レシチン

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レシチン
識別情報
CAS登録番号 8002-43-5
MeSH Lecithins
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
レシチンの化学構成

レシチン(lecithin)は、グリセロリン脂質の一種。自然界の動植物においてすべての細胞中に存在しており、生体膜の主要構成成分である。レシチンという名前は、ギリシャ語卵黄を意味するレシトース(Lekithos)に由来する。

レシチンは、元々はリン脂質 の1種類であるホスファチジルコリンPhosphatidylcholine)の別名であったが、現在ではリン脂質を含む脂質製品のことを総称してレシチンと呼んでいる。市場などでは原料に何を使用しているかで分類され、卵黄を原料とするものは「卵黄レシチン」、大豆を原料とするものは「大豆レシチン」と呼ばれ、区別される。

レシチンの特性として、油を水に分散させてエマルションを作る乳化力、皮膚や粘膜から物質を透過吸収する浸透作用がある。 このため、医薬用リポソームの材料、静脈注射用脂肪乳剤、痔や皮膚病の治療薬として利用されている。

体内で脂肪エネルギーとして利用・貯蔵される際、タンパク質と結びついてリポタンパク質となり血液の中を移動するが、このタンパク質と脂肪の結合にレシチンを必要とする。体内のレシチンの総量は、体重60kgのヒトで600g程度である。レシチンの不足は、疲労免疫力低下、不眠動脈硬化糖尿病、悪玉コレステロールの沈着など多くの症状の原因となる。[要出典]

主要なリン脂質(phospholipids)の分類と構造。
緑はグリセロール。赤はリン酸。
以下、図の左から
PtdSer - ホスファチジルセリン
PtdEtn - ホスファチジルエタノールアミン
PtdCho - ホスファチジルコリン
PtdIns -ホスファチジルイノシトール
Sphyngomyerin -スフィンゴミエリン
一番右は糖脂質(glycolipids)。

工業的製法[編集]

レシチンは、搾油したての油に温水を加えて沈殿させたものを、遠心分離機を用いて分け取ったのち、乾燥させてつくる。水分を含んでいるときは黄色い豆腐状の物体となっているが、乾燥すると褐色の水飴のようになる。

用途[編集]

フライパンや鉄板にくっつきにくくなる性質を利用して、炒め油および鉄板焼き油などに添加される。反面、乳化作用によって泡が立って吹きこぼれやすくなるので、揚げ物用の油には用いられない。

レシチンを多く含む食べ物には卵黄、大豆製品、穀類、ゴマ油、コーン油、小魚、レバーウナギなどがあげられ、これらの食品から抽出されたレシチンを用いた健康食品が販売されている。

食品添加物[編集]

植物性レシチン(アブラナアブラナマメダイズ種子油脂から分離して得られたもの)は既存添加物名簿に収載されており、食品添加物として使用が認められている。2014年4月、新たにひまわりレシチンが認可された。なお、他の植物のレシチンは使用できない。

研究[編集]

基礎研究では、レシチン投与によるアルコール性肝障害に伴う肝臓の繊維化と肝硬変の予防、肝障害(肝毒性のある物質や肝炎ウイルスによる)の改善、イギリスの臨床試験でC型肝炎患者の有意な症状改善と組織学的改善が報告されている[1]

注意点[編集]

稀に嘔気嘔吐下痢などの症状[2]

食品のリン脂質含有量[編集]

食品のリン脂質含有量
(g/食材100g当たり)[3]
食材 リン脂質 (g/100g) 脚注
鶏卵 3.49
大豆 2.0
菜種 1.5
牛肉 0.7
小麦でん粉 0.7
ブタ 0.6
鶏もも 0.6
マグロ 0.6
ピーナッツ 0.6

食品のリン脂質組成[編集]

リン脂質の組成数値は、以下の要因などで変動することがあります。

  • サンプルの品種の違い
  • サンプルの成熟度
  • 脂質抽出方法、分析手法
  • 焙煎の有無と焙煎時間

脚注[編集]

  1. ^ 蒲原聖可『サプリメント事典』(平凡社、2004)p.371
  2. ^ 蒲原聖可『サプリメント事典』(平凡社、2004)p.371
  3. ^ Leqi Cui and Eric A Decker (23 July 2015), “Phospholipids in foods: prooxidants or antioxidants?”, Journal of the Science of Food and Agriculture (pdf: Wiley Online Library) 96: Table.3, doi:10.1002/jsfa.7320 
  4. ^ a b c d Yeshajahu Pomeranz (1985), Functional Properties of Food Components, Academic Press Inc, pp. 365, ISBN 978-0-12-561280-7, http://www.sciencedirect.com/science/book/9780125612807 
  5. ^ a b c d Moghis U. Ahmad, Xuebing Xu (2015), Polar Lipids: Biology, Chemistry, and Technology, AOCS Press (Elsevier), pp. 169, ISBN 978-1-630670-44-3, https://aocs.personifycloud.com/PersonifyEBusiness/Default.aspx?TabID=251&productId=3052311 
  6. ^ T. Ovcharova, M.Zlatanov, A. Ivanov (Dec 2014), CHANGES IN GRAPE SEED OIL DURING FERMENTATION, 9, 3, European International Journal of Science and Technology, pp. 179,184, ISSN 2304-9693, http://www.eijst.org.uk/images/frontImages/gallery/Vol._3_No._9/19._178-187.pdf 
  7. ^ Richard M. Cowett (1991), Principles of Perinatal-Neonatal Metabolism, Springer-Verlag, pp. 448, ISBN 978-1-4684-0402-9, http://link.springer.com/book/10.1007%2F978-1-4684-0400-5 
  8. ^ a b P. F. Fox, Paul L. H. McSweeney (2006), Advanced Dairy Chemistry Volume 2: Lipids (3rd ed.), Springer Science & Business Media, pp. 34, ISBN 978-0-387-26364-9, http://www.springer.com/jp/book/9780387263649 
  9. ^ DIRK DANNENBERGER, GERD NUERNBERG, NIGEL SCOLLAN, KLAUS ENDER, AND KARIN NUERNBERG (2007), Diet Alters the Fatty Acid Composition of Individual Phospholipid Classes in Beef Muscle, 2, 55, Journal of Agricultural and food chemistry, pp. 454, doi:10.1021/jf061793x, https://www.researchgate.net/profile/Dirk_Dannenberger/publication/6575519_Diet_Alters_the_Fatty_Acid_Composition_of_Individual_Phospholipid_Classes_in_Beef_Muscle/links/548ff6b60cf225bf66a8081a.pdf 
  10. ^ Henna Lu Fung Sieng (2013), [http://www.food.dtu.dk/~/media/Institutter/Foedevareinstituttet/Publikationer/Pub-2013/phd-afhandling_Henna%20Fung%20Sieng_Lu2%20til%20tryk.ashx Physico-chemical properties, oxidative stability and non-enzymatic browning in marine phospholipid emulsions and their use in food applications], Division of Industrial Food Research, National Food Institute, Technical University of Denmark, pp. 7, http://www.food.dtu.dk/~/media/Institutter/Foedevareinstituttet/Publikationer/Pub-2013/phd-afhandling_Henna%20Fung%20Sieng_Lu2%20til%20tryk.ashx 
  11. ^ D.P. Sen (2005), Advances in Fish Processing Technology, Allied Publishers, pp. 81, ISBN 81-7764-655-9, http://cifri.egranth.ac.in/cgi-bin/koha/opac-detail.pl?biblionumber=6057 
  12. ^ a b Moghis U. Ahmad, Xuebing Xu (2015), Polar Lipids, AOCS Press, pp. 265 (Table9.H), ISBN 978-1-630670-44-3 
  13. ^ Yoshida H1, Tomiyama Y, Tanaka M, Mizushina Y. (2007 Nov), Distribution of fatty acids in triacylglycerols and phospholipids from peas (Pisum sativum L.), 14, 87, Journal of the Science of Food and Agriculture, pp. 2709-2714, doi:10.1002/jsfa.3035, PMID 20836180, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20836180 

外部リンク[編集]