機関直結式冷房装置

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機関直結式冷房装置(きかんちょっけつしきれいぼうそうち)とは、自動車鉄道車両バスなどで、走行用機関の出力軸を動力源として利用する冷房装置の一種である。直結クーラー、直結エアコンともよばれる。

エンジンを持たない電気自動車と、一部のエンジン停止時間の長いハイブリッドカー以外の、内燃機関で走行する、いわゆる一般的な自動車での冷房用コンプレッサーの駆動はほぼ全てがこの方式であるため、特に区別して呼ばれることは少ない。

概要[編集]

走行用機関の出力により、冷房装置の圧縮機を直接駆動するもので、圧縮機はVベルトなどを介して補器軸などの機関の出力軸と機械的に結合されている。サブエンジン式と異なる所は、駆動機関が冷房と走行に兼用されるか、冷房専用であるかの違いである。走行機関を動力とするため、装置の重量がサブエンジン式に比べて軽くて済むが、圧縮機の駆動により搭載車両の走行性能が落ちる場合がある[1]

コンデンサー冷却ファン屋根上に配置した場合、全高が増す難点もあるが、冷房装置が比較的コンパクトにまとまるため、搭載スペースが厳しい自動車に普及した。

鉄道車両用はバス用のものを元に開発され、気動車に搭載されている。

バス[編集]

高速バス・観光バスの機関直結式エアコンは空港リムジンバス用途でよく見られる
神奈川中央交通、三菱ふそう・エアロバス)
直結式とサブエンジン式における外見上の違い(紫枠部分がトランクルーム、橙枠部分がエアコン。相鉄自動車臨港バス
2代目日野・セレガといすゞ・ガーラは直結式エアコンを標準装備するため、床下荷物室はスーパーハイデッカーで3フロア・10立方メートルを確保している。(東京空港交通
床下荷物室の容量確保を狙った全長9m車への採用例
茨城オート、日野・セレガR FC)

路線バス車両の冷房装置としては標準的なもので、昨今のバリアフリー化の兼ね合いもあり、サブエンジン式は一部にとどまっている。[2]

高速バス観光バスでは客室の快適性と走行性能・空調性能を重視[3]して、床下に設置した小型エンジン[4]で圧縮機を動かすサブエンジン方式が主流だが、ホイールベース部分にある床下荷物室の容積を増やす手段として機関直結式冷房装置を採用することがあり、主に空港リムジンバスや貸切バスの7m・9m車で見られる。過去には日産ディーゼル・スペースウィングの3軸車でも採用されていた。 [5] また最近では環境保護や省燃費対策として駐車場でのアイドリングストップにエアコン用サブエンジンも含まれるようになったことでサブエンジン式エアコンの優位性がやや低下、1990年代に入ってからは走行用エンジンの高出力化やエアコンユニットの性能アップで直結式エアコンが見直されるようになり、また日本国外の観光・高速バスでは直結式エアコンが主流となっていることから[6]、2代目日野・セレガいすゞ・ガーラでは直結式エアコンを標準で採用[7]、2012年までサブエンジン式エアコンの設定を残していた三菱ふそう・エアロエース/エアロクイーンも後に直結式エアコンのみになった。 降雪地では道路に散布された融氷剤(主に塩化カルシウム)の飛沫が床下のエアコンユニットに付着して故障することがあるため、対策として直結式を採用する事例が広島電鉄一畑バスの陰陽連絡高速バスで見られる。

保冷車冷凍車の冷凍・冷蔵装置もバス用エアコン同様にサブエンジン式と機関直結式が設定されており、車種や使用条件によって選択されている。

観光バス・高速バスにおけるエアコン駆動方式の比較と特質

機関直結式 サブエンジン式 直結式エアコン採用時のポイント
騒音・振動 小さい 大きい サブエンジンからの騒音・振動がなくなる
整備費用 安い 高い サブエンジンの整備が不要となる
燃料消費量 少ない 多い サブエンジン消費分が不要になるため相対的に省燃費
※ただし負荷の状況とそれに対するエンジンの性能(特性)による
荷物室の
容積
多い 少ない エアコン(サブエンジン)室部分を荷物室に利用できる
送風の
立ち上がり
早い 僅かに遅い エバポレーターと客室の距離が近い
車高 取り付け位置と形状による そのまま エアコン本体を屋根に載せる場合は20cm程度高くなる
※状況によっては支障となる場合がある(バスターミナルやガードの車高制限など)
車両重量 僅かに重い 軽い 重量増加は200kg程度のため影響は微少であると推定
※前後重量バランスは設置位置による
動力性能 僅かに低下する そのまま 走行用エンジンで駆動するため
屋根上設置の場合は重心が上がるため安定性やハンドリングにも影響
冷却能力の
安定性
走行状況による 一定 走行用エンジンで駆動するため
渋滞などで低回転状態が続くと冷却能力が落ち、運行中にエンジンを停止させると冷房が停止する

鉄道車両[編集]

機関直結式冷房装置を搭載した気動車
JR東日本キハ110系

国鉄時代は気動車の冷房装置は客車と同様、ディーゼルエンジン発電機を組み合わせた「発電セット」[8]で冷房用電源を確保し、複数の車両に給電するシステムを採用していた[9]。この方式では、必ず発電セットを持った車両(電源車)を数量に1両の割合で編成内に組み込む必要があり、発電セットを持たない車両のみや給電可能な両数を超えた場合、冷房装置を搭載していても使うことができず、また、1両で運行できる車両に発電セットも搭載すると重装備になることで、当時標準採用されていたDMH17系エンジンではただでさえ非力なことから走行性能にも影響し、もとより、国鉄は製造と維持費用の面で収支係数の良くないローカル線への冷房車導入を考えていなかったため、一般形車両の冷房化が遅れていた。

この反省から国鉄末期に製造された気動車では製造コスト抑制のためバス用部品も導入する施策が採られ、キハ32形キハ54形(四国仕様車)キハ185系では走行用エンジンに直噴式のDMF13HSを採用して出力に余裕が生じたことで、「機械式冷房」と称して機関直結式のバス用エアコン(デンソーAU26系)が採用されることになった。これにより1両でも冷房化できるようになったことで編成組成の自由度が高まり、第三セクター鉄道向けの軽快気動車(LE-Car・LE-DCNDC)にも採用された。JR化後は特急形を含めた新形気動車の多くで機関直結式冷房が採用されており、キハ40系を中心とした国鉄型気動車の冷房化改造にあたっては使用条件によってサブエンジン冷房と並行して機関直結式冷房を採用し、併せて低燃費の新形エンジンへの更新を行うことがある。


関連項目[編集]

注記[編集]

  1. ^ バスラマ・インターナショナル24号p34の記述によると、初期の機関直結式冷房装置では、冷房使用時に25PSほどの出力低下を招いていた。
  2. ^ 東急バスの場合、直結式で冷房化改造を施工したが、対象車両は最高出力200PS以上という条件があった。その一方、早期に路線車の冷房化を行った事業者(主に夏期の暑さが厳しい西日本地区)の中には、比較的遅くまでサブエンジン式冷房車の新規投入を続けていたところがある。一例として、四国伊予鉄道土佐電気鉄道では1982年までサブエンジン式冷房車を増備していた。また広島電鉄己斐峠にみられるように、険しい峠道を通行する車両には1980年代後半までサブエンジン式冷房車を採用していた。
  3. ^ 直結式冷房車はエアコン使用時にエンジンの性能がやや落ちるため、高出力が求められる高速バスには向かなかった。一例として、かつて中央高速バスに運用された「ワンロマ」と呼ばれる一般路線・高速バス兼用車は直結式冷房車であったため、中央自動車道の上り勾配が続く区間(特に八王子大月間)では駆動力確保のためクーラーを止めて走行したことがよくあった。また国鉄バスでも当初は高速バス車両の試作車には直結式クーラーが搭載されたが、実際に高速バスに使ってみると走行性能低下はもとより、市街地では交通渋滞に影響されてエンジン回転が上がらず、くわえてバッテリー上がりを頻発していたこともあり、その反省から日本国内の観光・高速バスではサブエンジン式エアコンが標準的な存在となって行った。1990年代以降は観光・高速バス車両のエンジン出力が廉価グレードでも300PS以上に向上し、圧縮機の容量アップや可変容量化などの改良がなされたこともあり、以上のような制約は解消されている。
  4. ^ デンソーのバス用エアコンに組み合わされる豊田自動織機2DZディーゼルエンジンの場合、直列4気筒排気量2000cc、最高出力32kW。
  5. ^ 荷物室の容積は日野・セレガRハイデッカー車(KL-RU4FSEA)の場合、サブエンジン式:5.7立方メートルに対し直結式:8.4立方メートル。なおセレガRスーパーハイデッカー車(GD/GJ:KL-RU1FSEA)は床が高い分サブエンジン式で7.6立方メートル。
  6. ^ 実際2016年より輸入が開始されたバンホール・アストロメガは直結式クーラーを採用しており、三菱ふそう・エアロキングより荷室が広くなっている。またヒュンダイ・ユニバースも直結クーラーのみの設定である。
  7. ^ 2代目セレガ(E13Cエンジン搭載車)の場合、セレガR(サブエンジン式エアコン車)に比べて燃料消費量-40%、整備費用-90%といわれている。
  8. ^ 前照灯尾灯、室内灯、車内放送ATSなどの電源は、自動車同様、エンジンのクランクプーリーからベルトで駆動されるダイナモオルタネーターで発電し、蓄電池に蓄える方式を採っており、この「発電装置」との区別のため、英語で発動発電機を表す「ジェネレーターセット」を訳した「発電セット」と言う用語が使われていた。
  9. ^ 特急形では食堂車を含む場合は3両、それ以外は4両、急行形は当初1等車のみが冷房化されており、自車のみ、後の普通車冷房化では3両、山陽新幹線連絡用として作られ、他形式との混結を考慮せず、常時2両1ユニットで運用されるキハ66・67形では2両となっていた。