コンテンツにスキップ

Rocket Lakeマイクロプロセッサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Rocket Lakeマイクロプロセッサ
生産時期 2021年3月30日(日本時間)から
生産者 インテル
プロセスルール 14nm
マイクロアーキテクチャ Cypress Coveマイクロアーキテクチャ
命令セット x64-x86
コア数 6または8
(スレッド数:12または16)
ソケット LGA1200
コードネーム Rocket Lake
前世代プロセッサ Comet Lakeマイクロプロセッサ
次世代プロセッサ Alder Lakeマイクロプロセッサ
ブランド名 i9
i7
i5
Xeon
テンプレートを表示

Rocket Lake(ロケットレイク)は、インテルによって開発されたデスクトップ向け第11世代マイクロプロセッサである。2021年3月17日に発表され[1]、3月30日に発売された[2]

概要

[編集]

高い動作周波数を持つ14nmプロセスのマイクロプロセッサとして、同じ14nmプロセスのComet Lakeマイクロプロセッサ(第10世代)の後継として用意された。当時10nmプロセスでは動作周波数を上げることが難しかった。

高い動作周波数、IPCの増強、ピンやソケットの大型化、Cypress Coveマイクロアーキテクチャ採用などによる性能増強が図られ、シングルスレッドの性能は顕著に向上した。

反面、iGPU・リングバス・ソケット形状維持のためにコア数が減りマルチスレッド性能が低下し、また製造プロセスが改善されてないため消費電力が大幅に増加した[3]11900Kなどの第11世代 Core i9シリーズ10900Kなどの10世代 Core i9シリーズとの比較)。

特徴

[編集]

プロセスルール

[編集]

プロセスルールのみCoffee Lakeから最適化がされていない。

プロセッサのコードネーム プロセスルールの名称
Broadwell
Skylake
14nm
Kaby Lake
Kaby Lake Refresh
Amber Lake
14nm+
Coffee Lake
Coffee Lake Refresh
Whiskey Lake
Comet Lake
Rocket Lake
14nm++

Cypress Coveマイクロアーキテクチャ

[編集]

概要

[編集]

Cypress CoveSunny Coveを14nm++にバックポートしたものである。先述もしたが、10nmプロセスの遅延により、14nm++プロセスでの立ち上げをせざるを得なくなった。10nmプロセスの立ち上げが遅れたのはIce Lake発売時のインテルの10nmプロセスは、まだ14nmほどの動作周波数を達成できなかったからである[5][6]。 Rocket Lake-Sを10nmプロセスでローンチしようとするとIntel 7(旧称: 10nm Enhanced SuperFin[7])を使用することになるが、当時は量産されていなかった。量産を待つとロードマップにさらなる遅れが生じ、その隙にRyzenにシェアを奪われかねないため[5]、仕方なく量産体制に入っていたIce Lakeを14nmにバックポートしRocket Lakeとしてローンチすることになった[8]

特徴

[編集]
  • Skylakeマイクロアーキテクチャと比べ動作クロックあたりの命令実行数(IPC)が約19%向上
  • Out-of-Order実行のために必要なバッファ類を増やし、より同時に多数の命令をIn-Flight状態におけるようにした
  • 命令デコード幅を4 x86命令→5 x86命令に、命令発行(microOp)を8命令/サイクルから10命令/サイクルに拡張
  • AVX512命令をサポート
  • AES-NI命令のピークスループットを2倍に拡大
  • Rep Move Strings命令の高速化
  • L1データキャッシュを32KB→48KBに拡大
  • ロードの際の実効レイテンシーを削減
  • Data L1へのストアの発行を1回/サイクルから2回/サイクルに強化
  • データプリフェッチの機能を強化
  • L2 TLBを拡大
  • μOpキャッシュの容量を拡大
  • 分岐予測機構を強化
  • シングルスレッドモードにおけるLarge Page ITLBのサイズを倍増
  • L2を大容量化(256KB→512KB)
— 大原雄介、ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ

第11世代 Rocket Lake 製品概要

[編集]

デスクトップ向け Rocket Lake-S

[編集]
  • マイクロアーキテクチャを変更しIPCを改善させたことにより、シングルスレッド性能も向上した[9]
  • XeonはW580、Q570チップセットのみの対応
  • B460、H410チップセットではRocket Lake-Sをサポートしない[10]
  • 全てのIntel 500 シリーズのチップセットとRocket Lake-Sの組み合わせにおいて、メモリのオーバークロックに対応。
  • ソケットはLGA1200のまま据え置き。
  • AVX 512に対応。
  • Intel Deeplearning Boost英語版に対応。
  • Resizable BARに対応。
  • CPU直結PCIeレーンはPCIe 4.0 20レーン
デスクトップ向け Rocket Lake-S
ブランド 型番 コア
(スレッド)
CPU周波数(GHz) GPU GPU周波数(MHz) メモリ周波数 L3
キャッシュ

(MB)

TDP

(W)

価格
(米ドル)
定格 最大 定格 最大
Core i9 11900K 8 (16) 3.5 5.3 UHD 750 350 1300 DDR4-3200×2
Gear1(50 GB/s)
16 125 539
11900KF N/A 513
11900 2.5 5.2 UHD 750 350 1300 DDR4-3200×2
Gear2(50 GB/s)
DDR4-2933×2
Gear1(50 GB/s)
65 439
11900F N/A 422
11900T 1.5 4.9 UHD 750 350 1300 35 439
Core i7 11700K 8 (16) 3.6 5.0 UHD 750 350 1300 DDR4-3200×2
Gear2(50 GB/s)
DDR4-2933×2
Gear1(50 GB/s)
16 125 399
11700KF N/A 374
11700 2.5 4.9 UHD 750 350 1300 65 323
11700F N/A 298
11700T 1.4 4.6 UHD 750 350 1300 35 323
Core i5 11600K 6 (12) 3.9 4.9 UHD 750 350 1300 12 125 262
11600KF N/A 237
11600 2.8 4.8 UHD 750 350 1300 65 213
11600T 1.7 4.1 35
11500 2.7 4.6 65 192
11500T 1.5 3.9 35
11400 2.6 4.4 UHD 730 65 182
11400F N/A 157
11400T 1.3 3.7 UHD 730 350 1300 35 182
Xeon W 1390P 8 (16) 3.5 5.3 UHD P750 350 1300 DDR4-3200
(50GB/s)
16 125 539
1390 2.8 5.2 80 494
1390T 1.5 4.9 1200 35
1370P 3.6 5.2 1300 95 428
1370 2.9 80 362
1350P 6 (12) 4.0 5.1 12 95 311
1350 3.3 5.0 80 255

出典

[編集]
  1. ^ Rocket Lake-Sこと第11世代Coreデスクトップ・プロセッサが正式発表 - PC Watch.2021年4月3日閲覧。
  2. ^ アーキテクチャの刷新でライバルとの差は埋まるのか。Intel「Core i9-11900K」検証 - エルミタージュ秋葉原.2021年4月3日閲覧。
  3. ^ アーキテクチャの刷新でライバルとの差は埋まるのか。Intel「Core i9-11900K」検証 9/9 - エルミタージュ秋葉原.2021年4月3日閲覧。
  4. ^ Intel、Rocket Lake-Sの詳細を公開 - CPUコアは14nm版のSunny Cove相当 - マイナビニュース.2021年4月3日閲覧。
  5. ^ a b ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ (2/3) - ASCII.jp.2021年4月3日閲覧。
  6. ^ 後藤弘茂のWeekly海外ニュース Intelが10nmプロセスの「Ice Lake」を正式発表 - PC Watch.2021年4月3日閲覧。
  7. ^ 井上翔 (2021年7月27日09:15). “2025年までに「1.8nm相当」に――Intelが半導体生産のロードマップを説明:Intel 7からIntel 18Aまで -”. ITmedia PC USER. 2021年8月5日閲覧。
  8. ^ ASCII.jp:Rocket Lakeが14nmプロセスを採用した本当の理由 インテル CPUロードマップ (1/3) - ASCII.jp.2021年4月3日閲覧。
  9. ^ アーキテクチャの刷新でライバルとの差は埋まるのか。Intel「Core i9-11900K」検証”. エルミタージュ秋葉原. 2021年4月3日閲覧。
  10. ^ BIOS Updates for Intel® 400 Series Chipset and 11th Gen Intel® Core™ Desktop Processor-Based System Builds”. Intel. 2021年4月3日閲覧。