独立機関式冷房装置
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独立機関式冷房装置(どくりつきかんしきれいぼうそうち)とは、鉄道車両、バスなどで、走行用機関とは別の専用機関を動力源として利用する冷房装置の一種である。サブエンジン式冷房装置とも呼ばれる。
概要[編集]
機関直結式冷房装置は走行用エンジンを空調用コンプレッサーの動力源としているが、冷房装置を稼働させると動力性能が低下してしまう難点がある。このためコンプレッサーの動力源を別に設けることで、走行条件に左右されず安定した冷却能力を確保するために独立機関式冷房装置が開発された。動力源は乗用車やSUV、小型トラック、フォークリフト、産業機器などの小排気量ディーゼルエンジンを採用することが多く、例えば三菱ふそう・エアロキング(初期型:P-MU515TAおよびU-MU525TA)では三菱・ジープで採用されていた三菱・4DR5型(直列4気筒OHV、2,659 cc)を冷房用エンジンとして搭載している[1]。安定した冷却能力の確保という観点では大型トラックの冷凍車・保冷車でも独立機関式を採用する事例が見られる。
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鉄道車両[編集]
日本国有鉄道(国鉄)では4DQ形発電セット(水冷直列4気筒ディーゼル)、4VK形発電セット(水冷V型8気筒ディーゼル)、AU34形、私鉄ではトヨタ・2Jとトヨタ・2DZが代表的で、4DQは1等車/グリーン車、寝台車、食堂車、キハ58系の初期冷房車/冷改車、4VKはキハ58系2000番台・キハ65形などの3両給電用、AU34はキハ31形・キハ38形で採用されたのを皮切りに、JR化後一部の国鉄気動車の冷房化改造で採用され、トヨタ・2Jは小湊鉄道キハ200形と関東鉄道キハ300形(1989年から1993年までの施工車)、トヨタ・2DZは関東鉄道キハ300形(1994年以降の施工車)で採用された。基本的に車両の床下に搭載されるが、2機関装備の気動車など床下にスペースがない場合、床上に機器室を設け、そこに搭載する場合もある[2]。
- 1枚目:サブエンジン式冷房装置を床上に搭載したキハ56形550番台。先頭車両後部のルーバー部分に冷房装置が搭載されている。
- 2枚目:快速「ミッドナイト」用改造車のキハ27形500・550番台。キハ27は走行用エンジン1基のため、側面はすっきりしている。
- 3枚目:キハ38形の車内。冷房装置AU34は26,000kcal/hと冷却能力が低いため、扇風機も併設されている。
- 4枚目:キハ31形の車内。キハ38形同様、扇風機が併設されている。
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バス[編集]
路線バスでは低床化や省スペース化の観点から冷房装置は機関直結式がほとんどで、独立機関式は路線バスの冷房化が始まった1970年代に見られた程度であったが、日本国内の観光バスや高速バスでは広く普及している。1960年代に国鉄バスで高速バス用車両を開発した際に試作車および名神高速線向けでは機関直結式を採用したが、勾配区間ではパワーダウンに悩まされ、更に市街地では渋滞で思うように冷房を使用できずバッテリー上がりを起こし易かった。この反省から東名高速線向け車両の開発にあたって冷房には独立機関式が採用され、以後日本国内では標準的な存在となっている。しかし日本国外では機関直結式が主流であること、また日本国内でも床下荷物室の容量アップのため空港リムジンバスを中心に機関直結式が採用されていて、2000年代になるとCO2排出量やメンテナンスコスト低減の観点から機関直結式が見直されたことで、日野・セレガ/いすゞ・ガーラの2代目モデルや三菱ふそう・エアロエースのポスト新長期規制対応車では独立機関式冷房の設定をやめて機関直結式冷房に一本化している。
- 観光バス・高速バスにおけるエアコン駆動方式の比較と特質
機関直結式 | サブエンジン式 | サブエンジン式エアコン採用時のポイント | |
---|---|---|---|
騒音・振動 | 小さい | 大きい | サブエンジンからの騒音・振動が出る |
整備費用 | 安い | 高い | サブエンジンの整備が必要となる |
燃料消費量 | 少ない | 多い | サブエンジン消費分が必要になるため相対的に高燃費 |
荷物室の 容積 |
多い | 少ない | 荷物室部分をエアコン(サブエンジン)室に利用する |
送風の 立ち上がり |
早い | 僅かに遅い | エバポレーターと客室の距離が遠い |
車高 | 取り付け位置と形状による | そのまま | エアコン本体を荷物室に載せるため、車高は変わらない |
車両重量 | 軽い | 重い | サブエンジンの分重量が増すが少しの差である |
動力性能 | 僅かに低下する | そのまま | 冷房用エンジンで駆動しなおかつ荷物室設置のため 重心が変わらず安定性やハンドリングに影響はない |
冷却能力の 安定性 |
走行状況による | 一定 | 冷房用エンジンで駆動するため 渋滞などでも回転状態が一定で冷却能力はそのまま 運行中に走行用エンジンを停止させても冷房は安定である |
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脚注[編集]
- ^ ぽると出版「バスラマエクスプレス11 The King」8ページ参照。MU612系およびMU66JSは異なるエンジンを搭載。
- ^ JR北海道のお座敷気動車のキロ59形、キハ56形550番台の冷房化の際にこの方法が用いられた。