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ハッチョウトンボ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハッチョウトンボ
ハッチョウトンボ(オス)
ハッチョウトンボ(オス)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: トンボ目 Odonata
: トンボ科 Libellulidae
: ハッチョウトンボ属 Nannophya
: ハッチョウトンボ N. pygmaea
学名
Nannophya pygmaea
Rambur, 1842
和名
ハッチョウトンボ

ハッチョウトンボ(八丁蜻蛉、Nannophya pygmaea)は、トンボ科ハッチョウトンボ属に分類されるトンボの一種。日本一小さなトンボとして知られ、世界的にも最小の部類に属する[2][3]

形態

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成虫の体長はオスが17-21 mm(腹長10-14 mm、後翼長12-16 mm)、メスが17-21 mm(腹長9-13 mm、後翼長13-16 mm)で極めて小さい[4]一円玉直径20 mm)の中に頭から腹端までが納まるほどの大きさである。オスの体は羽化直後は橙褐色だが成熟すると体全体が赤みを帯び[5]、羽化後20日ほどで鮮やかな赤色となる。 メスは茶褐色で、腹部に黄色や黒色の横縞がある。の大半は透明であるが、付け根付近は美しい橙黄色になる。幼虫(ヤゴ)も体長9 mmと非常に小さく、緑色を帯びた褐色であるが、体表が泥で被われていることが多い。

生態

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主として平地から丘陵地・低山地にかけての水が滲出している湿地や湿原、休耕田などに生息しているが、時には尾瀬ヶ原のような高層湿原でも見られることがある。いずれも日当たりがよく、ミズゴケ類サギソウモウセンゴケなどが生育し、極く浅い水域がひろがっているような環境を好む[3][5]。成虫は5-9月に出現する[6]。成熟したオスは小さい縄張りを持ち、静止状態でメスを待つ[3]

分布

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東南アジアから南アジア一帯に広く分布するトンボで日本列島や朝鮮半島は分布の北限に当たる。DNA解析により地域によって大きな差異が確認されていて、複数の種に再分類される可能性がある[4]

日本では青森県から鹿児島県に至る本州四国九州に分布するが、離島には生息していない[3][6]。日本国内での分布は局所的で、さらに近年の開発や環境汚染により著しくその数を減少させている。

人間との関わり

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長野県駒ヶ根市で市の昆虫に指定されている[7]和歌山県古座川町では、町指定天然記念物に指定している。古座川町は生育地となっている休耕田を買い取ったり、防護柵を取り換えたり、盛り土を整備したりするなどの環境づくりを進めている[8]

種の保全状態評価

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国際自然保護連合(IUCN)が作成するレッドリストでは、2020年時点で絶滅の危険性について低危険種(Least Concern, LC)と評価されている[1]。日本の環境省が作成するレッドリストでは、2014年発表2020年最終改訂の第四次レッドリストには掲載されていない[9]。。都道府県作成のレッドリストでは30府県以上で絶滅危惧種として指定されており、特に四国地方九州地方を中心とする西日本全域と、関東地方近郊は絶滅危惧Ⅰ類での指定が多い。なお、東京都埼玉県では絶滅したと評価されている[10]

名前

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標準和名は「ハッチョウトンボ」とされ、『日本産昆虫総目録Ⅰ』(1989)[11]、『日本昆虫目録 第2巻旧翅類』(2017)[12]にはこの名前で掲載されている。

名前の由来は、尾張本草学者大河内存真(おおこうち ぞんしん:1796-1883)による『蟲類写集』に「ヤダノテツポウバハツチウメ」(矢田鉄砲場八丁目)のみで発見せられるために「ハツチウトンボ」の名を有する、との記載に因むとされる。この矢田鉄砲場八丁目の詳しい場所は現在不明とされるが、名古屋市内の矢田川付近と見られている。また一説には矢田河原八丁畷(現在の名古屋市千種区周辺)で発見されたことに由来するとの説もあるが、この説の根拠はよくわかっていない。

学名の pygmaea は「Pygmaei(伝説上の小人)の~」の意で、小さいことに由来する。

ハッチョウトンボ属

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ハッチョウトンボ属に分類される種は現在まで下記の7種が知られるが、そのうち日本に分布するのはハッチョウトンボ1種のみである。

脚注

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  1. ^ a b Karube, H. (2020). Nannophya pygmaea. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T167187A83375872. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-1.RLTS.T167187A83375872.en
  2. ^ トンボのすべて (1999)、8頁
  3. ^ a b c d 日本動物大百科 (1996)、82頁
  4. ^ a b 日本のトンボ (2012)、436-437頁
  5. ^ a b トンボのすべて (1999)、56頁
  6. ^ a b トンボのすべて (1999)、142-143頁
  7. ^ 市の木・花・昆虫”. 駒ヶ根市 (2004年7月1日). 2012年8月5日閲覧。
  8. ^ “ハッチョウトンボ羽化 本年度中に隣接地も整備 古座川町の大谷湿田”. 紀伊民報. (2014年5月21日). http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=273781 2014年5月29日閲覧。 {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  9. ^ 生物情報収集提供システム いきものログ > レッドリスト・レッドデータブック 環境省生物多様性センター 2025年8月31日閲覧
  10. ^ ホーム > 種名検索 日本のレッドデータ検索システム. 2025年8月15日閲覧.
  11. ^ 平嶋義宏 監修,九州大学農学部昆虫学教室・日本野生生物研究センター 編 (1989) 『日本産昆虫総目録Ⅰ』. 九州大学農学部昆虫学教室, 福岡. doi:10.11501/13643318(国立国会図書館デジタルコレクション)
  12. ^ 中村剛之, 枝重夫, 笹本彰彦 共編(2017)『日本昆虫目録 第2巻旧翅類』 櫂歌書房, 福岡. ISBN 978-4-434-23772-0

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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