キャリアメール

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キャリアメール(carrier mail, 和製英語)とは、移動体通信事業者(通信キャリア)が携帯電話端末向けに提供する電子メールサービスの総称である[1]

概要[編集]

前史[編集]

1968年7月に日本電信電話公社(NTTグループの前身)が、東京都区部(23区内)でポケットベルのサービスを開始した。1980年代後半からは各地で新規参入が相次ぎ、徐々にサービスエリアを拡大し、料金も低価格化していったため企業を中心に普及しはじめた。当初は単音のブザー音が断続的に鳴るだけだったが、バイブレーション機能が追加されり発信元の電話番号が表示されるものが登場し、その後には数桁の任意の数字を送ることができる機種も登場した。

1979年には日本電信電話公社が自動車電話として携帯電話サービスを開始した。 しかし当時はアナログ方式を採用していたため音声通話しかできず、ウェブサイトの閲覧やメールなどのサービスを提供することはできなかった。

ポケットベルからショートメールへ[編集]

1990年代前半から中盤にかけてはPHS・携帯電話の料金が高価だったこともあり、料金の安価なポケットベルが女子高生女子大生を中心に広く普及し、また数字以外のカタカナ・英字・絵文字も送ることができるフリーメッセージ機能が登場したこともあり、コミュニケーションツールとしての活用方法が拡大していった。

1990年代半ばからはPHSが全国でサービスを開始し、携帯電話もデジタル方式の第2世代移動通信システム(通称2G)のサービス開始に伴い、PHS・携帯電話でウェブサイトの閲覧やショートメール(ショートメッセージサービス、SMS)の利用が可能になった。 なお当時のショートメールはポケベルのフリーメッセージ機能を強く意識して設計されており、海外のSMSと違って絵文字を使うことができたり、ポケベルの文字入力方式を真似たベル打ちを採用した機種も多かった。 そして、1997年に携帯電話の各キャリアがSMSサービスに標準対応したモデルを市場に投入し始めると、大学生以上の個人ユーザーが急速にポケットベル離れを起こし、携帯電話がポケットベルに取って代わるのに大きな役割を果たした。

PHSでは1996年4月にDDIセルラー(現KDDI沖縄セルラー電話)により「たのしメール」の名称で、携帯電話では1997年6月にNTTドコモのデジタルmova(第2世代デジタル方式)のサービス開始により「ショートメール」の名称でSMSサービスが始まった。

このメールサービスは、電話番号だけでメールを送受信できるショートメール(サービス名はショートメール・CメールスカイメールS!メール・ライトメール・Pメール・きゃらトーク・きゃらメール・Aメール・プチメール・セルラー文字サービス・たのしメール等)だった。

ショートメール(SMS)からキャリアメールへ[編集]

ショートメールは同一キャリアの契約者間でしかメールを送受信できないという大きな欠点があり、キャリアメールが普及した後の2011年7月にNTTドコモKDDI沖縄セルラー電話・ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)・イーアクセス(現ワイモバイル)が相互接続を開始するまで、他のキャリアの契約者にSMSを送ることができなかった。 またパケット通信ではなく回線交換方式で通信するため1通(全角70文字まで)送信するごとに3.15円が請求される、メッセージセンターの保存期間 72時間を過ぎるとメールが自動消去される、他キャリアの契約者宛に絵文字が入ったメールを送信すると、対応する絵文字がない場合は、見た目が似ている絵文字に変わる・〓に置き換わる・絵文字が削除される(のちに文字に置き換える方式に変更)[2]、他キャリアの契約者宛にSMSを送ると届くまで時間がかかる、インターネットと接続していないため電子メールの送受信ができない(のちに対応)などの欠点が多かった[3]。 また第2世代移動通信システムの通信方式は、後に海外で主流となるGSM方式ではなく、日本が独自に開発したPDC方式を採用しており、またSMSはGSMに由来するサービスという経緯もあり、2000年代に第3世代移動通信システム(3G)に移行するまで海外のキャリアとSMSを送受信することもできなかった。

1999年から各社で携帯電話のインターネット接続サービスが始まり、それに伴い他キャリアの利用者にもメールを送ることができ、電子メールも使えるキャリアメール(サービス名は「iモードメール」(独自規格)・「EZwebメール」(独自規格を経て、MMSに対応)・「スカイメール」(独自規格で、のちにSMS化し「Vodafone live!メール」に改称 現「S!メール」)が始まった。

なお当時はパケット通信料が従量制で、なおかつ高額であったため、親に携帯電話代を支払ってもらっている中高生は通信費を抑えるためにワン切りをメール代わりに使う者もいた。 しかし2000年代半ばにパケット定額制の料金プランが定着したことをきっかけに、送受信に追加料金がかからないキャリアメールは中高生にも広く普及するようになった。

ちなみに2008年7月にiPhone 3Gが発売されたことをきっかけにスマートフォンが普及し、スマートフォンではショートメールに相当するものをSMSと呼んでいたことから、ショートメールはSMSと呼ばれるようになった。

キャリアメールからLINEへ[編集]

2011年6月には携帯電話向けインスタントメッセンジャーLINEが登場。 2012年10月には首相官邸公式アカウントが開設され[4]、2014年7月には日本国内の利用者数が5200万人を超える[5]など急成長し、若者をはじめとして30・40代にもコミュニケーション手段としてLINEを使用する動きが広がり、キャリアメールの利用が減っていった[6]。 なお日本国外ではWhatsAppFacebook MessengerSkypeテンセントQQ微信などのスマートフォンでも利用可能なインスタントメッセンジャーが普及しており、欧米の通信キャリアを中心にSMS利用者の減少による危機感から、2012年からRich Communication Servicesに基づくインスタントメッセンジャー(joyn・Advanced Messaging・joyn.Tなど 日本では+メッセージ)サービスが各キャリアで行われている[7]

また2010年代前半から仮想移動体通信事業者(MVNO、いわゆる格安SIM)が普及しはじめたが、移動体通信事業者(MNO、いわゆる大手通信キャリア)は仮想移動体通信事業者に対してキャリアメール・MMSなどの付加サービスを貸し出していない(ディズニー・モバイルUQ mobileを除く)。 このため、移動体通信事業者は、契約者にキャリアメールの代替として電子メールアドレス(いわゆるPCメール)を別途提供することが多い。 ただしキャリアメール特有の迷惑メール対策が仇となり、移動体通信事業者契約者が送信したメールが迷惑メール扱いになって、キャリアメールに届かないなどの事態が生じており、これもキャリアメール離れの原因の一つとなっている。

キャリアメールと電子メールの違い[編集]

キャリアメールでの新着メールの通知は、キャリアが携帯電話の音声通話回線の制御信号を使って特殊なSMSを携帯電話に一方的に送ることによって実現している。このため新着メールがあることを即座に知ることができ、また携帯電話の待ち受けの仕組みを使っているため電池の消耗には大きな影響はない。なお特殊なSMSで送信される情報は新着メールの有無・タイトルだけであり、メールの本文は携帯電話側でデータ通信回線を使用して取得する必要がある(機種によっては、本文の自動受信の可否を設定することができる)。 欠点は、キャリアが新着メールの通知を一方的に送る仕組みのため、携帯電話の電源が入っていなかったり、電波の受信状況が悪い場所にいる場合は、携帯電話側がセンターに新着メールの問合せをしないと新着メールに気づかない(機種によっては、電源を入れた際・圏外から復帰した際・一定時間ごとに、自動で問合せる機能がある)。このため次の新着メールが届いた際に、携帯電話側がセンターに問い合わせた時点で、前にも新着メールがあったことに気づくなどの欠点がある。

またキャリアメールの迷惑メール対策は携帯電話に特化されたもので、キャリアメール以外からのメールの受信拒否・URL付きメールの受信拒否・メールアドレスのなりすまし対策(SPF認証)・大手キャリア間でのブラックリスト共有などの対策を行っている。

一方、電子メール(いわゆるPCメール)の場合は、通常は新着メールのリアルタイム通知機能はない。 このため、インターネット回線を使って疑似的にリアルタイム通知を実現する「プッシュ」(IMAP4のIDLE機能[8]・Microsoft Exchange ActiveSync[9])等のように、常にメールサーバと通信状態にしておく方法)や、「フェッチ」(一定時間ごとに、メールサーバに新着メールの照会を繰り返す方法)等のような技術を使用する必要がある。 プッシュ型の欠点は、常にメールサーバと通信状態であるためパケット通信料がかかり、携帯電話の電池の消耗が早くなり、また通信状態が悪いと通知ができない。またこの技術を採用している事業者は少ない。 フェッチ型の欠点は、メールサーバに照会をするたびにパケット通信料がかかり、電池の消耗がやや早くなり、また前の照会と次の照会の合間に届いた新着メールを即座に知ることができず、通信状態が悪いと通知ができない。

電子メールの迷惑メール対策については事業者によって異なり、標準では簡易なフィルタリングサービス、別料金で高度なフィルタリングサービスを提供しているところが多い。中には、フィルタリングサービスがない事業者や、メールヘッダによるフィルタリングもできるさらに高度なサービスを提供している事業者もある。

サービス名[編集]

プッシュメールの国際規格としてマルチメディアメッセージングサービス(MMS)があるが、携帯電話のキャリアでは、2013年現在ドコモのみ対応していない。

携帯電話のインターネットサービスに加入すると、事業者が設定するドメイン名がついたメールアドレス(~@docomo.ne.jp、~@ezweb.ne.jp、~@softbank.ne.jp 、~@ymobile.ne.jp、~@uqmobile.jpなど)が付与される。

歴史[編集]

1990年代後半に携帯電話向けのインターネットサービスと共に開始され、絵文字デコメール写メールなど、パソコン向けの電子メールとは異なる携帯電話に特化した独自の発展を遂げた。契約した携帯電話端末でしか送受信できないことや、文字数・添付ファイルの種類や容量など制限が多いが、パケット通信料金の従量制が一般的であること、携帯電話では長文を入力しにくいことなどを考慮すると妥当なシステムであると言える。

2000年代末期にスマートフォンの普及が始まり、キャリアメールへの対応に問題が生じる場合があった。またスマートフォンでは、GmailYahoo!メールなどのパソコン向けの電子メールサービスでもIMAP方式でプッシュ型受信が可能であることや、SNSを使ったコミュニケーションが普及したことにより、2010年代からキャリアメールへの需要は薄れている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ キャリアメール”. IT用語辞典バイナリ. 2012年10月6日閲覧。
  2. ^ 携帯6社、キャリアメールとSMSの絵文字を共通化『ITmedia Mobile』アイティメディア、2014年4月24日
  3. ^ 他社の携帯電話へもメッセージ送受信可能に--絵文字は?料金やサービス内容まとめ]」『CNET Japan』朝日インタラクティブ、2011年7月13日
  4. ^ 増田覚「INTERNET Watch LINEに「首相官邸」公式アカウント、行政機関で初の取り組み」『Impress Watch』 インプレス、2012年10月5日
  5. ^ 高橋暁子「高橋暁子の意外と知らない!? 業界ランキング 第41回 日本人の40%がLINEを常用しているが世界はWhatsAppとFacebook二強」『ASCII.jp』 KADOKAWA、2015年6月15日
  6. ^ 高橋暁子「深読みチャンネル なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち」『読売新聞(YOMIURI ONLINE)』 読売新聞社、2018年1月18日
  7. ^ Richard Chirgwin「Google goes over the top with RCS」『The Register』 Situation Publishing、2016年2月23日
  8. ^ RFC 2177「IMAP4 IDLE command」
  9. ^ Microsoft TechNet「Exchange ActiveSync