キャリアメール

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キャリアメール(carrier mail, 和製英語)とは、移動体通信事業者(通信キャリア)が携帯電話端末向けに提供する電子メールサービスの総称である[1]携帯メールとも呼ばれる。

概要[編集]

第2世代携帯電話の時代になって、日本では、PHS,PDC,CDMAと規格が並立した。日本の外では、ほとんどがGSMかCDMAだったので2種のSMS(ショートメッセージ・サービス)しか広まらず、CDMA-GSMのSMSゲートウェイが開発されたので、国や通信方式が異なっても、SMSのやりとりに問題は発生しなかった。日本でも、各社でSMS相当のショートメール・サービスが行われたが、それらの実装は各社ごとに異なり、相互接続の為のゲートウェイも開発されなかった。この為、日本のショートメール・サービスでは、異なる国内携帯事業者の利用者へメッセージを送れない、ということになった。そこで、各社はユーザーを縛りつけるという利点もあるので、自社ドメインをメールアドレスとしたeメール・サービスを携帯電話ネットワークの上に実装した。これらのメッセージサービスは、のちに、キャリアメールと呼ばれるようになった。第3世代携帯電話の時代になって、三大事業者が世界標準のエアインタフェースとデファクトスタンダードのSMSを導入しても、国内事業者間では、SMSが相互に送れないという異様な状態は、2011年7月にNTTドコモKDDI沖縄セルラー電話・ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)・イーアクセス(現ワイモバイル)が相互接続を開始するまで解消されなかった。この間、日本での事業者をまたいでのメッセージ・サービスは、キャリアメールによって行われていた。キャリアメールは、インターネットに接続しているので、事業者間配送はインターネットが行うので、配送に問題はなかった。

第3世代携帯電話(3G)の時代になって、イメージや動画を送れるメッセージ・サービスとしてMMSが世界標準となると、機能的に競合するキャリアメール・サービス(iモードメール.EZwebメール,スカイメール)を抱えていた日本の事業者は、あとから来た世界標準MMSへの対応を迫られることになった。ボーダフォンが、J-Phoneを買収すると、同社は、3Gでは世界共通サービス、Vodafone Live!の一環としてMMSを導入し、スカイメールはフェードアウトすることになった。auについても、ボーダフォンに遅れてMMSを採用した。

なお2011年6月には携帯電話向けSNSインスタントメッセンジャーの両方の性質を持つLINEが登場し、2014年7月には日本国内の利用者数が5,200万人を超える[2]など急成長。若者をはじめとして30・40代にもコミュニケーション手段としてLINEを使用する動きが広がり、キャリアメールの利用が減っていった[3]

キャリアメールの新着通知方法[編集]

キャリアメールは、前述のように日本の事業者が、インターネット・メール(RFC821,RFC822)の仕様を独自加工して携帯電話ネットワークの上に実装したものである。インターネット・メールは、有線接続の繋ぎっぱなしの接続を前提としていたので、そのままでは、メールの新着通知などでは、携帯電話には適していない。そこで、各社とも、新着通知は、特殊な符号化されたショートメッセージ(SMS)を端末に送ることで、実現していた。この方式は、後にMMSでも踏襲されることになる。SMSの配信センターであるSMSCは、事業者が管理しており、キャリアメールは事業者所有ドメインと事業者管理のメールサーバーを使用しているので、なにも問題はなかった。

一方、事業者所有ドメインでないメールアドレスでも、携帯電話で新着通知を受けたいという要望は、当然あったので、この目的の為に、各種のプッシュ型電子メールサービスが開発された。オープン・モバイル・アライアンス(OMA)による標準仕様も規定されたが、標準化されるのが遅すぎて、先に各社独自の実装が広まってしまった。実装方法には、いろいろバリエーションがあるが、基本的には、SMSを利用するものと利用しないものである。日本では、携帯電話事業者がSMSCの外部利用に消極的なことや多くの消費者がキャリアメールで問題を感じていなかった為、OMA仕様プッシュ型電子メールやSMSを利用したプッシュ型電子メールは、あまり普及していない。

サービス名[編集]


携帯電話のインターネットサービスに加入すると、事業者が設定するドメイン名がついたメールアドレス(~@docomo.ne.jp、~@ezweb.ne.jp、~@softbank.ne.jp 、~@ymobile.ne.jp、~@uqmobile.jpなど)が付与される。

迷惑メール対策[編集]

当初は、携帯電話事業者は、SMSと同様にメールアドレスのアカウント名部分に電話番号を用いていた。この規則性が仇となり、またインターネットから発信される電子メールの送信コストは非常に安いことから、2001年頃には迷惑メールが激増。迷惑メールの大量受信によってメールボックスがあふれたり、存在しないメールアドレスへの大量送信とバウンスメールにより通信回線が輻輳し、またサーバ処理能力を超えてしまったことでサービスが停止したりメール配送が遅延したことで、訴訟になったり[4]逮捕される事態も起きている[5]。また利用者が望まない内容のメールであることや、昼夜を問わないメールの受信などにより苦情が相次いで、社会問題になったこともあり、以下のような迷惑メール対策が取られるようになった[6][7][8][9]。 ただ、様々対策を行っているにもかかわらず、迷惑メールの完全な排除は難しく、根本的な解決には至らないのが現状である。

初期メールアドレスのランダム化[編集]

初期値として使用していた電話番号を使用したメールアドレスをやめ、ランダムな英数字(後で任意のアカウント名に変更可能)に変更することで迷惑メールの到達率を下げ、悪質事業者に送信をあきらめさせることを意図した。なおauでは最初から任意のアカウント名を決められる仕組みだったため、これらの対策は取る必要がなかったが、Cメール(SMS)の「Eメールお知らせ機能」が悪用されたため、2001年12月に「Eメールお知らせ機能」自体を廃止した。

フィルタリング機能[編集]

自動生成されたランダムなメールアドレス・ありがちなパターンを組み合わせたメールアドレスにも迷惑メールが送信され始め、また送信者のメールアドレスを詐称してフィルタリングをかいくぐろうとする事例が増えてきたことから、以下のような対策が行われている[10]

  • 携帯・PHS以外の受信拒否
  • なりすましメール拒否(送信ドメイン認証Sender ID英語版SPF)など)
  • URL付きメールの受信拒否
  • ドメイン・アドレス指定受信
  • ドメイン・アドレス指定拒否
  • 学習型迷惑メールフィルタ
  • アドレス帳サービスに未登録のメールアドレスからの受信拒否
  • 大量送信者からの受信拒否(ドコモのみ)
  • HTMLメールの受信拒否(auのみ)
  • 未承諾広告拒否(Y!mobileのみ)

宛先不明メールが大量に含まれる場合はすべてのメールが受信拒否されたり、大量送信者からのメールは拒否されたり、場合によってはバウンスメールすら返ってこないなどの対策も取られている[11][12][13]

また指定された条件に従い、メールを自動でフォルダ分け・削除する機能を持った携帯電話端末もある。

利用停止・送信数制限[編集]

以上の対策が功を奏するようになった2003年頃から、携帯電話とパソコンを接続して、携帯電話から大量の迷惑メールを送信する悪質事業者が現れた。 そこでパソコンとの接続はパケット定額制の対象外にしたり、パソコンとの接続機能を削除した機種を発売する対策を取った。しかし携帯電話の基板に直接配線を追加して、パソコンから携帯電話を制御する悪質事業者もあらわれた。 そのため各事業者は迷惑メール申告窓口を設置し、利用者から情報収集するとともに、悪質事業者が使用する携帯電話を利用停止・契約解除し、新規契約も拒否する対策を取った。

これらの対策をとっても、プリペイド式携帯電話・名義貸しでの新規契約・飛ばし携帯などによって迷惑メールの送信が続いたため、2003年末から各事業者で一定時間内での最大送信数制限を実施。これらの対策により、携帯電話から発信される迷惑メールは激減した。

また迷惑メール申告窓口からの情報や、悪質な利用者の情報も各携帯電話事業者で共有している[14][15]

メールヘッダ閲覧サービス[編集]

キャリアメールではデータ容量の削減・通信速度の高速化を目的に、受信時には必要最低限度のメールヘッダしか閲覧できなかった。 そのため利用者が迷惑メールの送信先を判別しやすくするため、メールヘッダ表示サービスを開始した。

OP25B[編集]

動的IPアドレスからのメールを抑止するOutbound Port 25 Blocking(OP25B)を講じることで携帯電話から発信される迷惑メール(パソコン向けを含む)を抑制するとともに、日本国内のISPにも対策を呼びかけることでインターネットから発信される迷惑メールの送信抑制を図っている。

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ キャリアメール”. IT用語辞典バイナリ. 2012年10月6日閲覧。
  2. ^ 高橋暁子「高橋暁子の意外と知らない!? 業界ランキング 第41回 日本人の40%がLINEを常用しているが世界はWhatsAppとFacebook二強」『ASCII.jp』 KADOKAWA、2015年6月15日
  3. ^ 高橋暁子「深読みチャンネル なぜ? LINEからも逃げ出し始めた若者たち」『読売新聞(YOMIURI ONLINE)』 読売新聞社、2018年1月18日
  4. ^ 辛島睦「第17回 迷惑メール防止2法 広告宣伝用メールに対する規制を知る」『日経xTECH』 日経BP、2008年4月10日
  5. ^ 三柳英樹「警視庁、迷惑メール送信の男性を逮捕」『INTERNET Watch』ITmedia、2008年2月15日
  6. ^ いちばゆみ「iモードの迷惑メール対策を斬る」『ITmedia mobile』 ITmedia、2001年7月2日
  7. ^ KDDI株式会社 本間輝彰「ケータイメールにおける迷惑メールについて 講演資料」『IAjapan 迷惑メール対策カンファレンス』 インターネット協会、2005年5月10日
  8. ^ KDDI株式会社 本間輝彰「運用情報 経験談 携帯電話における迷惑メールとの戦い」『有害情報対策ポータルサイト 迷惑メール対策編』 インターネット協会 迷惑メール対策委員会、2006年1月
  9. ^ 「迷惑メール対策に関するアンケート調査結果 [参考]〈ボーダフォンの主な迷惑メール対策〉」『ソフトバンク』 ボーダフォン、2006年2月14日
  10. ^ 「迷惑メール対策 ケータイ会社別 迷惑メールフィルター 3社一覧表(ケータイ) 」『迷惑メール相談センター』 日本データ通信協会
  11. ^ サービス・機能 同報メールを大量に送信されるお客様へ」『NTTドコモ』 NTTドコモ
  12. ^ 「サービス・機能 auメール(@au.com/@ezweb.ne.jp)へメール送信する際の注意事項」『au』 KDDI
  13. ^ 「モバイル メール送受信の際の注意事項」『ソフトバンク』 ソフトバンク
  14. ^ 電気通信事業者協会「迷惑メール等送信行為に係る携帯電話・PHS加入者情報の交換について」『一般社団法人電気通信事業者協会』 電気通信事業者協会、2005年10月26日
  15. ^ 電気通信事業者協会・NTTドコモ・KDDI・沖縄セルラー電話・ソフトバンク・ウォルト ディズニー ジャパン「プレスリリース 迷惑Eメールに関する申告情報の取扱いについて」『一般社団法人電気通信事業者協会』電気通信事業者協会 、2016年9月7日