ガガイモ
ガガイモ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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ガガイモ
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Metaplexis japonica (Thunb.) Makino (1903)[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ガガイモ(蘿藦) |
ガガイモ(蘿藦[3]、学名: Metaplexis japonica)はキョウチクトウ科[注 1]ガガイモ属のつる性多年草である。中国名は蘿藦[1]。種子や葉は薬用に、若い芽は食用になる。
名称
[編集]古名をカガミまたはカガミグサという。夏の季語。いずれの名も語源には諸説あり、イモというのは根ではなくて実の形によるともいう。高橋 (2003) は割れた実の内側が鏡のように光るのでカガミイモ(鏡芋、輝美芋)の名がつき、これが訛ってガガイモとなったとしている。
平安初期の『本草和名』で中国語名の蘿藦がガガイモを表す漢字表記としてあてられ、やがて蘿藦の表記が用いられるようになった。
日本神話では、スクナビコナの神が天之蘿摩船(あまのかがみのふね)に乗ってきたといい、これはガガイモの実を2つに割った小さな舟のこと。
地方により、ガンガラ[4]、ゴンガラ[4]、トウノキ[4]などととばれている。
ガガイモの学名は牧野 (1940) などで Metaplexis japonica と紹介されてきたが、Khanum et al. (2016) でMetaplexis属など[注 2]はイケマ属(Cynanchum)に統合するのが妥当とする学説が出され、ガガイモに関しては同論文480頁で提案された Cynanchum rostellatum という新学名がキュー植物園からも認められている[5]。
分布と生育環境
[編集]日本の北海道・本州・四国・九州のほか[6]、朝鮮半島、中国の東アジア一帯に分布する[6][7]。低地から低山帯に分布する[3]。各地の山野に自生し[6]、日当たりのよいの草原や道端、藪、河川敷、林縁などに見られる[3][7]。日当たりと排水がよく、肥えた土地を好む性質があり群生する[6][3]。
形態・生態
[編集]つる性の多年草で、長く太い地下茎があり、白い線状で長く伸びると、その先に茎を出す[6]。地下茎はちぎれても、地下茎の一部分から容易に繁殖できる[6]。地下茎は有毒[3]。つるは右巻き(Z巻き)である。他物に絡んで伸び、長さは2メートル (m) ほどになる[3]。葉は対生し、長さ5 - 10センチメートル (cm) のやや長い心臓形で全縁[6][3]、葉脈が目立ち、葉身の表面は濃い緑色、裏面は白緑色をしている[7]。葉や茎を切ると白い乳液が出る[6]。
夏に、葉腋から長い花柄を出した先に集散花序がつき、淡紫色から白色の花が10 - 20個ほど咲く[6][3][7]。花冠は5深裂して星型に反り返り、花冠の内側に毛が密生する[6][7]。果実は大型の紡錘形の袋果で、長さは8 - 10センチメートル (cm) [7]、表面にイボがあり、熟すと割れてボート形になり、中から白い毛の生えた種子が出る[6]。
ヘクソカズラに姿がやや似ており、比べると数は少ないが、横に伸びた根から芽を出して旺盛に繁殖するため、一度生えると雑草化する。
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白毛のついた種子がみえる袋果。長さ10cm、径3cm。
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袋果が割れ、中の種子が風によって散布される。
利用
[編集]かつては種子の毛を綿の代用や朱肉に用いた[8][9]。種子は漢方で蘿摩子(らまし)と呼んで強壮薬に用いることもある。若芽などはゆでて食べられる(多量に食べると有害ともいう)。
生薬
[編集]種子と葉は生薬になり、初秋に実を採って天日乾燥して種子を取り出し、葉は夏に採取して陰干しして調製される[6]。乾燥させた種子は蘿摩子(らまし)と称されていて、強精、止血に、また葉は解毒、腫れ物に薬効があるとして用いられる[6]。民間療法では、強精目的に羅摩子の乾燥粉末1日量2 - 3グラムを1日2回服用する用法が知られる[6]。切り傷の止血には種子の白毛をつけるとよいとされ[6][7]、腫れ物には葉の粉末をクチナシの粉末(サンシシ末)と一緒に酢で練り合わせて、湿布する方法が知られている[6]。
食用
[編集]若芽は食用になり、暖地では5 - 7月、寒冷地では6 - 7月ごろに採取する[3]。若芽を茹でて水にさらし、おひたし、ごま和え、クルミ和え、白和え、マヨネーズ和えなどの和え物、酢の物、煮物、汁の実などにする[3][4]。生の若芽を用いて天ぷらやバター炒めにもできる[3][4]。初秋(9 - 10月)にオクラに似た若い果実を採取して、天ぷらや漬物にする[3][4]。ただし、根茎には毒成分が含まれているので、採取は禁物である[4]。
諸言語における呼称
[編集]日本では以下のような方言名が見られる。
- イガイモ: 志摩国[10]
- イモ: 山口県(大島郡)[10]
- カガイモ: 山口県(都濃郡、吉敷郡、大津郡)[10]
- ガカイモ: 山口県(美祢郡)[10]
- カガミ: 熊本県玉名郡[10]
- カガライモ: 山口県大島郡[10]
- カガラビ: 加賀国[10]
- ガガラビ: 加賀国[10]
- カゴイモ: 山口県豊浦郡[10]
- ガンガラビ: 新潟県中蒲原郡[10]
- クサパンヤ[注 3]: 江戸[10]
- クサワタ[注 4]: 静岡県賀茂郡[10]
- ゴアミ: 長野県北安曇郡[10]
- ゴアメ: 長野県北安曇郡[10]
- コアンベ: 長野県北安曇郡[10]
- コーガミ: 仙台[10]
- ゴーガミ: 仙台[10]
- コーガメ: 駿河国[10]
- ゴーガメ: 駿河国[10]
- コーガモ: 遠江国[10]
- ゴガチョ: 秋田県仙北郡[10]
- ゴガッチョー: 秋田県[10]
- コガネ: 木曾[10]
- ゴガベッチョ: 秋田県(平鹿郡、由利郡)[10]
- コガミ: 木曾、宮城県(仙台、登米郡)、長野県更級郡[10]
- ゴガミ[注 3]: 仙台[10]
- ゴガミズル: 仙台[10]
- コガメショ: 秋田県由利郡[10]
- コカライ: 出羽国米沢[10]
- コガラビ: 出羽国[10]
- ゴガラビ: 出羽国[10]
- コガラミ: 山形県庄内[10]
- ゴガラミ: 山形県(新庄市、酒田市)[10]
- コンガラ: 長野県(下水内郡)[10]
- ゴンガラ: 長野県(下水内郡)[10]
- ショーカイモ: 山口県美祢郡[10]
- ショーガイモ: 山口県美祢郡[10]
- チガイモ: 出羽国[10]
- ナガイモ: 山口県(熊毛郡、玖珂郡、都濃郡)[10]
- ハンシャ: 伊予国[10]
- ハンジャ: 伊予国[10]
- ハンヤ: 佐渡[10]
- パンヤ: 木曾、三重県(宇治山田市、伊勢)、三宅島[10]
- ヤマイモ: 山口県(玖珂郡、厚狭郡、豊浦郡、美祢郡、阿武郡)[10]
- ラマソー: 江戸、京都[10]
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 最新の分類体系であるAPG体系ではキョウチクトウ科であるが、古いクロンキスト体系や新エングラー体系ではガガイモ科に含められた[1]。
- ^ ちなみに Metaplexis 以外にイケマ属に統合された属は Adelostemma、Glossonema、Graphistemma、Holostemma、Metalepis、Odontanthera、Pentarrhinum、Raphistemma、Seshagiria、Sichuania である。
- ^ a b 牧野 (1940) もガガイモの別名として挙げている。
- ^ 高橋 (2003) はガガイモの別名として「草綿」を掲載している。
出典
[編集]- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Metaplexis japonica (Thunb.) Makino ガガイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月5日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cynanchum rostellatum (Turcz.) Liede et Khanum ガガイモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月5日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 高橋秀男監修 2003, p. 76.
- ^ a b c d e f g 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 107.
- ^ Govaerts, Goyder & Leeuwenberg (2019).
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 馬場篤 1996, p. 33.
- ^ a b c d e f g 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 93.
- ^ 牧野 (1940).
- ^ 高橋 (2003).
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as 八坂書房 (2001).
参考文献
[編集]日本語:
- 牧野, 富太郎『牧野日本植物圖鑑』北隆館、1940年、204頁 。
- 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、33頁。ISBN 4-416-49618-4。
- 八坂書房 編『日本植物方言集成』八坂書房、2001年、125-6頁。ISBN 4-89694-470-4。
- 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、107頁。ISBN 4-418-06111-8。
- 高橋, 勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』山と溪谷社、2003年、84頁。ISBN 978-4-635-07015-7。
- 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、76頁。ISBN 4-05-401881-5。
- 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見わける野草』小学館、2010年4月10日、93頁。ISBN 978-4-09-208303-5。
英語:
- Govaerts, R., Goyder, D., Leeuwenberg, A. (2019). World Checklist of Apocynaceae. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; https://wcsp.science.kew.org/namedetail.do?name_id=520433 Retrieved 7 October 2021
関連文献
[編集]英語:
- Khanum, Rizwana; Surveswaran, Siddharthan; Meve, Ulrich; Liede-Schumann, Sigrid (2016). “Cynanchum (Apocynaceae: Asclepiadoideae): A pantropical Asclepiadoid genus revisited”. Taxon 65 (3): 467-486. doi:10.12705/653.3.