覚の変化、肯定的な気分の増加を示す[9]。20分ほどで効果を生じ、1-2時間でピークとなり、4-6時間続く[1]

身体的作用

アヤワスカは苦みが強く、ひどい味がするため飲み込むことが困難なほどである。服飲すると、激しい吐気、嘔吐、下痢をもよおす場合が一般的で、そのため先住民族のシャーマンは、 アヤワスカの儀式を、嘔吐により身体から寄生虫や毒などを取り除く「浄化」と呼ぶ[11]。 アヤワスカを頻繁に飲んでいるシャーマンが吐気や嘔吐の症状を示すことは稀である。吐気や嘔吐は、ハルマリンの作用によるものである。いくつかの部族は、儀式の前に食事制限を行う。肉や塩分、アルコールなどを控えることで吐気を和らげることができる。その他の身体的作用は、血圧と心拍数の上昇、耳鳴り、めまい、悪寒、発汗、倦怠感、眠気、下痢などがあげられる。服飲後30分ほどで効果が現れ、作用時間は2〜6時間程度。

伝統的な組み合わせを用いたアヤワスカにおいて、拡張期血圧は高用量の摂取では増加が確認されたが、収縮期血圧や心拍数は有意な変化は観察されなかった[9]。摂取から、1.5時間で血中濃度は最大となり、精神的な作用のピークと異一致する[9]。散瞳を生じさせる[9]離脱症状は観察されていない[1]

相互作用

アヤワスカは、モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) を含み、他の幻覚剤よりも薬物相互作用を起こしやすい[5]。ハルマラ・アルカロイドと、セロトニン作動薬の抗うつ薬(SSRI、三環系)や他のセロトニン作用のある医薬品、薬物(幻覚剤、覚醒剤)の併用は避けるべきであり、死亡例が報告されている(そもそもDMTでないなら併用せずとも作用する)[5]。伝統的な組み合わせでない、代替の組み合わせではより大きなリスクがあるかもしれない[5]。これはセロトニン症候群を引き起こし、血圧の上昇、昏睡、死亡にいたる場合がある。

またチラミンを多く含む食物は、高血圧を引き起こす可能性があるが、臨床試験においては記述されていない[5]。アヤワスカ儀式におけるアマゾンの食事法では、チラミンに対して設計されたものではないが、アルコールやチーズ、他の発酵食品を含んでいないあっさりしたものである[1]。なおチラミンを含む食品は、ビール、ノンアルコールビール、赤ワイン、豆腐、大豆、特に発酵食品、チーズ、加工された魚、ソーセージなどがこれにあたる(飲料以外はタンパク質の多い食品)[12]

 アヤワスカ・アナログ

テレンス・マッケナは1989年に、南米以外の土地では、DMTβ-カルボリンを正しい比率で混合した、 アヤワスカのコピーを生むしかないと考えていた[13]。これが アヤワスカ・アナログ(類似物)という考えであり、熱帯品種ではない植物から、カーピとチャクルーナと同じアルカロイドを含む組み合わせが見つかればよく、1990年代のサイケデリックなカルチャーでは話題のひとつとなった[13]。DMT に至っては、植物にありふれているらしいが、正当な化学分析の証拠が欠けている[13]

非熱帯植物

TiHKAL には「DMTはどこにでもある」および「ホアスカ対アヤワスカ」といった章があり、他の植物の情報が提供されている[15]。『ドラッグ・シャーマニズム』の第10章は アヤワスカの類似物の説明と体験記にあてられている[13]

法規制

国際的な向精神薬に関する条約は、アヤワスカに含まれる成分であるDMTをスケジュールIに指定し、あらゆる所持、使用を禁止されている。しかし、その第32条4項が、含有する植物の自生国における伝統的な宗教儀式への使用は規制から除外する。日本においても、DMTは麻薬及び向精神薬取締法において規制されている。しかし、植物の麻薬原料植物への指定はない。

アメリカ合衆国最高裁判所は、ブラジルの宗教団体ウニオン・ド・ヴェジタルのアメリカ支部に対し、宗教的自由回復法に基づいて宗教儀式における アヤワスカの使用を認める判決を下した(2006年)[5]。ブラジルでは、1980年代半ばに宗教上の使用が合法化されている。(向精神薬に関する条約#宗教上の使用の除外規定

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h i j Riba, J. (2003). “Human Pharmacology of Ayahuasca: Subjective and Cardiovascular Effects, Monoamine Metabolite Excretion, and Pharmacokinetics”. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 306 (1): 73–83. doi:10.1124/jpet.103.049882. PMID 12660312. https://doi.org/10.1124/jpet.103.049882. 
  2. ^ Schultes, Richard Evans, and Albert Hofmann. Plants of the Gods: Their Sacred, Healing and Hallucinogenic Properties. Healing Arts Press, 1992.
  3. ^ Erowid. Erowid Ayahuasca Vault : Timeline, Erowid.org, 1996.
  4. ^ Pinchbeck, Daniel. Breaking Open the Head: A Psychedelic Journey into the Heart of Contemporary Shamanism. Broadway, 2002.
  5. ^ a b c d e f g Malcolm, Benjamin J.; Lee, Kelly C. (2017). “Ayahuasca: An ancient sacrament for treatment of contemporary psychiatric illness?”. Mental Health Clinician 7 (1): 39–45. doi:10.9740/mhc.2017.01.039. http://mhc.cpnp.org/doi/10.9740/mhc.2017.01.039. 
  6. ^ a b Morales-García, Jose A.; de la Fuente Revenga, Mario; Alonso-Gil, Sandra; et al. (2017). “The alkaloids of Banisteriopsis caapi, the plant source of the Amazonian hallucinogen Ayahuasca, stimulate adult neurogenesis in vitro”. Scientific Reports 7 (1): 5309. doi:10.1038/s41598-017-05407-9. PMC 5509699. PMID 28706205. https://doi.org/10.1038/s41598-017-05407-9. 
  7. ^ Salak, Kira. “Hell and back”, National Geographic Adventure. 8.2, 2006, 54(10).
  8. ^ McKenna DJ, Callaway JC, Grob CS, et al., "Human Pharmacology of Hoasca, a Plant Hallucinogen Used in Ritual Context in Brazil", Journal of Nervous and Mental Disorder 184, 1996, pp.86-94.
  9. ^ a b c d e Osório, Flávia de L.; Sanches, Rafael F.; Macedo, Ligia R.; dos Santos, Rafael G.; Maia-de-Oliveira, João P.; Wichert-Ana, Lauro; de Araujo, Draulio B.; Riba, Jordi et al. (2015). “Antidepressant effects of a single dose of ayahuasca in patients with recurrent depression: a preliminary report”. Revista Brasileira de Psiquiatria 37 (1): 13–20. doi:10.1590/1516-4446-2014-1496. PMID 25806551. http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S1516-44462015000100013&lng=en&nrm=iso&tlng=en. 
  10. ^ Stafford, Peter. Psychedelics Encyclopedia, Third Expanded Edition. Ronin Publishing, Inc., 1992.
  11. ^ Andritzky, W. “Sociopsychotherapeutic functions of ayahuasca healing in Amazonia”, Journal of Psychoactive Drugs. 21(1), 1989, pp.77-89.
  12. ^ Saklad, Stephen R. Erowid MAOI Vault : Foods to Avoid, Micromedex Inc, 1994.
  13. ^ a b c d e f g h i ジム・デコーン 著、竹田純子、高城恭子 訳『ドラッグ・シャーマニズム』1996年、193-200頁。ISBN 4-7872-3127-8 Psychedelic Shamanism, 1994.
  14. ^ a b Halpern, John H (2004). “Hallucinogens and dissociative agents naturally growing in the United States” (pdf). Pharmacology & Therapeutics 102 (2): 131–138. doi:10.1016/j.pharmthera.2004.03.003. PMID 15163594. http://www.ouramazingworld.org/uploads/4/3/8/6/43860587/2004-halpern-hallucinogens_and_dissociative_agents_naturally_growing_in_the_united_states.pdf. 
  15. ^ ジョン・ホーガン 著、竹内薫 訳『科学を捨て、神秘へと向かう理性』徳間書店、2004年、291頁。ISBN 4-19-861950-6  Rational mysticism, 2003.
  • Metzner, Ralph (2006). Sacred Vine of Spirits: Ayahuasca, paperback, Rochester, VT: Park Street Press. ISBN 1-59477-053-0.
  • Weil, Andrew. The Natural Mind: A Revolutionary Approach to the Drug Problem. Houghton Mifflin, 2004.