キャリアメール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

キャリアメール(carrier mail, 和製英語)とは、移動体通信事業者(通信キャリア)が携帯電話端末向けに提供する電子メールサービスの総称である[1]

概要[編集]

1979年に日本電信電話公社(NTTグループの前身)が自動車電話として携帯電話サービスを開始した。しかし当時はアナログ方式の第1世代移動通信システム(通称1G)であったため音声通話しかできず、ウェブサイトの閲覧やメール等のサービスを使用することはできなかった。 1990年代半ばになってから、各社でデジタル方式の第2世代移動通信システム(通称2G)のサービス開始に伴い、PHS・携帯電話でウェブサイトの閲覧やSMS(ショートメッセージサービス)が使えるようになった。 なお1990年代前半から中盤はPHS・携帯電話よりも料金が安価なポケットベル女子高生女子大生を中心に広く普及しており、これに対抗するためにポケットベルのフリーメッセージ機能に相当するSMS機能を追加したという意味あいもあった。そして、1997年に携帯電話の各キャリアがSMSサービスに標準対応したモデルを市場に投入し始めると、大学生以上の個人ユーザーが急速にポケットベル離れを起こし、携帯電話がポケットベルに取って代わるのに大きな役割を果たした。

PHSでは1996年4月にDDIセルラー(現KDDI沖縄セルラー電話)により「たのしメール」の名称で、携帯電話では1997年6月にNTTドコモのデジタルmova(第2世代デジタル方式)のサービス開始により「ショートメール」の名称でSMSサービスが始まった。

このメールサービスは、電話番号だけでメールを送受信できるSMS(サービス名はショートメールCメールスカイメールMMSS!メール・ライトメール・Pメール・きゃらトーク・きゃらメール・Aメール・プチメール・セルラー文字サービス・たのしメール等)だった。 しかし同一キャリアの契約者間でしかメールを送受信できないという大きな欠点があり、キャリアメールが普及した後の2011年7月にNTTドコモKDDI沖縄セルラー電話・ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)・イーアクセス(現ワイモバイル)が相互接続を開始するまで、他のキャリアの契約者にSMSを送ることができなかった。 またパケット通信ではなく回線交換方式で通信するため1通(全角70文字まで)送信するごとに3.15円が請求される、メッセージセンターの保存期間 72時間を過ぎるとメールが自動消去される、他キャリアの契約者宛に絵文字が入ったメールを送信すると、対応する絵文字がない場合は見た目は似ているが意味がやや異なる絵文字に変わる・〓に置き換わる・絵文字が削除される(のちに文字に置き換える方式に変更)[2]、他キャリアの契約者宛にSMSを送ると届くまで時間がかかる、インターネットと接続していないため電子メールの送受信ができない(のちに対応)などの欠点が多かった[3]

その後、1999年から各社で携帯電話のインターネット接続サービスが始まり、それに伴い電子メールが使えるキャリアメール(サービス名は「iモードメール」(独自規格)・「EZwebメール」(独自規格を経て、現在はMMS化)・「J-スカイメール」(のちに「Vodafone live!メール」に改称しMMS化、現「S!メール」))が始まった。 しかし当時はパケット通信料が従量制で、なおかつ高額であったため、親に携帯電話代を支払ってもらっている中高生は通信費を抑えるためにワン切りをメール代わりに使う者もいた。 しかし2000年代半ばにパケット定額制の料金プランが定着したことをきっかけに、送受信に追加料金がかからないキャリアメールは中高生にも広く普及するようになった。

なお2010年代半ばから仮想移動体通信事業者(MVNO、いわゆる格安SIM)が普及しはじめたが、移動体通信事業者(MNO、いわゆる大手通信キャリア)は仮想移動体通信事業者に対して音声通話機能・データ通信機能・SMSなどの基本的な通信サービスを貸し出す義務はあるものの、MMS(マルチメディアメッセージングサービス)・キャリアメールや、加入者管理装置(HLR/HSS)、エリアメール緊急速報メールなどの付加サービスを貸し出す義務はない。 このため移動体通信事業者は、仮想移動体通信事業者に対してキャリアメールサービスを提供するための設備を貸し出していない(ディズニー・モバイルUQ mobileを除く)。 このため移動体通信事業者は、契約者にキャリアメールの代替として通常の電子メールアドレス(いわゆるPCメール)を別途提供することが多い。

キャリアメールと電子メールの違い[編集]

キャリアメールでの新着メールの通知は、キャリアが携帯電話の音声通話回線の制御信号を使って特殊なSMSを携帯電話に一方的に送ることによって実現している。このため新着メールがあることを即座に知ることができ、また携帯電話の待ち受けの仕組みを使っているため電池の消耗には大きな影響はない。なお特殊なSMSで送信される情報は新着メールの有無・タイトルだけであり、メールの本文は携帯電話側でデータ通信回線を使用して取得する必要がある(機種によっては、本文の自動受信の可否を設定することができる)。 欠点は、キャリアが新着メールの通知を一方的に送る仕組みのため、携帯電話の電源が入っていなかったり、電波の受信状況が悪い場所にいる場合は、携帯電話側がセンターに新着メールの問合せをしないと新着メールに気づかない(機種によっては、電源を入れた際・圏外から復帰した際・一定時間ごとに、自動で問合せる機能がある)。このため次の新着メールが届いた際に、携帯電話側がセンターに問い合わせた時点で、前にも新着メールがあったことに気づくなどの欠点がある。

また迷惑メール対策は携帯電話に特化されており、キャリアメール以外からのメールの受信拒否・URL付きメールの受信拒否・メールアドレスのなりすまし対策(SPF認証)・大手キャリア間でのブラックリスト共有などの対策を行っている。

一方、電子メール(いわゆるPCメール)の場合は、通常は新着メールのリアルタイム通知機能はない。 このため、インターネット回線を使って疑似的にリアルタイム通知を実現する「プッシュ」(IMAP4のIDLE機能[4]・Microsoft Exchange ActiveSync[5])等のように、常にメールサーバと通信状態にしておく方法)や、「フェッチ」(一定時間ごとに、メールサーバに新着メールの照会を繰り返す方法)等のような技術を使用する必要がある。 プッシュ型の欠点は、常にメールサーバと通信状態であるためパケット通信料がかかり、携帯電話の電池の消耗が早くなり、また通信状態が悪いと通知ができない。またこの技術を採用している事業者は少ない。 フェッチ型の欠点は、メールサーバに照会をするたびにパケット通信料がかかり、電池の消耗がやや早くなり、また前の照会と次の照会の合間に届いた新着メールを即座に知ることができず、通信状態が悪いと通知ができない。

迷惑メール対策については事業者によって様々で、パソコン向けとほぼ同じものを提供するところもあれば、キャリアメールと同等(若干劣る)の対策を提供するところもある。

サービス名[編集]

プッシュメールの国際規格としてマルチメディアメッセージングサービス(MMS)があるが、携帯電話のキャリアでは、2013年現在ドコモのみ対応していない。

携帯電話のインターネットサービスに加入すると、事業者が設定するドメイン名がついたメールアドレス(~@docomo.ne.jp、~@ezweb.ne.jp、~@softbank.ne.jp 、~@ymobile.ne.jp、~@uqmobile.jpなど)が付与される。

歴史[編集]

1990年代後半に携帯電話向けのインターネットサービスと共に開始され、絵文字デコメール写メールなど、パソコン向けの電子メールとは異なる携帯電話に特化した独自の発展を遂げた。契約した携帯電話端末でしか送受信できないことや、文字数・添付ファイルの種類や容量など制限が多いが、パケット通信料金の従量制が一般的であること、携帯電話では長文を入力しにくいことなどを考慮すると妥当なシステムであると言える。

2000年代末期にスマートフォンの普及が始まり、キャリアメールへの対応に問題が生じる場合があった。またスマートフォンでは、GmailYahoo!メールなどのパソコン向けの電子メールサービスでもIMAP方式でプッシュ型受信が可能であることや、SNSを使ったコミュニケーションが普及したことにより、2010年代からキャリアメールへの需要は薄れている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ キャリアメール”. IT用語辞典バイナリ. 2012年10月6日閲覧。
  2. ^ 携帯6社、キャリアメールとSMSの絵文字を共通化『ITmedia Mobile』アイティメディア、2014年4月24日
  3. ^ 他社の携帯電話へもメッセージ送受信可能に--絵文字は?料金やサービス内容まとめ]」『CNET Japan』朝日インタラクティブ、2011年7月13日
  4. ^ RFC 2177「IMAP4 IDLE command」
  5. ^ Microsoft TechNet「Exchange ActiveSync