モンブラン (ケーキ)
モンブラン(Mont Blanc aux marrons)は、クリなどを原料とするクリームを生地の上面に絞りかけたケーキ。モンブラン山の形に似せて作ったことからこう呼ばれる。
概要
典型的には、カップケーキ型のスポンジ生地やメレンゲ、タルト生地などで作った土台の上に生クリームをホイップし、それを螺旋状に包むように絞り袋や小田巻を使って絞り出したクリのクリームをあしらう[注 1]。栗のケーキであることを示すために、その上に半分に切ったマロングラッセ、あるいは甘露煮の栗が一片載せられることもある。形状や大きさ、土台となる生地部分には様々なバリエーションがあるが、栗を用いたクリームを山状にデコレーションされたものが多くのものに共通する。尚、上に降りかけられる白い粉砂糖は雪を表している。
由来
このケーキはフランス・サヴォワ県と隣接するイタリア・ピエモンテ州の家庭菓子が原型であり、当初は栗のペーストに泡立てた生クリームを添えたデセール(冷菓)であった。これをもとに、モンブランを看板メニューとする1907年創業のパリ1区リヴォリ通りの老舗カフェ「アンジェリーナ」が、クリームをメレンゲ上に搾り出した形に発展させた。もっとも、この製品化の時期は詳らかではない。
このケーキには、長時間シロップに漬けられて形の崩れたマロングラッセをつぶし、ペースト状にしたものがかけられる。その形はモンブラン山を真似たものであり、フランスでは山の丸みを帯びたドーム状の曲線が、イタリアでは氷河に削り取られた峻厳な岩肌がケーキに投影されることとなった[1]。
日本では東京・自由が丘の「モンブラン」初代店主迫田千万億が、1933年にフランス・シャモニーを旅した際にこれを知り、つくる許可を取った。土台をメレンゲからカステラにし[2]、クリのクリームもヨーロッパの茶色のものではなく、日本人になじみ深い黄色の甘露煮を用いるアレンジを加え、持ち帰りのできるガトー(焼き菓子)として完成させた[3]。これは日本で初めてのことであったが、名が広がることを望んだ迫田が「モンブラン」を商標登録しなかったため、黄色いモンブランは日本全国に普及する。そして上述フランスの「アンジェリーナ」が1984年に日本進出を契機に茶色いモンブランを日本で発売、同様に支持されるに至っている[4]。
名称
名前の由来は、アルプス山脈のモンブラン(フランスとイタリアの最高峰)。
- フランス語では、モン・ブラン・オ・マロン(Mont Blanc aux marrons。またはMont Blanc)。
- または、トルシュ・オー・マロン(Torche aux marrons トルシュ(松明たいまつ))。
- フランス東北部アルザス地方では、オー・ニ・デ・シゴーニュ(ou nid de cigogne(コウノトリの巣))。
- イタリアでは、モンテ・ビアンコ(Monte Bianco(山名と同様))。
バリエーション
- 日本ではクリ以外にも、サツマイモやカボチャなどで代用したり、色付けし砂糖と香料を加えた白餡を乗せたケーキにも、同じ名称が冠されている[5]。また、栗のクリームに抹茶を混ぜ込んだ抹茶のモンブランや、ココアを混ぜ込んだチョコレートモンブランなどもある。更には栗を使用せず、生クリームにいちごやマンゴー等の果汁を混ぜ込こんで風味付けをしたモンブランもある。
- 北海道小樽市の一部では、ココアスポンジに生クリームを挟んだショートケーキが「モンブラン」と呼ばれている[6]。
脚注
注釈
出典
- ^ NHK鑑賞マニュアル・美の壷「モンブラン」
- ^ お菓子の由来物語 P.27
- ^ “モンブランの歴史!?”. 自由が丘モンブラン (2011年11月14日). 2013年11月27日閲覧。
- ^ ニッポン定番メニュー事始め P.74
- ^ 料理サプリニュース昭和のモンブランが「黄色」だった理由
- ^ “時間が止まった老舗喫茶店でスイーツを! 小樽市民に愛され続けている3店 (2) その復活に小樽市民も涙! 老舗喫茶店の「館モンブラン」は一味違う”. マイナビニュース. マイナビ (2015年5月19日). 2018年12月8日閲覧。
参考文献
- 猫井登『お菓子の由来物語』幻冬舎、2008年9月。ISBN 978-4779003165。
- 澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』彩流社、2013年9月。ISBN 978-4779119347。
関連項目
外部リンク
- 鑑賞マニュアル 美の壷 「モンブラン」 - NHK