ジメチルトリプタミン

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ジメチルトリプタミン
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Dimethyltryptamine 27feb.gif
IUPAC命名法による物質名
2-(1H-indol-3-yl)-N,N-dimethylethanamine
臨床データ
法的規制
投与方法 経口MAOIと共に)、吸入、直腸(あるいは蒸気)、IMIV
識別
CAS番号 61-50-7
ATCコード None
PubChem CID 6089
IUPHAR ligand 141
ChemSpider 5864
KEGG C08302
ChEMBL CHEMBL12420
化学的データ
化学式 C12H16N2 
分子量 188.269 g/mol
物理的データ
密度 1.099 g/ml g/cm³
融点 40–59 °C (104–138 °F)
沸点 160 °C (320 °F) @ 0.6 Torr[1] also reported as 80 - 135 °C @ 0.03 Torr[2]

ジメチルトリプタミン(DMT、N,N-dimethyltryptamine)や、5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン (5-MeO-DMT) はトリプタミン類の原型となるアルカロイド物質で、自然界に発生する幻覚剤である。熱帯地域や温帯地域の植物ほ乳類、ある種のヒキガエルヒト脳細胞血球などに存在する。抽出または化学合成される。形状は室温では透明か、白、黄色がかった結晶。

歴史[編集]

古くからアマゾン熱帯雨林の中部と東部ではDMTや5-MeO-DMTを含む嗅ぎタバコやアヤワスカと呼ばれる飲料を摂取する習慣がある[3]モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) であるハルマリンを含む植物を一緒に煮込む飲料であるアヤワスカは、アマゾンのシャーマンに儀式にとってかかせないものとなっている。

コロンブスの2度目の航海に同行したスペイン人により、南アメリカ先住民族による幻覚剤の使用について、はじめて文書に記録されている。1931年、カナダ化学者リチャード・マンスケがDMTの合成に成功したが、この時点ではその向精神作用までは明らかにされていなかったようだ。1946年には、ブラジルの民族植物学者デ・リマが、ミモサ・ホスティリスの根からDMTを抽出した。純粋なDMTを用いた人体への投与が最初に行われたのは1957年で、ハンガリーの精神科医で化学者のステファン・ソーラが自らの身体への筋肉注射により実験を行い、強力な幻覚効果を発見した。その後すぐ、ソーラは医師の同僚ら30人に参加してもらい、DMTを投与する実験を行った[4]。1965年にはヒトの血液尿中にDMTが存在することがわかり、さらに髄液からも発見された[5]

作用[編集]

喫煙注射による幻覚作用の持続時間は30分ほどで、効果のピークは5~20分に訪れる[6]。DMTとリゼルグ酸ジエチルアミド (LSD) では、交叉耐性がある[6]

経口での摂取では、中の酵素であるモノアミン酸化酵素がDMTを不活性化させるため効力がなくなってしまう[7]。しかし、モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI) と同時に摂取することによって経口でも作用する。MAOIであるβ-カルボリン類のハルマリンハルミンという物質がモノアミン酸化酵素のはたらきを抑制する[7]。このためDMTとハルマリンおよびハルミンを混合させることによって、経口から摂取してもDMTの効力が有効となる[7]。胃を通さないほかの摂取方法としては、喫煙か注射(静脈筋肉)、鼻孔吸飲がある。ガラス製のパイプを熱し、DMTを気化させて吸引する方法が最も一般的である。

実験・仮説など[編集]

ニューメキシコ大学の精神医学教授リック・ストラスマンによれば、1995年までに合計60人以上の被験者に対し400回以上に渡って、DMTを静脈注射で投与したところ、被験者の半数近くが地球外生物に遭遇したと主張している[8]。実験は米国食品医薬品局の許可を得て行われた。ストラスマンは、人間の脳内にある松果体においてDMTが神経伝達物質の一種として生産され、宗教的な神秘体験臨死体験と関連しているという推論を唱えている。

幻覚剤の研究家であるテレンス・マッケナによれば、DMTはエイリアンのいる異次元に誘う作用があるということである[9]

サルを飲料や水やDMTを選択できる環境に置いたところ、何らかの刺激に駆られてDMTを好んで摂取した[10]

脚注[編集]

  1. ^ Häfelinger, G.; Nimtz, M.; Horstmann, V.; Benz, T. (1999), “Untersuchungen zur Trifluoracetylierung der Methylderivate von Tryptamin und Serotonin mit verschiedenen Derivatisierungsreagentien: Synthesen, Spektroskopie sowie analytische Trennungen mittels Kapillar-GC”, Zeitschrift für Naturforschung - Section B Journal of Chemical Sciences 54 (3): 397–414, ISSN 0932-0776 
  2. ^ Corothie, E; Nakano, T (1969), “Constituents of the bark of Virola sebifera”, Planta Medica 17 (2): 184–188, doi:10.1055/s-0028-1099844, PMID 5792479 
  3. ^ レスター・グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-向精神物質の科学と文化』 杵渕幸子訳、妙木浩之訳、工作舎、2000年。43、82頁。ISBN 978-4875023210
  4. ^ Stafford, Peter (1992). Psychedelics Encyclopedia, Third Expanded Edition. Ronin Publishing. ISBN 0914171518. 
  5. ^ Franzen, F. R.; Gross, H. (1965). “Tryptamine, N,N-Dimethyltryptamine, N,N-Dimethyl-5-hydroxytryptamine and 5-Methoxytryptamine in Human Blood and Urine”. Nature 206: 1052-105. doi:10.1038/2061052a0. 
  6. ^ a b レスター・グリンスプーン、ジェームズ・B. バカラー 『サイケデリック・ドラッグ-向精神物質の科学と文化』 杵渕幸子訳、妙木浩之訳、工作舎、2000年。44-45頁。ISBN 978-4875023210。(原著 Psychedelic Drugs Reconsidered, 1979)
  7. ^ a b c ジョン・ホーガン、2004年、212-213頁。
  8. ^ ジョン・ホーガン、2004年、252-253頁
  9. ^ ジョン・ホーガン、2004年、258頁。
  10. ^ テレンス・マッケナ「幻覚性キノコと進化」京堂健・訳『ユリイカ』1995年12月、108-117頁。

参考文献[編集]

  • ジョン・ホーガン 『科学を捨て、神秘へと向かう理性』 竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 978-4198619503。(原著 Rational mysticism, 2003)

関連項目[編集]