イエーガーマイスター

イエーガーマイスター(Jägermeister)とは、ドイツ産のリキュール銘柄である。アニスや甘草など、実に56種類ものハーブが使われている。アルコール度数は35度、エキス分は15.7%、濃い赤色をしている。片仮名表記では、イェーガーマイスター、イエーガマイスター、イェーガマイスターなどと書かれることもあるが、本稿では、以降イエーガーマイスターの表記で統一する。
概説[編集]
イエーガーマイスターは、ドイツのブラウンシュヴァイク市から13km南のヴォルフェンビュッテル(Wolfenbüttel)にある、マースト・イエーガーマイスター社(Mast-Jägermeister SE)が製造。同社は1878年に設立されたが、このリキュールのレシピを確立したのが1934年で、実際に販売し始めたのは1935年である[1]。
イエーガーマイスターは、ハーブ類、果物類、草根木皮など、56種類の材料を使用して製造されていると言われている[2][1]。この56種の中には、アニス、カモミール、キャロブ、ゲンチアナ、サフラン、シナモン、フェンネル、マテ、ミント、没薬、ラベンダーなどが含まれているものとの推察[1]もある。製造工程の中には、これらの材料を蒸留酒に一定期間浸漬し、そうしてできた混成酒を蒸留した後、オーク製の樽で9ヶ月以上熟成するという工程が存在するとされる。ただし、製法は完全には公開されていないため、詳細は不明である。
出来上がったイエーガーマイスターの色は深紅なのだが、ボトルが緑色であるため(赤と緑は補色の関係にあるため)、ボトルに入っている状態では黒っぽく見える。このボトルのラベルには2018年現在、雄のシカが描かれている。リキュール名の「イエーガーマイスター」というのは、「狩人の守護聖人」を意味しており、これは、7〜8世紀頃のドイツ辺りで、牡鹿の角に精霊[注釈 1]を見た人物が、後に聖職者になったという物語に由来している[2]。またイエーガーマイスター社の米国版公式ホームページによれば、猟師ヒューベルト(Saint Hubert)があるとき、角の間に十字架が光る強大な牡鹿の姿を見たことで、自然を大いに尊重するようになり、さらに猟師の守護聖人として知られるようになったことに由来しているという。レシピ考案者のクルト・マスト(Curt Mast)がこの真の「ハンティングマスター(ドイツ語でイエーガーマイスター)」に敬意を表し、牡鹿の紋章を採用した[3]と解説されている。ちなみに、ラベルにシカの絵がある上に、液色が深紅であるため、シカの血液が入っているのではないかとの噂もあったが、これは事実ではない。
このイエーガーマイスターは、ドイツ本国での消費はもとより、輸出されて世界各地で消費される。特に、アメリカでの人気が高いことで知られている[4][1]。1980年代半ばにニューオリンズで評判になった辺りから、アメリカでの人気に火がついたとの説がある[1]。
なおドイツ語圏にはオーストリア発祥のイエーガーテー(狩人のお茶)というアルコール飲料があるが、これは紅茶とラムを混ぜたホットパンチであり、イエーガーマイスターとは別種のお酒である。
日本では2010年代に入ってテキーラに代わってクラブで流行し始めた[5]。
飲用法・利用法[編集]
イエーガーマイスターは、そのまま、つまり、ストレートで飲まれる他に、カクテルの材料などとしても利用される。
ストレート[編集]
ヨーロッパでは、イエーガーマイスターをボトルごと冷やして、それをストレートで飲むのが一般的な飲み方である[6]。
なお、ドイツでは、イエーガーマイスターを薬酒と考える人もいると言う。薬酒として扱う場合も、基本的にはストレートで飲まれる。
カクテル[編集]
- イエーガー・オレンジ
- イエーガーマイスター + オレンジ・ジュース
- いわゆる、イエーガーマイスターのオレンジ・ジュース割り。飲む人の好みや、作るグラスに合わせて、適量を使用する。氷を入れたグラスに、ビルドで作られる。
- ただし、氷を入れたグラスにオレンジ・ジュースを注ぎ、その上にイエーガーマイスターをフロートさせる場合もある[7]。
- イエーガー・トニック
- イエーガーマイスター + トニック・ウォーター
- いわゆる、イエーガーマイスターのトニック・ウォーター割り。飲む人の好みや、作るグラスに合わせて、適量を使用する。氷を入れたグラスに、ビルドで作られる。
- なお、グラスにレモンを飾る例も見られる[8]。
- イエーガー・ボム
- イエーガーマイスター + レッド・ブル
- いわゆる、イエーガーマイスターのレッド・ブル割り。飲む人の好みや、作るグラスに合わせて、適量を使用する。氷を入れたグラスに、ビルドで作られる。
- シルバー・ストリーク
- イエーガーマイスター + ビーフィーター(ドライ・ジン)
- ただし、シルバー・ストリークには幾つかレシピが存在し、イエーガーマイスターを使わないシルバー・ストリークも存在する。詳しくは、「シルバー・ブレット」の記事の「バリエーション」の節を参照のこと。
その他の利用法[編集]
パウンドケーキに、少量のイエーガーマイスターを使用する例も見られる[8]。つまり、イエーガーマイスターによる香味付けを狙った利用法である。
レーシングカー[編集]

イエーガーマイスターの製造元である、マースト・イエーガーマイスター社(Mast-Jägermeister SE)は、ドイツ本国で長年レーシングチームのスポンサーをつとめており、オレンジ色の派手な車体塗装が有名である。1976年に開催されたドイツレーシングカー選手権の第1・2戦ではイエーガーマイスター色をまとったポルシェ・934 が優勝、その後もポルシェ・935やBMW・M3、アルファロメオ・155といったレースカーのスポンサーとして活躍した。
脚注[編集]
出典[編集]
- ^ a b c d e 『リキュールブック』 p.22
- ^ a b 『リキュールとカクテルの事典』 p.80
- ^ History|Jägermesiter 2021-02-07 accessed
- ^ 『リキュールとカクテルの事典』 p.70
- ^ パリピの新定番リキュール「コカレロ」なぜ人気?ショットトレンドも「インスタ映え」 | Business Insider Japan
- ^ 『リキュールとカクテルの事典』 p.80
- ^ 『リキュールとカクテルの事典』 p.81
- ^ a b 『リキュールブック』 p.23
注釈[編集]
- ^ 文脈と当該地域から考えると「聖霊」の誤植である可能性も否定できない。無論、「精霊」で正しい可能性もある。ひとまず、この部分の出典である「成美堂出版 編集 『リキュールとカクテルの事典』 p.80 成美堂出版 2001年8月20日発行 ISBN 4-415-00835-6」において、「精霊」と表記されているので、その表記に従った。
主な参考文献[編集]
- 福西 英三 『リキュールブック』 柴田書店 1997年7月1日発行 ISBN 4-388-05803-3
- 成美堂出版 編集 『リキュールとカクテルの事典』 成美堂出版 2001年8月20日発行 ISBN 4-415-00835-6