二次方程式の解の公式

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二次方程式の解の公式

初等代数学において、二次方程式にはその解を求める一般的な公式(二次方程式の解の公式: Quadratic formula; 二次の公式)が存在する。因数分解平方完成グラフを書くなど解の公式を使う以外にも二次方程式を解くためには方法があるが、しばしば二次方程式の解の公式を使うことが最も便利な方法である。

二次方程式の一般形は

である。ここで x は未知数であり、a, b, c は定数である(ただし a は 0 ではない)。解の公式が実際に解を与えることを、方程式に代入することで確かめることができる。二次方程式の解の公式によって与えられるそれぞれの解はと呼ばれる。

解の公式の導出[編集]

平方完成を理解していれば、二次方程式の解の公式を導出することができる[1](p. 291, Chapter 13 §4.4)[2]:56。このため、二次方程式の解の公式の導出は学生に課題として与えられることがあり、この課題を行うことで学生はこの重要な公式を再発見することが可能なのである[3]:178[4]:81。陽に導出すれば次の通り。

a が0でないことから、 a で割ることが可能である。二次方程式を a で割る。

c/a を等式の両辺から引く。すると次のようになる。

この二次方程式は平方完成が適用可能な形となっている。よって、等式の両辺に定数を足し、等式の左辺を平方完成とする。

これを変形する。

.

最後に、右辺の項を変形し公分母を得ることで、次の式を得る。

等式が平方完成された。等式の両辺の平方根を取ることで次の式を得る。

x イコールの形に直すことで二次方程式の解の公式を得る。

このプラスマイナス記号 "±" は次の2つを示している。

これらは二次方程式の解である[5]:219。この導出以外にも様々な導出方法があり、それぞれ多少の違いがあるが、ほとんどのものがの操作に関するものである。

一部の文献、特に古いものでは [6][7]のような異なるパラメータ表示をしていることがあるが、この場合bはより一般的な表示の 1/2 の大きさである。このような表示では解を多少異なる形で導くが、その他の点では同じである。

なお、日本の高校数学の教科書では、xの係数が偶数の場合の解の公式として、

が紹介されている。

発展の歴史[編集]

二次方程式に解を与える最初期の方法は幾何学的であった。バビロニアのくさび文字で書かれた文字板には二次方程式を解くことに単純化可能な問題が含まれていた[8]:34。エジプト中王国の時代 (2050 BC to 1650 BC) にまで遡る、エジプトのベルリンパピルス英語版には二項の二次方程式の解が含まれていた[9]:530

ギリシャの数学者ユークリッド (およそ 300 BC) は原論という自身の著作のなかで二次方程式を解くのに幾何学的方法を使った。原論は非常に大きな影響を与えた数学の学術文献である[10]。およそ200 BCの中国の九章算術には二次方程式に対する解法が登場する[11][12]:380。ギリシャの数学者ディオファントス (およそ 250 BC)は、自身の著作算術において二次方程式を解いたが、彼の手法はユークリッドの幾何学的手法と比較してより代数学的であったとされる[10]。ディオファントスの解は、たとえ2つの根が共に正であってもひとつの根のみを与える[13]

インドの数学者であるブラーマグプタ (597–668 AD)は自身の学術文献 Brāhmasphuṭasiddhānta英語版 の中で明示的に二次方程式の解の公式を示した。Brāhmasphuṭasiddhāntaは628 ADに出版されたが[14]:86、記号(symbol)ではなく言葉を使って書かれていた[15]:61。ブラーマグプタによる二次方程式 の解法は「絶対数に平方[の係数]の四倍を掛け、中間項[の係数]の平方を加え、同平方根をとって中間項[の係数]を引いてから、平方[の係数]の二倍で割ったものが、その値である」[16]:87というもので、これは式で書けば

ということである。初期のギリシャおよびインドの数学者に影響を受けた9世紀のペルシャの数学者フワーリズミーは、二次方程式を代数的に解いた[17]。すべてのケースに対して有効な二次方程式の解の公式は1594年にシモン・ステヴィンによって最初に得られた[18]:470。1637年にはルネ・デカルトによって "La Géométrie英語版" が出版されたが、この本には今日私たちが知っている形式で二次方程式の解の公式が収録されている。一般解が現代的な数学の学術文献に初めて登場したのは論文 Heaton (1896) のなかで言及されたものである[19]

参考文献[編集]

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  1. ^ Rich, Barnett; Schmidt, Philip (2004), Schaum's Outline of Theory and Problems of Elementary Algebra, The McGraw–Hill Companies, ISBN 0-07-141083-X, https://books.google.com/books?id=8PRU9cTKprsC 
  2. ^ Li, Xuhui (2007), An Investigation of Secondary School Algebra Teachers' Mathematical Knowledge for Teaching Algebraic Equation Solving, ProQuest, "The quadratic formula is the most general method for solving quadratic equations and is derived from another general method: completing the square." 
  3. ^ Rockswold, Gary (2002), College algebra and trigonometry and precalculus, Addison Wesley 
  4. ^ Beckenbach, Edwin F.; Drooyan; Grady (1986), Modern college algebra and trigonometry, Wadsworth Pub. 
  5. ^ Sterling, Mary Jane (2010), Algebra I For Dummies, Wiley Publishing, ISBN 978-0-470-55964-2, https://books.google.com/books?id=2toggaqJMzEC 
  6. ^ Kahan, Willian (November 20, 2004), On the Cost of Floating-Point Computation Without Extra-Precise Arithmetic, http://www.cs.berkeley.edu/~wkahan/Qdrtcs.pdf 2012年12月25日閲覧。 
  7. ^ Quadratic Equation at ProofWiki
  8. ^ Irving, Ron (2013). Beyond the Quadratic Formula. MAA. ISBN 978-0-88385-783-0. https://books.google.com/books?id=CV_UInCRO38C. 
  9. ^ Edwards, I. E. S.; Gadd, C. J.; Hammond, N. G. L. (1971). The Cambridge Ancient History Part 2 Early History of the Middle East. Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-07791-0. https://books.google.com/books?id=slR7SFScEnwC. 
  10. ^ a b Irving 2013, p. 39.
  11. ^ Aitken, Wayne. “A Chinese Classic: The Nine Chapters”. Mathematics Department, California State University. 2013年4月28日閲覧。
  12. ^ Smith, David Eugene (1958). History of Mathematics. Courier Dover Publications. ISBN 978-0-486-20430-7. https://books.google.com/books?id=uTytJGnTf1kC. 
  13. ^ Smith 1958, p. 134.
  14. ^ Bradley, Michael (2006), The Birth of Mathematics: Ancient Times to 1300, Infobase Publishing 
  15. ^ Mackenzie, Dana (2012), The Universe in Zero Words: The Story of Mathematics as Told through Equations, Princeton University Press 
  16. ^ Stillwell, John (2004). Mathematics and Its History (2nd ed.). Springer. ISBN 0-387-95336-1. "To the absolute number multiplied by four times the [coefficient of the] square, add the square of the [coefficient of the] middle term; the square root of the same, less the [coefficient of the] middle term, being divided by twice the [coefficient of the] square is the value." 
  17. ^ Irving 2013, p. 42.
  18. ^ Struik, D. J.; Stevin, Simon (1958), The Principal Works of Simon Stevin, Mathematics, II-B, C. V. Swets & Zeitlinger, http://www.dwc.knaw.nl/pub/bronnen/Simon_Stevin-%5bII_B%5d_The_Principal_Works_of_Simon_Stevin,_Mathematics.pdf 
  19. ^ Heaton, Henry (1896), “A Method of Solving Quadratic Equations”, American Mathematical Monthly 3 (10): 236–237, doi:10.2307/2971099, http://www.jstor.org/stable/info/2971099 

外部リンク[編集]