小惑星帯

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小惑星帯 小惑星は主として火星軌道と木星軌道の中間に分布する。このほか、木星軌道上の太陽から見て木星に対して前後60度の位置にトロヤ群と呼ばれる小惑星の集まりが存在する。図の単位は光分(左)と天文単位(右)

小惑星帯(しょうわくせいたい、アステロイドベルト: asteroid belt)は、太陽系の中で火星木星の間にある小惑星軌道が集中している領域を指す言葉である。ほかの小惑星集中地域に対して、それらが小惑星帯と呼ばれるようになるかもしれないと考えられるようになったころから、区別のためにメインベルト: main belt)とも呼称されている[1]

起源

多くの天文学者によって同意される一般的な理論では、惑星は太陽系の歴史の最初の100万年の間に、微惑星の累積によって形成されたとされる。微惑星は度重なる衝突によって、我々にとってなじみ深い岩の多い惑星(地球型惑星)と、巨大ガス惑星(木星型惑星)や巨大氷惑星(天王星型惑星)のコアとなった。

しかし、現在小惑星帯と呼ばれるこの地帯では、木星の強い重力によって惑星となる最終段階を阻まれ、微惑星は単一の惑星を形成することができずにそのまま太陽の周りを回り続けた。このことから、小惑星帯は原始の太陽系の名残であると考えることができるが、多くの観測では活発な変化がみられるため、小惑星自体は原始の状態を保っているわけではない。対して、エッジワース・カイパーベルトなどに属する太陽系外縁天体は、太陽系の構成以来ほとんど変化が無いと考えられている。

小惑星帯の環境

メインベルトにおける天体の質量比(凡例括弧内は小惑星番号とアルファベット名)
  ケレス(1 Ceres)
  ヴェスタ(4 Vesta)
  パラス(2 Pallas)
  ヒギエア(10 Hygiea)
  エウフロシネ(31 Euphrosyne)
  インテラムニア(704 Interamnia)
  ダヴィダ(511 Davida)
  ヘルクリーナ(458 Hercynia)
  エウノミア(15 Eunomia)
  ジュノー(3 Juno)
  プシケ(16 Psyche)
  エウロパ(52 Europa)
  その他

創作などでは、まるで土星の環のように宇宙空間に岩石がびっしりと密集しているイメージで描かれることもあるが、実際には大部分は空隙である。宇宙探査機が小惑星帯を横断する際にも重大な衝突事故を起こしたことは一度もない。現実に宇宙探査機サイズの物体が小惑星とランデブーするためには、精密な軌道計算やターゲティングが必要である。小説2001年宇宙の旅』は、孤独な小惑星と宇宙船の「遭遇」を現実的に描いている。

それでもなお、現在小惑星帯には何十万もの小惑星が発見されており、その総数は数百万もあると推定される。またそれ以外にも1個の準惑星逆行小惑星、何個ものメインベルト彗星彗星・小惑星遷移天体も存在する。小惑星帯にある天体のうちおよそ220個は直径が100 kmを超え、中でも最も大きいのはケレスであり、その直径はおよそ1,000 kmである。小惑星帯内の全体の質量は2.3 ×1021 kgであると見積もられ、それは地球の1/35である。そしてその総量の1/3はケレスによって占められる。

その数の多さは非常に活発な環境形成に役立ち、そのために、小惑星同士の衝突は(天文学の用語としては)頻繁に起こる。衝突は小惑星を新しい小惑星の「族」を形成するような多数の小さい断片にするか、それが低い相対速度で起こるならば2つの小惑星を接合する可能性もある。50億年後には小惑星帯にある小惑星のほとんどは現在のものと同一ではなくなっていると考えられる。

太陽系外の小惑星帯

太陽以外のいくつもの恒星の周囲に、塵またはデブリからなるベルトが発見されている。ベルトの軌道半径は画像から直接測定するか、ベルトの温度から計算される。

恒星 太陽系からの距離
(光年)
軌道長半径
(天文単位)
エリダヌス座ε星 10.5 35-75
くじら座τ星 11.9 <55
ベガ 25 86-200
けんびきょう座AU星 33 210
HD 69830 41 <1
かに座55番星 41 27-50
がか座β星 63 25-550
うさぎ座ζ星 70 2.5-12.2
HD 107146 88 130
フォーマルハウト 133 25
HD 12039 137 5
HR 4796 A 220 200
HD 141569 320 400
HD 113766 430 0.35-5.8

脚注

  1. ^ 生駒大洋, 関根康人, 廣瀬敬『海のすべて』ニュートンプレス、2017年、24頁。ISBN 978-4-315-52060-6 

関連項目