業法
業法(ぎょうほう)とは、特定の業種の営業に関する規制の条項を含む法律を指す。厳密には法令用語ではなく、講学上の用語ないしは俗語である。この種の法律には「○○業法」という題名のものが多いことに由来する用語と思われる。
日本国憲法第22条第1項は、「公共の福祉に反しない限り」という留保を付けて、職業選択の自由を保障している。職業選択の自由には、選択した職業を遂行する自由、すなわち、営業の自由が含まれる[1]。業法は、公共の安全や秩序の維持(消極目的)、経済的弱者の保護(積極目的)といった公共の福祉の目的から特定業種の営業の自由に種々の制限を加えている。
具体的には、業法は、業者に対して行政庁の許可または登録を受けることを義務付けたり(許可制、登録制)、業者に対して行政庁への届出を義務付けたり(届出制)、業務に関する禁止行為を定めたり、業者の約款に行政庁の認可を要求したり、業者に対して有資格者(例えば、宅地建物取引業者の場合、宅地建物取引士)の配置を義務付けたり、行政庁に報告徴収、立入検査、業務改善命令などの権限を付与したりする条項を含むことがある。
主な業法
所管府省別。共管される法律は重複掲載。府省は建制順、法律は題名の五十音順。
医師の業務や弁護士の業務は営利目的のものではないと解されているので、医師法や弁護士法は業法のうちに数えていない。医師以外の医療関係専門職に関する法律や弁護士以外の士業に関する法律についても同様。
- 内閣府
- インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律
- 確定拠出年金法(確定拠出年金運営管理業)(厚生労働省・内閣府の共管)
- 貸金業法
- 銀行法
- 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
- 金融商品取引法(金融商品取引業など)
- 警備業法
- 古物営業法
- 質屋営業法
- 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(内閣府・国土交通省の共管)
- 社債、株式等の振替に関する法律(振替業)(内閣府・法務省・財務省の共管)
- 商品投資に係る事業の規制に関する法律(商品投資顧問業)(内閣府・農林水産省・経済産業省の共管)
- 信託業法
- 探偵業の業務の適正化に関する法律
- 長期信用銀行法
- 電子記録債権法(電子債権記録業)(法務省・内閣府の共管)
- 風俗営業法
- 不動産特定共同事業法(内閣府・国土交通省の共管)
- 保険業法
- 無尽業法
- 総務省
- 電気通信事業法
- 放送法
- 民間事業者による信書の送達に関する法律(一般信書便事業など)
- 郵便法
- 法務省
- 債権管理回収業に関する特別措置法
- 社債、株式等の振替に関する法律(振替業)(内閣府・法務省・財務省の共管)
- 電子記録債権法(電子債権記録業)(法務省・内閣府の共管)
- 外務省
- なし
- 財務省
- 文部科学省
- 厚生労働省
- 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(採血業)
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(第一種特定化学物質の製造の事業など)(厚生労働省・経済産業省・環境省の共管)
- 確定拠出年金法(確定拠出年金運営管理業)(厚生労働省・内閣府の共管)
- クリーニング業法
- 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(建設業務有料職業紹介事業など)
- 興行場法(興行場営業)
- 公衆浴場法(浴場業)
- 港湾労働法(港湾労働者派遣事業)
- 職業安定法(有料職業紹介事業など)
- 食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律
- 食品衛生法(飲食店営業など)
- 水道法(水道事業)
- 船員職業安定法(船員職業紹介事業など)
- 美容師法
- 麻薬及び向精神薬取締法(麻薬輸入業など)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品の製造販売業など)
- 理容師法
- 旅館業法
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律
- 農林水産省
- 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律
- 卸売市場法(卸売業者、仲卸業者)
- 家畜商法
- 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(米穀出荷事業など)
- 商品投資に係る事業の規制に関する法律(商品投資顧問業)(内閣府・農林水産省・経済産業省の共管)
- 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料製造業など)
- 肥料取締法
- 遊漁船業の適正化に関する法律
- 養鶏振興法(種鶏業、ふ化業)
- 養蜂振興法(養蜂業など)
- 林業種苗法(生産事業など)
- 経済産業省
- アルコール事業法
- 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(液化石油ガス販売事業)
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(第一種特定化学物質の製造の事業など)(厚生労働省・経済産業省・環境省の共管)
- 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(製錬事業など)
- ガス事業法
- 火薬類取締法(火薬類製造業など)
- 揮発油等の品質の確保等に関する法律(揮発油販売業など)
- 計量法(特定計量器の製造事業など)
- 鉱業法
- 工業用水道事業法
- 航空機製造事業法
- 採石法(採石業)
- 砂利採取法(砂利採取業)(経済産業省・国土交通省の共管)
- 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(再資源化事業)(経済産業省・環境省の共管)
- 使用済自動車の再資源化等に関する法律(引取業など)(経済産業省・環境省の共管)
- 商品投資に係る事業の規制に関する法律(商品投資顧問業)(内閣府・農林水産省・経済産業省の共管)
- 深海底鉱業暫定措置法
- 水洗炭業に関する法律
- 石油需給適正化法
- 石油の備蓄の確保等に関する法律(石油精製業など)
- 石油パイプライン事業法(経済産業省・国土交通省の共管)
- 電気工事業の業務の適正化に関する法律
- 電気事業法
- 熱供給事業法
- 武器等製造法(武器製造事業)
- 国土交通省
- 屋外広告物法(屋外広告業)
- 海上運送法(一般旅客定期航路事業など)
- 貨物自動車運送事業法
- 貨物利用運送事業法
- 気象業務法(予報業務)
- 軌道法(運輸事業)
- 建設業法
- 航空法(航空運送事業)
- 港湾運送事業法
- 小型船造船業法
- 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律(内閣府・国土交通省の共管)
- 砂利採取法(砂利採取業)(経済産業省・国土交通省の共管)
- 石油パイプライン事業法(経済産業省・国土交通省の共管)
- 倉庫業法
- 造船法
- 測量法(測量業)
- 宅地建物取引業法
- 積立式宅地建物販売業法
- 鉄道事業法
- 道路運送車両法(自動車分解整備事業)
- 道路運送法(旅客自動車運送事業など)
- 内航海運業法
- 不動産特定共同事業法(内閣府・国土交通省の共管)
- 不動産の鑑定評価に関する法律(不動産鑑定業)
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理業)
- 旅行業法
- 環境省
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(第一種特定化学物質の製造の事業など)(厚生労働省・経済産業省・環境省の共管)
- 浄化槽法(浄化槽清掃業など)(環境省・国土交通省の共管)
- 使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(再資源化事業)(経済産業省・環境省の共管)
- 使用済自動車の再資源化等に関する法律(引取業など)(経済産業省・環境省の共管)
- 動物の愛護及び管理に関する法律(動物取扱業)
- 土壌汚染対策法(汚染土壌処理業)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(一般廃棄物処理業など)
- 防衛省
- なし
参考文献
- ^ 芦部信喜『憲法 新版 補訂版』(岩波書店、1999年、ISBN 4-00-000647-9)p. 201