EMS (国際スピード郵便)

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EMS(イーエムエス、英語: Express Mail Service)とは、国際郵便の一種である。特徴として「送達が速く、受領サインが必要で、補償付き」ということから、いわば「国際郵便の速達書留」のようなものである。書類から大きな荷物まで送ることができる。 日本郵便のサービス名としては別名、国際スピード郵便ともいう。

概要[編集]

万国郵便連合加盟国のうち192の郵便事業体がEMSのサービスを提供している[1]。日本では郵政省が1975年にサービスを開始し、現在は日本郵便が120以上の国・地域あてにサービスを提供している。ただし、配達地域が都市部に限られる国もある。

EMSは国際郵便で最も優先的に送達される。船便にはならず、必ず航空輸送となる。国際郵便には、EMSの他にも「速達」というサービスがあるが、速達として差し出されても宛先国では速達扱いしない国が大半である。例えば外国来の速達郵便は日本では殆ど速達扱いで配達していない。従って、国際郵便の中では事実上、EMSが唯一、速達性のあるサービスと言える。

引受から配達までの送達過程を、追跡番号のバーコードで記録しており、インターネットで追跡できる。 世界の多くの国へ平均1週間程度(2日~14日)で届けることができ、航空便の普通郵便・書留・小包(1~2週間)よりも早く届くことが多い。ただし受領サインが必要なので、受取人が留守の場合は、実際に受け取る日は受取人の都合次第である。

なお、海外では、EMSに相当するサービスを別の名称で提供している郵便事業体もある(シンガポール・ポストの「Speedpost」、フランス郵政公社傘下のChronopostなど)。

各サービスの違い[編集]

国際書留 EMS 国際小包
重量制限 定形外や小形包装物は2kgまで。印刷物は5kgまで。 宛先国により異なるが、30kgまでの国が多い。 宛先国により異なるが、30kgまでの国が多い。
輸送便 航空便・SAL便 ※船便書留は廃止された。 航空便のみ 航空便・SAL便・船便
送達日数 航空便だと1~2週間。 宛先国によるが平均1週間。(韓国は3日程度だが、ヨーロッパは2週間かかるなど、差が大きい) 航空便だと1~2週間。船便だと1~3か月。
韓国宛て500gの料金 航空便は1160円。(小形包装物の場合) 1400円 航空便は1700円。船便は1600円。
韓国宛て6kgの料金 不可(重量制限オーバー) 7300円 航空便は5450円。船便は3100円。
信書 定形・定形外は信書可。小形包装物・印刷物は信書不可。 信書可 信書可になった
補償 付いている(6000円) 付いている(20000円) 付いている(重量によるが5kg以下なら11160円)
郵便物に直接宛名書きできるか できる できない できない
配達できなかった場合の返送料 かからない かからない 返送希望の場合は返送料がかかる。

日本から外国宛てのEMS[編集]

書類用のラベル
物品用のラベル(税関告知書が伝票に含まれているのが書類用との違い)

EMSのサイズ制限や重量制限は宛先国により異なるが、「長さは150cmまで、長さと胴周りの合計は300cmまで、重量は30kgまで」という規定の国が大半である。信書も送ることができる。集荷は1個から対応している。

郵便料金は、宛先と重量だけで決まり、サイズには左右されない。(最低1400円、最大69700円)。アジア宛ては近いので安いが、南米・アフリカ宛ては遠いので高くなる。

損害賠償制度があり、損害要償額2万円までの保険が自動的に付いている。2万円を超える補償を希望する場合には、2万円を超えるごとに50円の保険料を追加することで、最大で200万円まで補償が受けられる。「EMSが途中で紛失して届かなかった」「壊れて配達された」「内容品が不足して配達された」といった場合は、損害要償額の範囲内で実損額が補償される。

受取人が留守の場合、(宛先国によって異なるが)、保管期間は15~45日間である。(宛先国で課税されなかった場合は15日間程度、課税となった場合は30~45日間となることが多い)。受取人が再配達希望しなかった場合や、課税された場合で受取人が必要な通関手続を行わなかった場合は、1か月~2か月後に返送されてくる。

伝票の記載方法は、単発利用の場合は、書類用または物品用のEMS専用ラベルに記入するのが通例である。同じ宛先に繰り返し送る場合は、印字ラベルを無料で注文することができる。また、ラベルへの手書きが煩わしい場合は、オンラインシッピングツールを使って送り状を普通紙に印刷して、専用の送り状袋に入れて送ることもできる。ラベルに手書きする場合で、欧米宛てに送る場合は、1と7は欧米風の手書き数字で書かないと誤読される恐れがある。 梱包方法は自前の封筒や段ボール箱に入れれば送れるが、EMS専用の厚紙封筒も郵便窓口で無料配布されている。(国際郵便は輸送中に折れ曲がったり箱が潰れることが多いので、封筒で送る場合は折り曲げ防止のために厚紙封筒が望ましく、段ボール箱で送る場合は上に物が載っても潰れないようなしっかりした箱が適切である。)

物品を送る場合は、宛先国によってはインボイスの添付が必要となる。また、受取時に税金がかかることが多い。

EMSでは送ることができない物[編集]

貴重品等[編集]

例:国内外の貨幣、有価証券(小切手等)、貴金属

※これらは「保険付書状」や「保険付小包郵便物」や「(一部の国は)航空書留書状」でのみ送ることができる。

航空危険物[編集]

以下の物は船便であっても送ることができない。つまり国際郵便では送ることはできない。

例:香水、マニキュア、アルコール、玩具花火、クラッカー、ライター用ガス、キャンプ用ガス、カセットコンロ用ガス、ライター用燃料、塗料、マッチ、バッテリー、リチウムイオン二次電池を搭載した電子機器(※1)、など

(※1)「1つの郵便物あたり、単電池なら4本以下、スマートフォンのような電池パックなら2個以下」かつ「電池が取り外されておらず、機器に取り付けてあること」などの条件を満たせば、大半の国に航空便でも送ることができる。

宛先国が輸入を禁止している物[編集]

各国では非常に多くの種類の品目を禁止品としている。

食料品の送付を厳しく制限している国が大半であり、衣類さえも送れない国がある。

日本宛てのEMS[編集]

日本では速達扱いで郵便配達員が配達するが、配達事情により、少し遅れることもある。会社宛てには17時以降や土日祝は基本的に配達しない。

内容品の価格が約1万円以上の場合は税金(消費税、関税)がかかることがある。この場合、配達員に税金と通関料(1個200円)を支払うことで納税を委託する。

日本における沿革[編集]

  • 1975年3月3日 「国際ビジネス郵便」の名称で、東京国際郵便局(当時、大手町2丁目に所在)および大阪中央郵便局から、イギリスブラジル香港宛てサービスを開始。利用するには、予め郵政省の承認が必要だった。
  • 1984年8月23日 取扱局を全国の都市に拡大。
  • 1992年10月1日 「国際エクスプレスメール」に改称。
  • 2000年3月 タイムサーテン(配達日保証)サービスを、日本からシンガポール・香港・韓国宛てに開始。
  • 2000年6月20日 「国際スピード郵便」に改称。
  • 2009年10月5日 国際郵便マイページサービスによるオンラインシッピングツールの提供を開始。
  • 2013年4月1日 クールEMSを、日本から台湾・シンガポール宛てに試行。8月1日から香港宛てにも試行。

EMSの関連サービス[編集]

タイムサーテン[編集]

東京都心の23集配局および大阪市内の5局で、昼の締切時刻までに引き受けた、韓国(ソウル宛て)・香港・台湾(台北周辺宛て)・中国(上海宛て)のEMSを、翌日の昼ごろまでに配達することを約束するサービスである。EMSの基本料金に加え、追加料金が400円または600円かかる(宛先国により異なる)。月曜~木曜にのみ差し出すことができる。「金土日祝」「年末年始」「宛先国の祝日前日」は差し出せない。配達結果はFAXで通知される。約束時間までに配達されなかった場合は追加料金が返金される。

なお、近年はタイムサーテンを利用しなくても、韓国・香港・台湾・上海・北京宛てはスピードアップされている。

クールEMS[編集]

全国の主要郵便局で引き受けた、食料品在中のEMSを、台湾・香港・シンガポール・マレーシア・ベトナム・フランス宛て(いずれも一部の地域)に、「冷蔵」または「冷凍」のまま届けるサービスで、2013年4月から試行されている。保冷方法は、保冷コンテナを使う訳ではなく、専用の保冷ボックスを使うことで低温をキープし、ふつうのEMSのルートで輸送され、原則として途中で保冷ボックスを開くことなく、宛先に配達されるのが特徴。 引受方法は集荷が原則である。毎日差し出せる訳ではなく、毎週火曜日(一部の局では月曜日)にのみ差し出せるが、差出日の5日前の12時までにFAXで郵便局に予約が必要である。また、毎週差し出せる訳ではなく、日本や宛先国の祝日の関係で、送ることができない週がある。利用料金は4800円から40000円である(宛先国、サイズ、重量、冷蔵/冷凍、で料金が決まる)。受取人が留守でなければ、原則として、差し出した週の金曜日までに配達される。

(参考)国際宅配便[編集]

EMSとは異なるが、国際宅配便の事業者として、UPS、FedEx、DHL、TNT、OCSなどがある。EMSだと遅くなることが多いヨーロッパにも3日程度で送ることができるが、料金はEMSよりもかなり高い。また、日本郵便も法人向けに「ゆうグローバルエクスプレス(UGX)」という、EMSよりも高品質な国際宅配便サービスを提供している。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Worldwide EMS Operators”. 万国郵便連合. 2013年11月6日閲覧。

外部リンク[編集]