自動車盗
自動車盗(じどうしゃとう)は、自動車の窃盗のことを指し、警察白書では窃盗の一形態に分類される[1]。自動車等の積荷や車両内から現金や品物を盗むことは車上狙いにあたる[2]ので同記事を参照のこと。
統計による窃盗の実態[編集]
法務省と警察庁の統計データより、1967年~2019年の認知件数は、1967年~1969年にかけて急増し、4万7,563件となったが、1970年~1973年にかけて減少し、1973年は2万9,418件と3万件を切った。しかし、翌年の1973年~1998年は、3万~3万6千件の間で増減を繰り返していたが、1999年~2003年にかけて、急激に増加し、2003年は6万4,223件と統計のある1967年以降の数値で最多となった。そして2003年をピークに減少し、2020年は5,210件と1967年以降最少の件数となった[3][4][5][6]。
警察庁の2019年の統計データより、自動車10万台当たり9.1台であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭ったものは、全認知件数の約4分の1(1,801件)であり、残りの約4分の3(5,342件) は、そのような状態で無いにも関わらず、盗難に遭っている[7]。
被害額別では、200万未満が全認知件数の約59.4%を占めていた。また、2010年~2019年の間で、被害額300万以上の比率が増え(2010年:約11.2%→2019年:約24.8%)、逆に200万未満の比率が減少している(2010年:約71.4%→2018年:約59.4%)傾向があり、段々と盗難する対象が高級車へと変わりつつある。そして、盗難自動車が戻ってきた確率は、約25.8%であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭った自動車は約53.2%、そうでない状態の場合は約16.5%であり、前者の方が還ってくる確率が高い[7]。
そして、警察等に認知されていない犯罪の件数(暗数)を含めて実際の犯罪実態を調べる目的で2000年以降数年に1回行われる法務省の2019年犯罪被害実態調査[8]により、自動車盗難にあったと答えた自動車所有者の割合は、2018年中に被害が遭ったと回答した者の割合は0.0%、2014年~2018年の間に遭ったと回答した者の割合の場合は、0.2%であった。また、この調査は2000年以降5回行われているが、被害に遭う割合は一貫して1%未満となっており、2019年犯罪被害実態調査では、今までの調査の中で最も低い被害率であった。(5年以内被害率 2000年:0.7%→2004年:0.7%→2008年:0.9%→2012年:0.9%→2019年:0.2% )
そして、被害を警察に届け出た割合は約85.7%であった。しかし、残りは調査回答者本人だけでなく家族にも被害に遭ったかのかを含めて質問しているためか無回答であり、かつ保険会社へ盗難に対する補償を申請する為、警察に届け出なければならず、暗数になりにくいため、通常は殆どない。
また、自動車盗難で検挙された者の年齢層は、40代が778人中163人と約21.0%を占めていたが、10万人当たりの検挙人員では、14-19歳の未成年が約1.5人と他の年齢層よりも高い[7]。
対象が高級車にシフトした原因として、スマートキーやController Area Networkを利用する専用ツールが犯罪者の間で売買されるようになり、これらのシステムを備え利益が出る高級車を狙うようになったことが考えられる[9]。
関連資料[編集]
自動車盗難事故実態調査[編集]
日本損害保険協会は、自動車にまつわる盗難の保険事故をまとめたデータを公開している[10]。2020年の自動車盗難件数は全国で5,210件で、最も盗難件数が多い都道府県は茨城県の821件となっている[4]。
茨城県がワースト1になっている背景に、「田畑に囲まれてポツンとある広い家にクルマが2~3台並んでいる」と表現する位、住宅が密集されていない環境故に、地域の監視機能が必然的に低くなってしまうこと、加えて高度経済成長期以降移住した住民が多いため、古くから住んでいる人が多い地域よりも監視機能が弱いことに背景がある[11]。
車体盗難 | 車上狙いの被害品 | |||||||||
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調査年月 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 |
2000年11月 | ランドクルーザー | セルシオ | クラウン | アリスト | ベンツ | --- | --- | --- | --- | --- |
2001年11月 | クラウン | ランドクルーザー | セルシオ | ベンツ | アリスト | --- | --- | --- | --- | --- |
2002年11月 | クラウン | ランドクルーザー | セルシオ | セドリック グロリア |
ベンツ | --- | --- | --- | --- | --- |
2003年11月 | ランドクルーザー | クラウン | ハイエース | セルシオ | マークⅡ | オーディオ | カーナビ | 金銭・カード(ETCカード除く) | バッグ類 | タイヤ・ホイール |
2004年11月 | ランドクルーザー | マークⅡ | クラウン | RAV4 | ハリアー | カーナビ | オーディオ | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) |
2005年11月 | ランドクルーザー | ハリアー | マークX | クラウン | RAV4 | カーナビ | オーディオ | バッグ類 | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | 金銭・カード(ETCカード除く) CD・MD・DVD等(ソフト) |
2006年11月 | ランドクルーザー | マークX | ハリアー | RAV4 | ハイエース クラウン |
カーナビ | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | オーディオ | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2007年11月 | ハイエース | ハリアー | ワゴンR | マークX | ランドクルーザー | カーナビ | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | CD・MD・DVD等(ソフト) |
2008年11月 | ハイエース | ワゴンR | マークX | ランドクルーザー | セルシオ | カーナビ | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | タイヤ・ホイール | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2009年11月 | ハイエース | セルシオ ランドクルーザー |
ワゴンR クラウン |
マークX | タント | カーナビ | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | タイヤ・ホイール |
2010年11月 | ハイエース | セルシオ | ランドクルーザー | サーフ | クラウン | カーナビ | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | タイヤ・ホイール |
2011年11月 | ハイエース | セルシオ | ランドクルーザー | クラウン | プリウス | カーナビ | バッグ類 | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | タイヤ・ホイール | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2012年11月 | ハイエース | クラウン | セルシオ | プリウス | ランドクルーザー | カーナビ | バッグ類 | タイヤ・ホイール | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2013年11月 | ハイエース | プリウス | ランドクルーザー | セルシオ | クラウン | カーナビ | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | タイヤ・ホイール | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2014年11月 | プリウス | ハイエース | ランドクルーザー | アクア | セルシオ | バッグ類 | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | タイヤ・ホイール | カーナビ | 金銭・カード(ETCカード除く) |
2015年11月 | プリウス | ハイエース | ランドクルーザー | アクア | クラウン | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | カーナビ | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | スポーツ用品(ゴルフバッグ等) |
2016年11月 | プリウス | ハイエース | ランドクルーザー | アクア | レクサス | バッグ類 | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | タイヤ・ホイール | 金銭・カード(ETCカード除く) | カーナビ |
2017年11月 | プリウス | ランドクルーザー | ハイエース | レクサス | スカイライン | カーナビ | スポーツ用品(ゴルフバッグ等) | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | タイヤ・ホイール |
2018年11月 | レクサス | プリウス | ランドクルーザー | ハイエース | アクア | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | スポーツ用品(ゴルフバッグ等) | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | カーナビ |
2019年 | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- | --- |
2020年2月 | ランドクルーザー | プリウス | レクサス(LX) | アルファード | レクサス(LS) | カーナビ | タイヤ・ホイール | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | カーナビ |
2020年11月 | ランドクルーザー | プリウス | レクサス(LX) | レクサス(LS) | クラウン | 外装部品(バンパー・ドアミラー等) | バッグ類 | 金銭・カード(ETCカード除く) | タイヤ・ホイール | カーナビ |
脚注[編集]
出典[編集]
- ^ 警察白書(令和元年)
- ^ 自動車盗・車上ねらいの発生状況 - 神奈川県警
- ^ 法務省 (2019-11) (Excel). 令和元年版犯罪白書 第2編 平成における犯罪・少年非行の動向 第1章 犯罪の動向 第1節 刑法犯 2 主な刑法犯 (1)窃盗 2-1-1-12図 窃盗 認知件数の推移(態様別,手口別) (Report) 2020年3月21日閲覧。.
- ^ a b 警察庁捜査支援分析管理官 (2021-02-08) (PDF,Excel). 令和2年1~12月犯罪統計【確定値】 第6表 重要犯罪・重要窃盗犯 都道府県別 認知・検挙件数・検挙人員 対前年比較 (Report). pp. 26 2021年3月29日閲覧。.
- ^ 法務省. “犯罪白書>昭和49年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第2章 統計からみた昭和48年の犯罪の概観>第1節 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-15表 窃盗の主要手口別発生件数の推移(昭和44年~48年)”. 2020年7月19日閲覧。
- ^ 法務省. “犯罪白書>昭和47年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第二章 統計からみた昭和四六年の犯罪の概観>一 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-13表 窃盗主要手口別発生件数の推移(昭和42~46年)”. 2020年7月19日閲覧。
- ^ a b c 警察庁 (2020-08) (PDF). 令和元年の刑法犯に関する統計資料 第2 罪種・手口別の認知・検挙状況 2 重要窃盗犯 (2) 自動車盗 (Report). pp. 36-38 2020年12月6日閲覧。.
- ^ 法務省 (2019-11) (Excel). 令和元年版犯罪白書 第6編 平成における犯罪被害者 第1章 犯罪被害 第2節 犯罪被害についての実態調査 2 31年調査の結果 (Report) 2020年3月21日閲覧。.
- ^ 日本放送協会. “鍵はかけていたのに… なぜ盗まれた?”. NHKニュース. 2021年11月6日閲覧。
- ^ 日本損害保険協会 (2020-05-07) (PDF). 自動車盗難事故実態調査 (Report) 2021年3月29日閲覧。.
- ^ 和泉虎太郎 (2020年3月4日). “「住宅侵入盗」と「自動車盗」ランキング!茨城県がワーストになる理由【47都道府県・完全版】” (日本語). ダイヤモンドオンライン: pp. 2 2021年3月29日閲覧。
関連項目[編集]
- 窃盗
- 二輪車盗
- イモビライザー
- 自動車保険
- 窃盗団
- バニシングin60″ / 60セカンズ(自動車盗が主人公のハリウッド映画・後者は前者のリメイク)
- ヤード規制条例
- グランド・セフト・オート (曖昧さ回避)
外部リンク[編集]
- 日本損保協会、車両盗難被害はランクル、プリウス、レクサスがワースト3位 - impress,2020年5月7日記事
- 自動車盗難情報局 - セキュリティショップA2M