騎馬警官

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バッキンガム宮殿を警備する騎馬警官
聖パトリックの祝日」に、行進を先導するサンフランシスコ市警察の騎馬警官
街頭警備を行う、プロビデンス市警察の騎馬警官
警備を行うオーストラリアの騎馬警官

騎馬警官(きばけいかん、mounted police)とは、(やラクダ)に騎乗した警察官のことである。

概要[編集]

現在でも欧米などで実用的な警備の手段として騎馬警官が活用されている。

もともと各国の警察における執行隊としてしばしば設置されているものであった。かつて人が得うる高機動力の代表と言えば馬であった。馬は警察でもパトロールなど様々な業務で活用されていた。その時代における騎馬警官とは、今日でいうパトカー白バイに乗務する警察官のような役割を担っていたのである。しかし20世紀に入り機械の車(自動車オートバイなど)が普及していくと共に、警察でもパトロールカー白バイが導入されるようになり、騎馬警官の重要度は相対的に下がっていった。

それでも馬には自動車やオートバイにはない特長・利点があるので、今日でも馬は多くの国の警察にとって欠かせない装備の一つになっている。特長はいくつか挙げうるが、特に群衆のコントロールをする時にすぐれた心理的効果を発揮することが知られている。欧米ではきわめて実用的な観点から騎馬警官が活用されているのである。

 各国の著名な騎馬警官隊[編集]

オーストラリア
カナダ

カナダ国家警察の英語名は「Royal Canadian Mounted Police」であるが、これは直訳すると“王立カナダ騎馬警察”となる。

米国

米国の多くの都市の警察が騎馬部隊を備えている。例えば、ニューヨーク市のそれは米国の都市の中でも最大級で、(2011年時点で)79人の騎馬警官と60頭の馬を備えている[1]

その他、国境警備にも活用されている。

またアメリカの州警察にも「State Trooper」と称する機関があり、直訳では“州騎兵”である。ここには西部開拓時代に馬でパトロールしていた歴史が反映されている。

日本

現代の日本の警察の騎馬警官は、欧米に比べると数が少なく、多くの人々の眼にふれるのは国家行事のパレード時など、儀式的・儀礼的な使われ方ばかりであるが、実はそれ以外にも用いられている。→#日本の騎馬警官

馬及び騎馬警官の機能や役割[編集]

群衆に対する警備[編集]

群衆整理を行う騎馬警官
エジンバラでの反G8サミットデモにて

街頭警備、デモ警備において、馬は非常に柔軟性のある機動力として欧米各国では今でも使われている。馬は車両ほどの速度は出せないものの、車両よりも柔軟な動きが可能で、必要に応じて群集を威嚇することも可能なのである。雑踏警備や街頭警備においては、馬であれば車両では入れない路地でも入ることができるし、歩行者や他の車両を馬自身の判断で避けてくれるし、人が歩くほどの低速で移動する事も容易である。

群衆のコントロールをしなければならない場面で騎馬警官は特に優れた働きをする。群集が暴動を起こしかけたり、暴動ではないがある一箇所に殺到する場合では、その大きな体躯を活かして威嚇したり、群集に一定の流れを作り出すことも出来る。何事もないときはただ立って尻尾を揺らしているだけで、愛らしい姿は人々の心を和ませ、また群集が暴徒と化したとき警察車両に対しては容赦なく破壊行動を行うが、生き物である馬に対する直接的な危害を加えることは稀である。潜在的暴徒であるデモ隊に対しては騎馬警官が集結して堵列を作ることで抑止力にもなり、デモ隊に対する突撃は騎兵の衝撃力に類似した効果をもたらす。この効果をもって、デモ隊を押し戻したり分散させるなどの制御が可能となる。

この高い柔軟性と人々に対する心理的効果は、車両にはないものと言えるだろう。欧米各国警察の騎馬警官は、群衆整理のための技術訓練を受けていることがあり、技能を有する騎馬警官は人が直接行うよりも遥かに少ない手間で群衆整理を行う能力がある。

車両が入れない場所でのパトロール[編集]

国境付近や国立公園自然公園といった森林地帯などで、騎馬警官はパトロールの主力として運用されることがある。なぜならばこういった地区では道路がない或いは貧弱な場合も珍しくなく、地区によっては自然保護の観点から車両の進入が禁止されており、自動車によるパトロール・警備が難しいため。馬はこのような場所において、人が得られる数少ない機動力の一つである。

儀礼[編集]

騎馬警官はしばしば儀礼的な目的でも活用される。例えば国賓などのパレードが行われる際に、その先導に騎馬警官がつくことなどがある。かつての王族や貴族のパレードのような雰囲気を醸し出す役割を果たしている。日本では、天皇に謁見する外国の外交使節馬車に乗り、それを皇宮警察や警視庁の騎馬隊が警護することは今でも行われている。これも主として儀礼的な目的と言えるだろう。

装備[編集]

以下に示したものは一般的に見られるものを列挙しており、国や機関によって装備は異なる。

警官[編集]

対応する事案や国によっても装備は異なるが、総じて言えば白バイ隊員と類似した装備になっている場合が多い。

落馬時に頭部を保護するためのもの。白バイ隊員と似たようなデザインのものもあれば、乗馬用ヘルメットを流用したものなどがある。
  • 制服用上衣
  • 外套類
  • 乗馬ズボン
かつて乗馬ズボンと言えば、ふくらはぎのあたりが広がり裾がぴったりとしている、ニッカボッカーズのようなデザインのようなものが多かった。今日では制服に布の色調を合わせた、普通の乗馬ズボンになっている場合が多い。

[編集]

  • 馬具
手綱など、人が馬に乗るために必要な基本的な装備。
  • フェイスガード
機動隊のヘルメットについている、顔面を守る透明の板のようなもの。暴動が想定される状況においては、暴徒の投石などから馬を守るために使われる。
デンマーク警察騎馬隊のホーストレーラー。後ろの銀色の車に馬を載せる

支援装備[編集]

  • ホーストレーラー
厩舎から警備実施地点まで移動するための車両。日本の競走馬輸送車のような大型で自走する物ではなく、乗用車やトラックで牽引するホーストレーラーがまま見られる。

日本の騎馬警官[編集]

現代の日本の警察では京都府警察平安騎馬隊皇宮警察本部の騎馬隊、警視庁の騎馬隊がある。その目的は主に儀礼であり、警備的観点からの実用性で設置されているわけではない。日本の警察においては、警備や群衆整理は所轄署員や動員された機動隊、他県の警察官の活動によって賄われている。ただし、平安騎馬隊は学童安全対策(府内の小学校の通学路での下校時間帯のパトロール、月曜日から金曜日の朝の隊舎付近の小学校周辺の警戒活動)や、観光地パトロール(京都御苑等:京都御苑(公園部分)は都道府県警察の管轄)、水辺パトロール(水難事故防止のため:賀茂川・宇治川・木津川等の河川敷)も行っており、儀礼のみに徹しているわけではない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ Cooper, Michael (2011年2月15日). “Police Horses Are Diminished in Number, but Not Presence”. New York Times. 2012年11月15日閲覧。