逆行小惑星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
木星とほぼ同じ軌道を逆行する(514107)カエパオカアウェラの軌道。太陽系の惑星とは反対に、時計回りに公転する

逆行小惑星(ぎゃっこうしょうわくせい、Retrograde asteroid)は軌道傾斜角が90を超える特異小惑星の分類名である。その一部または全部がダモクレス族とされる場合もある。

逆行小惑星はその軌道に至る条件が厳しい為か、20世紀末まで観測例が無かったが、1999年に (20461) ディオレッツァが発見されて以降、ほぼ毎年のように発見例がある。綺麗な円に近い軌道を持つものは尚更少なく(2005 VD、カエパオカアウェラなど)、殆どは長楕円形の軌道を持つ。また、ほぼ垂直に近い軌道傾斜角を持つものもある(天文年鑑では「軌道傾斜角62.25度以上のすべての小惑星」を同一のグループとして表に載せたことがある)。

一部の彗星惑星 - 衛星関係を除き、太陽系天体で軌道傾斜角が90度を越えることは稀である。太陽系の逆行天体は天体が巨大惑星に近付き、大幅に軌道を変えられて出来たのではないかと考えられている。

また、そのような条件で出来た逆行彗星が周回する内にガスを放出し尽くし、小惑星天体になったと考えられる彗星・小惑星遷移天体の候補も数個ある。

2006年11月20日アリゾナ州レモン山天文台で小惑星として発見された2006 WD4は、2007年4月30日にコマが発見され、レモン彗星 (C/2006 WD4) となった。その後も同様に逆行小惑星として発見された彗星が数個ある。

逆行小惑星のリスト[編集]

逆行小惑星のリスト(2013年9月17日[1]に追加
名称 軌道傾斜角
(度)
離心率 公転周期
(年)
備考
ディオレッツァ 160.405 0.900 116 初めて発見された逆行小惑星。2019年に(514107)カエパオパアウェラが命名されるまで、唯一名称が付けられていた。
(65407) 2002 RP120 119.254 0.955 405
(330759) 2008 SO218 170.360 0.564 23.2
(336756) 2010 NV1 140.805 0.969 5367
(342842) 2008 YB3 105.021 0.443 39.71
(343158) 2009 HC82 154.497 0.808 4.02 相対速度が最も速い小惑星(最大81.05km/s)
(514107) カエパオカアウェラ 163.02 0.3795 11.65 木星とほぼ同じ公転周期で、軌道共鳴により軌道が安定している。恒星間天体由来の可能性がある[2]
1999 LE31 151.807 0.468 23.15
2000 DG8 129.499 0.792 35.35
2000 HE46 158.465 0.901 114
2004 NN8 165.492 0.977 999
2005 NP82 130.552 0.480 14.24
2005 SB223 91.523 0.907 161 軌道傾斜角が最も直立に近い。
2005 TJ50 110.417 0.588 27.99
(434620) 2005 VD 172.873 0.250 17.23 近日点が木星とほぼ交差する。
2005 VX3 112.503 0.997 42007 軌道離心率が最も大きい小惑星。
2006 BZ8 165.300 0.801 29.78
2006 EX52 150.269 0.939 276
2006 LM1 172.138 0.900 227
2006 RG1 133.214 0.921 130
2006 RJ2 164.630 0.762 30.46
2007 VA85 131.867 0.736 8.69
2007 VW266 108.354 0.389 12.74
2008 KV42 103.511 0.491 268
2009 DD47 107.449 0.953 328
2009 QY6 137.760 0.835 44.41
2009 YS6 147.781 0.921 91.92
2010 BK118 143.897 0.987 10135
2010 CG55 146.208 0.909 178
2010 EB46 156.425 0.936 115
2010 EQ169 91.607 0.102 2.94 軌道離心率が最も小さく、最も軌道が円に近い逆行小惑星。
2010 GW64 105.274 0.941 495
2010 GW147 99.641 0.972 2719
2010 LG61 123.679 0.808 18.96
2010 OR1 143.862 0.925 143 2010 BY83と同一。
2010 OM101 118.692 0.919 136
2010 PO58 121.257 0.753 40.81
2011 MM4 100.445 0.479 97.9
2011 OR17 110.338 0.990 5130 2010 KZ127と同一。
2011 SP25 109.018 0.885 88.19
2011 WS41 141.645 0.946 237
2012 HD2 146.908 0.959 489
2012 TL139 160.034 0.880 160
2012 YO6 106.919 0.479 15.95
2012 YE8 136.092 0.589 28.49
2013 BN27 101.782 0.977 548
2013 BL76 98.585 0.993 43305 軌道長半径と遠日点距離が最も長い小惑星。
2013 LA2 175.189 0.594 20.59 軌道傾斜角が最も傾いており、逆に横道面からの差は最も小さい逆行小惑星。
2013 LD16 154.733 0.963 567
2013 LU28 117.001 0.629 84.49
2013 NS11 130.512 0.783 45.56
2013 PE67 116.730 0.968 436
2013 UQ4 145.259 0.982 455
2014 AT28 165.676 0.399 37.5

軌道傾斜角が大きい順の一覧は特徴のある小惑星を参照。

出典[編集]

関連項目[編集]