雑炊
雑炊(ぞうすい)は、米飯にだし汁と醤油や味噌などの調味料を加えて、肉類、魚介類、キノコ類や野菜などとともに再度炊き上げた料理。地域によってはおじやとも呼ばれる。鍋料理の残り汁にあらためて米飯を加え再加熱したものも雑炊と呼ばれる。その場合多くは仕上げに溶き卵と刻みネギが加えられる。
古くは「増水」と表記され、米飯の量を水で増やすという意味合いが強かったと思われる。この増水に他の具材を加えるようになってから「雑炊」の文字があてられるようになったようである。
米飯の保温や再加熱が容易でなかった時代には、冷や飯の再利用方法のひとつとして家庭でも頻繁に作られていた。現在では主として鍋料理の締めや、体調不良時の栄養補給として粥と同じように用いられることが多い。
種類
- まる雑炊-主にすっぽん鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
- ふぐ雑炊-主にふぐ鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
- とり雑炊-主に水炊き鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
- かに雑炊-主にかに鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
- すきやき雑炊-主にすきやき鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
- しゃぶしゃぶ雑炊-主にしゃぶしゃぶ鍋の後に残る出汁に飯を入れ、炊いたもの。
家庭料理として作る場合には、鰹だしやめんつゆ、うま味調味料などが用いられることが多い。
また、上記以外にも中華スープやコンソメ、おでんのつゆなどさまざまな出汁が利用される。
おじや
語源
「おじや」の語源は諸説あるが、南蛮文化やスペイン料理、ポルトガル料理の研究家によれば、スペイン語で「鍋」、またそれから転じて「鍋料理」を意味するオジャ(olla)に由来するとされる[1][2]。16世紀末期から17世紀初頭の南蛮貿易及びキリスト教布教活動の際に、関西以西ではイエズス会の修道士、また江戸にはフランシスコ会の修道士によって、スペイン風の米料理を指す言葉として伝わった(いずれもアンダルシア、セビリア出身の宣教師の可能性が高いとされている)。 当時の外来語の中には天麩羅や金平糖など、後に漢字が充てられて日本語化したものも多いが、おじやは、カステラ等と同様に漢字が充てられず発音のままに名前のみが残り、日本にもともと存在した料理である雑炊と混同、同化されていったものと考えられる。
オジャは、スペイン語圏の他、ポルトガル、チュニジアにも同様、同名の料理(法)があり、伝統的な鍋料理、または鍋そのものを意味し、現代では圧力釜(料理)も、さす場合がある。スペインでは「オジャ デ 〜」の他、「〜 カルドソ」「アロス 〜」「アロス アンブ 〜」という名称で同様のお米入りスープ仕立ての料理がある。
なお、一般的には「雑炊」を意味する女房言葉として認識されており、「じやじや」という煮える時の音からされているが、「おじや」のはっきりした語源は不明である。
おじやと雑炊の違い
おじやは、雑炊を意味する女房言葉として用いられる例が多いが、地域や家庭によっては、雑炊とおじやとが別種のものとして認識されることもある。ただし、その区別は広く共通のものとはいい難い。以下はその例。
- 調理にあたり、米飯をいったん水で洗い、表面の粘りをとってから用いることで、さらっと仕上げたものが雑炊。そうでないのがおじや。
- 汁とともに温めるだけ、または水分が飛ぶほどには煮込まず、米飯の粒の形を残すものが雑炊。煮込んで水分を飛ばし、米飯の粒の形をさほど残さないのがおじや。
- 味噌や醤油で味付けをしたものがおじやと呼び、雑炊は塩味または煮汁が白いものと認識している地域がある。その一方で塩味に限らず醤油味のものも雑炊と呼ぶ地域もある。
ジューシー
沖縄料理のジューシー(本来の方言名はジューシーメー)は雑炊(雑炊飯)の転訛であるとされる。ただし、生米から炊き上げる通常の炊き込みご飯も、水分の多い雑炊も共にジューシーと呼称される。厳密にいえば、炊き込みご飯はクファジューシー(固いジューシー)、雑炊はヤファラージューシー(柔らかいジューシー)と区別される。本土の炊き込みご飯との大きな違いは、濃厚な味付けでラードやマーガリンを大量に加える点である。具材は豚肉の脂身、ヒジキ、ニンジンなどが定番だが、特徴的なものにはフーチバー(ヨモギの葉)、カンダバー(イモの葉)、チンヌク(サトイモ)などがある。
関連項目
- 茶漬け 米飯に茶、湯、またはだし汁をかけたもの。
- 粥 洗った生米を多量の水で炊いたもの。
- 鍋料理 締めによく使われる。
- リゾット 生米を炒めてからブイヨンを加えて炊いたイタリア料理。
- クッパ スープに米飯を入れて食す韓国料理。