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オルンシュタイン=ウーレンベック過程(オルンシュタイン=ウーレンベックかてい、英: Ornstein–Uhlenbeck process)は、レナード・オルンシュタインとジョージ・ウーレンベックの名にちなんだ確率過程である。平均回帰過程(へいきんかいきかてい)とも呼ばれる。
オルンシュタイン=ウーレンベック過程は、以下のような確率微分方程式で与えられる確率過程{rt}である。
ここで、θ, μ, σ はパラメータであり、Wt はウィーナー過程を表す。
オルンシュタイン=ウーレンベック過程は、離散時間AR(1)過程の連続時間バージョンであると言える。
3つの異なるオルンシュタイン=ウーレンベック過程の標本路。
θ = 1, μ = 1.2, σ = 0.3:
青: 初期値
r0 = 0 (a.s.)
緑: 初期値
r0 = 2 (a.s.)
赤: 初期値が正規分布に従うと仮定(過程は不変測度を持つことになる)
この方程式は定数変化法を用いて解くことができる。関数
に対して伊藤の補題を適用し、以下の式を得る。

これを0からtまで積分することにより、次の式が得られる。

これを変形し、以下のように解が求められる。

が定数であると仮定するとき、
の1次モーメントは以下のように計算できる。

とおくと、伊藤積分の等長性
[1]
を用いて次のような共分散関数が得られる。
![{\displaystyle {\begin{aligned}\operatorname {cov} (r_{s},r_{t})&=\mathrm {E} [(r_{s}-\mathrm {E} [r_{s}])(r_{t}-\mathrm {E} [r_{t}])]\\&=\mathrm {E} \left[\int _{0}^{s}\sigma e^{\theta (u-s)}\,dW_{u}\int _{0}^{t}\sigma e^{\theta (v-t)}\,dW_{v}\right]\\&=\sigma ^{2}e^{-\theta (s+t)}\mathrm {E} \left[\int _{0}^{s}e^{\theta u}\,dW_{u}\int _{0}^{t}e^{\theta v}\,dW_{v}\right]\\&={\frac {\sigma ^{2}}{2\theta }}\,e^{-\theta (s+t)}(e^{2\theta (s\wedge t)}-1)\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/e2da1f32ba7d871c09bb7970c628e34c4fbb609f)
別表現1[編集]
オルンシュタイン=ウーレンベック過程は、スケールを変え時間シフトをしたウィーナー過程としても表現することが可能である(そして、しばしばその方が便利である)。初期値条件の無い場合、

となり、また
が与えられた場合は以下のようになる。

オルンシュタイン=ウーレンベック過程は、有界な分散を持つガウス過程の例であり、ウィーナー過程とは対照的に定常確率分布を許している。
この過程の時間積分は、1/fパワースペクトルを持つノイズを生成するために用いることができる。
別表現2[編集]
B をブラウン運動とすると、

はオルンシュタイン=ウーレンベック過程である。Utは以下の微分方程式の解である。

参考文献[編集]
- G. E. Uhlenbeck and L. S. Ornstein, "On the theory of Brownian Motion", Phys. Rev. 36:823-41, 1930.
- D. T. Gillespie, "Exact numerical simulation of the Ornstein-Uhlenbeck process and its integral", Phys. Rev. E 54:2084-91, 1996.
関連項目[編集]
一般化[編集]
オルンシュタイン=ウーレンベック過程は、背後過程を(ウィーナー過程より一般的な)レヴィ過程とした拡張が可能である。このような確率過程については、オーレ・バーンドルフ=ニールセンらによって研究されている。
正確にはgeneralised Ornstein-Uhlenbeck過程と呼ばれるが、その由来は形が似ているだけでなく、generalised Langevin方程式(generalised Black-Scholes方程式<ブラック・ショールズのレヴィ過程版>とLangevin方程式のレヴィ過程版を合体させたもの)の解になるのではないかと推理されていた。しかし、近年、それらが解の関係にはならないことが証明されている。その証明の際には、generalised Langevin方程式の解が与えられ、YORの本によればセミマルチンゲールの場合に一般化された解も与えられている。
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伊藤積分の等長性とは、伊藤積分において、一般的に
![{\displaystyle E\left[\left(\int _{0}^{t}X_{\tau }\,dB_{\tau }\right)^{2}\right]=E\left[\int _{0}^{t}X_{\tau }^{2}\,d\tau \right]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/fff1f7bfb81ec6db6f18d2b2f4febaf2a952748c)
が成り立つことをいう。