XF5U (航空機)

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XF5U

ヴォート XF5U-1 原型1号機

ヴォート XF5U-1 原型1号機

XF5Uは、アメリカ海軍の依頼でヴォート社とその技師en:Charles H. Zimmermanが設計・試作した艦上戦闘機である。

円盤状の形状からフライング・パンケーキFlying Pancake)またはフライング・フラップジャックFlying Flapjack)の愛称がつけられている。

概要[編集]

風洞実験中のV173の実物大モックアップ1941年11月28日の撮影

円盤翼の機体は翼面積が広いため高い揚力を得られ失速しにくく、広い速度範囲で飛行できるという特性があることに着目したヴォート社は独自に研究を進め、アメリカ海軍の支援を得て1942年11月に80馬力エンジン2基を動力とする社内実験機「V-173」の初飛行に成功し、エンジンの馬力不足に悩まされつつも高い性能を示した。試験飛行中のV-173は、その機体形状から未確認飛行物体(UFO)と誤認された記録があるとされる。

これを受けて実用機が計画され、1944年7月15日に米海軍は「XF5U-1」の名称で試作機2機の発注を行った。高い速度性能と機動性能・短距離離着陸(STOL)性能を持つ機体として開発が進められていたが、実機が試験運用可能な状況にあったにもかかわらず、初飛行さえ行われないまま機体の破壊命令が運用部隊に届けられるという慌しい形で開発は中止された。

本機の開発が中止になった理由としては、第二次世界大戦の終結とジェットエンジンの進歩によって、どれだけ高性能であってもレシプロエンジン搭載の戦闘機を開発する必要性がなくなったことと、機体の構造上、前方にはプロペラの回転範囲外になる部分がほとんど無いため、改修後の大型プロペラを装備した状態ではロケット弾などの前方に投射する兵器を装備することができない、という点が大きな難点とされた。

それに対し、エンジンをジェット化する事で大型プロペラによる弊害を一掃し、短い滑走距離でも離着艦可能なジェット艦載機としての技術的可能性があったにも関わらず、それについての提言は全く為されず、そのまま計画は終了した事で円盤翼の飛行特性を受け継いだ技術研究は現在に至るまで(少なくとも公式には)無い物とされている。

開発[編集]

アメリカ海軍からの発注を受けてXF5Uの開発には高い優先度が与えられたが、革新的な設計の機体だったために試作機の製作は難航し、更にヴォート社はF4U コルセアの生産と改良、TBU シーウルフといった他の新型機の開発・生産で手一杯であったこともあって、試作機の完成は第二次世界大戦終了後の1945年8月のことであった。しかし、機体は完成したもののSTOL性能の向上を目的とした新型の大型4翅プロペラの開発が遅れたため、完成した試作機は応急処置としてF4Uのプロペラを装着している。

代用のプロペラでは設計通りの性能を発揮し得ないとして初飛行は行われず、その後は地上での試験が続けられていたが、1947年に新型プロペラがようやく完成し、完全状態となったのは機体の完成から2年後のことであった。しかし、同年の3月に米海軍はXF5U計画を中止することを決定し、試作1号機は飛行することなく開発中止決定の直後にスクラップ処分とされた[1]。円盤の利点でもある構造の強固さに加え外板にはヴォートの特許であるメタライト(Metalite)[2]を使用していたことから、通常の航空機をスクラップ処分する際に用いる手法では破壊することができず、機体形状のメリットを思わぬ形で実証した結果となっている。

機体[編集]

XF5Uは"フライング・パンケーキ"の名の通り円盤型の主翼を持ち、C-54ダグラス DC-4の軍用型)など中型機向けのレシプロエンジンであるR-2000-7(1350 hp)2基を機体中央部を挟んで左右に搭載している。操縦席は機体中心軸上にあり、主翼よりやや前方に突き出した形状にすることにより必要な視界を確保している。双垂直尾翼であり、主翼後部の左右に水平尾翼も備えている。プロペラは、STOL性能を向上させる特殊なブレードを装着することになっていたが、この開発に手間取り、試作機には当初F4U コルセアのプロペラが装着されていた。3枚翅のプロペラを装着した機体の写真は、この時期に撮影されたものである。

スペック(XF5U-1)[編集]

XF5U-1 三面図
機体名 XF5U-1[3]
全長 28 ft 1.5 in (8.57 m)
全幅 32 ft 6 in (9.91 m) (36 ft 5 in (11.1 m) ※プロペラ含む最大幅)
全高 16 ft 8.5 in (5.09 m)
翼面積 475 ft2 (44.13 m2)
空虚重量 13,107 lbs (5,945 kg)
離陸重量 16,722 lbs (7,585 kg)
最大離陸重量 18,772 lbs (8,515 kg)
内部燃料 300 gal (1,136 L)
エンジン Pratt & Whitney R-2000-7(1350 hp)×2
最高速度 413 kn / 28,000 ft (765 km/h 高度 8,534 m)
上昇能力 海面高度 3,590 ft/m (18.24 m/s)、20,000 ft (6,096 m)まで5分48秒
航続距離 910 n.mile (1,685 km) ※1×150 galタンク搭載時
武装 AN/M2 12.7mm機関銃 ×6
爆装 500 lbs(227 kg)または1,000 lbs(454 kg)爆弾×2

登場作品[編集]

小説[編集]

女皇の帝国
女皇の聖戦
氷山空母を撃沈せよ!

ゲーム[編集]

鋼鉄の咆哮シリーズ』
Windows版のみ「F5Uスキマー」という名前で登場する。20mm航空機関砲とロケット弾を装備しており非常に旋回性能が高い。
World of Warplanes
VS-315とXF5U-1が登場する。
戦艦少女R
開発可能な装備としてXF5Uが登場する。
バトルフィールド1942
MODForgotten Hope Secret Weapon』にアメリカ軍戦闘機として登場。
『ソラヒメ ACE VIRGIN - 銀翼の戦闘姫』
初回チャージで入手可能。
編隊少女 -フォーメーションガールズ-
期間限定でパーツを集めることで入手可能(現在不可)
ストライカーズ1945II』『ストライカーズ1945PLUS』
機体名F-5Uフライングパンケーキとして登場。武装は実機とはまるで異なっている。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 技術情報の隠蔽を目的とした命令と思われ、見ようによっては計画の中止というよりも円盤機の技術系統を地下に潜らせたとも受け取れる
  2. ^ 樹脂を挟んだバルサ材ハニカム構造とし外部にアルミ板を張ることで強度と軽量性を両立させた素材。強度が高いためF6Uにも使われている。
  3. ^ XF5U-1 Flying Flapjack Specifications (PDF)”. www.alternatewars.com (1944年6月1日). 2017年4月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月9日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]