ダイハツ・EF型エンジン
ダイハツ・EFエンジン | |
---|---|
アトレーのEF-DETDOHCターボエンジン | |
生産拠点 | ダイハツ工業 |
製造期間 | 1990年2月 - 2015年11月 |
タイプ |
直列3気筒SOHC ベルト駆動 6バルブ 直列3気筒SOHC ベルト駆動 12バルブ 直列3気筒DOHC ベルト駆動 12バルブ |
排気量 | 0.66 L |
ダイハツ・EF型エンジンは、ダイハツ工業が生産していた軽自動車用ガソリンエンジンの一つである。
550 cc版のダイハツ・EB型エンジン及び1,000 cc版のダイハツ・EJ型エンジン等と共に、ダイハツ・E系列エンジン(英語版)を構成するエンジンでもある。
概要
[編集]1990年(平成2年)1月の軽自動車の規格改正に伴い、同年3月にモデルチェンジしたミラ(L200型)に搭載されてデビュー。基本仕様は水冷直列3気筒、内径68.0 mm×行程60.5 mm、総排気量659 cc。
旧660 cc規格時代から現行規格まで、ダイハツ製軽自動車の主力エンジンとして多くの車種に搭載されたが、後継となるKF型エンジンが2005年(平成17年)にエッセに搭載されて登場し、新車種の発売、既存車種のフルモデルチェンジ・マイナーチェンジの都度KF型へ順次切替えられている。
2014年(平成26年)7月時点において、マレーシア向けのプロドゥア・ビバ用EF-VE型DOHCエンジンの1種類のみが製造されていたが、同年9月にビバの後継車種となるアジアに取って代わられた事により、自動車向けエンジンとしてのEF型は名実ともに消滅した。
ただし、産業用エンジンとしてEF-SE型及びEF-VE型の直立・傾斜配置エンジン系4種の生産が2015年(平成27年)末まで継続生産されており、補給用ASSY部品としての製造・保有期間は当該エンジンの生産終了から最低10年間は継続されるため、国内で当該エンジン自体の製造が終了したわけではない。
ダイハツには他の660 ccエンジンとして、1994年(平成6年)に登場した水冷直列4気筒のJB型エンジンがあるが、こちらも2012年(平成24年)8月でコペンと共に生産終了となった。
EF型は1985年(昭和60年)に登場した水冷直列3気筒550 ccのEB型をベースとし、ボアアップしている。エンジン形式が同一でもミラ、ムーヴに搭載される横置きのものと、アトレー、ハイゼットに搭載される縦置きのものとでは、エンジンマウントの位置、クラッチベルハウジングやトランスミッションケースの形状が異なるため、互換性はない。ボンネットが搭載位置となる横置き用はシリンダーブロックが直立であるのに対し、キャブオーバー・ジ・エンジン(アンダーフロア)となるアトレー、ハイゼット用は、28度傾斜して搭載される為、ウォーターラインの仕様なども異なる。
当初はSOHC6バルブとSOHC12バルブが存在したが、1995年(平成7年)に登場したムーヴにDOHC12バルブ仕様が登場した。1998年(平成10年)には可変バルブ(DVVT)を採用したEF-VE型(DOHC12バルブ)、および直動式バルブ(非ロッカーアーム機構)・S字型クロスフローを採用したEF-SE型(SOHC6バルブ)が登場している。更に2002年(平成14年)には直噴のEF-VD型が登場している。
EF-ZL型(後にEF-VE型に改称)をベースとしてボア・ストロークを拡大し、1,000 ccとしたエンジンが、ストーリア(OEM版のトヨタ・デュエットを含む)、YRV、ミラジーノ1000等に搭載されたEJ型である。
エンジンに組み合わされるトランスミッションは、4速MT、5速MT、副変速機付4速MT、副変速機付5速MT、3速AT、4速AT、CVTがあった。
20年以上にわたる生産により、インタークーラー・ターボ付き、DOHC、直噴エンジン、ハイブリッド、CNG仕様など、バリエーションは多岐に渡る。
2023年(令和5年)12月20日、ダイハツ工業はEF型エンジンの認証試験で不正が行われていた事実を発表した[1]。特にZL型及びGL型ではエンジン出力の向上等を目的としインテークマニホールドの空気通路を研磨する、シリンダーヘッドの下部を面研磨して燃焼室の容積を縮減、スロットルボディのボア径を拡張する、作動角が大きいカムシャフトを特注し使用する、シリンダーヘッドの吸気側及び排気側のポートを研磨する、ハイオクガソリンの使用、(EF-ZLエンジンが搭載された車種について)EFIのロムの書き換えといった量産時には行わない加工等を行った上で試験を実施していたことが認定されている[2]。当時のカタログ等で「NAクラストップの性能・低燃費&低エミッション」を謳っていながら、いわゆる「フルチューン」状態で試験を行ってやっとカタログ上のスペックを実現しており、量産車の性能はこれを大幅に下回る性能と推測されている[3]。
系譜
[編集]- AB型(1975年-1985年、ここまで水冷直列2気筒)→EB型(1985年-1990年、これより水冷直列3気筒)→EF型(1990年-現在、660cc)→KF型(2005年-現在)
- EF型(660cc)→EJ型(1998年-2004年、1,000ccにボアアップ)→KR型(2004年-現在)
バリエーション・搭載車種
[編集]旧660cc規格車用
[編集]以下、ターボ表記のないものはすべて自然吸気(NA)
- EF-CL - SOHC6バルブ・キャブレター・NA
- ミラ(L200S、L200V、L210V、L500V、L510V)
- プロドゥア・カンチル(660ccモデル)
- EF-CS - SOHC6バルブ・キャブレター
- ハイゼット(S82P、S82C、S83P、S83C)
- EF-CK - SOHC6バルブ・キャブレター
- ミゼットII(K100P、K100C)
- EF-NS - SOHC6バルブ・キャブレター
- ハイゼット(S82V、S83V、S100V、S100P、S100C、S110V、S110P、S110C)
- アトレー(S82V、S83V)
- EF-FL - SOHC6バルブ・キャブレター
- ミラ(L500S)
- EF-KL - SOHC6バルブ・EFI
- ミラ(L200S)
- オプティ(L300S)
- EF-XL - SOHC6バルブ・キャブレター・インタークーラー・ターボ
- ミラ(L200V)
- EF-XS - SOHC6バルブ・キャブレター・インタークーラー・ターボ
- アトレー(S82V、S83V)
- EF-TS - SOHC6バルブ・EFI・インタークーラー・ターボ
- アトレー(S82V、S83V、S120V、S130V)
- EF-HL - SOHC12バルブ(マルチバルブ化)・キャブレター
- ミラ(L200S、L210S、L220S)
- リーザ(L111S)
- EF-EL - SOHC12バルブ・EFI
- ミラ(L200S、L210S、L210V、L500S、L510S)
- オプティ(L300S、L310S)
- EF-ES - SOHC12バルブ・EFI
- ハイゼット(S82V、S83V、S100V、S110V)
- アトレー(S82V、S83V)
- EF-JL - SOHC12バルブ・EFI・インタークーラー・ターボ
- ミラ(L200S、L210S、L220S、L500S、L510S)
- リーザ(L111S)
- リーザスパイダー(L111SK)
- EF-GL - DOHC12バルブ・電子制御キャブレター
- ミラ(L500S)
- ムーヴ(L600S)
- EF-GS - DOHC12バルブ・電子制御キャブ
- ハイゼット(S100V、S100P、S110V、S110P)
- アトレー(S120V、S130V)
- EF-ZL - DOHC12バルブ・EFI
- ミラ(L500S、L510S)
- オプティ(L300S、L310S)
- ムーヴ(L600S、L610S)
- EF-RL - DOHC12バルブ・EFI・インタークーラー・ターボ
- ミラ(L500S、L510S)
- ムーヴ(L600S、L610S)
- EF-RS - DOHC12バルブ・EFI・インタークーラー・ターボ
- アトレー(S120V、S130V)
現行規格車用
[編集]全て、平成10年アイドリング規制に適合
- EF-SE - 直動式SOHC6バルブ・EFI
- L700系、L250系ミラ
- L800系オプティ
- L900系ムーヴ
- S200・S320系ハイゼット(2WD/4WD車の各5MT仕様の下位グレードのみ)
- K100系ミゼットII(K100P、K100C)
- EF-VE- DVVT付DOHC12バルブ・EFI
ミラ、ハイゼットにはエコ車両に搭載されるCNG仕様もある。
2WD/4WD車の各AT仕様全車、2WD/4WD車の各5MT仕様の上位グレードに搭載 ハイゼットハイブリッドのガソリンエンジン型式はEF-VE、電動機形式はM1
- EF-DEM- DOHC12バルブ・EFI・ライトプレッシャーターボ
- EF-DET - DOHC12バルブ・EFI・インタークーラー・ターボ
- L700系・L250系ミラ
- L700系ミラジーノ
- L800系オプティ
- L900系・L150系ムーヴ
- J111系テリオスキッド
- L750系ネイキッド
- L950系MAX
- S220・S320系アトレー
- S200・S320系ハイゼット
- L350系タント
- L550系ムーヴラテ
- EF-VD - DVVT付DOHC12バルブ・直噴
- L250系ミラ
主要諸元
[編集]最大出力 (JISネット値) | 最大トルク | 圧縮比 | 燃料供給装置 | 搭載車種 | 備考 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
PS | kW | rpm | kgm | Nm | lbft | rpm | ||||||
SOHC 6V |
EF-CL | 40 | 29 | 6,500 | 5.3 | 52 | 38 | 3,500 | 9.5 | キャブ | ミラ(L200/210) ミラ(L500V/510V) |
|
EF-CS | 40 | 29 | 5,700 | 5.5 | 54 | 40 | 4,500 | ハイゼット/アトレー(S82/83) | ||||
38 | 28 | 5,600 | 5.5 | 54 | 40 | 4,000 | ||||||
EF-VS | 42 | 31 | 5,700 | 5.6 | 55 | 41 | 4,500 | 91.09より | ||||
EF-ES | 42 | 31 | 6,000 | 5.7 | 56 | 41 | 3,500 | 10.0 | EFI | ハイゼット/アトレー(S82/83) | 92.08より | |
44 | 32 | 6,100 | 5.9 | 58 | 43 | 3,600 | 9.8 | ハイゼット(S100/110) アトレー(S120/130) |
||||
EF-KL | 42 | 31 | 6,800 | 5.4 | 53 | 39 | 4,400 | 9.5 | ミラ(L200/210) ミラ(L500、95.09まで) オプティ(L300/310、98.10まで) |
92.08より | ||
EF-NS | 42 | 31 | 5,700 | 5.6 | 55 | 41 | 4,500 | キャブ | ハイゼット(S100/110) アトレー(S120/130) |
94.01より | ||
EF-FL | 40 | 29 | 6,300 | 5.3 | 52 | 38 | 3,500 | ミラ(L500S/510S、軽乗用仕様はEF-CL) | ||||
EF-CK[4] | 31 | 23 | 4,900 | 5.1 | 50 | 37 | 3,200 | ミゼットII(K100、96.04-99.08) | 手動チョーク | |||
EF-SE | 45 | 33 | 6,400 | 5.6 | 55 | 41 | 3,600 | 9.5 | EFI | ミラ(L700/710) ムーヴ(L900/910) オプティ(L800/810) |
||
48 | 35 | 5.7 | 56 | 41 | 4,800 | ミラ(L250/260、2002.12より) | ||||||
43 | 32 | 5,900 | 5.8 | 57 | 42 | 4,000 | 10.5 | ハイゼット(S200/210、2002.01まで) | 2002.01からは45 PS | |||
45 | 33 | 5.8 | 57 | 42 | 3,600 | 9.5 | ハイゼット(S200/210、2007.12まで) ハイゼットカーゴ(S320/330) |
|||||
33 | 24 | 4,900 | 5.2 | 51 | 38 | 4,000 | ミゼットII(K100) | 99.08より | ||||
SOHC 6V ICターボ |
EF-XL[5] | 61 | 45 | 7,000 | 8.6 | 84 | 62 | 4,000 | 8.3 | キャブ | ミラ(L200V、90.03-92.08) | |
EF-XS[6] | 61 | 45 | 6,000 | 8.7 | 85 | 63 | 8.5 | ハイゼット/アトレー(S82/83) | 91.08まで | |||
EF-TS | 64 | 47 | 8.8 | 86 | 64 | 8.3 | EFI | ハイゼット/アトレー(S82/83) アトレー(S120/130) |
91.08より | |||
SOHC 12V | EF-HL | 50 | 37 | 7,500 | 5.3 | 52 | 38 | 4,500 | 10.0 | キャブ | ミラ(L200/210、90.03-95.01) リーザ(L111、90.08-92.01) |
|
EF-EL | 55 | 40 | 7,000 | 5.8 | 57 | 42 | 4,000 | EFI | ミラ(L200/210、90.03-94.09) ミラ(L500/510、94.08-95.09) |
|||
SOHC 12V ICターボ |
EF-JL | 64 | 47 | 7,500 | 9.4 | 92 | 68 | 4,000 | 8.0 | EFI | ミラ(L200/210/220、90.03-94.09) ミラ(L500/510、94.08-95.09) リーザ(L111、91.01-92.01) リーザスパイダー(L111SK、91.11-93.08) |
|
DOHC 12V | EF-GS | 44 | 32 | 5,900 | 6.0 | 59 | 43 | 4,400 | 10.0 | キャブ | ハイゼット(S100/110) アトレー(S120/130、96.01-99.01) |
|
EF-VE | 58 | 43 | 7,600 | 6.5 | 64 | 47 | 4,000 | 10.5 | EFI | ミラ、ムーヴ、 タント(L350/360、03.11-07.12) |
||
48 | 35 | 5,900 | 6.4 | 63 | 46 | アトレー(S220/230、99.01-02.01) ハイゼット(S200/210、99.01-02.01) |
||||||
50 | 37 | 5,900 | 6.4 | 63 | 46 | アトレー(S220/230、02.01-05.04・MT車) ハイゼット(S200/210/320/330、02.01-07.12・MT車) |
||||||
53 | 39 | 7,000 | 6.4 | 63 | 46 | アトレー(S220/230、02.01-05.04・AT車) ハイゼット(S200/210/320/330、02.01-07.12・AT車) |
||||||
EF-VE2 | 52 | 38 | 6,800 | 6.3 | 62 | 46 | 11.3 | ミラTV (L700、98.12-02.12) | エコノミーCVT | |||
EF-ZS | 46 | 34 | 6,100 | 6.2 | 61 | 45 | 10.0 | ハイゼット(S100/110) アトレー(S120/130) |
||||
EF-VD | 60 | 44 | 7,600 | 6.6 | 65 | 48 | 11.0 | ミラ(L250、02.12-06.10) | ||||
DOHC 12V ICターボ |
EF-RS[7] | 64 | 47 | 5,900 | 10.0 | 98 | 72 | 3,500 | 8.5 | EFI | アトレー(S120/130、97.01-99.01) | |
EF-DET | 64 | 47 | 6,400 | 10.9 | 107 | 79 | 3,600 | ムーヴ(L900/910、98.10-02.10) ネイキッド(L750/760、03.05まで) オプティ(L800/810、98.11-02.07) テリオスキッド/ルキア(J111/131) |
||||
64 | 47 | 10.5 | 103 | 76 | 3,200 | タント(L350/360) ムーヴ(L150/160、02.10-06.01) ムーヴラテ(L550/560) ネイキッド(L750/760、03.05-04.04) |
脚注
[編集]- ^ “ダイハツが新たに公表した認証試験不正の対象車種一覧”. 日刊自動車新聞電子版 (2023年12月20日). 2023年12月21日閲覧。
- ^ “第三者委員会 調査報告書”. daihatsu.com (2023年12月20日). 2024年2月22日閲覧。
- ^ “ダイハツ排ガス燃費不正がヤバすぎる1KR-FE・EF-ZL/GL・KF-VETダイハツゲート事件に発展か”. カードラネット (2023年12月20日). 2024年2月22日閲覧。
- ^ “カタログ: ダイハツ ミゼットII Dタイプ” [Catalog: Daihatsu Midget II D-type] (Japanese). Goo-net. Proto Corporation. 2011年7月8日閲覧。
- ^ (Italian) Quattroruote: Tutte le Auto del Mondo 1992. Milano: Editoriale Domus S.p.A. (1992). p. 156
- ^ “ダイハツ アトレー 660 クルーズ ターボ ハイルーフ (90年〜)” [Daihatsu Atrai 660 Cruise Turbo High Roof (1990-)] (Japanese). car.jp.msn. Microsoft. 2011年7月8日閲覧。
- ^ “カタログ / ダイハツ アトレー アッパレ ターボ(1997年1月)” [Catalog: Daihatsu Atrai Apple Turbo (January 1997)] (Japanese). Goo-net. Proto Corporation. 2012年3月7日閲覧。