シリカ

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シリカ: silica[1])は、二酸化ケイ素(SiO2)、もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称。シリカという呼び名のほかに無水ケイ酸ケイ酸酸化シリコンと呼ばれることもある。

純粋なシリカは無色透明であるが、自然界には不純物を含む有色のものも存在する。自然界では長石類に次いで産出量が多い。鉱物として存在するほか、生体内にも微量ながら含まれる。

性質

結晶性シリカと非結晶性シリカ

シリカは圧力温度などの条件により、様々な形(結晶多形)をとる。これによりシリカは石英などの結晶性シリカと、シリカゲル・未焼成の珪藻土生物中に存在する非結晶性シリカの2つに大別される。

不溶性の結晶性シリカの一種であるクリストバライト粉塵に関しては、国際がん研究機関(IARC)より発がん性があるとの指摘がされていたが[2]、1997年および2012年よりヒトに対する発がん性が認められるグループ1に分類されている[3][4]。なお、食品添加物顔料健康食品飲料水として使用されているシリカは非結晶性のものであり、ヒトに対する発がん性を分類できないグループ3に分類されている[3]

自然界におけるシリカ

自然界ではケイ素は多くの場合、シリカの形をとっている。最も一般的な形状は石英である。また、の主成分であり、ガラスの原料となる珪砂もシリカからなる。地殻内にはシリカが大量に含まれており、地球の表層の約6割がシリカを含む鉱物によって構成されている。

生物学上のシリカ

生物の中には、二酸化ケイ素の形でガラス質の骨格を形成するものがあり、一部のシダ植物イネ科植物コケ植物などのプラント・オパールや、ケイソウ類、放散虫などの骨格、枯草菌が作る芽胞などに利用されている。また、植物一般において成長促進や環境ストレスの低減、病害虫への耐性向上の効果がある。(植物について詳しくは栄養素_(植物)#ケイ素参照

人体中のシリカ

水溶性のシリカは人体にも微量ながら含まれており、体液血液唾液等)、毛髪血管関節などに含まれ、特に骨形成の細胞層に集中している。生体中には約29 ppmが存在し、免疫力に影響を与えたり、唾液による歯垢清掃、肌の保湿、骨や髪、爪、コラーゲンの再生・構築・補強・維持を手助けしている[5]。成人1日あたり10~40mgのシリカが消耗される。現在、1日あたりの摂取量は定められていない。通常はケイ素を多く含む食品(玄米あわほうれん草バナナレーズンなど)を十分摂取することで補えるが、ミネラルウォーターや健康食品としても市販されている。

人体中におけるシリカの生理的な役割

現在、人体におけるシリカの生理学的な役割に関しては、十分に研究が行われていない。

しかし、米国の「フラミンガム子孫研究」では、ケイ素の摂取量と骨密度 (BMD) に密接な関係があるとされ、30代から80代までの研究参加者の男女2846人の食生活における、ケイ素摂取量を4グループに分けて比較したところ、男性や閉経前の女性ではケイ素摂取量が多いほど、大腿骨頚部の骨密度が高いという結果が報告され、これによりシリカの骨粗鬆症予防に対する効果が期待されている[6]

このほか、軟骨やコラーゲンなどの生成に密接な関係があるといわれ、シリカの欠乏によって骨の修復機能に障害が起こると言われる[5]

産業分野での利用

工業分野での利用

工業生産されるシリカでも特に代表的なものはケイ酸をゲル化したシリカゲル(SiO2純度99.5%以上)であり、乾燥剤として食品や半導体精密機器の保存から、消臭剤農業肥料建築調湿剤などに使われる。電子材料基板シリコンウェハーなどの研磨剤などに使用されるコロダイルシリカや、耐熱器具、実験器具光ファイバーの原料として用いられる珪砂、珪石などを溶融した後冷却し、ガラス化させた石英ガラス(クオーツ)の他、エナメルシリカセメント陶磁器カーボンブラックに混ぜてタイヤの原料、液体クロマトグラフィー担体、電球CRTディスプレイの表面などの表面処理剤、新聞紙の印刷インクの浸透防止など様々な分野において利用されている。また特殊な利用法として、ロシア製戦車の砲塔前面の複合装甲として、熱処理されたシリカを鋳鋼の間に挟んだものがある。

化粧品・医薬品への添加

微粒二酸化ケイ素としてのシリカは一般的な粉体と比べた場合、吸水性が低い。これを利用して、アイシャドーファウンデーションといった化粧品において湿気による固形化を防ぐ役割として使用されるほか、安定化などの目的でクリーム乳液に使用される。また硬度が高いことを利用し、歯磨き粉に研磨成分として用いられることもある。さらに医薬品においては、打錠用粉末の流動性を高めたり、錠剤の強度を高めるためのコーティング剤、軟膏・乳液の安定化のために使用されることもある。また、近年親水性の高いシリカの開発により、疎水性の高いシリカと吸水性の高いシリカを組み合わせた化粧品等も開発されている[7]

食品添加物としての利用

シリカは、二酸化ケイ素ならびに微粒二酸化ケイ素の状態で、日本では食品添加物として厚生労働省より使用が認められている。[8]

食品添加物としてのシリカは、その吸着性を利用して、ビール清酒みりんといった醸造物食用油醤油ソースなどのろ過工程に使われるほか、砂糖缶詰などの製造工程にも用いられている。微粒二酸化ケイ素は吸湿・乾燥材としても使用される。とくにふりかけなどの粉形食品には、湿気って“ダマ”になるのを防ぐ目的で添加されることがある。ただし、厚生労働省の告示の中で「母乳代替食品及び離乳食に使用してはならない」と使用基準が示されている[8]

食品添加物として利用される非結晶性のシリカは、「無水ケイ酸」とも呼ばれ不溶性で、体内で消化吸収されず排出されるため身体に害はない。

ろ過助剤

シリカの持つ多孔質や吸着能力などを利用して、ろ過用の食品添加物として使用されている。ビールをはじめとした酒類の混濁防止や調味液などのオリ下げ、ビールの泡持ち改善として使用される。こうしたろ過助剤としてのシリカは不溶性であるためろ過過程で除去される。

必須ミネラルとしてのシリカ

生体中の皮膚、髪、骨などに含まれる必須ミネラルとしてのシリカ(ケイ酸化合物)は、水溶性のものであり、鉱物由来の不溶性シリカとは異なる[要検証]。人体には約1.8gの微量のケイ素が存在し、こうしたシリカはケイ酸などの水溶性シリカの形で食物から吸収される。

主な生産地

中国山東省、河北省、安徽省など。[要出典]

脚注

  1. ^ 文部省編『学術用語集 海洋学編』日本学術振興会、1981年。ISBN 4-8181-8154-4http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 
  2. ^ 発がん物質暫定物質(2001) の提案理由日本産業衛生学会 許容濃度等に関する委員会(2001年4月6日)2018年1月13日閲覧
  3. ^ a b Silica, Some Silicates, Coal Dust and para-Aramid Fibrils. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans (Report). Vol. 68. 国際がん研究機関(IARC). 1997. p. 210-211. 2018年2月17日閲覧
  4. ^ Silica Dust, Crystalline, in the form of Quartz or Cristobalite. IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans (Report). Vol. 100C. 国際がん研究機関(IARC). 2012. 2018年2月17日閲覧
  5. ^ a b Kaufmann, Klaus, D.Sc. "Silica: The Amazing Gel: An Essential Mineral for Radiant Health Recovery and Rejuvenation." New York, NY: Alive Books, 1998.
  6. ^ [1] JBMR Online - Journal of Bone and Mineral Research - 19(2):297 - Full Text "Dietary Silicon Intake Is Positively Associated With Bone Mineral Density in Men and Premenopausal Women of the Framingham Offspring Cohort"
  7. ^ [2]ロロキシン シリカリフトテクノロジー
  8. ^ a b 厚生労働省行政情報、添加物使用基準リスト 2、『各添加物の使用基準及び保存基準』”. 公益財団法人日本食品化学研究振興財団. p. 二酸化ケイ素 (2017年6月26日). 2018年2月17日閲覧。

参考文献

  • Kaufmann, Klaus, D.Sc. (1998). Silica: The Amazing Gel: An Essential Mineral for Radiant Health Recovery and Rejuvenation. Alive Books, New York, NY 
  • 『最新栄養学〔第9版〕―専門領域の最新情報―』木村修一・小林修平 翻訳監修訳、建帛社、2007年。
  • 篠原也寸志、神山宣彦 (2001). “シリカの物理化学的性質と作業環境測定方法”. エアロゾル研究 16 (4): 269-274. doi:10.11203/jar.16.269. 

関連項目