リジェネロン・サイエンス・タレント・サーチ
リジェネロン・サイエンス・タレント・サーチ(Regeneron Science Talent Search, Regeneron STS)は、アメリカ合衆国の高校3年生を対象とした研究ベースの科学コンテストである。「アメリカで最も古く、最も権威のある科学コンテスト」とされる[1]。1991年の優勝者晩餐会でのスピーチで、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領はこの大会を「科学のスーパーボウル」と呼んだ[2]。
2017年よりリジェネロン・ファーマシューティカルズがタイトルスポンサーを務め、イベント名に「リジェネロン」が冠されている。リジェネロン社は、2020年から国際学生科学技術フェア(ISEF)のタイトルスポンサーも務めている。
歴史
[編集]サイエンス・サービス(現在のソサエティ・フォー・サイエンス)が1942年にウェスティングハウス・エレクトリック社と共同でこのコンテストを開始した。57年間にわたり、このコンテストはウェスティングハウス・サイエンス・タレント・サーチの名称だった[3]。1998年、インテルが他の数社を抑えてタイトルスポンサーになり[4]、インテル・サイエンス・タレント・サーチ(Intel STS)という名称になった[5]。2016年5月、リジェネロン・ファーマシューティカルズが新たなタイトルスポンサーになることが発表された[6]。
これまでに、合計約15万人の学生がこのコンテストに参加してきた。2万人以上がセミファイナリストに選ばれ、約3千人がコンテストのファイナリストとして、ワシントンD.C.で行われるファイナリストウィークに参加した。ファイナリストは合計で数百万ドルの奨学金を受け取り、後年、ノーベル賞、フィールズ賞、マッカーサー・フェローなど数多くの栄誉を手にしている[7]。
2018年現在で、出場者のうち、13人がノーベル賞を、2人がフィールズ賞を、11人がアメリカ国家科学賞を、18人がマッカーサー・フェローを、3人がアルバート・ラスカー医学研究賞を、5人がブレイクスルー賞を受賞し、43人が米国科学アカデミー会員に、11人が全米技術アカデミー会員に選出されている[7]。
2020年と2021年は、新型コロナウイルスのパンデミックが深刻化したため、ワシントンD.C.でのファイナリストウィークは中止され、オンラインでの開催となった[8]。
コンペティション
[編集]応募者は、自宅で、または「大学、病院、民間研究所の主要な研究チームと協力して」独創的な研究を行う[3]。選考は非常に競争が激しく、論文のほかに、推薦状、エッセイ、テストの点数、課外活動、高校の成績表などが最終選考に反映されることがある。
賞 | 奨学金 |
---|---|
1位 | $250,000 |
2位 | $175,000 |
3位 | $150,000 |
4位 | $100,000 |
5位 | $90,000 |
6位 | $80,000 |
7位 | $70,000 |
8位 | $60,000 |
9位 | $50,000 |
10位 | $40,000 |
ファイナリスト(40人) | $25,000 |
セミファイナリスト(300人) | $2,000 |
毎年、約1,800本の論文が提出される。1月中旬に上位300名のセミファイナリストが発表される。2017年からは、各セミファイナリストとその在籍する学校に、タイトルスポンサーから2千ドルが贈られている[10]。
1月下旬には、40名のファイナリストが発表される。ファイナリストは3月にワシントンD.C.で開かれるファイナリストウィークに参加し、審査員の面接を受ける。審査員には、グレン・シーボーグ(1951年ノーベル化学賞受賞者)、ジョゼフ・テイラー(1993年ノーベル物理学賞受賞者)などが名を連ねている。上位10名には最高25万ドルの奨学金が授与され、全てのファイナリストには、最低でも25,000ドルの奨学金が授与される[9]。
著名な出場者
[編集]氏名[7] | 年 | 順位[11] | その後の受賞歴・経歴 |
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ロバート・クライヒナン | 1944 | 2位 | 米国科学アカデミー会員 |
ベン・ロイ・モッテルソン | 1944 | ファイナリスト | 1975年ノーベル物理学賞 |
アンドリュー・セスラー | 1945 | ファイナリスト | 米国科学アカデミー会員 |
ジェラルド・モーリス・エデルマン | 1946 | セミファイナリスト | 1972年ノーベル生理学・医学賞 |
レオン・クーパー | 1947 | ファイナリスト | 1972年ノーベル物理学賞 |
マーティン・カープラス | 1947 | 1位 | 2013年ノーベル化学賞 |
ロナルド・ブレスロー | 1948 | ファイナリスト | 1991年アメリカ国家科学賞 |
R・スティーブン・ベリー | 1948 | ファイナリスト | 1983年マッカーサー・フェロー 米国科学アカデミー会員 |
ウォルター・ギルバート | 1949 | ファイナリスト | 1980年ノーベル化学賞 |
シェルドン・グラショー | 1950 | ファイナリスト | 1979年ノーベル物理学賞 |
ポール・コーエン | 1950 | ファイナリスト | 1966年フィールズ賞 |
ジョン・ホール | 1952 | セミファイナリスト | 2005年ノーベル物理学賞 |
デヴィッド・マンフォード | 1953 | ファイナリスト | 1974年フィールズ賞 |
ジョアンナ・ラス | 1953 | 10位以内 | 1983年ヒューゴー賞 中長編小説部門 1973年ネビュラ賞 短編小説部門 『フィメール・マン』の著者 |
マーシャン・ホフ | 1954 | 10位以内 | 2009年アメリカ国家技術賞 |
ロアルド・ホフマン | 1955 | ファイナリスト | 1981年ノーベル化学賞 |
リロイ・フッド | 1956 | ファイナリスト | 2011年アメリカ国家科学賞 |
キップ・ソーン | 1958 | セミファイナリスト | 2017年ノーベル物理学賞 |
ロバート・アクセルロッド | 1961 | ファイナリスト | 2012年アメリカ国家科学賞 |
ゲイリー・A・ウェグナー | 1963 | ファイナリスト | フンボルト賞物理学部門 |
ポール・モドリッチ | 1964 | セミファイナリスト | 2015年ノーベル化学賞 |
レイ・カーツワイル | 1965 | ファイナリスト | 1999年アメリカ国家技術賞 |
フランク・ウィルチェック | 1967 | ファイナリスト | 2004年ノーベル物理学賞 |
アルヴィン・ロス | 1968 | セミファイナリスト | 2012年ノーベル経済学賞 |
ロジャー・Y・チエン | 1968 | 1位 | 2008年ノーベル化学賞 |
トーマス・フェリックス・ローゼンバウム | 1973 | ファイナリスト | カリフォルニア工科大学学長 |
エリック・ランダー | 1974 | 1位 | 2013年生命科学ブレイクスルー賞 |
トム・レイトン | 1974 | 2位 | 米国科学アカデミー会員 アカマイ・テクノロジーズ共同創業者・CEO |
ポール・ツァイツ | 1975 | 1位 | 1974年アメリカ数学オリンピック優勝 |
ジョージ・ヤンコプロス | 1976 | 10位以内 | 米国科学アカデミー会員 リジェネロン・ファーマシューティカルズ共同創業者・CSO |
リチャード・H・エブライト | 1977 | ファイナリスト | アメリカ芸術科学アカデミー会員 |
ロン・ウンツ | 1979 | 1位 | ウォールストリート・アナリティクス(現 ムーディーズ・アナリティクス創業者 |
リサ・ランドール | 1980 | 1位 | 米国科学アカデミー会員 |
ブライアン・グリーン | 1980 | ファイナリスト | 『エレガントな宇宙』の著者 |
ノーム・エルキース | 1982 | ファイナリスト | 2004年リーヴァイ・L・コナント賞 |
ウェンディ・チョン | 1986 | 1位 | 米国小児科学会 Young Investigator Award |
ジョーダン・エレンバーグ | 1989 | 2位 | アメリカ数学会フェロー |
マシュー・ヘッドリック | 1990 | 1位 | 高h指数の物理学者 |
マニーシュ・アグラワラ | 1990 | ファイナリスト | 2009年マッカーサー・フェロー |
クリストファー・ブートン | 1992 | ファイナリスト | エンタジェン創業者・CEO |
黄煒華 | 1993 | 6位 | 世界パズル選手権優勝(1995年、1997-1999年) |
ジェイコブ・ルーリー | 1996 | 1位 | 2014年数学ブレイクスルー賞 2014年マッカーサー・フェロー |
キース・ウィンシュタイン | 1999 | 4位 | 2014年SIGCOMM Doctoral Dissertation Award |
フェン・チャン | 2000 | 3位 | 米国科学アカデミー会員 2016年ガードナー国際賞 |
関連項目
[編集]ソサエティ・フォー・サイエンスが実施する国際科学コンペティション
脚注
[編集]- ^ Ramírez, Eddy (February 1, 2008). “Stuyvesant High School Students Ace the Intel Competition”. U.S. News & World Report. 2008年3月15日閲覧。
- ^ Huler, Scott (April 15, 1991). “Nurturing Science's Young Elite: Westinghouse Talent Search”. The Scientist. 2008年3月15日閲覧。
- ^ a b "Finalists Named in 57th Annual Westinghouse Science Talent Search" (Press release). PR Newswire. 26 January 1998. 2011年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月22日閲覧。
- ^ “Intel Corp. To Sponsor Annual Science Contest”. Education Weekly (1 April 1998). 2021年5月1日閲覧。
- ^ Hardy, Quentin (Sep 9, 2015). “Intel to End Sponsorship of Science Talent Search”. The New York Times
- ^ “Biotech Regeneron replaces Intel as sponsor of Science Talent Search”. www.reuters.com. Reuters. 26 May 2016閲覧。
- ^ a b c “Society Alumni Honors”. Society for Science and the Public. 1 February 2018閲覧。
- ^ https://www.societyforscience.org/blog/regeneron-sts-2020-will-go-virtual/
- ^ a b “Regeneron Science Talent Search 2021 Rules and Entry Instructions”. Society for Science. 2021年5月1日閲覧。
- ^ Hardy, Quentin (May 26, 2016). “Regeneron Pharmaceuticals to Sponsor Science Talent Search”. New York Times: p. B2
- ^ “Science Talent Search Through the Years”. Society for Science & the Public (1942–2016). 5 January 2017閲覧。
- ^ “Broadcom MASTERS”. Society for Science and the Public. 17 December 2019閲覧。