判別式

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代数学において、多項式判別式(はんべつしき、: discriminant)はその係数たちの関数であり、一般には大文字の 'D' あるいは大文字のギリシャ文字デルタ (Δ) で表記される。それはの性質についての情報を与えてくれる。例えば、二次多項式

の判別式は

である。ここで、実数 a, b, c に対して、Δ > 0 であれば、多項式は 2 つの実根を持ち、Δ = 0 であれば、多項式は 1 つの実二重根を持ち、Δ < 0 であれば、多項式は実根を持たない。三次多項式

の判別式は

である。より高次の多項式に対しても、判別式は常にその係数たちの多項式関数であるが、非常に長くなる。一般の四次式の判別式は 16 の項を持ち[1]五次式の判別式は 59 の項を持ち[2]、六次多項式の判別式は 246 の項を持ち[3]、項の個数は次数によって指数的に増加する[要出典]

多項式が複素数において重根(すなわち重複度が 1 よりも大きい根)を持つのは、その判別式が 0 であるとき、かつそのときに限る。

この概念は多項式が複素数に含まれないに係数を持つときにも適用される。この場合、判別式が消えることと多項式がその分解体において重根を持つことが同値である。

判別式は係数たちの多項式関数であるので、係数たちが整域 R に属していさえすれば定義され、この場合、判別式は R の元である。特に、整係数多項式の判別式は常に整数である。この性質は数論において広く用いられる。

用語 "discriminant" はイギリス人数学者ジェイムズ・ジョセフ・シルヴェスター (James Joseph Sylvester) によって 1851 年に造り出された[4]

定義[編集]

根の言葉で、判別式は

によって与えられる、ただし は最高次の係数であり は多項式の分解体における(重複度を考慮した)根である。それはファンデアモンド多項式英語版の平方掛ける である。

判別式は根たちについて対称な関数であるから、多項式の係数たちの言葉で書くこともできる、なぜならば係数たちは根たちの基本対称多項式英語版であるからだ。そのような公式は下で与えられる。

判別式を根によって表せば、その重要な性質、すなわちそれが 0 であることと重根が存在することが同値であること、が明白になるが、多項式を分解しなければ計算することができず、分解した後は判別式が提供する情報は冗長である(根がわかっていれば重複があるかどうかわかる)。したがって係数によって表された式によって根の性質が多項式を分解することなしに決定できる。

低次に対する公式[編集]

二次多項式

の判別式は

である。

三次多項式

の判別式は

である。

四次多項式

の判別式は

である。

これらはそれぞれ次数 2、4、6 の斉次多項式である。それらはまた根の斉次式でもあり、それぞれ次数 2、6、12 である。

より単純な多項式はより単純な判別式の表示を持つ。例えば、二次多項式 x2 + bx + c は判別式 Δ = b2 − 4c をもつ。

二次の項がない単三次多項式 x3 + px + q は判別式 Δ = −4p3 − 27q2 をもつ。

根の言葉では、これらの判別式はそれぞれ次数 2、6 の斉次多項式である。

斉次性[編集]

判別式は係数たちの斉次多項式である。単多項式に対して、根たちの斉次多項式である。

判別式は係数たちの次数 2n−2 の斉次式である。このことは 2 つの方法で確かめられる。根と最高次の係数による公式の言葉では、すべての係数を λ 倍しても根は変わらないが、最高次の係数が λ 倍される。(2n−1) ×(2n−1) 行列の行列式を an で割ったものとしての式の言葉では、行列の行列式はその成分たちの次数 2n − 1 の斉次式であり、an で割ることで次数が 2n − 2 になる。明示的には、係数を λ 倍すると行列のすべての成分が λ 倍され、したがって行列式は λ2n−1 倍される。

単多項式に対して判別式は根たちだけの多項式であり(an の項は 1 なので)、根たちの n(n−1) 次式である、なぜならば積には の項があり、それぞれ平方されるからである。

多項式

を考えよう。上のことからその判別式は の次数 2n−2 の斉次式であり、各 がウェイト i を与えられていればウェイト n(n−1) のquasi-homogeneous英語版である。言い換えれば、判別式に現れるすべての単項式 は 2 つの方程式

を満たす。これらはしたがって n(n−1) のサイズ高々 n の 2n−2 の(非負の)パーツへの分割に対応する。

これは判別式の可能な項を制限する。二次多項式 に対して、 に対して 2 つの可能性しかない、[1,0,1] かまたは [0,2,0] であり、2 つの単項式 acb2 を与える。三次多項式 に対して、これらは 6 のサイズ高々 3 の 4 つのパーツへの分割である:

すべてのこれらの 5 つの単項式は判別式において実際に現れる。

このアプローチは可能な項を与えるが、係数を決定しない。さらに、一般にはすべての可能な項が判別式に現れるわけではない。最初の例は四次多項式 に対してであり、このとき を満たすが、対応する判別式は単項式 を含まない。

二次方程式の解の公式[編集]

二次多項式 の判別式は

であり、これは二次多項式の根の公式英語版のルート記号の中に入っている量である。実数 a, b, c に対して、次が成り立つ。

  • Δ > 0 のとき、P(x) は 2 つの相異なる実根

をもち、そのグラフは x 軸と 2 回交差する。

  • Δ = 0 のとき、P(x) は 2 つの一致する実根

をもち、そのグラフは x 軸に接する。

  • Δ < 0 のとき、P(x) は実根をもたず、そのグラフは x 軸の真に上か下にある。多項式は 2 つの相異なる複素根

を持つ。

二次式の判別式を理解する別の方法は「0 ⇔ 多項式が重根を持つ」という特徴づけを使うことである。このとき多項式は である。すると係数は を満たし従って であり、単二次式が重根を持つことと根が である場合であることは同値である。両項を片側に寄せ、leading 係数を含めると、 となる。

多項式の判別式[編集]

係数の言葉による多項式の判別式の公式を見つけるには、終結式を導入するのが最も易しい。1 つの多項式の判別式が根の差の平方の積であるのとちょうどおなじように、2 つの多項式の終結式はそれらの根の差の積であり、判別式が消えるのと多項式が重根を持つのが同値なのとちょうど同じように、終結式が消えるのと 2 つの多項式が同じ根を持つのが同値である。

多項式 が重根を持つことと導関数 と根を共有することは同値であるから、判別式 と終結式 は両方消えるのと p が重根を持つのが同値であるという性質を持ち、それらはほとんど同じ次数を持つ(終結式の次数は判別式の次数より 1 大きい)、したがって次数 1 の因子を除いて等しい。

終結式の利点はそれを行列式、すなわち (2n − 1)×(2n − 1) 行列のシルヴェスター行列の行列式として計算できることである。その最初の n − 1 行は p の係数を含み、最後の n 行はその導関数の係数を含む。

一般の多項式

の終結式 は、因子を除いて、(2n − 1)×(2n − 1) シルヴェスター行列

の行列式に等しい。

の判別式 は今式

によって与えられる。

例えば、n = 4 の場合、上の行列式は

次数 4 の多項式の判別式はすると で割ることでこの行列式から得られる。

根の言葉では、判別式は

に等しい、ただし r1, ..., rn は多項式

の(重複度を数えた)複素根である。

2 番目の表現は p が重根を持つことと判別式が 0 であることが同値であることを明らかにする。(この重根は複素でもよい。)

判別式は任意の上の多項式に対して上と全く同じ方法で定義できる。根 ri を含む積公式は有効なままである。根は多項式の分解体において取られなければならない。判別式は任意の可換環上の多項式に対してさえ定義できる。しかしながら、環が整域でなければ、 による終結式の上の割り算は行列の最初の列に 1 を に代入することによって置き換えられなければならない。

根の性質[編集]

判別式は単に重根があるかどうか以上に根の性質について追加の情報を与える: それはまた根が実か複素か、有理か無理かについての情報も与える。よりフォーマルには、それは次の情報を与える。根が多項式が定義されている体にあるかそれとも拡大体にあるか、したがって多項式が係数体上分解するかどうか。これは二次と三次の多項式に対して最も透明で容易に述べられる。次数 4 かそれより高い多項式に対してこれは述べるのがより難しい。

二次[編集]

二次多項式の根の公式英語版は二次多項式の根を判別式の平方根の言葉の有理関数として表すから、二次多項式の根が係数のと同じ体にあることと判別式が係数の体における平方であることは同値である: 言い換えると、多項式が係数の体上分解することと判別式が平方であることは同値である。

実数が実平方根を持つことと非負であることは同値であり、これらの根が相異なることと正(0 でない)ことは同値であるから、判別式の符号によって実係数二次多項式の根の性質の完全な記述ができる:

  • Δ > 0: 2 つの相異なる実根: 実数上分解する;
  • Δ < 0: 2 つの相異なる虚根(複素共役)、実数上分解しない;
  • Δ = 0: 1 つの重複度 2 の実根:実数上平方として分解する。

さらに、有理係数の二次多項式に対して、有理数上分解することと判別式 - 多項式の係数が有理数だから有理数である - が実は平方であることが同値である。

三次[編集]

実係数の三次多項式に対して、判別式は根の性質を次のように反映する:

  • Δ > 0: 方程式は 3 つの相異なる実根を持つ;
  • Δ < 0, 方程式は 1 つの実根と 2 つの複素共役根を持つ;
  • Δ = 0: 少なくとも 2 つの根が一致し、根はすべて実である。
    方程式は 1 つの二重実根と別の異なる単実根を持つかもしれない; あるいは、すべての 3 つの根が一致し三重実根になる。

三次多項式が三重根を持てば、それはその導関数と線型である二階導関数の根である。したがって、三次多項式が三重根を持つか持たないかを決めるには、二階導関数の根を計算しそれが三次式とその導関数の根であるかどうかを見ればよい。

高次[編集]

より一般に、実係数の次数 n の多項式に対して、

  • Δ > 0: なるある整数 k に対して、複素共役根の 2k 個のペアと n-4k 個の実根があり、すべて異なる;
  • Δ < 0: なるある整数 k に対して、複素共役根の 2k+1 個のペアと n-4k-2 個の実根があり、すべて異なる;
  • Δ = 0: 少なくとも 2 つの根が一致し、それは実かもしれないし実でない(このときそれらの複素共役も一致する)かもしれない。

可換環上の多項式の判別式[編集]

終結式の言葉による多項式の判別式の定義は係数が任意の可換環に属しているような多項式に容易に拡張されるだろう。しかしながら、そのような環においては除法が常には定義されないから、判別式を leading 係数で割る代わりに、行列式の最初の列に 1 を leading coefficient に代入する。この一般化された判別式は代数幾何学において基本的な次の性質を持つ。

f を係数を可換環 A に持つ多項式とし、D をその判別式とする。φ を A から体 K の中への環準同型とし、φ(f) を f の係数を φ によるそれらの像によって置き換えて得られる K 上の多項式とする。すると φ(D) = 0 であるのは f と φ(f) の次数の差が少なくとも 2 であるかまたは φ(f) が K代数閉包において重根を持つとき、かつそのときに限る。1 つ目のケースは φ(f) が無限遠点で重根を持つと解釈できる。

この性質が応用される典型的な状況は A が体 k 上の(一変数あるいは多変数)多項式環であり φ が A の不定元への k体拡大 K の元の代入であるときである。

例えば、f が実係数の XY の二変数多項式であって、f = 0 は平面代数曲線の陰方程式であるとしよう。f を係数が X に依る Y の一変数多項式と見ると、判別式は根が特異点、Y 軸に平行な接線との点、Y 軸に平行な漸近線のいくつか、の X 座標であるような、X の多項式である。言い換えると Y-判別式と X-判別式の根の計算によって変曲点を除いて曲線のすべての注目すべき点を計算できる。

一般化[編集]

判別式の概念は一変数の多項式に加えて円錐曲線二次形式代数体英語版を含む他の代数的構造に一般化されている。代数的整数論における判別式は密接に関係し、分岐についての情報を含む。実は、分岐のより幾何的なタイプは判別式のより抽象的なタイプにも関係し、それによって多くの応用においてこれが中心的な代数的アイデアになる。

円錐曲線の判別式[編集]

実多項式

によって平面幾何において定義される円錐曲線に対して、判別式は[5]

に等しく、円錐曲線の英語版を決定する。判別式が 0 よりも小さければ、楕円の方程式である。判別式が 0 に等しければ、放物線の方程式である。判別式が 0 よりも大きければ、双曲線の方程式である。この公式は退化の場合(多項式が分解するとき)働かない。

二次形式の判別式[編集]

標数 ≠ 2 の任意の K 上の二次形式 Q への substantive な一般化がある。標数 2 に対しては、対応する不変量は Arf invariant である。

二次形式 Q が与えられると、判別式 (discriminant) または行列式 (determinant) は Q対称行列 S の行列式である[6]

行列 A による変数の変換は対称形式の行列を によって変え、この行列式は なので、変数の変換の下で、判別式は 0 でない平方によって変化し、したがって判別式の類は K/(K*)2 において well-defined である、すなわち、0 でない平方を除いて定まる。en:quadratic residue も参照。

Less intrinsically, ヤコビによる定理によって、 上の二次形式は、変数の線型変換の後、

として対角形式 (diagonal form) において表現できる。より正確には、V 上の二次形式は和

として表現できる、ここで Li は独立な線型形式であり n は変数の数である(ai のいくつかは 0 でもよい)。すると判別式は ai の積であり、これは K/(K*)2 における類として well-defined である。

K=R、実数体に対して、(R*)2 は正の実数全体であり(任意の正数は 0 でない数の平方である)、したがって商 R/(R*)2 は 3 つの元、正、0、負を持つ。これは符号英語版 (n0n+n) よりも粗い不変量である。ただし n0 は対角形式における 0 の数であり n± は ±1 の数である。すると判別式は形式が退化 () であれば 0 であり、そうでなければ負の係数の数のパリティである、

K=C、複素数体に対して、(C*)2 は 0 でない複素数であり(任意の複素数は平方である)、したがって商 C/(C*)2 は 2 つの元、非零と零からなる。

この定義は二次多項式の判別式に一般化する。多項式 を斉次化すると二次形式 になりこれは対称行列

をもちこの行列式は である。−4 の因子を除いてこれは である。

実形式の判別式の類の不変量(正、0、負)は対応する円錐曲線楕円、放物線、双曲線に対応する。

代数体の判別式[編集]

交代多項式[編集]

判別式は根たちの対称多項式である。その平方根(各冪の半分:ファンデアモンド多項式英語版)を n 変数の対称多項式の環 に添加すれば、交代多項式英語版の環を得、これはしたがって の二次拡大である。

参考文献[編集]

  1. ^ Wang, Dongming (2004). Elimination practice: software tools and applications. Imperial College Press. p. 180. ISBN 1-86094-438-8. http://books.google.com/books?id=ucpk6oO5GN0C. , Chapter 10 page 180
  2. ^ Gelfand, I. M.; Kapranov, M. M.; Zelevinsky, A. V. (1994). Discriminants, resultants and multidimensional determinants. Birkhäuser. p. 1. ISBN 3-7643-3660-9. http://blms.oxfordjournals.org/cgi/reprint/28/1/96. , Preview page 1
  3. ^ Dickenstein, Alicia; Emiris, Ioannis Z. (2005). Solving polynomial equations: foundations, algorithms, and applications. Springer. p. 26. ISBN 3-540-24326-7. http://books.google.com/books?id=rSs-pQNrO_YC. , Chapter 1 page 26
  4. ^ J. J. Sylvester (1851) "On a remarkable discovery in the theory of canonical forms and of hyperdeterminants," Philosophical Magazine, 4th series, 2 : 391-410; Sylvester coins the word "discriminant" on page 406.
  5. ^ Fanchi, John R. (2006), Math refresher for scientists and engineers, John Wiley and Sons, pp. 44–45, ISBN 0-471-75715-2, http://books.google.com/books?id=75mAJPcAWT8C , Section 3.2, page 45
  6. ^ Cassels, J.W.S. (1978). Rational Quadratic Forms. London Mathematical Society Monographs. 13. Academic Press. p. 6. ISBN 0-12-163260-1. Zbl 0395.10029. 

外部リンク[編集]