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カワサキ・ニンジャZX-10R

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ニンジャZX-10R(ニンジャ ゼットエックス-テンアール)は、川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーが製造している、4ストローク998 cc大型自動二輪オートバイ)である。

概要

2003年のスーパーバイク世界選手権のレギュレーション改定により4気筒車両の最大排気量が750ccから1000ccに引き上げられた。それまでのカワサキのスーパースポーツ車両はスーパーバイク世界選手権参戦車両のニンジャZX-7R/RR(排気量748cc)の他に1000ccクラスのニンジャZX-9Rが存在したが、ZX-9Rの排気量は899ccとスーパーバイク世界選手権の新たな最大排気量に満たないものであった。ZX-10RはZX-7R/RRに代わる排気量1000ccフルスケールの新たなスーパーバイク世界選手権参戦モデルとして、また、ZX-9Rの後継モデルとして、2004年に新規に発売された。

モデル一覧

2004年

2004年仕様[1]
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
エンジン 998 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 76.0 mm × 55.0 mm / 12.7:1
最高出力
  • 128 kW (175 PS) / 11,700 rpm
  • (加圧 135.3 kW 184 PS / 11,700 rpm)
最大トルク 115 N·m (11.7 kgf·m) / 9,500 rpm
乾燥重量 170 kg
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2004年に、それまでのカワサキの1000 ccクラスのスーパースポーツモデルであったZX-9Rの後継として発表された。

一般市販車として初めてパワーウェイトレシオが1 kg/PSを切るよう車体とエンジンを組み合わせ(170 kg / 175 PS、日本に多く輸入されたマレーシア仕様は排ガス規制や騒音規制で若干パワーダウンし、164 PS)、ハードブレーキング時に対応するためにMotoGP参戦マシンZX-RR譲りのバックトルクリミッターも装備している。2004年型ヤマハYZF-R1や同年にデビューしたホンダCBR1000RRはいずれもセンターアップマフラーを採用したのに対し、ZX-10Rはオーソドックスなタイプのマフラーであった。

エンジンはライバル車両同様、クランクシャフト、メインシャフト、ドライブシャフトを三角配置して前後長の短縮を図っていたが、カワサキ以外の3社がメインシャフトを他の2軸より上にずらして配置したのに対し、カワサキは下にずらして配置していた。また、MotoGP参戦車両ZX-RRの装備であった、倍速ジェネレーター(クランクシャフトの2倍の速度で回転することで小型ながら十分な発電量を得る)が装備されていた。

フレームはエンジンの上を跨ぐように取り回されており、エンジンの外側を通らないためツインチューブでありながら非常に左右幅の狭いスリムなものであったが、ハンドリングには難があり、同形式のフレームを採用していた2010年型までの間レース活動では苦戦を強いられた

2006年

2006年仕様[2]
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
エンジン 998 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 76.0 mm × 55.0 mm / 12.7:1
乾燥重量 175 kg
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2006年にはフルモデルチェンジされたが、前モデルの反省からか全体的なバランスが考慮されており、

  • エンジンの見直し(倍速ジェネレーター廃止、クランクマス40 %増加)
  • シャシーの全面的な改良(フレーム剛性バランスの見直し、キャスター角見直し、それに伴うスイングアーム短縮、結果1395 mmと言うリッターSSらしくないほどのショートホイールベースとなる)
  • 新形状のブレーキマスターシリンダーの採用(既存の横型からラジアルポンプに変更)
  • プロジェクターヘッドライトの採用
  • 左右センターアップマフラーの採用

などが主に変更された。

2008年

2008年仕様[3]
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
エンジン 998 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 76.0 mm × 55.0 mm / 12.9:1
最高出力
  • 138.3 kW 188 PS / 12,500 rpm(EUR/AUS)
  • (加圧 147.1 kW 200 PS / 12,500 rpm)
最大トルク 113 N·m (11.5 kgf·m) / 8,700 rpm
乾燥重量 179 kg
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2008年にさらにモデルチェンジがなされエンジンは188馬力(ラムエアインテークによる加圧で200馬力)となり外観も大幅に変更され[3]

  • センターアップマフラーの廃止[3]
  • フロントミラーステー部分にウインカー装備[3]
  • ホイールベースの延長(1395 mm→1415 mm)
  • 左右のステアリングスイッチ部分にストップウォッチ機能を装備(右がスタート、ストップボタン。左がラップタイムボタン)そのためハザードランプスイッチは装備されない。

などの変更がなされた

2010年

当初この2010年型でエンジン・車体共に完全新設計のフルモデルチェンジが行われる予定であったが、不況の影響、レースで勝てるマシンにすること(歴代ZX-10Rはスーパーバイク世界選手権では苦戦を強いられてきた)を目的に開発期間が延長されたため、それまでの繋ぎとして2008年型より外装パーツ等を一部変更したマイナーチェンジが行われた。カタログ値で車体重量が乾燥重量から装備重量に変更されているが、実質的なスペックに変更はない。

2011年

2012年仕様[4][5]
Paris - Salon de la moto 2011
基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
エンジン 998 cm3 4ストローク
内径×行程 / 圧縮比 76.0 mm × 55.0 mm / 13:1
最高出力
  • 147.1 kW (200.1 PS) / 13,000 rpm
  • (加圧 154.4 kW 209 PS / 13,000 rpm)
最大トルク 112 N·m (11.4 kgf·m) / 11,500 rpm
車両重量 198 kg
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2011年型では同車両では初となる完全新設計によるフルモデルチェンジが行われた。通常、モデルチェンジは2年周期で行われており、2010年に行われる予定だったが、前述の理由により1年遅れのモデルチェンジとなった。エンジン・車体共に刷新され、歴代車種とは大きく変化している。

  • オーソドックスなツインチューブフレームへの変更
  • 軸配置を見直し、マスを集中化した新エンジン(リッターSS初の200馬力オーバーを発生)
  • ホリゾンタルバックリンクリアサスペンションの採用
  • 加速力を最大限に引き出す予測型トラクションコントロールシステム・S-KTRCの採用
  • LEDを使った弧形のバータイプのタコメーターの採用
  • プロジェクターヘッドライトの廃止
  • カセットトランスミッションの採用
  • 先代モデルに引き続きストップウォッチ機能を装備。ハザードランプスイッチは未装備。
  • 10 kg以上の軽量化
  • フロントミラー埋め込み式のウインカー採用
  • KIBS機構を搭載しているABS仕様の追加

2004年型以来の伝統であり車体構成上の特徴だった、エンジンの上を跨ぐように取り回わされたバックボーンフレーム、メインシャフトを低く配置したエンジンは改められた。フレームはエンジン側面を囲うオーソドックスなツインチューブフレームに変更され、エンジンのメインシャフトも他社の競合車両同様、高い位置に改められた。車体構成の独自性は薄れたが、開発目的の一つである「レースで勝つ」ことを優先しての変更である。

エンジンの特性は従来よりも高回転型となり、アクセルをより開けやすくするため中低回転域の余剰なトルクはカットされ、直線的なトルクカーブになっている。最高出力は同クラス車両初となるラムエア過給なしで200馬力以上(200.1 PS)。

2012年モデルはカラーデザインの変更とカウルのサイドのロゴが“Ninja”から“ZX-10R”に変更となった。

2013年モデルのマイナーチェンジではステアリングダンパーを電子制御式に変更している。

レース活動においては2013年、スーパーバイク世界選手権においてトム・サイクスがカワサキのライダーとして20年ぶりにタイトルを獲得、2015年にはジョナサン・レイがライダータイトルを獲得し、初のマニュファクチャラータイトルも獲得している。

2016年

2015年10月8日に2度目のモデルチェンジとなる2016年型が発表された[6]。エンジンは欧州のEURO4排出ガス規制に適合、車体も先代のデザインを維持しつつ手直しされており、フロントサスペンションにはショーワ製の『バランスフリーフロントフォーク』を装備している[7]

同年12月には、日本国内向けの競技向け車両として「レース専用モデル」が発売された。車体は日本国外向け仕様とほぼ同一だが、ABSと保安部品は装着されていない。

2017年

2016年9月1日にマイナーチェンジが発表された。日本国内の騒音規制基準変更により、日本国内へ逆輸入により導入されていたアジア(マレーシア)仕様の排気系が欧州仕様と共通化され、はじめてカワサキ正規代理店から200 PSフルパワー仕様が発売されることとなった。また、軽量ホイールや専用エンジンを搭載しサーキット走行に特化した「ZX-10RR」を追加発表した。

翌2018年には、前年にZX-10RRに採用されていたアップ・ダウン両対応のクイックシフターを全車種に標準装備とし、また、ボディーカラーを刷新する年次改良を行い、電子制御サスペンションを装備した「ZX-10R SE」が追加発表された。

2019年

2018年10月1日から新型「ZX-10R」、ABS装備の「ZX-10R ABS」、チタンコンロッドを採用したスーパーバイクホモロゲーションモデル「ZX-10RR」、電子制御サスペンションを装備した「ZX-10R SE」を発売した。エンジンはシリンダーヘッドが新設計となりフィンガーフォロワーロッカーアームを採用。エンジン出力は203 PS(ZX-10RRは204 PS)となった。

前年モデルまでは一貫して逆輸入によって日本国内へ導入されてきたが、2019年モデルからは日本国内向けモデルとして発売された。日本国内向けモデルも諸外国向けモデルと同様、車速299 km/hで速度リミッターが作動する。

2021年

基本情報
排気量クラス 大型自動二輪車
メーカー 日本の旗カワサキ
車体型式 8BL-ZXT02L
エンジン 998cm3 cm3 4ストロークDOHC直列4気筒
水冷
内径×行程 / 圧縮比 76.0 mm × 55.0 mm / 13.0:1:1
最高出力

ニンジャZX-10R
ニンジャZX-10 KRT EDITON
149kW(203PS)/13,200rpm
ラムエア加圧時:156.8kW(213.1PS)/13,200rpm

ニンジャZX-10RR
150kW(204PS)/14,000rpm
ラムエア加圧時:157.5kW(214.1PS)/14,000rpm
最大トルク ニンジャZX-10R
ニンジャZX-10R KRT EDITION
115N・m(11.7kgf・m)/11,400rpm
車両重量 207 kg
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2020年11月23日に2021年モデルが発表された。外装が一新されており、2011〜2019年型とは大きく異なるニンジャH2ばりのイメージの外観となった。新しいカウリングはエアロダイナミクスに注力したもので、旧型比ダウンフォースは17%増加、ドラッグは7%減少するとされている。外観は大幅に異なるもののエンジン・車体の変更は小規模であり、エンジンは従来型をベースにユーロ5の排ガス規制に対応、最高出力は従来型と同一ながら最高出力発生回転数は13,200rpmと低回転寄りとなった。車体はスーパーバイク世界選手権からのフィードバックを受けてディメンションの小変更がなされている。

装備面では、灯火類はすべてLEDライト化、メーターパネルはTFTフルカラー液晶を採用。またハザードランプスイッチがようやく採用された。

500台限定生産のスーパーバイクホモロゲーションモデル「ZX-10RR」は従来のチタンコンロッドに加え軽量ピストン、低摩擦ピストンピン、専用カムシャフト、専用バルブスプリングを採用、最高出力は従来型と同一ながら発生回転数は14,000rpmと高回転化、レースベース車としてのポテンシャルが高められている。

2023年

カワサキは2022年の9月に2023年型を発表しており、ホームページの製品情報ではスペックに変更は無くカラーリングの変更のみと思われていたが、2023年の2月6日に追加情報として2023年型のZX-10RRには可変吸気ファンネルが採用されていることが発表された[8]。これはレース専用の装備でレース用ECUへ換装しないと作動しない。また、FIMのホモロゲーション車両リスト[9]における2023年型ZX-10RRの注釈には、”no balancer rotational parts”との記述があり、二次バランサーもキャンセルされていると考えられる。

画像

脚注

  1. ^ 『KAWASAKI ZX-10R』ニューズ出版東京都〈ハイパーバイク Vol.11〉、2005年8月8日、182頁。ISBN 4-89107-338-1 
  2. ^ 「バイカーズステーション」第21巻第12号、モーターマガジン社、2007年12月号。 
  3. ^ a b c d e f g 「バイカーズステーション」第22巻第3号、モーターマガジン社、2008年3月号。 
  4. ^ [1][リンク切れ]
  5. ^ 「バイカーズステーション」第26巻第7号、モーターマガジン社、2012年7月号。 
  6. ^ スーパースポーツモデル「Ninja ZX-10R」を海外市場で新発売 - 川崎重工業
  7. ^ [Ninja ZX-10R ABS]約5年ぶりの大規模アップデートを受けた2016年モデル!! - カワサキイチバン(クレタ)・2015年10月9日
  8. ^ 2023 Ninja ZX-10R and ZX-10RR focus on street appeal and racing success”. Kawasaki Motors Europe N.V.. 2023年2月26日閲覧。
  9. ^ FIM HOMOLOGATED MOTORCYCLES FOR 2023_V1”. Fédération Internationale de Motocyclisme. 2023年2月26日閲覧。

関連項目

外部リンク