ロサンゼルス市警察
ロサンゼルス市警察(ロサンゼルスしけいさつ、英: Los Angeles Police Department、略称:LAPD)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス市に本部を置く、アメリカ合衆国の警察である。日本ではロス市警とも呼ばれる。
概要
ロサンゼルス市警察は、カリフォルニア州ロサンゼルス市に本部を持つ。合議制警察委員会(日本の公安委員会に相当する組織)の管理下に設けられており、警察官約9,500人と職員約3,000人を擁す国内で3番目に大きな警察組織であり、日本の警視庁の4分の1ほどの人員数である[1]。ニューヨーク市警察は住民228人につき1人、シカゴ市警察は住民216人につき1人の割合で警察官を配置しているが、LA市警察は住民426人につき1人の割合であり、常に人員不足に悩まされている[1]。理由としては、ゴードン・ノースコット事件対応における失態(チェンジリング (2008年の映画)参照)や過去に起きた警察官の汚職事件、人種差別による暴動(ワッツ暴動やロス暴動)が問題となり「警察官は悪だ」とのイメージが定着したうえに、それを受けて隊員の資質向上のために採用基準を非常に厳格にしたのが要因とされる[1]。
アメリカでもニューヨークに並ぶ多人種が住む大都市、州であるため、職員の人種構成は様々である。現在では、白人がおよそ46%、ヒスパニック系が33%、アフリカ系が14%、アジア系および南太平洋諸国出身者が7%程である(2008年1月時点)[1]。
市警のモットーは”to protect and to serve”(保護と奉仕)で、パトロールカーの側面にも記されている。
アメリカ警察の特殊部隊であるSWATは、ロサンゼルス市警察が最初に組織したとされ、その練度の高さは随一であり、全米の警察で装備や戦術などが手本とされている。
かつて15年近く本部長を務めたウィリアム・パーカーに因んで「パーカーセンター」の別名で呼ばれ親しまれていた本部庁舎であるが、市役所南に建設された新庁舎(New Police Administration Building)へと2009年秋にその機能を移転した。
ロングビーチ出身のテリー・ハラ氏は、2009年に日系アメリカ人(3世)として、初めて警察本部長補佐/警視長に就任。ハラ警視長は、80年にロサンゼルス市警就職し、98年にナショナル大学を首席で卒業。同年、日系人初の警部に任命される。2013年に、小山田真が特別大使を務める南カリフォルニア日米協会会長に就任。
歴史
ロサンゼルス市警察は、カリフォルニア州ロサンゼルス市に、警察組織として1869年に創設された。
組織
警察委員会(Police Commission)
日本で言う公安委員会に相当する組織。5人の委員で編成され、一人が委員長(Comissioner President)、もう一人が副委員長(Comissioner Vice President)を担う。委員は警察官ではない。
警察長(Chief of Police)
日本の警視総監又は道府県警察本部長に相当する職。制服組の最高位。一名が担う。アメリカではキャリア制度がないため、巡査から市警本部長まで昇任することが可能である。
警察長官房(Staff Office of The Chief of Police)
警察長の職務を補佐する。
地域・交通局(Office of Operations)
地域・交通警察を担う部署。局長(Director、階級はAssistant Chief)の下に4管区と管区長。管区毎に1~2名の副管区長が置かれている。
セントラル管区
セントラル、ランパート、ホーレンベック、ノースイースト、ニュートンの各警察署とセントラル地区交通隊。
ウェスト管区
ウィルシャー、ハリウッド、ウェストロサンゼルス、オリンピック、パシフィックの各警察署と空港地域隊、ウェスト地区交通隊。
ヴァレー管区
ヴァンナイズ、ミッション、ノースハリウッド、フットヒル、デヴォンシャー、ウエストヴァレー、トパンガの各警察署とヴァレー地区交通隊。この管区のみ、副管区長は2人。
サウス管区
77丁目、サウスウェスト、ハーバー、サウスイーストの各警察署とサウス地区交通隊。またこの地区はストリートギャングが多いことから、管区長直轄のギャング・殺人事件特別捜査課(Criminal Gang and Homicide Division)が設置されている。
刑事・警備局(Office of Special Operations)
刑事部門と警備部門を擁する部署。各部で2名の副部長が各課・部隊を掌握する。
刑事部(Detective Bureau)
- 強盗殺人課(Robbery - Homicide Division)
- 科学捜査課(Scientific Investigation Division)
- 少年課(Juvenile Division)
- ギャング・麻薬捜査課(Gang and Narcotics Division)
- 捜査支援課(Detective Support & Vice Division)
- 経済犯罪課(Commercial Crimes Division)
警備部(Counter Terrorism and Special Operations Bureau)
テロ対策や重大事件対応など、警備や公安活動を行う部である。部長の下に次長2人が置かれている。
- 警備中隊(Metropolitan Division)
- 航空隊(Air Support Division)
- 緊急作戦課(Emergency Operations Division)
- 重大犯罪捜査課(Major Crimes Division)
- 緊急対応課(Emergency Service Division)
監察部(Professional Standards Bureau)
警察官の監察を行う部署。監察部長の階級はDeputy Chiefで、他局の管区長や部長と階級の上では同格だが、監察部は警察長直轄となっている点で異なる。よって部長は警察長に対し直接責任を負う。
監察部長直轄
- 特別行動課(Special Operations Division)
- 執行調査課(Force Investigation Division)
内務調査室(Internal Affairs Groups)
- 管理調査課(Administrative Investigations Division)
- 犯罪調査課(Criminal Investigation Division)
警務・通信局(Office of Administrative servive)
警務や通信を担う部局である。この部署は執行組織ではないため事務吏員の役職者が多い。
情報技術部(Information Technology Burau)
- 情報技術課(Information Technology Division)
管理部(Administrative Service Burau)
- 施設課(Facilities Management Division)
- 車両課(Motor Transport Division)
- 通信課(Communications Division)
- 記録課(Record and Identification Division)
人事教育部(Personnel and Training Burau)
- 人事課(Personnel Division)
- 募集採用課(Recruitment and Employment Division)
- 教育課(Training Division)
- 募集教育課(Recruit Training)
- 補助警察隊課(Reserve Office & Volunteer Section)
階級
階級名 | 記章 | 備考 |
---|---|---|
Chief of Police (COP) | 邦訳は警察本部長。警視総監に相当。市長とコミッショナーの賛成多数による任命制。学士号と12年以上の法執行官としての経験が必要。
日本の警察と違いキャリア制度がなく、巡査からの叩き上げで本部長まで昇進することができる。他警察組織から転職して来る場合も多い。 | |
Assistant Chief (Asst. CHF) | 邦訳は警察本部副本部長。警視監に相当。Chiefの直下に置かれ、Operation(運用)、Special Operation(捜査活動)、Administrative Service(管理)の三大Officeの責任者を担う階級。 | |
Deputy Chief II (Dep. CHF) | 邦訳は警察本部長補佐。警視長に相当。I、IIの2等級に分けられ、等級によって給与が変わる。役職は地域管区長や刑事部長など。 | |
Deputy Chief I (Dep. CHF) | ||
Commander (CMDR) | 邦訳は警視。地域管区の方面責任者などを担う。 | |
Captain III Captain II Captain I (Capt.) |
邦訳は警部。I、II、IIIの3つに分けられた等級によって、給与が変わる。役職はCapt.Ⅰで分署副長、Capt.Ⅲで分署長やメトロポリタンディビジョンの指揮官など。 | |
Lieutenant II Lieutenant I (Lt.) |
邦訳は 警部補。I、IIの2つに分けられた等級によって、給与が変わる。分署課長級。 | |
Sergeant II (Sgt.) / Detective III (Det.) | 邦訳では巡査部長、刑事であるが、Sgt.I、II及びDet.II、IIIの職責は日本の警部補に相当する。Sgt.はI、IIの2等級、Det.はI、II、IIIの3等級に分けられている。SGT I=DET II、SGT II=DET IIIである。 | |
Sergeant I (Sgt.) / Detective II (Det.) | ||
Detective I (Det.) | ||
Police Officer III / Police Officer III+1 / Senior Lead Officer (PO) | 邦訳は巡査。I、II、III、III+1の4等級に分けられ、等級によって給与が変わる。アカデミー期間中と配属から12ヶ月の計18ヶ月の新人期間が過ぎると自動的にIIに昇格する。IIとして3年が過ぎるとIIIへの昇格資格となり、IIIとなってさらに1年が過ぎると、Sgt.IあるいはDet.Iの昇進資格となる。 | |
Police Officer II (PO) | ||
Police Officer I (PO) |
ロサンゼルス市警察の警察官が主人公のテレビドラマ刑事コロンボの日本語翻訳版では、主人公「Lieutenant Columbo」を「コロンボ警部」に統一している。身分証の表記は「Lt. Frank Columbo A096824」。また実際の各階級の役職、役割、人員の構成比率などで較べた場合、ロサンゼルス市警察においては日本の警察では警視がもっとも近い階級となる。[2][3]。
武装
通常のパトロールカーにはショットガン(M870やM590等)とアサルトライフル(M16)が積まれており、白バイにすら銃床折り畳み型のショットガンが搭載されている。これは、1997年にノースハリウッドで起きたバンクオブアメリカ・ノースハリウッド支店強盗事件が要因である。この銀行強盗事件で、2人の銀行強盗は自動小銃(AK47等)と防弾チョッキで武装し、通報で駆け付けたLA市警の警察官約50人と銃撃戦を繰り広げたのである。しかし、当時は一般のパトカーにアサルトライフルなどの装備を搭載していなかったため、犯人の確保に苦戦(最終的に2人の犯人は、一人が自殺、もう一人は負傷後確保されたが病院搬送後死亡している)、警察官12人と民間人8人が負傷した。同事件はSWATが駆け付けたことで事態が収拾するが、通常の警察官も強力な火器で武装する必要があると考えられ、その後、上記のパトカーの重装備化や制服警察官も.40S&W弾や.45ACP弾を用いる拳銃を携行するようになる[4]。
LAPDが舞台となる小説・映画など
小説
- マイクル・コナリー作「刑事ハリー・ボッシュ」シリーズ('92~)
- ジェイムズ・エルロイ作「ロイド・ホプキンス」シリーズ(全3作)
映画
- 『ブルーサンダー』
- 『ターミネーター』
- 『プレデター2』
- 『コブラ』
- 『リーサル・ウェポン』シリーズ
- 『LAPD処刑分署』
- 『チェンジリング』
- 『カラーズ 天使の消えた街』
- 『ヒート』
- 『スピード』
- 『S.W.A.T.』
- 『L.A.コンフィデンシャル』
- 『背徳の囁き』
- 『クワイヤボーイズ』
- 『エンド オブ ウォッチ』
テレビドラマ
ゲーム
- 『L.A.ノワール』- 主人公がLAPDの警察官。
- 『Midnight Club: Los Angeles』 - 交通違反を起こすとLAPDのパトカーに追跡される。
- 『グランド・セフト・オートV』 - ロサンゼルスがモデルとなったロスサントスの治安維持にあたるLSPDが登場している。
関連項目
脚注
- ^ a b c d 監修:庄司一憲『世界の警察 アメリカ編』 辰巳出版株式会社 ISBN 9784777804771
- ^ http://www.lapdonline.org/join_the_team/content_basic_view/9127#Police%20Lieutenant
- ^ http://www.lapdonline.org/assets/pdf/Org_Chart_021312.pdf
- ^ ちなみに、この事件は「44ミニッツ」という題名で映画化された他、映画「S.W.A.T.」の冒頭にもこの事件を基にしたシーンが存在する。
外部リンク
- official website of THE LOS ANGELES POLICE DEPARTMENT(英語)(機械翻訳だが日本語でも読める)