ゼイリブ
ゼイリブ | |
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They Live | |
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監督 | ジョン・カーペンター |
脚本 | フランク・アーミテイジ |
原作 | レイ・ネルソン |
製作 | ラリー・J・フランコ |
製作総指揮 |
シェップ・ゴードン アンドレ・ブレイ |
音楽 |
ジョン・カーペンター アラン・ハワース |
撮影 | ゲイリー・B・キッブ |
編集 |
ギブ・ジャフェ フランク・E・ヒメネス |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 96分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $4,000,000 |
興行収入 |
$13,008,900[1] ![]() ![]() |
『ゼイリブ』(They Live)は、1988年製作のアメリカ合衆国のSF映画。96分、カラー。ジョン・カーペンターが、製作のほぼすべての分野に携わった。
SF映画、ホラー映画の形をとった風刺作品であり、またアクション映画の面もあるこの作品には、1980年代の社会に蔓延した物質主義的思考に対する批判や、特権階級の者らがメディアを悪用し人々を洗脳し社会を専制的に支配していることに対する批判や警告が織り込まれている。
ストーリー[編集]
主人公のナダ(ネイダ)は、しがない肉体労働者。世は貧富の差が激しく、失業者があふれている。
家がないナダはフランクに誘われて労働者仲間のボロ家(キャンプ地)に仲間たちと一緒に泊めてもらうことになり、そこで何気なくテレビを見はじめたが、画面には贅沢な消費生活にどっぷりつかった女性の映像が流れている。ところが受信映像がふいに乱れたと思ったら、正規の放送局の映像とは思えない乱れた電波が画面に映りはじめ、その映像に現れた男がこんなことを言い始めた。
「我々の暮らしている世界は人工的な仮眠状態にされています。あるグループが信号が発信されているのを発見したのです。彼らは抑圧的な社会を作り上げているのです。彼らの目的は皆の意識をなくすことです。彼らの目的は人々を欲に目をくらませ、物質主義者にしたてあげることです。彼らは自分たちが生きるために我々を眠りこけさせ、欲に狂わせている。我々は“奴隷”にされているのです」
映像が消えるとナダの近く座っていた男がなぜかそわそわと立ち上がり出てゆく。ナダは不審に思い、気づかれないようにその男についてゆく。男は近所の教会堂の中に入ってゆく。"自由教会"という名の教会で普段から賛美歌が聞こえてきていた。ナダは気づかれないようにこっそりとその教会堂に足を踏み入れる。賛美歌が聞こえていたのは人の声ではなく、録音テープで流している不思議な教会であった。
その教会堂の隣室では人々が何やら議論をしていた。ナダは壁に隠された収納スペースがあり、そこにダンボール箱がいくつも入っていることに気づく。ナダはとりあえず教会から退散した。
不思議な教会のことが気になったナダは後日もその教会堂を外から観察しつづけた。するとナダのいるキャンプ地に突然に武装警官の集団が襲いかかった。
翌日ナダが教会堂に行ってみると人が誰もいなくなっていた。ナダは隠し収納部屋があったことを思い出す。ナダはそこからダンボール箱をひとつ持ち去った。
街の横丁にたどりつきそのダンボール箱を開けると中には黒いサングラスがぎっしりとつまっていた。そのうちのひとつを手にとると残りはダンボール箱のままゴミ箱に捨てた。
何気なくそのサングラスをかけて街をブラブラと歩き始めた。すると街の景色が何やらいつもと違って見える。宣伝の平凡な写真の看板やカリブ海旅行の看板をメガネを通して見ると、「命令に従え」「結婚して、出産せよ」と書いてある。サングラスを通して見ると、雑誌にも新聞にもテレビ放送でも「消費しろ」「考えるな」「眠っていろ」「権力に従え」などの不気味な命令文に満ち満ちているのが見える。しかも街中の裕福そうな人々の大半は骸骨のような恐ろしい顔をしたエイリアンだった。エイリアンが人間のふりをしていたのだ。このサングラスはエイリアンの本当の姿およびエイリアンらが作り出している洗脳信号を見抜くことができるサングラスだったのだ。
すると突然、警官がナダに襲いかかってきた。サングラスを通して見ると、その警官もエイリアンである。実は既に地球にはエイリアンが溢れており、政府の中枢もテレビ局にもエイリアンが人間に擬態をして入り込んでいて人間は彼らに支配されていたのだ。人間達はニセの現実の中に生かされていたのだ。
ナダたちはエイリアンたちに対して戦う決意を固め行動を開始した。やがてホリーという女性と知り合い、彼女のことが気にかかったナダは真実を告げようとするがエイリアンたちに阻まれて退却を余儀なくされた。ホリーはその場に遺されたサングラスに視線を落とす。
同じ労働者だったフランクに真実を告げようとするが彼は拒絶。ナダは殴り合いの末フランクを説得し、エイリアンによる支配階級に反旗を翻すべくサングラスの製造者たちを突き止め、彼らレジスタンスに合流。途中で真実を知ったホリーも一向に加わる中、レジスタンスのアジトがエイリアンにより襲撃を受け半壊。ナダとフランクは命からがら脱出する。
エイリアンたちは特殊な電波を発信することで自身を人間に見せていた。そのアンテナを破壊すればエイリアンたちは正体を暴かれ人類に知らしめることができる。レジスタンスの生き残りとしてアンテナを破壊しようとするナダたちだったが、そこへひょっこりと知り合いの浮浪者が現れる。貧相だった彼は黒のスーツに身を包み整髪も済ませ、いかにも上流階級といった格好になっていた。彼はエイリアンと取引をして仲間に加わり、その恩恵を受けたのだった。ナダとフランクも仲間になったと思った浮浪者はビル内に案内するが、途中で反撃され捨て台詞を残してテレポートで姿を消した。
そのまま屋上を目指すナダとフランク。そこへホリーが合流するが、彼女は突然フランクの頭を撃ち抜いた。既に彼女はエイリアンの手先に成り下がっていたのだ。アンテナを破壊しようとするナダに銃を向けるホリー。しかし、ナダは隠し持っていた銃を取り出してホリーを銃殺。アンテナの破壊に成功したが直後、駆けつけたエイリアンによってナダも撃たれてしまう。茫然と夜空を見上げる中、アンテナによる擬態が機能しなくなり、ニュースキャスターや評論家、テレビ俳優等の社会に溶け込んでいる様々なエイリアンたちが次々と正体を暴かれていき、人々は狼狽を隠せず、騒ぎ立てるのだった。
キャスト[編集]
役名 | 俳優 | 日本語吹替 |
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テレビ朝日版 | ||
ナダ | ロディ・パイパー | 堀勝之祐 |
フランク | キース・デイヴィッド | 小林清志 |
ホリー | メグ・フォスター | 弥永和子 |
浮浪者 | ジョージ・フラワー | 麦人 |
ギルバート | ピーター・ジェイソン | 筈見純 |
宣教師 | レイモン・サン・ジャック | 阪脩 |
髭の男 | ジョン・ローレンス | 村松康雄 |
親方 | ノーマン・オールデン | 幹本雄之 |
父親 | ジェイソン・ロバーズ・Jr | 山野史人 |
テレビの女優 | スーザン・ブランチャード | 一城みゆ希 |
身なりのいい客 | ジョン・F・ゴフ | 小島敏彦 |
ブロンドの警官 | ノーマン・ハウエル | 牛山茂 |
黒人革命家 | サイ・リチャードソン | 小野健一 |
その他 | 円谷文彦 秋元千賀子 鹿島信哉 寺内よりえ 塩屋浩三 叶木翔子 渡辺菜生子 砂田薫 | |
演出 | 松川陸 | |
翻訳 | 入江敦子 | |
調整 | 遠西勝三 | |
効果 | 南部満治 | |
製作 | ニュージャパンフィルム | |
初回放送 | 1990年3月25日 『日曜洋画劇場』[2] |
スタッフ[編集]
- 監督:ジョン・カーペンター
- 製作:ラリー・J・フランコ
- 製作総指揮:シェップ・ゴードン、アンドレ・ブレイ
- 原案:レイ・ネルソン 『朝の八時』
- 脚本:フランク・アーミテイジ(=ジョン・カーペンター)
- 音楽:ジョン・カーペンター、アラン・ハワース
- 美術:ウイリアム・J・ダレル・ジュニア、ダニエル・A・ロミノ
- SFX:ジム・ダンフォース
作品解説[編集]
この映画は二つの作品から生まれた。ひとつはレイ・ネルソンによる『朝の八時』であり The Magazine of Fantasy and Science Fiction誌に1963年に掲載されたものである。もうひとつは Nadaと呼ばれた作品で、the Alien Encounters comic book に掲載されたものである。
それらの要素に加えて、1980年代にかつてないほどに増大した通俗的な資本主義に対する、カーペンター監督の嫌悪感が表現されている。カーペンター監督はかつて次のようにコメントしたことがある。「ふたたびテレビを見てすぐに気づいたことは、テレビ画面に映し出される映像は全て、我々に何かを売りつける意図のもとにデザインされているということです。映像はすべて我々に何かを買いたいという欲望を起こさせることを意図して作られているのです。彼ら(映像の作り手)がやりたいことと言えば、我々のお金を奪うことだけです」[3]
この作品では、邪悪な骸骨のようなエイリアン(異星人)がテレビ放送、マスメディアを用いて自分たちの姿を地球人であるかのようにいつわり、また洗脳手法、例えばサブリミナル効果の手法を用いて人々を支配している様子が衝撃的に描かれている。
劇中主演のロディ・パイパーとキース・デヴィッドが約6分にわたって繰り広げるバックドロップなどのプロレス技を応酬する喧嘩シーンがある。また後半に劇中の登場人物が暴力的な映画を糾弾する内容のテレビ番組を見ているシーンがあり、その番組の中でコメンテーターが「カーペンター監督作品は特に酷い」と名指しで批判しているといったジョークを挿入している。
脚注[編集]
- ^ “They Live (1988)”. Box Office Mojo. 2009年11月6日閲覧。
- ^ TCエンタテインメント発売のBD&DVDに収録
- ^ ただし、監督の批判はあくまでも80年代の暴走に対するものであり、21世紀になっても今だに本作を利用しての政治批判が続く状況には、たびたび不快感を示している。「誤解されるが、私は資本主義のこの国に満足している。ただ、批判が無さすぎるのは良くないというだけだ(2015年)」「ゼイリブはヤッピーと資本主義の暴走を描いたもので、世界を支配するユダヤ人を描いたものではない(2017年)」
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 映画 ゼイリブ 公式ホームページ
- ゼイリブ - allcinema
- ゼイリブ - KINENOTE
- They Live - オールムービー(英語)
- They Live - インターネット・ムービー・データベース(英語)
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