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「次亜塩素酸ナトリウム」の版間の差分

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==関連文献==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2017年10月7日 (土) 15:19時点における版

次亜塩素酸ナトリウム
識別情報
CAS登録番号 7681-52-9
KEGG D01711
RTECS番号 NH3486300
特性
化学式 NaClO
モル質量 74.44 g/mol
外観 白色の固体
密度 1.07-1.14 g/cm3 液体
融点

18°C (五水和物)

沸点

101°C (分解)

への溶解度 29.3 g/100ml, 0°C
危険性
EU分類 腐食性(C)
環境への危険性  (N)
主な危険性 刺激性(-5%) 、腐食性(+10%)、酸化剤
NFPA 704
0
2
1
OX
Rフレーズ R31, R34, R50
Sフレーズ (S1/2), S28, S45,
S50, S61
関連する物質
その他の陰イオン 塩化ナトリウム
亜塩素酸ナトリウム
塩素酸ナトリウム
過塩素酸ナトリウム
その他の陽イオン 次亜塩素酸リチウム
次亜塩素酸カルシウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

次亜塩素酸ナトリウム(じあえんそさんナトリウム、sodium hypochlorite)は次亜塩素酸ナトリウム塩である。化学式NaClO で、次亜塩素酸ソーダとも呼ばれる。希釈された水溶液はアンチホルミンとも呼ばれる。水溶液はアルカリ性を示す。

水酸化ナトリウムの水溶液に塩素を通じて得られる。不安定なため、通常は水溶液として貯蔵、使用される。水溶液は安定で長期保存が可能だが、時間と共に自然分解酸素を放って塩化ナトリウム水溶液(食塩水)に変化していく。また、不均化(後述、爆発事故の箇所を参照)も発生する。高濃度の状態ほど分解しやすく、低濃度になると分解しにくくなる。高温や紫外線等で分解が加速するため、常温保存では濃度維持が難しい。

それを逆手に取って、水道水には微量の次亜塩素酸ナトリウムが消毒のために混ざっていて魚に悪影響を与えるので、直射日光に当てることにより次亜塩素酸を除去して観賞魚の飼育に比較的適した水にすることも行われる。

特異な臭気(プール漂白剤の臭い)を有し、酸化作用、漂白作用、殺菌作用がある。

生成方法としては、上記の反応のほかに、海水電気分解する方法もある。この方法は主に、臨海にある工場施設において用いられ、配水管などに海洋生物が付着するのを防ぐために使われる。2008(平成20)年度日本国内生産量(12 %換算)は 963,878 t、消費量は 31,662 t である[1]

利用

上水道やプールの殺菌に使用されている。家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤や、殺菌剤(洗濯用、キッチン用、ほ乳ビンの殺菌用など)などに使用されており、製品によっては少量の界面活性剤(中性洗剤の主成分)やアルカリ剤などが加えられている。

また、水溶液はアンチホルミンという名称で食品添加物としても使われる。殺菌料としては野菜果実などの消毒にも用いられるが、ゴマに対する使用は禁じられている。これは白ゴマを漂白し、より白いゴマとして高値で販売されていたことへの名残であり、今でも禁止されている。また風呂水の殺菌・再利用にも用いられ、業務用が市販されている。

消毒に使用されることも多い。適切な濃度で使用すればノーウォークウイルスを含む多くの細菌ウイルス芽胞に効果を示すため、医療器具やリネンの消毒に使用されている。殺菌効果は次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの酸化力に依存している。これらが有機物に触れると相手を酸化すると同時に自身も分解して殺菌効果が急速に減少してゆく。水溶液はアルカリ性であるが強い酸化力を持つため、金属に使用すると錆が発生しやすい。

有効成分は水溶液中の次亜塩素酸(HClO)及び次亜塩素酸イオン(ClO)である。消毒対象によって異なるが、「次亜塩素酸」は次亜塩素酸イオンに比べて殺菌力が数倍~数十倍と高い傾向にある。水溶液のpHによって二者の存在比が変化し、それに伴って消毒効果も変化する。次亜塩素酸ナトリウムに希塩酸を加えてpH6程度に調整し、殺菌力を増した製品が市販されている。これは弱酸性電解水に近い殺菌力を持つ。後述の通り、強い酸性に傾けるほど塩素ガスが発生して危険であり、保存性も下がる。

危険性

酸との反応

家庭用の製品の「混ぜるな危険」などの注意書きにもあるように、漂白剤殺菌剤といった次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸などの強酸性物質(トイレ用の洗剤など)と混合すると、黄緑色の有毒な塩素ガスが発生する。浴室で洗剤をまぜたことによる死亡事故も起きているので取り扱いには注意が必要である。また、塩酸ほどではないものの、食酢クエン酸炭酸を多く含む物質をかける事も危険である。いずれにせよ換気を良くし、使用量を最小限にとどめる事が肝要である。

空間除菌剤としての販売

次亜塩素酸ナトリウムを含んだ錠剤を不織布で包み、首からさげる「空間除菌剤」と称して一部メーカーで販売されていたが、汗などで濡れると局所的に高濃度の水溶液を生成し化学火傷を起こすため、消費者庁から使用中止の呼びかけが行われた[2]。また、亜塩素酸ナトリウムを原料とした空間除菌剤も販売されており、前述の次亜塩素酸を原料とした空間除菌剤と混同する向きも見られた。消費者庁においてメーカー別の空間除菌剤の安全性を比較した情報提供が行われている[3]。次亜塩素酸ナトリウムやさらし粉(次亜塩素酸カルシウム)は、水溶液中の次亜塩素酸(HClO)及び次亜塩素酸イオン(ClO)が持つ酸化作用により殺菌するものであり、適切な濃度の水溶液に消毒対象を浸漬したり、水溶液を対象物に噴霧して利用する。 当該製品のような、次亜塩素酸ナトリウムの拡散を利用した消毒薬の効果等は不明である。

有機塩素化合物

次亜塩素酸ナトリウムによる漂白は、遊離塩素による塩素化反応なので、トリハロメタンを始めとする多種多様な有機塩素化合物を生成する。塩素化合物は一般的な発がん性物質と同じく、高濃度で吸入、経口摂取しなければ問題はないため、換気を良くすれば洗濯やまな板除菌の程度で恐れる必要はない。また、エタノールと反応して有害なクロロホルムを生成する事がある[4][5]ホウレンソウを次亜塩素酸ナトリウムで処理した場合のクロロホルムの生成量は微酸性次亜塩素酸水よりも多く[5]、0.07ppmであったとされる[5]が、これはアメリカのスーパーマーケットにおける調査での食品中に含まれていたクロロホルムの平均濃度である0.071ppm[6]よりも低い。

爆発事故

次亜塩素酸ナトリウムから、不均化反応により容易に塩素酸ナトリウムが生じる。これが乾燥した結晶爆発性を持つため、事故が起こる原因となる。

1980年代三重県四日市市内で爆発事故が相次いだ。次亜塩素酸ナトリウム水溶液をタンクに移替える時にホースがはずれ、その溶液を浴びた職員が濡れた衣類を洗わずにそのまま干して乾かしてしまった。そのズボンを着て歩き始めたときの摩擦をきっかけに爆発が起こり、その職員が重体になったというものである。類似した事故、いわゆる次亜塩素爆発は1990年代2000年代と次亜塩素酸ナトリウム水溶液の特長認知が忘れられたころに、単純な摩擦抵抗による爆発事故が起きているため注意が必要である。

これについては、セルロースを主体とする布地に次亜塩素酸ナトリウムをしみこませて 40–50 ℃ に保って乾燥させると爆発することが確かめられた。不均化により1/3が塩素酸ナトリウムに変わったのである。塩素酸塩火薬の原料としても知られている。

脚注

関連文献

  • 小方芳郎、木村眞「次亜ハロゲン酸塩による酸化 -廃水浄化に関連して-」『有機合成化学協会誌』第37巻第7号、有機合成化学協会、1979年、581-594頁、doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.37.581 

関連項目