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Raptor Lakeマイクロプロセッサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Raptor Lake
販売者 インテル
設計者 インテル
生産者 インテル
プロセスルール Intel 7
マイクロアーキテクチャ 高性能コア
Raptor Cove
高効率コア
Gracemont
命令セット x86-64
コア数 最小2
最大8+16
(スレッド数:4から32)
ソケット LGA1700
前世代プロセッサ Alder Lake
次世代プロセッサ Meteor Lake
(モバイル向け)
Arrow Lake
(デスクトップ向け)
L1キャッシュ Raptor Cove
L1i:32KiB/コア
L1d:48KiB/コア
Gracemont
L1i:64KiB/コア
L1d:32KiB/コア
L2キャッシュ Raptor Cove
最大2MiB/コア
Gracemont
最大4MiB/コア
L3キャッシュ 最大36MiB
GPU Intel Xe
ブランド名 Core (13th gen)
Core (14th gen)
Core (Series 1)
Intel Processor
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Raptor Lakeマイクロプロセッサ(ラプターレイクマイクロプロセッサ)は、 インテルの第13世代および第14世代のPC向けマイクロプロセッサのコードネームであり、Alder Lakeマイクロプロセッサの改良版として、2022年9月に発表、2022年10月に発売された[1]

高性能コア(Pコア)と高効率コア(Eコア)を利用したハイブリッドアーキテクチャ(ヘテロジニアスマルチコア)に基づくプロセッサ である。

プロセスルールはAlder Lakeで採用された Intel 7 の改良版に当たる、Intel 7 Ultra[2] を採用している。

ソケットはLGA1700DDR4DDR5に対応する。

Core i5 13600以下のモデルは、開発コードこそRaptor Lakeとなっているが、構成上の実仕様はAlder Lakeとほぼ同一となるため、完全なRaptor Lakeではない点に注意。

2023年10月にRaptor Lake Refreshとなる第14世代Coreを発表した。第13世代CoreであるRaptor Lakeのアーキテクチャやソケット(LGA1700、Intel 600/700シリーズチップセット対応)はそのままに、Core i9ではクロック向上、Core i7ではEコアを増やした[3]

実質Core iシリーズの名称が使われる最後のシリーズであり、下位モデルはPentiumCeleronに代わり、Intel Processorの名称が採用されている。

第13世代 Raptor Lake 製品概要

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デスクトップ向け Raptor Lake-S

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  • ソケットLGA1700
  • 最大24(8P+16E)コア
デスクトップ向け Raptor Lake-S
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

価格

(米ドル)

定格 最大 型番 EU数 周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア 定格 最大 L3 L2 定格 最大
Core i9 13900KS 8 16 24 32 3.2 2.4 6.0 4.3 UHD 770 32 300 1650 DDR5-5600×2
DDR4-3200×2
36 32 150 253 689
13900K 3.0 2.2 5.8 4.3 125 589
13900KF N/A 564
13900 2.0 1.5 5.6 4.2 UHD 770 32 300 1650 65 219 549
13900F N/A 524
13900T 1.1 0.8 5.3 3.9 UHD 770 32 300 1650 35 106 549
Core i7 13790F 8 8 16 24 2.1 1.5 5.2 4.1 N/A 33 24 65 219
13700K 3.4 2.5 5.4 4.2 UHD 770 32 300 1600 30 125 253 409
13700KF N/A 384
13700 2.1 1.5 5.2 4.1 UHD 770 32 300 1600 65 219 384
13700F N/A 359
13700T 1.4 1.0 4.9 3.6 UHD 770 32 300 1600 35 106 384
Core i5 13600K 6 8 14 20 3.5 2.6 5.1 3.9 UHD 770 32 300 1500 24 20 125 181 319
13600KF N/A 294
13600 2.7 2.0 5.0 3.7 UHD 770 32 300 1550 DDR5-4800×2

DDR4-3200×2

24 11.5 65 154 255
13600T 1.8 1.3 4.8 3.4 35 92 255
13500 2.5 1.8 4.8 3.5 65 154 232
13500T 1.6 1.2 4.6 3.2 35 92 232
13490F 6 4 10 16 2.5 1.8 4.8 3.5 N/A 9.5 65 148
13400 2.5 1.8 4.6 3.3 UHD 730 24 300 1550 20 154 221
13400F N/A 65 148 196
13400T 1.3 1.0 4.4 3.0 UHD 730 24 300 1550 35 82 221
Core i3 13100 4 N/A 4 8 3.4 N/A 4.5 N/A UHD 730 24 300 1500 12 5 60 89 134
13100F N/A 58 89 109
13100T 2.5 N/A 4.2 N/A UHD 730 24 300 1500 35 69 134

モバイル向け Raptor Lake-HX

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  • ゲーミングノートPC向け
  • 最大24(8P+16E)コア
モバイル向け Raptor Lake-HX
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 L2 定格 最大
Core i9 13980HX 8 16 24 32 2.2 1.6 5.6 4.0 UHD Graphics 32 1650 DDR5-5600×2

DDR4-3200×2

36 32 55 157
13950HX 5.5
13900HX 5.4 3.9
Core i7 13850HX 12 20 28 2.1 1.5 5.3 3.8 1600 30 24
13700HX 8 16 24 5.0 3.7 1550
13650HX 6 14 20 2.6 1.9 4.9 3.6 16 24 20
Core i5 13600HX 4.8 32 1500
13500HX 2.5 1.8 4.7 2.5
13450HX 4 10 16 2.4 4.6 2.4 16 1450 20 16

モバイル向け Raptor Lake-H

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  • ゲーミングノートPC向け
  • 最大14(6P+8E)コア
  • Core i5-13505H、Core i7-13705H、Core i9-13905HはSoM(System on Module)の形式で提供される。[4][5]
モバイル向け Raptor Lake-H
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 定格 最大
Core i9 13900HK 6 8 14 20 2.6 1.9 5.4 4.1 Iris Xe Graphics 96 1500 DDR5-5200×2

DDR4-3200×2

24 45 115
13905H
13900H
Core i7 13800H 2.5 1.8 5.2 4.0
13705H 2.4 5.0 3.7
13700H
13620H 4 10 16 4.9 3.6 64
Core i5 13600H 4 8 12 2.8 2.1 4.8 80 18 95
13505H 2.6 1.9 4.7 3.5 1450 115
13500H 95
13420H 4 8 12 2.1 1.5 4.6 3.4 48 1400 12

モバイル向け Raptor Lake-P

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  • メインストリーム向け
  • 最大14(6P+8E)コア
モバイル向け Raptor Lake-P
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 定格 最大
Core i7 1370P 6 8 14 20 1.9 1.4 5.2 3.9 Iris Xe Graphics 96 1500 DDR5-5200×2

DDR4-3200×2

24 28 64
1360P 4 12 16 2.2 1.6 5.0 3.7 18
Core i5 1350P 1.9 1.4 4.7 3.5 80 12
1340P 4.6 3.4 1450

モバイル向け Raptor Lake-U

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  • 薄型軽量ノートPC向け
  • 最大10(2P+8E)コア
モバイル向け Raptor Lake-U
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 定格 最大
Core i7 1365U 2 8 10 12 1.8 1.3 5.2 3.9 Iris Xe Graphics 96 1300 DDR5-5200×2

DDR4-3200×2

12 15 55
1355U 1.7 1.2 5.0 3.7
Core i5 1345U 1.6 1.2 4.7 3.5 80 1250
1335U 1.3 0.9 4.6 3.4
1334U
Core i3 1315U (with IPU) 4 5 6 1.2 0.9 4.5 3.3 UHD Graphics 64 10
1305U 1 1.6 1.2
Intel Processor U300 1.2 0.9 4.4 48 1100 8

第14世代 Raptor Lake 製品概要

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デスクトップ向け Raptor Lake-S Refresh

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  • ソケットLGA1700
  • 最大24(8P+16E)コア
デスクトップ向け Raptor Lake-S Refresh
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大
2.0 3.0 TVB
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア Pコア Pコア 型番 最大周波数(MHz) L3 L2 定格 最大
Core i9 14900K 8 16 24 32 3.2 2.4 5.6 4.4 5.8 6.0 UHD 770 1650 DDR5-5600×2

DDR4-3200×2

36 32 125 253
14900KF N/A
14900 2.0 1.5 5.4 4.3 5.6 5.8 UHD 770 1650 65 219
14900F N/A
14900T 1.1 0.8 5.1 4.0 5.5 N/A UHD 770 1650 35 106
Core i7 14790F 8 16 24 2.1 1.5 5.3 4.2 5.4 N/A 65 219
14700K 12 20 28 3.4 2.5 5.5 4.3 5.6 UHD 770 1600 33 28 125 253
14700KF N/A
14700 2.1 1.5 5.3 4.2 5.4 UHD 770 1600 65 219
14700F N/A
14700T 1.3 0.9 5.0 3.7 5.2 UHD 770 1600 35 106
Core i5 14600K 6 8 14 20 3.5 2.6 5.3 4.0 N/A 1550 24 20 125 181
14600KF N/A
14600 2.7 2.0 5.2 3.9 UHD 770 1550 65 154
14600T 1.8 1.3 5.1 3.6 35 92
14500 2.6 1.9 5.0 3.7 DDR5-4800×2

DDR4-3200×2

11.5 65 154
14500T 1.7 1.2 4.8 3.4 35 92
14490F 4 10 16 2.8 2.1 4.9 3.7 N/A 9.5 65 148
14400 2.5 1.8 4.7 3.5 UHD 730 1550 20
14400F N/A
14400T 1.5 1.1 4.5 3.2 UHD 730 1550 35 82
Core i3 14100 4 N/A 4 8 3.5 N/A 4.7 N/A 1500 12 5 60 110
14100F N/A 58
14100T 2.7 4.4 UHD 730 1500 35 69
Intel Processor 300 2 2 4 3.9 N/A UHD 710 1450 6 2.5 46 N/A
300T 3.4 35

モバイル向け Raptor Lake-HX Refresh

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  • ゲーミングノートPC向け
  • 最大24(8P+16E)コア
モバイル向け Raptor Lake-HX Refresh
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 定格 最大
Core i9 14900HX 8 16 24 32 2.2 1.6 5.8 4.1 UHD Graphics 32 1650 DDR5-5600×2

DDR4-3200×2

36 55 157
Core i7 14700HX 12 20 28 2.1 1.5 5.5 3.9 1600 33
14650HX 8 14 20 2.2 1.6 5.2 3.7 16 30
Core i5 14500HX 6 14 20 2.6 1.9 4.9 3.5 32 1550 24
14450HX 4 10 16 2.4 1.8 4.8 16 1500 20

サーバー向け Raptor Lake

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Core シリーズ1 Raptor Lake 製品概要

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モバイル向け Raptor Lake-U Refresh

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  • 薄型軽量ノートPC向け
  • 最大10(2P+8E)コア
ブランド 型番 コア数 スレッド CPU周波数(GHz) iGPU メモリ周波数 キャッシュ

(MB)

熱設計電力

(W)

定格 最大 型番 EU数 最大周波数(MHz)
Pコア Eコア 合計 Pコア Eコア Pコア Eコア L3 定格 最大
Core 7 150U 2 8 10 12 1.8 1.2 5.4 4.0 Iris Xe Graphics 96 1300 DDR5-5200×2

DDR4-3200×2

12 15 55
Core 5 120U 1.4 0.9 5.0 3.8 80 1250
Core 3 100U (with IPU) 4 5 6 1.2 4.7 3.3 UHD Graphics 64 10

Vmin Shift 不安定問題

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2023年2月ごろからユーザーの間で13世代のKモデル(サフィックス)において、ゲームのクラッシュが報告され始めた[6]。その後発売された14世代のKモデルでも同様の現象が報告された。

11月1日にEpicの子会社RADがOodleの解凍エラーについてRaptor Lakeが原因であるとの見解を示した[7]

2024年2月27日にIntelはコミュニティぺージにてこの問題の報告を認識し、パートナーと協力して分析していることを明らかにした。

4月13日にNvidiaはこの問題はGeForceの不具合ではなくIntelへ問い合わせるようにGeForceフォーラムにてアナウンスを行った。

4月28日までに、Intelは影響を受けたプロセッサーを分析したところ最低動作電圧(Vmin)が変動しており、根本的な原因は掴めていないが「マザーボード側の無制限な電力設定と関連している可能性がある」としてインテルの推奨設定内で動作させるように声明を出した[8]。マザーボードメーカー各社はこの声明に沿うように「Intel Baseline Prorile」を追加したBIOSを公開し始めた。「Intel Baseline Prorile」で動作させたKモデルにおいて発熱の低下と数%の性能低下がみられるようになった[9]。また影響を受けて劣化したプロセッサーは対策されたBIOSを使用しても修復できない。

5月になるとIntelは推奨設定に準拠した「Intel Default Settings」を使用するように呼びかけ[10]、マザーボードメーカー各社が新しいBIOSを公開した。

6月に入り、eTVBのアルゴリズムに不具合があったとしてマイクロコード 0x125をリリースした。

7月22日、Intelはこの問題はSVIDのアルゴリズムに起因し、Vmin Shiftを引き起こす可能性がある誤った動作クロックと高電圧を要求していたことが原因だとユーザーサポートフォーラムで報告した。修正版マイクロコード 0x129は8月中旬に予定しているとした[11]

8月2日、Intelは特定のボックス版 第13/14世代Core CPUの保証を2年間延長すると発表した。損傷したCPUは、Intelの保証延長プログラムの下で交換する必要がある。

8月5日、同社はトレイ(OEM)CPUにも保証を延長すると発表した。

9月25日、最終的な対策としてアイドル時および低負荷時の電圧制御をより厳格化したマイクロコード 0x12Bを発表し、現行のモバイルプロセッサーおよびLunar LakeやArrow Lakeプロセッサーは、この問題の影響を受けないことを再度アナウンスした。

脚注

[編集]
  1. ^ 株式会社インプレス (2022年9月13日). “第13世代Coreはシングルスレッドで15%、マルチスレッドで41%性能向上を実現”. PC Watch. 2022年9月13日閲覧。
  2. ^ Intel 7 Ultra”. 2022年10月26日閲覧。 “Nicknamed "Intel 7 Ultra" internally, the new process is a full PDK update over the one used by Alder Lake, their 3rd generation SuperFin Transistor architecture.”
  3. ^ 株式会社インプレス (2023年10月16日). “第14世代Core登場。Core i9-14900Kは“スペシャル”でなくても6GHz”. PC Watch. 2023年10月16日閲覧。
  4. ^ モバイル向け「第13世代Coreプロセッサ(Raptor Lake)」登場 新型エントリーCPUや一般デスクトップ向けCPUも追加”. ITmedia PC USER. 2024年10月4日閲覧。
  5. ^ 株式会社インプレス (2023年7月18日). “【Hothotレビュー】 カスタムCPUにRTX 4080、有機ELも搭載した16型薄型プレミアムノート「Zenbook Pro 16X OLED UX7602BZ」”. PC Watch. 2024年10月4日閲覧。
  6. ^ problem, Nvidia's response to the (2024年4月9日). “Intel is finally investigating reports of high-end 13th/14th-gen CPUs causing game crashes” (英語). TechSpot Forums. 2024年5月19日閲覧。
  7. ^ Intel Processor Instability Causing Oodle Decompression Failures”. www.radgametools.com. 2024年10月14日閲覧。
  8. ^ Intel、第13世代及び14世代CPUのクラッシュ問題は“無制限な電力設定”のマザーボードに原因ありと発表 | XenoSpectrum”. xenospectrum.com (2024年4月27日). 2024年5月19日閲覧。
  9. ^ ASCII. “インテルCPUを安全に使える設定?「Intel Baseline Profile」のパフォーマンスを検証【暫定版】 (1/5)”. ASCII.jp. 2024年5月19日閲覧。
  10. ^ Intel、第13世代及び第14世代Coreプロセッサークラッシュ問題に関して最終声明、新たな「Intel Default Settings」を使用するよう要請 | XenoSpectrum”. xenospectrum.com (2024年5月9日). 2024年5月19日閲覧。
  11. ^ Intel、第13世代及び第14世代Coreプロセッサのクラッシュ原因を特定、8月中旬までに修正パッチをリリースと発表”. 2024年10月15日閲覧。

関連項目

[編集]